上 下
3 / 40
第一章 ダンジョンのやりくりは大変です

第3話 二人目の侵入者

しおりを挟む
 白の透き通るような髪に、思わず目が惹き付けられる赤の目。

 そして、パッと見無口で冷たそうな印象を受ける顔の割にはお喋りな、自称本。
 胸の薄さは本とそっくりかもしれないが……いや、そう考えたらこの子は本当に本なのか?

 うーん、分からなくなってきた。

 まあいいや。

「さて、250DPをどう使おうか」

 あのおじさんの死体を還元したら、【DP50】のおまけがきたのだ。
 ラッキーだ。

 そしてこれがあればスケルトンを二体召喚できる。スケ方が二体、スケ方が二体……絶対いらない気がする。

「つよーいモンスターがいると便利ですよ」
「250DPで?」

 それならこのカックカクの洞窟をどうにかした方がいい気がする。

 うん、それだ。超名案じゃん。

 思い立ったが吉日、ダンジョンさんに頼んでさっきよりは自然風な洞窟に作りかえてもらった。これでDPはすっからかん。

 俺が達成感に浸っていると、本ちゃんが閃いた、と言った感じで手に拳をポンと置く。

「DPでスケ方さんの強化をするのはどうでしょうか!」
「故人の名前は出さないでくれ……」

 ってかモンスターって強化できるんだ。

「死んでませんよ? ギリギリで生きてます」
「いや、死んでるから骨になってるんだろ」
「人はそれを屁理屈と言います」

 というわけで、まだ生きているというスケ方(白骨死体)の様子を見に行くことになった。

 ドアを引いて、ダンジョンからの視界ではなく自分の視界で変わったダンジョンを見る。

 まず感じた印象は、ゴツゴツとした自然な洞窟っぽいなというもの。で、直線だった道は右に曲がったり左に曲がったりしていて、奥に何があるのか好奇心がくすぐられるような感じになっていた。
 超絶いいね。ダンジョンさんセンスある!

「ああ、そういえばDP全部使ったわ」
「は、はいぃ?」
「うん、改装費用」

 本ちゃんはカッコよくなったダンジョンの壁を眺めて、しばらくしてから頭を抱えて座り込んだ。

 俺のダンジョンのカッコよさに目がやられたのかな?





 ◆ ◆ ◆



「どーみても死んでねえか?」

 バラバラに砕けているスケ方がそこにはあった。
 唯一無事な頭蓋骨がさらに哀れだ。

「うーんと、目にギューッと力を込めてスケ方さんを見てみてください」

 パタパタと目に力を込めるっぽい感じのジェスチャーをして俺に教えてくれる。
 なんのためかはわからないけど、とりあえず従ってみる。

【種族】スケルトン
【ランク】F
【名前】スケ方
【レベル】1/10
【HP】1/50

【スキル】

【称号】
骨粗鬆症こつそしょうしょう


「おー」
「見えてますか? それがスケ方さんのステータスです。確かに生きているでしょう」

 フフン、とあまり無い胸を張る。

 その仕草があまりにもうちの犬と似ていたから、とりあえず撫でてやることにした。
 そうしたら本ちゃんはえへへ、と照れた声を出して気持ち良さそうに目を細める。

 俺の長年のなでなでテクは間違っていなかった!

「ふう。それで、スケ方はどうやったら復活するんだ?」
「それにDPを使うつもりだったのですよ……まあ、最悪放っておいてもいいです」
「じゃ、放置で」

 バイバイ。お前のことは忘れねえぜ。
 いつか復活したらカルシウム沢山摂取させてあげるからな。

 と、放置したがなんかスラちゃんが運んで玉座に座らせていた。
 まあいいや。





 ◆ ◆ ◆



「いやぁ、もう。ダミアンさんったらどこいっちゃったんスかね」

 ブツブツ呟いている誰かが来た。

 玉座の間におじさんから頂いた回復薬ポーションと衣服を置いておいて、俺は洞窟に横になる。

「あーもう。雨降ってきっちゃったッス」

 いいね。うちのダンジョンに入ってくれそうだ。
 俺の狙いは人里の情報を得ること。せっかくダンジョンっぽさを無くしたし、ここで暇潰しをしている人のフリをして色々聞き出そうと考えているのだ。

「わっ、すみません。ここで雨宿りさせていただいてもいいッスか?」

 洞窟に入ってきたのはさっき殺したおじさんよりは小柄で、歳も若い男だった。
 服装や腰に剣を刺しているところを見るに、おじさんの連れとかそういうやつだろう。

「いいですよ」

 できるだけ相手に警戒心を抱かせないために穏やかな空気を醸し出す!
 うおおおお!!

「あ、じゃあ失礼するッス」
「どうぞー」

 ……沈黙。

 それに何やら相手が俺をチラチラと見てきて落ち着かない。

「そういえば、ダミアンっていう名前の剣士を知りませんッスか? 僕とここら辺散策してたんスよ」
「さあ、分からないなあ」
「へ、へー。ちょうどあなたが持ってるような剣を持ってたんですよ、ね」

 なるほどー。
 これは確かに。俺おじさんからもらった剣そのまま腰に刺してるんだった。

「こんな感じの剣ってどこで作られてるか知ってるかい?」
「えー、ダミアンさんはエペーヴル・マシーヌにまで行って作ってもらったって言ってたッスね」
「そう、そのエペーヴル・マシーヌで有名な鍛冶師に作ってもらったんだろう。その人は己の持つ黄金比でしか剣を作らない人でね。作品がよく似ることで有名なんだ」
「職人さんのこだわりってやつッスか。すみません、ちょっと誤解してたかも」

 セーフ。

 手に汗握る展開だった。中々に強烈な攻めで、思わずぶん殴りたくなった。
 ……それとも一発殴ってみるか?
 うーん。

「――そういや、多分冒険者さんッスよね。どんな依頼でここまで?」

 ナイス。超ベストタイミング。君のおかげで俺は自我を保てた!
 でも質問は最悪だぜ。
 ここは華麗に受け流そう。

「な、何だったっけー。そ、そういう君はどこから来たんだい?」
「えぇ……」

 なんでかドン引きされた。
 そしてお相手はコホン、と咳払いをして口を開く。

「一番最寄りの街のモンテテール・アドリアンッスよ」
「ふーん」
「なんすかその反応……」

 一番近くの街はモンテテール・アドリアン、と。

 相手をチラリと見る。

 そうすると俺の視線に気づいたのか、相手も視線で俺に返事をした。

 その目はいぶかしげで明らかに俺を疑っている目だった。

 簡単には騙されてくれないらしい。

 ……なら、だ。こちらにも一応の策はある。

「おっ、雨はやんだな。じゃあ俺モンテテールに行くから。アディオス!」
「いや、ぜんっぜんやんでないッスよ!?」
「あー、後そこの奥行くとある扉は絶対触んなよー。マジでやばいから」

 さて、戦略的撤退だ。

 少々無理があったかもしれないが、まあ勝てればいいのよ。ハハハ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

世界変革のすゝめ ~我が物顔で世界を害すヒト種よ、一回引っ込め~

大山 たろう
ファンタジー
 全能神は、飽き飽きしていた。 世界をいくつか作ったが、その世界のいずれも、サルが進化を遂げ、ヒトと呼ばれるまでに成長し、世界のあちらこちらに広がって、星という一つの枠さえ超えだした。  ヒトが食物連鎖から抜け出し、完全とはいかないものの、星の征服者となったこの世界。動物の進化が見込めるわけではなく、せいぜいがウイルス進化程度。変わらない、そんな世界。  それを変えるべく、神はある男を呼び出した。そして権能の一部を委託した。    そして二人は、世界を変革する。 ※小説家になろう様にも掲載しています ※『魔力極振りの迷宮探索』をお読みいただけると、なおお楽しみいただけると思います。 ※多量のネタバレを含みます、他の作を読む予定がある方は先にそちらをどうぞ。 ※ ※1とついた話は、前書きを読んだうえで、お進みください

処理中です...