その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

文字の大きさ
上 下
7 / 179

魔王、オーク退治をする2

しおりを挟む
 最初の二体を倒した後、クリスは短時間で他のオークたちも気絶させ、植物の蔓でぐるぐる巻きにして一ヶ所にまとめておいた。

「……ずいぶん、手慣れているな」

 感心したような呆れたような口調で聖剣は言った。
 クリスは苦笑する。

「鍛練で慣れているからね」

 どのような勇者が来ても負けないために、クリスは他の誰よりも厳しい鍛練のメニューをこなしてきた。
 そのなかに「オーク十体」を「魔法のみ」で倒すメニューもあったのだ。
 ただ、そのオークたちは武官として鍛え上げられた者で構成されている上に、勝てばもらえる報酬のために本気でかかってきて、かなり手強かった。
 しかし、今回のオークたちは統制が取れてない上になんだかやる気がなかったため、いつもよりずっと簡単だった。

「ふーん」
「ねぇ、ちょっと聞いていい?」

 関心があるのかないのかよくわからない返事をする聖剣に、クリスは話しかける。

「僕はもとの……」

 バンッ

 クリスの言葉は上空で何かがぶつかる音に遮られた。



 上空にて――。

「ちょっと、なによ、これ!」

 サーニャは困惑していた。
 自分が放った火球が何かに阻まれたからだ。

 サーニャは紅い髪と目をした魔族の女性で、若いながら、優秀な魔法の使い手としてまわりから一目置かれている。

 今回は、魔王の命令で村をオークと共に襲いに来たのだが、村の規模が思ったより小さかったため、オークだけで大丈夫だろうと襲撃を任せて、上から様子を見ていた。

 だが、オークたちはやられてしまった。
 しかもたった一人に。

 慌てて、魔法を放ったが、それらはすべて防がれてしまう。

「嘘でしょ……」

 サーニャの魔法はそれなりに強力なもので、人間の魔法使いなんかでは防ぐことはできない。
 同族である魔族やエルフなどなら可能かもしれないが、場所を変えても防がれることからかなり広範囲に張ってあることになる。

 だとすれば、相手はとんでもない魔力の持ち主だということだ。

 そんな格が違う相手に立ち向かったところで敵うわけがないが、魔王は敗北にも失敗にも厳しい。最悪、命はない。

 どうしようか迷っていると、こちらに向かって飛んでくるものがあった。

「ごめん」
「え?」

 何か確かめようとしたサーニャを、雷魔法が襲った。

「きゃああ!」

 完全に油断していたサーニャはまともにくらい、飛行魔法が解けてしまう。

 落ちようとするサーニャを誰かが受け止める。
 そのまま、サーニャは意識を失った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

処理中です...