竜殺しの少女は平凡に過ごしたい

柊 レイ

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第二章 乗っ取られた国

43 そこまでする?

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 コノハは早速魔道具を起動させる。
 『遠見』の魔道具から街の様子が映し出される。
 どうやらそこそこ大きい通りのようで、日が暮れているというのにけっこうな人通りがあった。
 人の話し声や雰囲気も伝わってくるようだ。
 まぁ、場所を王都に設定したので当たり前だが。
 その間、「………この場所から王都に設定するとかあり得ねぇ……魔力的に無理……」とジークがブツブツ言っていたが無視しておく。
 
 ちなみにこの魔道具の魔力はマジックボックスと同じように空気中にある魔力を取り込んでいる。
 そのため、使用者、コノハに何のデメリットも無いのだ。
 いや、そんなことよりも。
 
 「……特に変わった様子はありませんけど?」
 
 見たところ可笑しな行動をとっている人は居らず、普通の栄えた街、という印象を受ける。
 サンチェルド王国母国よりも街灯が多くあったりして夜なのに明るい感じや女性の服のスカートが長いこともあるが、それは国の文化の違いだろう。
 
 「……ええ、人々が可笑しくなるのは教会が絡んだ時だけですから。それも『聖女』がね」
 「やっぱり、教会関連ですか…」
 「そうです。ここまであからさまですし……、あ、あれは……」
 「何です?」
 「あそこにいるのは、恐らく教会関係者です」
 
 メリアローズが指差した方向をみる。
 すると真っ白なローブを着た人がやって来る。
 すっぽり覆われていて顔は愚か、性別すら判断することが出来ない。

 その人が街灯に照らされ、ライトアップされたようになる。
 元々暗いのにさらに目立つ。
 すると、その人に気づいたのか、目に見えて映し出された街の様子が変わる。
 彼らの会話に耳を澄ましてみると、
 
 『教会の方だ!!』
 『今日はどんなありがたいお言葉をっ!』
 『おーい!!近くにいるやつも呼んできてくれ!』
 『ねぇ、おかあさん、また“せいじょさま”のおことば、きけるのかな?』
 『そうね!静かにするのよ!』
 
 どんどん人が集まって来て、5分の経たないうちに白ローブの周りにさっきみていた倍以上の人がやって来る。
 そして、白ローブを囲むようにして、全員が見つめる。
 
 「………………うわぁ」
 
 コノハはそんな言葉しか出てこない。
 
 (………成る程、これは異常だ)
 
 この国の今の目の当たりにし、流石に一度もリトルーラ王国に来たことのない彼女でもそんなことは簡単にわかった。
 メリアローズはため息を吐きながら、
 
 「………この国のどこもこんな感じです。全身白ローブは聖女の周りにいるやつ、つまりは教会関係者なんです。それの目印となっています」
 「こいつらが来れば、どこも可笑しくなる。まさしくこんな風に」
 
 メリアローズの説明から、やっと現実逃避を止めて戻ってきたジークが続ける。
 コノハは二人の説明を聞きながら、街の人々の様子、それから白ローブを見る。
 彼女はすぐに人々の目が虚ろになっていることに気付く。
 
 「……………へぇ」
 
 そして、もうひとつ気づいたことがあった。
 魔道具から視線を外す。
 
 「………どうした?」
 
 ジークがコノハの視線に気付き、疑問符を浮かべた顔で聞く。
 メリアローズもそんな兄の声に気づいたのか、顔を上げる。
 さっきまでは人伝に聞いただけだし特に「面倒なことしてるなぁ」と思っているだけだった。
 だが、見て。
 権力を振りかざすやつほどろくなやつがいないと経験から知っている。
 そして、そういうやつほど嫌いなものはない。
 めんどいし。
 
 メリアローズとジーク二人に協力したのはそういうものを見せないからで、自己紹介の時だけ、ということもあった。
 これを頼んだのも、『命令』ではなく『お願い』だった。
 
 だが、白ローブを詳しく見て、怒りを通り越してあきれ果てた。
 そこまでするか、と。
 
 「あの白ローブ、『洗脳』の魔法がかかってる、魔道具です」
 
 コノハは呆れを隠さずに爆弾を投下した。



――――――――――――――
ペースを上げられないと発言したにも関わらず、お盆休みだっ!という感じで書き上げた、柊レイです(長い/笑)

ペースアップは……どうでしょう(。-∀-)
課題が終わり次第ですかね(笑)

できる限り頑張ります(°▽°)
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