上 下
51 / 81
第二章 乗っ取られた国

41 王族として

しおりを挟む
 「これは………」
 「全く同じだな」
 「コノハさん、これ、どこで?」
 
 コノハはこれまでのことを話す。
 ついでにあの光る魔法陣について知っているかを聞いてみた。
 
 「………聞いたことがないな。俺は第三王子だからあまり政治には関わらないし……」
 「私も、ですね。上兄様達や父様なら知っているかも知れませんが……。正気に戻れば聞いてみましょうか?」
 「全力で遠慮します」
 
 即答した。これ以上王族と関わりを持ちたくないので。
 国王とかもう会いたくない人物ナンバーワンである。
 少し前のめりにコノハが答えたため少し引きながらメリアローズは言う。
 
 「……まぁ、話を戻して。これも動物を使役する魔道具なのですか?」
 「そうですね。これと同じなのでその可能性が高いと思います」
 「ということは、教会が……」
 「動物を使って何かしようと企んでいるのでしょうね。この場合は“視界”だから、おそらく監視、それも私の家まで来てるのですから『世界』の監視――ですかね。まぁ、推測の域を出ませんが」
 
 暫し沈黙がおりる。
 これで教会は誰が見ても黒、何かしているのは間違いない。
 コノハは神の信仰心とか皆無なので教会が何していようが正直興味がない。
 だが、ここにいる王族二人は別だ。
 リトルーラ王国は宗教国家である。
 子供の頃から神の大切さ、信仰心を教えられると聞いたことがある。
 その神に近い教皇が国を貶めようと画策しているのだ。
 
 (ショックなのかな?)
 
 と思って二人を見たが、予想以上に何も思っていない。
 思えば最初から教皇を疑っていた。
 これは予想していたということだろうか。
 そしてジークが真剣な声で言う。
 
 「コノハ、頼む。この国をなんとかしてくれ!」
 「え」
 
 突然のことでコノハは驚いた。
 
 「私からもお願いします!」
 「………教会を潰すのいいんですか?」
 
 コノハはそれが気がかりだった。
 この国は神への信仰心が強い。教会を神に近づく聖域と考える人もいる。
 それを潰すのだから、葛藤とかないのかと。
 
 「確かに教会は神に近しい場所だ。しかし国民を危険に及ぼしているのは教会だ。そして我々は王族。国民を助けるのは王族の果たすべきことだからな」
 「だからこそ、ほっておくことなど出来ません。たとえそれが教会を潰すことになっても」
 「………そうですか」
 
 コノハは彼らの決意を目の当たりにする。
 『王族の果たすべきこと』―――それをしっかり分かっていることを。
 
 コノハは最初から決めていた。
 
 「―――分かりました。お手伝いしましょう」
 「「本当!?」」
 「出る杭は先に叩いておかないと。……ま、あのカラスが多少面倒だったので、主にそのうち報復しておきたいなぁって思ってたとこなんで」
 
 というか十割がそれだったりする。
 けっこうカラスが面倒だったので。
 それがなければ一も二も無く「嫌です。面倒ですし」と即答していた。
 そこでジークがふと。
 
 「なぁ、お前いくつ?」
 「え?八歳ですけど」
 「「………………」」
 「……………?なんですか?」
 
 この会話の中に八歳児がいたと言う事実異常にやっと気付いた二人だった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~

最十 レイ
ファンタジー
「お前の『氏名・使命』を貰う」 力を得た代償に己の名前とすべき事を奪われ、転生を果たした名も無き男。 自分は誰なのか? 自分のすべき事は何だったのか? 苦悩する……なんて事はなく、忘れているのをいいことに持前のポジティブさと破天荒さと卑怯さで、時に楽しく、時に女の子にちょっかいをだしながら、思いのまま生きようとする。 そんな性格だから、ちょっと女の子に騙されたり、ちょっと監獄に送られたり、脱獄しようとしてまた捕まったり、挙句の果てに死刑にされそうになったり⁈ 身体は変形と再生を繰り返し、死さえも失った男は、生まれ持った拳でシリアスをぶっ飛ばし、己が信念のもとにキメるところはきっちりキメて突き進む。 そんな『自由』でなければ勝ち取れない、名も無き男の生き様が今始まる! ※この作品はカクヨムでも投稿中です。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...