竜殺しの少女は平凡に過ごしたい

柊 レイ

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第二章 乗っ取られた国

70 作戦会議 その2

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 ごめんなさい、遅れました。


──────────────
 「───それを私が?」
 「うん。逆にこの状況じゃあローズにしか出来ないよ、頼まれてくれる?」
 
 メリアローズに頼んだことはそう難しいことではない。
 
 《住民の説得》──これに限る。
 
 つまりは住民の怒りを鎮め、これ以上の混乱を収めること。
 ……難しいことではないとは言ったが、この状況で住民たちが耳を貸すかどうか。
 それに王族を今回の原因と思い込み罵声を浴びせて来ることもあるかもしれない。
 だが、その分王族の言葉を聞きたがる可能性もある。
 一種の賭けだが、これしかない。
 
 「解りました。やってみます」
 
 意思の強い瞳を見て、覚悟があることに気づく。
 それに頷いて、コノハは取り出したペンで紙にサラサラと何かを書いていく。
 メリアローズが不思議そうに覗き込んでる横で書き終わるとその紙を彼女に差し出した。
 
 「…じゃあシナリオはこれで。これに矛盾が無いように話してくれると助かる」
 「…これで?」
 「国民が欲しがってるのは『安心』だから。自分たちに危険がないとわかってもらうのが一番なんだよ。だから、真実を少し書き換える」
 
 メリアローズがそれに目を通すと、確かにあやふやに誤魔化してある部分もあり、教皇の死に関しては全く書かれてはいない。
 また、一番のカギの『洗脳』──それは『強大な力の持つ魔物の仕業』になっていた。
 
 「……脅威が無いと分かればいいのということですか」
 「そういうこと」
 
 他にもいくつかの魔道具を彼女に渡しておく。如何せん時間がないので前に作った物だ。
 そこでふと、
 
 「じゃあこの『強大な力の持つ魔物』とやらは誰が倒したことに?」
 「え?」
 
 コノハが虚を突かれてお茶を飲もうとして動かした手が停止した。
 確かに、そこは国民が一番気になるところだろうが、元々そんな魔物は存在しないので何も考えてはいなかった。
 視線を彷徨わせて、
 
 「…………え、英雄さん……?」
 
 はぁ、とメリアローズがため息をついた。
 
 「……考えてなかったのですね」
 「だって、私は前には出れないから『英雄』にはなれないし…」
 
 自分に魔法がそんなことは全く問題じゃないのだが、それを今思っても詮無いことだ。
 
 「ならば、私の能力を使えばどうです?」
 
 そこで会話に割り込んで来たのは、今までジークのそばにいたアーシャだった。
 
 「あ、ジークはどう?」
 「落ち着いていますわ。ぐっすりです」
 
 ジークの状況を聞いてから、人数が一人増えた作戦会議が始まった。
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