その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、オーク退治をする2

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 最初の二体を倒した後、クリスは短時間で他のオークたちも気絶させ、植物の蔓でぐるぐる巻きにして一ヶ所にまとめておいた。

「……ずいぶん、手慣れているな」

 感心したような呆れたような口調で聖剣は言った。
 クリスは苦笑する。

「鍛練で慣れているからね」

 どのような勇者が来ても負けないために、クリスは他の誰よりも厳しい鍛練のメニューをこなしてきた。
 そのなかに「オーク十体」を「魔法のみ」で倒すメニューもあったのだ。
 ただ、そのオークたちは武官として鍛え上げられた者で構成されている上に、勝てばもらえる報酬のために本気でかかってきて、かなり手強かった。
 しかし、今回のオークたちは統制が取れてない上になんだかやる気がなかったため、いつもよりずっと簡単だった。

「ふーん」
「ねぇ、ちょっと聞いていい?」

 関心があるのかないのかよくわからない返事をする聖剣に、クリスは話しかける。

「僕はもとの……」

 バンッ

 クリスの言葉は上空で何かがぶつかる音に遮られた。



 上空にて――。

「ちょっと、なによ、これ!」

 サーニャは困惑していた。
 自分が放った火球が何かに阻まれたからだ。

 サーニャは紅い髪と目をした魔族の女性で、若いながら、優秀な魔法の使い手としてまわりから一目置かれている。

 今回は、魔王の命令で村をオークと共に襲いに来たのだが、村の規模が思ったより小さかったため、オークだけで大丈夫だろうと襲撃を任せて、上から様子を見ていた。

 だが、オークたちはやられてしまった。
 しかもたった一人に。

 慌てて、魔法を放ったが、それらはすべて防がれてしまう。

「嘘でしょ……」

 サーニャの魔法はそれなりに強力なもので、人間の魔法使いなんかでは防ぐことはできない。
 同族である魔族やエルフなどなら可能かもしれないが、場所を変えても防がれることからかなり広範囲に張ってあることになる。

 だとすれば、相手はとんでもない魔力の持ち主だということだ。

 そんな格が違う相手に立ち向かったところで敵うわけがないが、魔王は敗北にも失敗にも厳しい。最悪、命はない。

 どうしようか迷っていると、こちらに向かって飛んでくるものがあった。

「ごめん」
「え?」

 何か確かめようとしたサーニャを、雷魔法が襲った。

「きゃああ!」

 完全に油断していたサーニャはまともにくらい、飛行魔法が解けてしまう。

 落ちようとするサーニャを誰かが受け止める。
 そのまま、サーニャは意識を失った。
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