その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

文字の大きさ
上 下
6 / 179

魔王、オーク退治をする

しおりを挟む
「ねぇ……」
「ん?」
「オークってあんなんだっけ?」

 クリスと聖剣は物陰に隠れて村の様子を伺っていた。
 目の前にはやけに太ったヒト型の魔物が十体以上いる。

「いや、オークってあんなんだろ」

 クリスの疑問に聖剣はそう答えたが、彼は釈然としない。

「僕の知っているオークはもっとすらっとしていてかっこよかったよ」

 確かに灰色の肌や低い鼻など共通点はある。だが、クリスの知っているオークは大柄で筋骨隆々とした体型をしているが、目の前のオークは腹の突き出た不健康な太り方をしていた。
 それに上半身は裸のままで、下半身にいつ洗ったかわからない薄汚れたズボンを履いているだけで清潔感がなかった。

 その時、一人のオークが、人間の子供に襲いかかろうとした。

 自分の知っているオークとの違いに若干混乱していたクリスはこの光景を見てはっと我に返る。

「やめろ!」

 クリスは子供とオークの間に割って入る。
 そして勢い良く振り下ろされようとするこん棒を片手で遮った。
 肉体強化魔法使っている腕は意図も簡単に自身の胴程もあるこん棒を受け止める。

「グゴ?!」

 まさか受け止められると思っていなかったのだろう。オークは目を見開いて、驚きの声をあげた。
  再び引いて振り上げようとするが、細い腕で掴まれたこん棒は微動だにしなかった。

「ごめん」

 クリスは小さな声で謝ると、微弱な雷魔法を放つ。
 バチッと何かがはじける音がした。

「ぐぎゃあ!」

 オークが悲鳴を上げ、ゆっくりと倒れた。

「大丈夫?」

 声を掛けると、子供は真っ青になって震えている。
 怪我の有無を確かめようと近づくと、子供は悲鳴を上げ、脱兎のごとく逃げ出した。

「えぇ……」

 さすがに傷ついて落ち込んでいると、仲間の悲鳴を聞いて駆けつけたオークが、クリスの後頭部にこん棒を叩きつけようとする。

 オークが勢い良く振り下ろしたこん棒が叩いたのは仲間を傷つけた男ではなく、なにもない地面だった。

「!?」

 オークが驚いていると、後ろから「危ないなぁ」というのんきな声がした。
 振り向く前に雷魔法を放たれ、クリスを襲ったオークは仲間と同じように気絶したのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

 怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~

美袋和仁
恋愛
 ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。  しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。  怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。  なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

処理中です...