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第三章 強欲のダンジョン
第23話 信頼できない強い配下
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アーサーはスラーオを倒した後、すぐに撤退した。ベンジャミンがスラーオにより重傷を負ったから今回は助かったものの、それがなかったらどうなっていたか。
そして俺は第二層を作るためにコツコツと貯めていた、【DP15,000】という数字を見る。
ダンジョンは下層を作っていくとドンドン改装に必要なDPが増えていく、というシステムだ。
第一層の改造は一万使った。
第二層は多分一万五千はあった方がいいだろう、と貯めていたが、さすがに今回の事件を見て呑気に新階層を作る気にはなれない。
強い魔物が必要だ。Bランク冒険者のアーサーすらも倒せてしまうような、強い配下が。
最低Bランク、できればAランクの魔物を探す。
「……ダメだ」
今のDPじゃあまりにも足りなすぎる。
強そうなBランクでは【DP100,000】が必要になるものもある。
「……アレスたちの進化か?」
DPをアレスかスケ方に注ぎ込めばBか、もしかしたらAにまで進化出来るかもしれない。
だが、俺はそれをする気にはなれなかった。
理由としては、進化がその体の根本を変えていること。
俺は経験がないからどんな感じか理解できないが、それでも負荷はかかるだろう。
急いで注ぎ込みすぎるあまり、二人に負荷がかかって最悪死亡するかもしれないと、そう思ったらそれをする気は起きない。
いや、信頼できる配下だし、もちろんできるのならそれがベストだとは思う。
だが、あまりに不透明。あまりに無謀。
探す。探して、探しまくる。
「トージ、ちょっと怖い顔ですよー」
ピタリ。
小雪のその言葉と同時に、俺は今求めている条件に完璧に合致するそれを見つけた。
玉座に座っている俺の上にちょこんと座って、心配そうに眉を落としている小雪が目に入った。
「――小雪。俺は、デーモンを召喚させる」
「……はい?」
Aランク。必要DP一万。
明らかに怪しい匂いしかしないが、いいだろう。やってやろうじゃないか。
悪魔との契約を。
◆ ◆ ◆
小雪先生による悪魔との契約注意点講座が終わった。
1、護衛として最高戦力を俺の近くに置いておくこと。(この時、数が多すぎると舐められる)
2、召喚はそれすなわち契約。契約の内容はぶっ飛んだ、馬鹿げたものにする。(金貨一億枚欲しいとかいかにも自分の欲望丸出しなものだとヤバいからやめた方がいいらしい)
3、本名を明かさない。(明かすとすごくヤバいらしい)
と、まあ悪魔との契約は色々と厄介なんだとか。
基本的にギブアンドテイクの関係を保つことが大切だと言うが、まあ細かいところはその悪魔の性格によるとしか言えないらしい。
そりゃ【DP10,000】になるわ。
【DP100,000】で有能かつ気の置けない配下を召喚させるか、最悪命の危険がある悪魔と【DP10,000】で契約するか。
俺は圧倒的に前者がいい。
まあグチグチと言っていても仕方ないので、まずは下準備としてアレスをレッサー・オーガからCランクのオーガへ進化。
『ふむ。力が、みなぎるナ』
俺的にはもっと筋肉がモリモリになると思ったが、それは少し違った。
レッサーの時はただただ大量の筋肉を貼り付けた、という感じだったが今はキュッと引き締まって、体にフィットしている筋肉になったのだ。
アレス本人の努力もあると思うが、それでも進化は少し羨ましい。一瞬でバキバキのムキムキのガチムチになるのだから。
ただ、少しスリムになったからか腰巻きがずり落ちかけた。いやん。
……そういえば、アレスだけまだ原始人の姿だな。服を着せてあげたいけど、中々いいサイズの服を冒険者が落としてくれないのだ。
どこかに料理ができて服も作れて、いや、家事全般ができるのなら万能メイドまたは執事がいないかなー……
「着いてきてくれ。今から大事な儀式を行う」
『イイぞ』
で、ちょっとした小部屋を作る。
特に修飾も何もしない、ただの部屋だ。
入って、アレスに扉を閉めてもらう。
「今からデーモンを召喚する。……まあ、小雪との会話を聞いていたら大体は分かると思うが、今はただ何かあった時に俺を守ることだけ考えてくれ。頼む」
『当たり前ダ』
あらやだ、男前。
大丈夫、俺のピアスことライフ・スカルがもしもの時は『暗黒魔法』で目くらましをしてくれる。
「行くぞ」
召喚、デーモン。
最初の登場からデーモンは、違かった。
今までは何を召喚させても地面からニューっと生えてくるだけだったが、地面にポッカリと穴が開いた。
そして、風が吹き荒れる。
その穴は黒のようで、濃い青のような……ああ、宇宙だろうか。
うん、その表現が適切だ。
そして宇宙の穴から、ここだけは譲れないのかニューっとデーモンが生えてくる。
「――お呼びでしょうか」
「ああ」
女性の声だった。
スレンダーな体に、理知的な声。
髪は金髪のロングで、特にまとめはせず腰あたりまで伸ばしている。
言葉遣いは丁寧だが、服従の気持ちはない、とでも言いたいのだろうか。意思の強そうな蒼の眼が俺をしっかりと見据えてくる。
そして特に気になったのが――
「悪魔なのに、十字架か?」
「ええ。意外でしょうか?」
「正反対のイメージがあるからな」
「そのイメージを利用している、とでも言うのでしょうか。その先入観から、却って正体がバレにくくなるというものでございます」
そして優雅に一礼。
「しかし、お聞きいたしますが、そこにいるオーガがここで最も強い人物でしょうか?」
……焦るな、慎重に行こう。悪魔による選別は既に始まっている。
「そうなるな。何か問題でも」
「……いえ。その程度の魔物を置くのであればいない方が邪魔でなくてよろしいかと思った次第でございます」
「優しいな。ご丁寧にありがとう」
アレスを、邪魔呼ばわり。額に青筋立つのを感じるが、一旦自分を落ち着けさせる。
「さて、では契約をいたしましょう。あなたのお望みは?」
……そういえば、考えてなかった。
俺の今ほしいもの。必要なこと。
力を貸してくれ? いや、微妙なラインだな……
もっと変で、おかしいものでないといけない。
……今の欲求。
美味しいものが食べたい。アレスに服をあげたい。住んでる部屋をキレイにしたい。
……つまり、メイドでは?
じゃあ、メイドになってくれ、と頼むか?
もう一度、しっかりとデーモンを見て、メイド服を着ている姿をイメージする。
……意外性が無さすぎる。なんか、ああ、うん。かわいいね。そんな感想で終わりそうだ。
相手の虚をつけそうな何か。
……
いや、少し考え込んでしまったが、シンプルでもいい気がする。
ただ少しひねって、メイドではなく、となると――
「――俺の執事になってくれ」
「……はあ」
返事とも、ため息とも取れるような曖昧な一言。
それと同時に、デーモンはなんとも言えない表情で首をこてんとかしげた。
これは、契約の第一ラウンドは突破できたということでいいのだろうか。
◆ ◆ ◆
「これより行うのは仮契約でございます」
しっかりと、相手の言葉を吟味しながら聞く。
「仮契約とは言いますが、これは本契約と大差ありません。本契約と違うのは、立場が互いに平等である、という点だけ」
「本契約は平等じゃないのか」
「ええ。仮契約でどちらかが負けを認めるか、平等の立場という互いの信用を崩す行為が発覚した時、本契約は成されます。仮契約は本契約に至るまでの勝負と言ってもいいでしょう」
つまり仮契約さえ成されれば基本的にそれ以上を求める必要はない、ということか。
「……負けるとどうなるか、具体的に教えてくれ」
「平等な関係が主従関係になる。この一言につきます。……直接的に言うのならば、仮契約での勝負で負けた方は奴隷になる、ということでございます」
なるほど。つまり悪魔との契約はまさに己の人生を賭けるものらしい。
「俺の要求の執事は、一種の……いや、普通にガッツリ主従関係だよな。それはどうなるんだ」
そう言うと、お相手も困った顔をした。
「私もそのような経験はございませんので、なんとも」
と、まあ分からないものは仕方が無いのでそれは一旦パスすることにした。
まずは今一番気になっていることを聞く。
「それで、なんの対価を望む」
「私はそのようなものは一切求めません。……いえ、対価と呼べるものとしては、あなた様の苦難でしょうか」
「つまり、俺が鼻水と涙で顔をグチャグチャにして苦しんでいる姿を見て満足感を得ると」
「……少々語弊がありますが、その通りでございます」
特にそれ以上は無さそうなので、すぐに仮契約を行うことになった。
少しワクワクしている。
「『契約による縛りを求めん。此れは互いの平等を約束し、其れを侵すことは如何なる罪より重し』」
デーモンが契約の文言を述べていく。
「『汝、契約者よ。願いを』」
「相手が執事として俺に仕えることを望む」
デーモンが俺に目配せをした。
今度は俺が、ということだろう。
「『汝、契約者よ。願いを』」
「契約者の人生、その苦難を見ることを望む」
そして、なんか契約が成立したっぽい感じのエフェクトが出る。
肩の力を抜く。少しホッとした。
「これで契約は成立です。よろしくお願いいたしますね、ご主人様」
ニッコリと笑ってデーモンはそう言った。
なれない呼び方に、むず痒さと、頬がひきつっていくのを感じる。
……ご、ご主人様か。う、うん。
息を吐く。
「ご主人様だ。よろしく。俺の人生の目標は魔王になること。お前を呼んだのもその一環だ」
「大変素晴らしい目標ですね。……ああ、私は仮契約という互いの平等な立場が保証されている現状で満足しております。なので本契約に持っていこうなどとは一切考えておりません。私はデーモンにしては欲がない方でございまして。ええ。……なので、末永くよろしくお願いいたしますね?」
二度目のよろしく。
多分九割嘘だろうなあ、と思いながら俺は頷いた。
『平等の立場という互いの信用を崩す行為が発覚した時、本契約は成される』
ということは単純、バレなければどんな不正をしてもいいのだ。……せめて裏はかかれないように気を付けるとしよう。
そう自分に言い聞かせて、俺はデーモンと契約の成立を記念して握手したのだった。
そして俺は第二層を作るためにコツコツと貯めていた、【DP15,000】という数字を見る。
ダンジョンは下層を作っていくとドンドン改装に必要なDPが増えていく、というシステムだ。
第一層の改造は一万使った。
第二層は多分一万五千はあった方がいいだろう、と貯めていたが、さすがに今回の事件を見て呑気に新階層を作る気にはなれない。
強い魔物が必要だ。Bランク冒険者のアーサーすらも倒せてしまうような、強い配下が。
最低Bランク、できればAランクの魔物を探す。
「……ダメだ」
今のDPじゃあまりにも足りなすぎる。
強そうなBランクでは【DP100,000】が必要になるものもある。
「……アレスたちの進化か?」
DPをアレスかスケ方に注ぎ込めばBか、もしかしたらAにまで進化出来るかもしれない。
だが、俺はそれをする気にはなれなかった。
理由としては、進化がその体の根本を変えていること。
俺は経験がないからどんな感じか理解できないが、それでも負荷はかかるだろう。
急いで注ぎ込みすぎるあまり、二人に負荷がかかって最悪死亡するかもしれないと、そう思ったらそれをする気は起きない。
いや、信頼できる配下だし、もちろんできるのならそれがベストだとは思う。
だが、あまりに不透明。あまりに無謀。
探す。探して、探しまくる。
「トージ、ちょっと怖い顔ですよー」
ピタリ。
小雪のその言葉と同時に、俺は今求めている条件に完璧に合致するそれを見つけた。
玉座に座っている俺の上にちょこんと座って、心配そうに眉を落としている小雪が目に入った。
「――小雪。俺は、デーモンを召喚させる」
「……はい?」
Aランク。必要DP一万。
明らかに怪しい匂いしかしないが、いいだろう。やってやろうじゃないか。
悪魔との契約を。
◆ ◆ ◆
小雪先生による悪魔との契約注意点講座が終わった。
1、護衛として最高戦力を俺の近くに置いておくこと。(この時、数が多すぎると舐められる)
2、召喚はそれすなわち契約。契約の内容はぶっ飛んだ、馬鹿げたものにする。(金貨一億枚欲しいとかいかにも自分の欲望丸出しなものだとヤバいからやめた方がいいらしい)
3、本名を明かさない。(明かすとすごくヤバいらしい)
と、まあ悪魔との契約は色々と厄介なんだとか。
基本的にギブアンドテイクの関係を保つことが大切だと言うが、まあ細かいところはその悪魔の性格によるとしか言えないらしい。
そりゃ【DP10,000】になるわ。
【DP100,000】で有能かつ気の置けない配下を召喚させるか、最悪命の危険がある悪魔と【DP10,000】で契約するか。
俺は圧倒的に前者がいい。
まあグチグチと言っていても仕方ないので、まずは下準備としてアレスをレッサー・オーガからCランクのオーガへ進化。
『ふむ。力が、みなぎるナ』
俺的にはもっと筋肉がモリモリになると思ったが、それは少し違った。
レッサーの時はただただ大量の筋肉を貼り付けた、という感じだったが今はキュッと引き締まって、体にフィットしている筋肉になったのだ。
アレス本人の努力もあると思うが、それでも進化は少し羨ましい。一瞬でバキバキのムキムキのガチムチになるのだから。
ただ、少しスリムになったからか腰巻きがずり落ちかけた。いやん。
……そういえば、アレスだけまだ原始人の姿だな。服を着せてあげたいけど、中々いいサイズの服を冒険者が落としてくれないのだ。
どこかに料理ができて服も作れて、いや、家事全般ができるのなら万能メイドまたは執事がいないかなー……
「着いてきてくれ。今から大事な儀式を行う」
『イイぞ』
で、ちょっとした小部屋を作る。
特に修飾も何もしない、ただの部屋だ。
入って、アレスに扉を閉めてもらう。
「今からデーモンを召喚する。……まあ、小雪との会話を聞いていたら大体は分かると思うが、今はただ何かあった時に俺を守ることだけ考えてくれ。頼む」
『当たり前ダ』
あらやだ、男前。
大丈夫、俺のピアスことライフ・スカルがもしもの時は『暗黒魔法』で目くらましをしてくれる。
「行くぞ」
召喚、デーモン。
最初の登場からデーモンは、違かった。
今までは何を召喚させても地面からニューっと生えてくるだけだったが、地面にポッカリと穴が開いた。
そして、風が吹き荒れる。
その穴は黒のようで、濃い青のような……ああ、宇宙だろうか。
うん、その表現が適切だ。
そして宇宙の穴から、ここだけは譲れないのかニューっとデーモンが生えてくる。
「――お呼びでしょうか」
「ああ」
女性の声だった。
スレンダーな体に、理知的な声。
髪は金髪のロングで、特にまとめはせず腰あたりまで伸ばしている。
言葉遣いは丁寧だが、服従の気持ちはない、とでも言いたいのだろうか。意思の強そうな蒼の眼が俺をしっかりと見据えてくる。
そして特に気になったのが――
「悪魔なのに、十字架か?」
「ええ。意外でしょうか?」
「正反対のイメージがあるからな」
「そのイメージを利用している、とでも言うのでしょうか。その先入観から、却って正体がバレにくくなるというものでございます」
そして優雅に一礼。
「しかし、お聞きいたしますが、そこにいるオーガがここで最も強い人物でしょうか?」
……焦るな、慎重に行こう。悪魔による選別は既に始まっている。
「そうなるな。何か問題でも」
「……いえ。その程度の魔物を置くのであればいない方が邪魔でなくてよろしいかと思った次第でございます」
「優しいな。ご丁寧にありがとう」
アレスを、邪魔呼ばわり。額に青筋立つのを感じるが、一旦自分を落ち着けさせる。
「さて、では契約をいたしましょう。あなたのお望みは?」
……そういえば、考えてなかった。
俺の今ほしいもの。必要なこと。
力を貸してくれ? いや、微妙なラインだな……
もっと変で、おかしいものでないといけない。
……今の欲求。
美味しいものが食べたい。アレスに服をあげたい。住んでる部屋をキレイにしたい。
……つまり、メイドでは?
じゃあ、メイドになってくれ、と頼むか?
もう一度、しっかりとデーモンを見て、メイド服を着ている姿をイメージする。
……意外性が無さすぎる。なんか、ああ、うん。かわいいね。そんな感想で終わりそうだ。
相手の虚をつけそうな何か。
……
いや、少し考え込んでしまったが、シンプルでもいい気がする。
ただ少しひねって、メイドではなく、となると――
「――俺の執事になってくれ」
「……はあ」
返事とも、ため息とも取れるような曖昧な一言。
それと同時に、デーモンはなんとも言えない表情で首をこてんとかしげた。
これは、契約の第一ラウンドは突破できたということでいいのだろうか。
◆ ◆ ◆
「これより行うのは仮契約でございます」
しっかりと、相手の言葉を吟味しながら聞く。
「仮契約とは言いますが、これは本契約と大差ありません。本契約と違うのは、立場が互いに平等である、という点だけ」
「本契約は平等じゃないのか」
「ええ。仮契約でどちらかが負けを認めるか、平等の立場という互いの信用を崩す行為が発覚した時、本契約は成されます。仮契約は本契約に至るまでの勝負と言ってもいいでしょう」
つまり仮契約さえ成されれば基本的にそれ以上を求める必要はない、ということか。
「……負けるとどうなるか、具体的に教えてくれ」
「平等な関係が主従関係になる。この一言につきます。……直接的に言うのならば、仮契約での勝負で負けた方は奴隷になる、ということでございます」
なるほど。つまり悪魔との契約はまさに己の人生を賭けるものらしい。
「俺の要求の執事は、一種の……いや、普通にガッツリ主従関係だよな。それはどうなるんだ」
そう言うと、お相手も困った顔をした。
「私もそのような経験はございませんので、なんとも」
と、まあ分からないものは仕方が無いのでそれは一旦パスすることにした。
まずは今一番気になっていることを聞く。
「それで、なんの対価を望む」
「私はそのようなものは一切求めません。……いえ、対価と呼べるものとしては、あなた様の苦難でしょうか」
「つまり、俺が鼻水と涙で顔をグチャグチャにして苦しんでいる姿を見て満足感を得ると」
「……少々語弊がありますが、その通りでございます」
特にそれ以上は無さそうなので、すぐに仮契約を行うことになった。
少しワクワクしている。
「『契約による縛りを求めん。此れは互いの平等を約束し、其れを侵すことは如何なる罪より重し』」
デーモンが契約の文言を述べていく。
「『汝、契約者よ。願いを』」
「相手が執事として俺に仕えることを望む」
デーモンが俺に目配せをした。
今度は俺が、ということだろう。
「『汝、契約者よ。願いを』」
「契約者の人生、その苦難を見ることを望む」
そして、なんか契約が成立したっぽい感じのエフェクトが出る。
肩の力を抜く。少しホッとした。
「これで契約は成立です。よろしくお願いいたしますね、ご主人様」
ニッコリと笑ってデーモンはそう言った。
なれない呼び方に、むず痒さと、頬がひきつっていくのを感じる。
……ご、ご主人様か。う、うん。
息を吐く。
「ご主人様だ。よろしく。俺の人生の目標は魔王になること。お前を呼んだのもその一環だ」
「大変素晴らしい目標ですね。……ああ、私は仮契約という互いの平等な立場が保証されている現状で満足しております。なので本契約に持っていこうなどとは一切考えておりません。私はデーモンにしては欲がない方でございまして。ええ。……なので、末永くよろしくお願いいたしますね?」
二度目のよろしく。
多分九割嘘だろうなあ、と思いながら俺は頷いた。
『平等の立場という互いの信用を崩す行為が発覚した時、本契約は成される』
ということは単純、バレなければどんな不正をしてもいいのだ。……せめて裏はかかれないように気を付けるとしよう。
そう自分に言い聞かせて、俺はデーモンと契約の成立を記念して握手したのだった。
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