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オウムの話 2章
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携帯に、演劇部で私の二学年上だった京宮さんから連絡があったのは
そんな時だった。
ファミレスで待ち合わせして、近況を話してるうちに、私は金銭的に窮地に
陥っている事を話し、何かいいバイトがないか京宮さんに聞いてみた
「仕事・・・無くはないわ。」
「ありますか? じゃあもし良かったら、紹介してもらえませんか?」
「いいけど。ちょっと黒い所だよ」
「ひょっとして・・・・風俗とかですか?」
眉間に皺の寄った私を見て、京山さんは「違うわよ」と笑った。
「それじゃあ紹介する前に一つ聞いていい? あなた、もう一回演技を
やる事って出来そう?」
「それって、どこかの研究生とかそういうのですか?」
俳優養成所や劇団の研究生になれるという名目で、‘‘登録料‘‘でお金を集める
団体もある。そういう勧誘的な話かと疑った。私がプロの役者になって演技で
金を稼げるなんて無理だろうと思っていたから。
「違う違う。そういう勧誘みたいなもんじゃないわよ。」
また笑った京宮さんは、ズイっと身体を前のめりにしてきて私に近づき
「ちょっと違うのはね、演技するのはお客さんの前じゃなくて、
ターゲットの前なのよ」
京宮さんに教えてもらったURLを読み込むと、いきなり個人情報の入力画面
になった。でも名前とか住所とかではなくて、メールアドレスと呼び名を入力する
欄があるだけだ。
呼び名は「オウム」にした。
入力してしばらくすると、今度はメールが着た。セリフが書いてあって、それを
読んだ声を録音して、下のURLのボックスに入れろ。と指示が書いてある。
私は久しぶりに発声練習をしてから、少し緊張しながらセリフを読んだ。
「どうも。兄がいつもお世話になっております。おじの遺産に関しての
話ですよね?ええ。聞いてます。実は、ちょうど私の大学の同じゼミだった
友達が、弁護士になって事務所に勤めているんですよ。だから彼から
説明してもらった方が、法的視野からも分かると思いますので」
三日後、知らない番号から電話があった。
採用した事。演じる設定や名前は事前にメールが来る事。翌日の仕事という感じで
急に連絡がくる場合があるので、他のバイトは全て辞める事。報酬は電子マネーで
支払われる事。衣装や小道具が必要な場合はメールする事。
「それじゃあよろしく。オウムさん」とその電話相手の女性は切ろうとするので、
慌てて、そちらの会社はなんて名前なんですかと早口で聞いた。
聞いて無いんですか?と平坦なトーンで相手に逆に尋ねられた。
ええまぁはい。と曖昧に答えると、
「こちらは、「おうディション」と呼ばれています。
おうが平仮名で、その後は全部カタカナです」
最後の‘す‘を言い終えたかと思うと、電話はブチっと切られた。
それから一週間後の昼下がり、私はどこだか知らない大きな家の中で、
「実家にいながら証券会社で働く妹」として、メガネをかけたハンサムの兄さんと
会話していた。
さっき初めて会って挨拶した、兄さんの隣にいる少し地味な女がターゲットだ。
キッチンから名前も知らない母親役の女が、クッキーが焼けましたよとにこやかに
お皿を持ってくる。
こんなのちょろすぎる。
ただ、その地味女の喜ぶような妹の仮面をかぶって演じるだけだ。兄の連れてきた
婚約者に少し嫉妬して、化粧品はどんなの使ってるかとかどんな所で遊んでるのとか
ちょっと意地悪な質問を投げてやる。彼女は私に不快感を持ちつつも、恋人の家族に
あまり好意的に受け入れられないというリアリティーを喜んで受け入れるだろう。
半日の時間を使っただけで、五万円の報酬が入った。
他のバイトはやめろと言った意味が、その時やっと分かった。
それから、私はたくさんの仮面をつけた。
医者。弁護士。女子大生。シングルマザー。主婦。妹。姉。恋人。愛人。一人娘。
私は、どんな時でも、ターゲットの望みを読み取る事に心を集中させた。
人間は、先入観の塊だ。初めて会った人に対して、自分がこうだと感じたイメージ
通りの人格や性格だと分かると安心する。自分の勘が当たっている。
だからこの場では自分は大丈夫だろうと思い込む。自分ほど世間を渡る術を
知っている人間はいないんだと自分に言い聞かせる。
実際は、大きな海の端っこの砂浜でちょこちょこ遊んでるだけなのに。
独り暮らししている娘を心配した実家の母が、私の勤め先に挨拶に行きたいと
言い出した。
そんなの迷惑だと何度も断ったのだが、誰の入れ知恵だか、都会で独りで暮らす
若い女性の何割かは売春や風俗で生計を立てている可能性がある。と言われたので
心配なんだそうだ。
結局私も売り言葉に買い言葉みたいになってしまって、
「そんなに心配なら来ればいいじゃない!」と携帯電話に吐き捨て、
来月の最初の週末にこっちに来て、週明けの月曜日に私の職場に挨拶に来ることに
なってしまった。
さあどうしよう。今からどこかにバイトに入って、店長やら店主やらに事情を
説明して嘘をついてもらおうか。
私がニセ会社の現場で本番が始まる前に困ってため息をついていると、
おうディションで同じ仕事をやってる女性がどうしたのと声をかけてくれた。
最初の現場で母親役をやっていた女性だ。
私がかいつまんで親が来ることを説明すると、
「だったら、アドバイザーに電話すればいい」とある電話番号を教えてくれた。
「アドバイザー」は「おうディション」の中のよろず相談受付みたいな部署
だそうだ。
所属している私達が、こういう仕事をしているのがバレて脅されている。ヒモ男に
付きまとわれる。とかいう悩み事から、保育園に子供を迎えに行く人がいない。
子供のサッカーボールが無くなった。っていう個人的な困りごとまで聞いて
解決してくれる部署だ。
私は早速もらった番号に電話をかけてみると、3コールで
「はい。アドバイザーです」と冷淡な女の声がした。
その声は、いつも仕事の依頼をしてくる女性と同じ声だ。
私が実家の母が来るので困る事を話すと、
「分かりました。それでは、その当日に会社を作りましょう。オフィス、
会社社長、従業員、全てこちらで準備します。費用は初回の相談なので
20%オフが適用されて、15万です」と、まるでパソコンの相談デスク
みたいに淡々と解決策を読み上げた。
月が替わった月曜日の朝、私がビルの3階にある「経南マシナリー」と表記された
ドアを開けると、五台の机とパソコンが置かれた狭めのオフィスには、いかにも長年
ここにいるかのような年齢の女性事務員と、ネクタイの上に作業着を着た三名の
男性職員がいた。
私が事前の打ち合わせ通りのそれぞれの名前を言って紹介すると、奥のドアから
人懐こそうな小柄な男性が出てきて、母を見るなり
「あ、〇○さんのお母さんですか?どうもどうもお初にお目にかかります。
私、一応ここの社長をやってます金子健司という者です。いやー、〇○さんが
うちに入って二年ですかね、こんな安い給料でアレコレとこき使ってしまって、
お母さんが心配されるのも本当に致し方ない事と思います。ただ、ただですね、
本当によくやってくれているんですよ~。仕事頼んだら、もうびっくりする
くらいの速さで片付けてくれています。ですからお母さん、本当にがんばって
よくやってくれてますから。本っ当に他のみんなも助かるって言ってますから。
ご安心してください。あ、お菓子ですか?地元の方の?うわー美味しそうだな。
いやー、お母さんすみません。本来なら、彼女にお世話になっている社長である
私から、菓子折りの一つでもお送りしなきゃと思っていたんですが、
逆にこんなにしてもらって、本当にすみませんです。
なあみんな、今日のおやつ、楽しみだなこれ。うん。美味しそうだ。」
母は、ああいういい社長さんの所でちょっとでも長く勤めなさいよ。
ちょっと嫌な事あったくらいで辞めたとか言わないで。と言い残して
実家に戻っていった。
母が帰った翌日、ひょっとしてと思い再び「経南マシナリー」のビルに
行ってみたが、オフィスがあった部屋はもぬけの殻で何も無かった。
おうディションで一人の俳優として働いているうちに、私もターゲットを
嵌めてみたくなった。
自分でシナリオを描き、俳優に払う報酬や小道具とか場所のレンタル料や
おうディションへ払うロイヤリティなどの必要経費を差し引いたあがりは、
全部自分のものにする事ができる。
最初はよくある結婚詐欺をやってみた。
かなり年上の男性が好みという設定にして、もういい年になって色恋沙汰は
ほとんどあきらめたような男をターゲットに絞った。
結局、そのターゲットからは七十万円引っ張れたけど、必要経費も同じくらい
かかってしまって、収支はトントンだった。
でも最初の仕事で私はいろんな事を学んだ。
七十万円くらいの被害だと、男はプライドもあって訴えない事とか、
やっぱり自分の考えたプランで嵌めるのはめちゃくちゃ楽しいという事とか。
あと学んだことは、ここでは言わない。
秘密だ。
真似されちゃ困るから。
「オウムのプランはユニークだ」って周りが言い出した。
一度のプランに入ってくる金は、そのへんでスーツ着て気取って歩いている
OLさんの給料の何か月分なんだろうかと考えるくらいになった。
私は、稼いだ金を、大好きな「阿部真央」というシンガーソングライターに
つぎ込んだ。
阿部真央は、ロックだ。
浮気した旦那と離婚した事をシャウトして、次の曲では純真な男の子の恋を
バラードする。かと思うと、クソ男しかいねえじゃねえかよって愚痴る。
もう、私にとっては全てが最高だった。もしかしたら、仮面を被り続けている
私は、自分の思ったことを全部歌に載せて素直に歌う阿部真央がうらやましかった
のかもしれない。
「オウムさぁ、そんな女の歌手にどっぷりつぎ込むくらいなら、
せめて男の歌手につぎ込んだ方がいいんじゃないの?」
いきなり失礼な感じで言ってきたコイツは、キツネだ。
自分だけの人脈ネットワークを持っていて、鍵開け名人やら情報屋やら警察内部に
詳しい奴やら暴力手段が得意なお人やらどんな人間でも紹介してくれる。
美人なんだけど性格は悪い。
前に、じゃあ阿部真央に会わせてよってお願いしたら、
「たぶん出来るけど、なんか気分的にイヤ」って断ってきたの。
「じゃあアンタは私が男の歌手好きならいいの?それって性差別じゃない?」
「そういう事言ってんじゃないのよ。オウムもまぁまぁイイ女なんだからさ、
カレシとか作ろうとしたら?」
マ、私には劣るけどネ。ってキツネは付け加えて、フンって鼻で笑った。
彼氏か・・・私は前ほど多くはなかったが夜の街に飲みに出ていて、話が合って
好みな男と一夜を過ごす事もあった。
でもそんなのほんの遊び。その時につけたその男好みの仮面を、金にもならない
のに一週間後にまた付ける気にはなれなかった。
田所喜三雄と会ったのは、そんな頃だった。
たしか、この町に来ていた演劇部の後輩が、人数合わせで他に誰もいなくて私に
声を掛けたコンパだった。
私は適当に仮面をかぶり、場を繕って終わらせようと思っていた。
テーブルの向かい側に並んだ男性陣のすみっこに、田所喜三雄はいた。
ずんぐりむっくりな身体で、メガネをかけて「ども、田所喜三雄です」とボソボソと
喋ると、隣にいた爽やかヤロウが、こいつコミュ障でさ、女の子との喋り方
分からないから連れてきたの。みんな勉強させてやってよ。と明らかにバカにした
口調で説明した。
時間が経ってそれぞれが席を移動していくと、やはりと言うか田所はポツリと
一人になっていた。私は何人かのくだらない話の輪に入っていたりしたが、
目の片隅に田所の動きを観察していた。
田所はムッツリ面白くなさそうに、チビチビとビールを飲んでいる。
面倒だけど、私は今日はいいお相手を探すために来たんじゃなくて、このコンパを
楽しく終わらすために来た。カワイイ後輩の為に。ここは私が仮面をかぶって、
この男も少しでも楽しませてあげよう。と決意した。
私は田所の隣に座って、にっこり微笑んだ。
さあて、お仕事お仕事。金になんないけどね。
こういう少しコミュニケーションに難がある男は、ちょっと優しく合わせてやれば
すぐに気を許すのだ。
「田所さん、お仕事は何をやられているんですか?」
「あ、事務をやってます。小さい会社ですけど」
「事務ですか? じゃあワードやエクセルとか得意なんですか?」
「ま、まぁ、人並みには・・・」
「すごいですね。私、エクセルの表計算がどうしてもうまくできないんですよ。
あれってどうやったら自動的に計算するんですか?」
田所はたどたどしくだが出来るだけ分かりやすくしようと心掛けながら、表計算の
やり方を説明してくれた。私はもういろんな男から何度も聞いた事がある説明を、
いかにも初めて聞いたかのような顔で頷いた。
「とても分かりやすかったです。ありがとうございます」
「ま、まぁ、職場でも、新しく入った子とかに教えてるんで」
彼はそう言って、私を見て照れ臭そうにエヘヘと微笑んだ。
案の定と言おうかやっぱりと言おうか、田所は酒負けして、店を出た所で地面に
座って動けなくなってしまった。
後輩や男たちは盛り上がって、カラオケカラオケ、と騒いでいた。だから、田所は
私が面倒を見るからと後輩たちを先に行かせた。
正直言うと、カラオケボックスで騒ぎながら空気に合わせた仮面を被るよりは、
酔っ払いの介抱をする方がマシだ。少し酔いが醒めたら、最寄りの駅に一緒に歩き、
気を付けてねと見送れば、カラオケよりも早く帰れる。
とりあえず、自動販売機で水を買って田所に持たせると「ずびばせん」と小声で
言い、ペットボトルをチビチビと飲むとまたうつむいてしまった。
田所さん大丈夫?と優しく声をかけると、何かを小声で言っている。
エ?なに?と片方の耳を近付けてみると、くぐもった声が聞こえた。
「なんで・・・いつも仮面を被っているんですか?」
それから、やっと酔いが冷めてきた田所を歩かせて、近くの公園のベンチに
座ったが、私の鼓動は早くなっていた。その理由は、酔っ払いに肩を貸して歩いた
からだけでは無かった。
仮面がバレた。しかも、こんな鈍そうな男に。なぜ?私が何かミスをした?
いいえ、恐らく完ぺきだったはず。パソコンに疎い女が、男が持っている知識を
教えてもらう顔は出来たはず。
じゃあ、なぜバレた? と言うより、この男は何者なの?
ひょっとして「おうディション」の一人? いや、そんな気配はしなかったわ。
じゃあ・・・
ベンチに座って俯いていた田所が、やっと顔を上げて「あ、なんかすみません」と
ペコリと頭を下げてきたのは、それから30分ぐらいしてからだ。
私は、さっき仮面がどうとか言ってたけど、あれってどういう意味なの?と少し
詰問するような口調で聞いた。
田所は、ええとあの・・・とモゴモゴと言い淀んでいる。
これはやっぱり「おうディション」か?と私がしくじった苦味を感じていると、
目の前の男は、いきなり立ち上がると、直立不動になり、す、すみません!と直角に
頭を下げた。
「ぼ、僕みたいな男の話を楽しそうに聞いてるなんて、絶対この人は嫌だけど
無理してやってるんだろうなと思ってたのが口から出ちゃいました。
失礼ですよね。僕いつもこうなんです。いるだけで周りを不愉快にさせるのに、
またこんな事考えてもっと不愉快にさせちゃて。
本っっっっ当に申し訳ありません」
あっけに取られてしまった。
なんだこの男は。
純朴太郎君か。
それから、田所に、不愉快とかそんな事は無い。あなたの話は聞いていて楽しい。
そう私なりの言葉で伝えて、ベンチに並んで座って、私は田所の話を聞いた。
NPO法人に勤めていて、3年ぐらい長野県の山奥で、知的障碍者と一緒に
20人位で自給自足の生活をしていた事。そこでは米や野菜を育てたが、
ヤギの世話が一番楽しかった事。ジャガイモはいいがキャベツは虫に食われて
育てるのが難しかった事。テレビはNHKとBSしか映らなかった事。水道からは
湧き水が出ていた事。近くのコンビニまで山道歩いて片道1時間半かかった事。
「そんな中で、暇な夜はどうやって過ごしていたの?」
飲み歩くのが好きな私には想像が出来ない。
「あ、暇な時は、これをやってました」と、肩掛けバッグに手を突っ込み、
ゴソゴソとなにか丸みのあるものを取り出した。
これなに?と聞くと、ああ、オカリナです。そう照れ笑いしながら答えた。
田所は、出っ張った部分に口を当てると、おもむろに指を動かして吹き始めた。
最初は何の曲を演奏しているのか分からなかった。
でもこのゆったりとした優しい音を、私は聞いたことがある。いや、聞いたことが
あるどころじゃない。もう、中毒みたいに聞いている音楽だ。
「この曲って・・・ひょっとして、‘‘母である為に‘‘ 阿部真央の?」
「あ、そうです。僕の母親が、僕の家シングルマザーなんですけど、
母が大好きで聞いていたんです」
一曲の最初から最後まで全部が一人息子に向けた歌だ。心配と不安と愛と、
一人の母として息子に向けたいろんな感情が溢れている曲で、私の大好きな曲
でもある。
あれ?やっぱりこの男は「おうディション」の一人で、ひょっとして私を型に
ハメようとしてきているのかもしれない。
「なにか、嫌だったですか?」
微妙な表情をみて、田所はオカリナをやめて不安そうに聞いてきた。
私は首を振り、「いいから、続けて」と言うのが精いっぱいだった。
涙がこぼれそうだった。
こんな時でもハメるとかハメられないだとか疑っている自分に。
そんな時だった。
ファミレスで待ち合わせして、近況を話してるうちに、私は金銭的に窮地に
陥っている事を話し、何かいいバイトがないか京宮さんに聞いてみた
「仕事・・・無くはないわ。」
「ありますか? じゃあもし良かったら、紹介してもらえませんか?」
「いいけど。ちょっと黒い所だよ」
「ひょっとして・・・・風俗とかですか?」
眉間に皺の寄った私を見て、京山さんは「違うわよ」と笑った。
「それじゃあ紹介する前に一つ聞いていい? あなた、もう一回演技を
やる事って出来そう?」
「それって、どこかの研究生とかそういうのですか?」
俳優養成所や劇団の研究生になれるという名目で、‘‘登録料‘‘でお金を集める
団体もある。そういう勧誘的な話かと疑った。私がプロの役者になって演技で
金を稼げるなんて無理だろうと思っていたから。
「違う違う。そういう勧誘みたいなもんじゃないわよ。」
また笑った京宮さんは、ズイっと身体を前のめりにしてきて私に近づき
「ちょっと違うのはね、演技するのはお客さんの前じゃなくて、
ターゲットの前なのよ」
京宮さんに教えてもらったURLを読み込むと、いきなり個人情報の入力画面
になった。でも名前とか住所とかではなくて、メールアドレスと呼び名を入力する
欄があるだけだ。
呼び名は「オウム」にした。
入力してしばらくすると、今度はメールが着た。セリフが書いてあって、それを
読んだ声を録音して、下のURLのボックスに入れろ。と指示が書いてある。
私は久しぶりに発声練習をしてから、少し緊張しながらセリフを読んだ。
「どうも。兄がいつもお世話になっております。おじの遺産に関しての
話ですよね?ええ。聞いてます。実は、ちょうど私の大学の同じゼミだった
友達が、弁護士になって事務所に勤めているんですよ。だから彼から
説明してもらった方が、法的視野からも分かると思いますので」
三日後、知らない番号から電話があった。
採用した事。演じる設定や名前は事前にメールが来る事。翌日の仕事という感じで
急に連絡がくる場合があるので、他のバイトは全て辞める事。報酬は電子マネーで
支払われる事。衣装や小道具が必要な場合はメールする事。
「それじゃあよろしく。オウムさん」とその電話相手の女性は切ろうとするので、
慌てて、そちらの会社はなんて名前なんですかと早口で聞いた。
聞いて無いんですか?と平坦なトーンで相手に逆に尋ねられた。
ええまぁはい。と曖昧に答えると、
「こちらは、「おうディション」と呼ばれています。
おうが平仮名で、その後は全部カタカナです」
最後の‘す‘を言い終えたかと思うと、電話はブチっと切られた。
それから一週間後の昼下がり、私はどこだか知らない大きな家の中で、
「実家にいながら証券会社で働く妹」として、メガネをかけたハンサムの兄さんと
会話していた。
さっき初めて会って挨拶した、兄さんの隣にいる少し地味な女がターゲットだ。
キッチンから名前も知らない母親役の女が、クッキーが焼けましたよとにこやかに
お皿を持ってくる。
こんなのちょろすぎる。
ただ、その地味女の喜ぶような妹の仮面をかぶって演じるだけだ。兄の連れてきた
婚約者に少し嫉妬して、化粧品はどんなの使ってるかとかどんな所で遊んでるのとか
ちょっと意地悪な質問を投げてやる。彼女は私に不快感を持ちつつも、恋人の家族に
あまり好意的に受け入れられないというリアリティーを喜んで受け入れるだろう。
半日の時間を使っただけで、五万円の報酬が入った。
他のバイトはやめろと言った意味が、その時やっと分かった。
それから、私はたくさんの仮面をつけた。
医者。弁護士。女子大生。シングルマザー。主婦。妹。姉。恋人。愛人。一人娘。
私は、どんな時でも、ターゲットの望みを読み取る事に心を集中させた。
人間は、先入観の塊だ。初めて会った人に対して、自分がこうだと感じたイメージ
通りの人格や性格だと分かると安心する。自分の勘が当たっている。
だからこの場では自分は大丈夫だろうと思い込む。自分ほど世間を渡る術を
知っている人間はいないんだと自分に言い聞かせる。
実際は、大きな海の端っこの砂浜でちょこちょこ遊んでるだけなのに。
独り暮らししている娘を心配した実家の母が、私の勤め先に挨拶に行きたいと
言い出した。
そんなの迷惑だと何度も断ったのだが、誰の入れ知恵だか、都会で独りで暮らす
若い女性の何割かは売春や風俗で生計を立てている可能性がある。と言われたので
心配なんだそうだ。
結局私も売り言葉に買い言葉みたいになってしまって、
「そんなに心配なら来ればいいじゃない!」と携帯電話に吐き捨て、
来月の最初の週末にこっちに来て、週明けの月曜日に私の職場に挨拶に来ることに
なってしまった。
さあどうしよう。今からどこかにバイトに入って、店長やら店主やらに事情を
説明して嘘をついてもらおうか。
私がニセ会社の現場で本番が始まる前に困ってため息をついていると、
おうディションで同じ仕事をやってる女性がどうしたのと声をかけてくれた。
最初の現場で母親役をやっていた女性だ。
私がかいつまんで親が来ることを説明すると、
「だったら、アドバイザーに電話すればいい」とある電話番号を教えてくれた。
「アドバイザー」は「おうディション」の中のよろず相談受付みたいな部署
だそうだ。
所属している私達が、こういう仕事をしているのがバレて脅されている。ヒモ男に
付きまとわれる。とかいう悩み事から、保育園に子供を迎えに行く人がいない。
子供のサッカーボールが無くなった。っていう個人的な困りごとまで聞いて
解決してくれる部署だ。
私は早速もらった番号に電話をかけてみると、3コールで
「はい。アドバイザーです」と冷淡な女の声がした。
その声は、いつも仕事の依頼をしてくる女性と同じ声だ。
私が実家の母が来るので困る事を話すと、
「分かりました。それでは、その当日に会社を作りましょう。オフィス、
会社社長、従業員、全てこちらで準備します。費用は初回の相談なので
20%オフが適用されて、15万です」と、まるでパソコンの相談デスク
みたいに淡々と解決策を読み上げた。
月が替わった月曜日の朝、私がビルの3階にある「経南マシナリー」と表記された
ドアを開けると、五台の机とパソコンが置かれた狭めのオフィスには、いかにも長年
ここにいるかのような年齢の女性事務員と、ネクタイの上に作業着を着た三名の
男性職員がいた。
私が事前の打ち合わせ通りのそれぞれの名前を言って紹介すると、奥のドアから
人懐こそうな小柄な男性が出てきて、母を見るなり
「あ、〇○さんのお母さんですか?どうもどうもお初にお目にかかります。
私、一応ここの社長をやってます金子健司という者です。いやー、〇○さんが
うちに入って二年ですかね、こんな安い給料でアレコレとこき使ってしまって、
お母さんが心配されるのも本当に致し方ない事と思います。ただ、ただですね、
本当によくやってくれているんですよ~。仕事頼んだら、もうびっくりする
くらいの速さで片付けてくれています。ですからお母さん、本当にがんばって
よくやってくれてますから。本っ当に他のみんなも助かるって言ってますから。
ご安心してください。あ、お菓子ですか?地元の方の?うわー美味しそうだな。
いやー、お母さんすみません。本来なら、彼女にお世話になっている社長である
私から、菓子折りの一つでもお送りしなきゃと思っていたんですが、
逆にこんなにしてもらって、本当にすみませんです。
なあみんな、今日のおやつ、楽しみだなこれ。うん。美味しそうだ。」
母は、ああいういい社長さんの所でちょっとでも長く勤めなさいよ。
ちょっと嫌な事あったくらいで辞めたとか言わないで。と言い残して
実家に戻っていった。
母が帰った翌日、ひょっとしてと思い再び「経南マシナリー」のビルに
行ってみたが、オフィスがあった部屋はもぬけの殻で何も無かった。
おうディションで一人の俳優として働いているうちに、私もターゲットを
嵌めてみたくなった。
自分でシナリオを描き、俳優に払う報酬や小道具とか場所のレンタル料や
おうディションへ払うロイヤリティなどの必要経費を差し引いたあがりは、
全部自分のものにする事ができる。
最初はよくある結婚詐欺をやってみた。
かなり年上の男性が好みという設定にして、もういい年になって色恋沙汰は
ほとんどあきらめたような男をターゲットに絞った。
結局、そのターゲットからは七十万円引っ張れたけど、必要経費も同じくらい
かかってしまって、収支はトントンだった。
でも最初の仕事で私はいろんな事を学んだ。
七十万円くらいの被害だと、男はプライドもあって訴えない事とか、
やっぱり自分の考えたプランで嵌めるのはめちゃくちゃ楽しいという事とか。
あと学んだことは、ここでは言わない。
秘密だ。
真似されちゃ困るから。
「オウムのプランはユニークだ」って周りが言い出した。
一度のプランに入ってくる金は、そのへんでスーツ着て気取って歩いている
OLさんの給料の何か月分なんだろうかと考えるくらいになった。
私は、稼いだ金を、大好きな「阿部真央」というシンガーソングライターに
つぎ込んだ。
阿部真央は、ロックだ。
浮気した旦那と離婚した事をシャウトして、次の曲では純真な男の子の恋を
バラードする。かと思うと、クソ男しかいねえじゃねえかよって愚痴る。
もう、私にとっては全てが最高だった。もしかしたら、仮面を被り続けている
私は、自分の思ったことを全部歌に載せて素直に歌う阿部真央がうらやましかった
のかもしれない。
「オウムさぁ、そんな女の歌手にどっぷりつぎ込むくらいなら、
せめて男の歌手につぎ込んだ方がいいんじゃないの?」
いきなり失礼な感じで言ってきたコイツは、キツネだ。
自分だけの人脈ネットワークを持っていて、鍵開け名人やら情報屋やら警察内部に
詳しい奴やら暴力手段が得意なお人やらどんな人間でも紹介してくれる。
美人なんだけど性格は悪い。
前に、じゃあ阿部真央に会わせてよってお願いしたら、
「たぶん出来るけど、なんか気分的にイヤ」って断ってきたの。
「じゃあアンタは私が男の歌手好きならいいの?それって性差別じゃない?」
「そういう事言ってんじゃないのよ。オウムもまぁまぁイイ女なんだからさ、
カレシとか作ろうとしたら?」
マ、私には劣るけどネ。ってキツネは付け加えて、フンって鼻で笑った。
彼氏か・・・私は前ほど多くはなかったが夜の街に飲みに出ていて、話が合って
好みな男と一夜を過ごす事もあった。
でもそんなのほんの遊び。その時につけたその男好みの仮面を、金にもならない
のに一週間後にまた付ける気にはなれなかった。
田所喜三雄と会ったのは、そんな頃だった。
たしか、この町に来ていた演劇部の後輩が、人数合わせで他に誰もいなくて私に
声を掛けたコンパだった。
私は適当に仮面をかぶり、場を繕って終わらせようと思っていた。
テーブルの向かい側に並んだ男性陣のすみっこに、田所喜三雄はいた。
ずんぐりむっくりな身体で、メガネをかけて「ども、田所喜三雄です」とボソボソと
喋ると、隣にいた爽やかヤロウが、こいつコミュ障でさ、女の子との喋り方
分からないから連れてきたの。みんな勉強させてやってよ。と明らかにバカにした
口調で説明した。
時間が経ってそれぞれが席を移動していくと、やはりと言うか田所はポツリと
一人になっていた。私は何人かのくだらない話の輪に入っていたりしたが、
目の片隅に田所の動きを観察していた。
田所はムッツリ面白くなさそうに、チビチビとビールを飲んでいる。
面倒だけど、私は今日はいいお相手を探すために来たんじゃなくて、このコンパを
楽しく終わらすために来た。カワイイ後輩の為に。ここは私が仮面をかぶって、
この男も少しでも楽しませてあげよう。と決意した。
私は田所の隣に座って、にっこり微笑んだ。
さあて、お仕事お仕事。金になんないけどね。
こういう少しコミュニケーションに難がある男は、ちょっと優しく合わせてやれば
すぐに気を許すのだ。
「田所さん、お仕事は何をやられているんですか?」
「あ、事務をやってます。小さい会社ですけど」
「事務ですか? じゃあワードやエクセルとか得意なんですか?」
「ま、まぁ、人並みには・・・」
「すごいですね。私、エクセルの表計算がどうしてもうまくできないんですよ。
あれってどうやったら自動的に計算するんですか?」
田所はたどたどしくだが出来るだけ分かりやすくしようと心掛けながら、表計算の
やり方を説明してくれた。私はもういろんな男から何度も聞いた事がある説明を、
いかにも初めて聞いたかのような顔で頷いた。
「とても分かりやすかったです。ありがとうございます」
「ま、まぁ、職場でも、新しく入った子とかに教えてるんで」
彼はそう言って、私を見て照れ臭そうにエヘヘと微笑んだ。
案の定と言おうかやっぱりと言おうか、田所は酒負けして、店を出た所で地面に
座って動けなくなってしまった。
後輩や男たちは盛り上がって、カラオケカラオケ、と騒いでいた。だから、田所は
私が面倒を見るからと後輩たちを先に行かせた。
正直言うと、カラオケボックスで騒ぎながら空気に合わせた仮面を被るよりは、
酔っ払いの介抱をする方がマシだ。少し酔いが醒めたら、最寄りの駅に一緒に歩き、
気を付けてねと見送れば、カラオケよりも早く帰れる。
とりあえず、自動販売機で水を買って田所に持たせると「ずびばせん」と小声で
言い、ペットボトルをチビチビと飲むとまたうつむいてしまった。
田所さん大丈夫?と優しく声をかけると、何かを小声で言っている。
エ?なに?と片方の耳を近付けてみると、くぐもった声が聞こえた。
「なんで・・・いつも仮面を被っているんですか?」
それから、やっと酔いが冷めてきた田所を歩かせて、近くの公園のベンチに
座ったが、私の鼓動は早くなっていた。その理由は、酔っ払いに肩を貸して歩いた
からだけでは無かった。
仮面がバレた。しかも、こんな鈍そうな男に。なぜ?私が何かミスをした?
いいえ、恐らく完ぺきだったはず。パソコンに疎い女が、男が持っている知識を
教えてもらう顔は出来たはず。
じゃあ、なぜバレた? と言うより、この男は何者なの?
ひょっとして「おうディション」の一人? いや、そんな気配はしなかったわ。
じゃあ・・・
ベンチに座って俯いていた田所が、やっと顔を上げて「あ、なんかすみません」と
ペコリと頭を下げてきたのは、それから30分ぐらいしてからだ。
私は、さっき仮面がどうとか言ってたけど、あれってどういう意味なの?と少し
詰問するような口調で聞いた。
田所は、ええとあの・・・とモゴモゴと言い淀んでいる。
これはやっぱり「おうディション」か?と私がしくじった苦味を感じていると、
目の前の男は、いきなり立ち上がると、直立不動になり、す、すみません!と直角に
頭を下げた。
「ぼ、僕みたいな男の話を楽しそうに聞いてるなんて、絶対この人は嫌だけど
無理してやってるんだろうなと思ってたのが口から出ちゃいました。
失礼ですよね。僕いつもこうなんです。いるだけで周りを不愉快にさせるのに、
またこんな事考えてもっと不愉快にさせちゃて。
本っっっっ当に申し訳ありません」
あっけに取られてしまった。
なんだこの男は。
純朴太郎君か。
それから、田所に、不愉快とかそんな事は無い。あなたの話は聞いていて楽しい。
そう私なりの言葉で伝えて、ベンチに並んで座って、私は田所の話を聞いた。
NPO法人に勤めていて、3年ぐらい長野県の山奥で、知的障碍者と一緒に
20人位で自給自足の生活をしていた事。そこでは米や野菜を育てたが、
ヤギの世話が一番楽しかった事。ジャガイモはいいがキャベツは虫に食われて
育てるのが難しかった事。テレビはNHKとBSしか映らなかった事。水道からは
湧き水が出ていた事。近くのコンビニまで山道歩いて片道1時間半かかった事。
「そんな中で、暇な夜はどうやって過ごしていたの?」
飲み歩くのが好きな私には想像が出来ない。
「あ、暇な時は、これをやってました」と、肩掛けバッグに手を突っ込み、
ゴソゴソとなにか丸みのあるものを取り出した。
これなに?と聞くと、ああ、オカリナです。そう照れ笑いしながら答えた。
田所は、出っ張った部分に口を当てると、おもむろに指を動かして吹き始めた。
最初は何の曲を演奏しているのか分からなかった。
でもこのゆったりとした優しい音を、私は聞いたことがある。いや、聞いたことが
あるどころじゃない。もう、中毒みたいに聞いている音楽だ。
「この曲って・・・ひょっとして、‘‘母である為に‘‘ 阿部真央の?」
「あ、そうです。僕の母親が、僕の家シングルマザーなんですけど、
母が大好きで聞いていたんです」
一曲の最初から最後まで全部が一人息子に向けた歌だ。心配と不安と愛と、
一人の母として息子に向けたいろんな感情が溢れている曲で、私の大好きな曲
でもある。
あれ?やっぱりこの男は「おうディション」の一人で、ひょっとして私を型に
ハメようとしてきているのかもしれない。
「なにか、嫌だったですか?」
微妙な表情をみて、田所はオカリナをやめて不安そうに聞いてきた。
私は首を振り、「いいから、続けて」と言うのが精いっぱいだった。
涙がこぼれそうだった。
こんな時でもハメるとかハメられないだとか疑っている自分に。
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