竜殺しの少女は平凡に過ごしたい

柊 レイ

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第二章 乗っ取られた国

71 作戦会議 その3

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 「でも、アーシャ……さんの能力って人に使えるのですか?」
 「呼びすてで結構ですよ──いえ、この能力は自分にしか使えませんわ」
 
 アーシャの呼び方を一瞬迷い、間が空いてしまったが本人が呼びすてでいいと言うのなら遠慮せず。
 確かに人の能力であればまた違うのかも知れない。『洗脳』はコノハの内面を無理矢理変えるものであって、彼女の能力─『姿身』は外見を変えるものだ。
 自分の魔力を纏うことは出来ないので自ら姿を変えることは不可能だが、魔法と能力は少し違う。
 魔力を使うかそうでないか。
 まぁ、それよりも人に使えるかだ。
 
 「じゃあ、無理じゃない?」
 
 使えないなら元も子もない。
 そう思ったのだが、アーシャはふるふると首を横に振った。
 
 「出来なくてもやりようはありますわ。──教皇が持っていた『身代わりの魔道具』を使えば」
 「……っ、それは……」
 
 怯んだ。
 彼女にとっては見たくもない道具だろう。
 確かに『身代わり』の魔道具は視界や魔力などを繋げることが出来る。
 それこそ、能力だって可能だ。
 
 「あら、もしかして無理かしら?」
 
 ことり、と悪戯気に首を傾げる彼女。
 コノハはそれを一瞥して強いな、と思った。
 瞳には怯えも後悔も見えない。
 これが、貴族というものなのだろうか。
 
 「……出来る、とは思うけど……私が貴女をどうにかするかもしれないよ?」
 
 その瞳を恥じないくらいの強気で返してみたのだが、少し意地悪かも知れない。
 そんなことを露知らず彼女は目を細めて笑った。
 
 「ふふっ、そんなことを言う時点で貴女はそんなことをしないでしょう?それにそうしたいなら今まで待つ必要なんて無いもの」
 「………分かった」
 
 どうやらコノハは彼女たちに思っている以上の信頼を持っていたらしい。
 未だに自分がやった偉大さをよくわかってはいないのだ。
 王族を助け、教会に乗り込んで聖女─アーシャを助けた。
 前者でもう勲章ものなのに、だ。
 ……やっぱり彼女はまだ子供なのである。
 
 ここまで言うのであれば、断る理由は無い。それに彼女に協力してもらった方が圧倒的に楽だ。
 
 「……本当にいいのですか?アーシャ」
 
 メリアローズが心配する声色で聞いたが、勿論、と言わんばかりにアーシャが頷いたのを見る。
 そういう彼女にも頼み事はしてあるのに、周りに気を配れるそういうところがいいところなのだろう。これは、民衆の支持もありそうである。
 そんなことを思いながらマジックボックスから『身代わり』の魔道具を取り出しているときにアーシャがふと思い出したような調子で言った。
 
 「あ、あとコノハ。貴女は私の家の養子になりなさい」
 「え?」
 
 内容は予想だにしていなかったことだが。
 虚を突かれて手が止まる。
 ラピスラズリの瞳を上げ、きょとんとした顔をアーシャに向けた。
 いや、可能か不可能かで言えば、コノハは貴族でも無い平民なので可能だが。
 何故、そこまで大事になった。
 というか、なんで入る必要がある。
 
 「平民だ、って舐められては堪ったものではないでしょう?貴族に取り込まれないようにするためにはそれが必要ですわ。英雄になるのですし」
 「………そうなの?」
 「ここの貴族は野心が高く、同時に愚かですからね──準備には準備、ですわ」
 「でも、そんなこと簡単に───」
 
 養子とか、すごく時間がかかりそうなのだが。
 そこで言葉を紡いだのは、アーシャではなく話を沈黙で聞いていたメリアローズだった。
 
 「……出来ます。そういうことはアーシャの家が一番ですし」
 「……?」
 
 ちょっと、理解が追い付かない。
 何か……アーシャの家が例外なのか?
 はてなハークを浮かべているコノハに説明する気はないのか、アーシャがパンっ手を叩いて無理矢理コノハの気を反らす。
 
 「まぁ、そんなことより早くしなければいけないでしょう?ジークは大丈夫なんですよね?」
 「………うん。魔道具も傍に置いておくし大丈夫だと思う」
 「なら、これからどうすればいいでしょうか?」
 
 頭の切り替えは得意な方だ。
 今までの話から最良の方法を探し出す。
 ぐるぐると思考の渦に入りながら、どうしてこんなことになったんだっけ?と今さらながらによぎった。……まぁ、もう遅い。
 なるようになるしかないだろう。
 出てきそうになった溜め息を押し殺し、結論を出す。
 
 「………私がローズを王都まで送る。そこからアーシャと一緒に行ってソルディリア家へ。養子?とかなんとかやってから、あとは王城で合流して王族の説得。……ローズ、遅くなるかも知れないから、先に話通してくれる?」
 「分かりました」
 
 「では、作戦開始ですね」
 
 窓から太陽の光が入ってきた。
 今日はまだ、始まったばかりである。
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感想 8

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みんなの感想(8件)

骸梟
2017.09.23 骸梟

柊さんよければ番号プリーズです!
招待とか諸々の細かい事は私が何とかするので!

解除
もみクロ
2017.09.23 もみクロ

臨時用の雑談ボードを作ったからそこでレイ達との会話出来なくなったら会話しよ

解除
木元うずき
2017.08.23 木元うずき

こんにちは!これから読ましてもらいますね!
柊さんの事だからとても面白いよね(プレッシャー)
では、楽しみながら読みますね!

2017.08.23 柊 レイ

感想ありがとうございます!

うおお……(プレッシャーに押されてる/笑)
プレッシャーかけられても私の語彙力は上がりませんよっ!( ・`д・´)キリッ(笑)
楽しく読んでもらえたらうれしいですっ!

解除

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