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第二章 乗っ取られた国
60 謎と聖女
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「教皇になるには『神の導き』の能力が必要なんだよね?」
コノハは確認のために、書類を見ているジークに聞いた。
彼は彼女をちらりと見て、頷いた。
「ああ、それが最低条件だ。あ、ほら、これが今代の教皇の資料だな」
ジークは資料の中から一枚の紙を差し出した。
それを受け取り見てみると、能力の欄には『神の導き』とはっきり書かれている。
(…え、でも)
コノハは首を傾げる。
「あいつ、自分の能力『洗脳』だって言ってたよ?その力の出し方も魔力が動いていたわけじゃないから魔法じゃないと思うんだけど」
コノハが『視た』のだから、魔力の動きが、無いとは確信できる。
そこでメリアローズが、驚いて声を上げる。
「そんなこと有り得ません!あの人が教皇となるとき、王族が『神の導き』であることが確認するんです。あの魔道具が壊れていることはありませんでした」
「えっ?」
「ああ、俺達も同席していたから、それは間違いない」
さらに謎が深まった。
なら、『洗脳』の現象はどう説明したらいいのだろう。
本人が能力とあれだけ主張していたのだから、そう思っていたのだが。
そこにいるのだから確認したいところだが、人の能力を勝手に知る術は無いし、例え起きていたとしても、さっきと同じことしか言わないだろう。
むしろ、こんなに不自然なら──
「──どちらの主張も正しいと判断することも」
「…?どういうことだ?」
考えが口に出ていたらしい。
ジークが不思議そうに聞いてくる。
コノハは思案したままで、それに答える。
「元々は『神の導き』だった能力が、何らかの影響により『洗脳』に変わった、と考えればどちらの主張も合ってるでしょ?」
「……能力が変わる?」
「…まぁ、出来ないけどね、そんなこと」
「ですよね…」
能力は生まれたときから持っている一人一人の力である。
そう簡単に変えることなど出来るはずがない。
そう、三人で考えていると──
「………ん、んん」
「聖女が起きそうだね」
どうやら教皇よりも聖女の方が早く起きるようである。
身代わりの魔道具をジークが資料に目を通している時に軽く調べていたが、これに『洗脳』が仕込まれていた。
そう考えれば、今は操られていないはずである。
そうして、三人が見守る中、聖女の瞳が開いた。
その瞳には光があった。
「……………?」
彼女はパチパチとまばたきし、ぐるりと三人を見回した。
そして、視線はジークとメリアローズを交互に行き来し、はっ、と瞳が驚きでさらに開かれた。
すぐさま聖女はソファから立ち上がると、二人に向かって綺麗なお辞儀を見せた。
体勢を戻し、聖女がまず最初に言ったことは──
「ジーク様、ローズ様、お久しぶりです、私、アーシャ・ソルディリアですわ」
「「えっ!?」」
聖女──アーシャは自己紹介をしたら、なぜか二人に驚かれるという状況で、三人とも困っている中、
(……………?)
コノハは全く状況について行けていなかった。
─────────────
今週の更新予定。
月曜日、本編(これ)。
火曜日、ハロウィンスペシャル
前編:12時くらい
後編:20時くらい
水曜日、お気に入り200ありがとうございますスペシャル
今週は大量更新ですっ!
コノハは確認のために、書類を見ているジークに聞いた。
彼は彼女をちらりと見て、頷いた。
「ああ、それが最低条件だ。あ、ほら、これが今代の教皇の資料だな」
ジークは資料の中から一枚の紙を差し出した。
それを受け取り見てみると、能力の欄には『神の導き』とはっきり書かれている。
(…え、でも)
コノハは首を傾げる。
「あいつ、自分の能力『洗脳』だって言ってたよ?その力の出し方も魔力が動いていたわけじゃないから魔法じゃないと思うんだけど」
コノハが『視た』のだから、魔力の動きが、無いとは確信できる。
そこでメリアローズが、驚いて声を上げる。
「そんなこと有り得ません!あの人が教皇となるとき、王族が『神の導き』であることが確認するんです。あの魔道具が壊れていることはありませんでした」
「えっ?」
「ああ、俺達も同席していたから、それは間違いない」
さらに謎が深まった。
なら、『洗脳』の現象はどう説明したらいいのだろう。
本人が能力とあれだけ主張していたのだから、そう思っていたのだが。
そこにいるのだから確認したいところだが、人の能力を勝手に知る術は無いし、例え起きていたとしても、さっきと同じことしか言わないだろう。
むしろ、こんなに不自然なら──
「──どちらの主張も正しいと判断することも」
「…?どういうことだ?」
考えが口に出ていたらしい。
ジークが不思議そうに聞いてくる。
コノハは思案したままで、それに答える。
「元々は『神の導き』だった能力が、何らかの影響により『洗脳』に変わった、と考えればどちらの主張も合ってるでしょ?」
「……能力が変わる?」
「…まぁ、出来ないけどね、そんなこと」
「ですよね…」
能力は生まれたときから持っている一人一人の力である。
そう簡単に変えることなど出来るはずがない。
そう、三人で考えていると──
「………ん、んん」
「聖女が起きそうだね」
どうやら教皇よりも聖女の方が早く起きるようである。
身代わりの魔道具をジークが資料に目を通している時に軽く調べていたが、これに『洗脳』が仕込まれていた。
そう考えれば、今は操られていないはずである。
そうして、三人が見守る中、聖女の瞳が開いた。
その瞳には光があった。
「……………?」
彼女はパチパチとまばたきし、ぐるりと三人を見回した。
そして、視線はジークとメリアローズを交互に行き来し、はっ、と瞳が驚きでさらに開かれた。
すぐさま聖女はソファから立ち上がると、二人に向かって綺麗なお辞儀を見せた。
体勢を戻し、聖女がまず最初に言ったことは──
「ジーク様、ローズ様、お久しぶりです、私、アーシャ・ソルディリアですわ」
「「えっ!?」」
聖女──アーシャは自己紹介をしたら、なぜか二人に驚かれるという状況で、三人とも困っている中、
(……………?)
コノハは全く状況について行けていなかった。
─────────────
今週の更新予定。
月曜日、本編(これ)。
火曜日、ハロウィンスペシャル
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