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第二章 乗っ取られた国

34 ここ…………どこ??

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 コノハは眩しすぎる光が収まったのを見計らって目を開けた。
 そこに見える光景は予想外のものだった。
 
 「…………………は?」
 
 コノハは意味がわからないと言わんばかりに茫然と呟いた。
 実際、意味がわからないのだから仕方がない。
 
 (ど、どういうこと!?)
 
 なんか足元が光り始めて、それがからだ全体を覆ったと思って、眩しすぎる光に目を瞑って―――
 気付いたら。
 
 (ここ…………どこぉ!!!)
 
 知らない場所だった。
 
 いや、森、ということに変わりはない。
 一面、木などの緑なので。
 だが、圧倒的に違うのは森の“気配”だった。
 
 コノハがいた迷いの森はSランクなので魔物も強い。
 ゆえに気配は並みの冒険者でなければ足を踏み出せないほどの威圧感を感じさせる。
 
 コノハは並みの冒険者とかには収まらない部類に入る。
 Sランクとか全然問題ない。
 
 ………コノハの話は置いといて。
 
 要するに、この森はそういう威圧感を全く感じない。
 魔物の気配もあるがせいぜいDランクといったところだ。
 そんなの初心者の冒険者であっても油断しなければ普通に勝つことが出来るくらいの弱さだ。
 こんなのが迷いの森あの森で生き残れる訳がない。
 
 つまり、ここは迷いの森隠れ家ではない。
 
 「………………」
 
 とりあえず今分かる事を分析したが、結論は「意味がわからない」だ。
 
 判断材料が少なすぎる。
 
 そもそもどうしてこうなったのかがさっぱりだし、誰かの策略であれば今すぐ全力で逃げ出したい。
 一瞬、あのカラスが思い浮かんだが無視してここがどこか探ろうと歩き出す。
 ここがどこかわからなければ帰る方向もわからないので。
 
 「転移魔法完成させとけば良かった………。あ、でも今の状況では使えないからなぁ。意味ないか……」
 
 彼女は竜を殺した代償として自分が自分自身にかける魔法が使えない。
 飛行魔法しかり、治療魔法しかり。
 その中には勿論、転移魔法も含まれている。
 飛行魔法は空気中の風に干渉することで自分を浮かせる、という飛行魔法っぽい魔法『空中浮遊』は使うことが出来るが扱いが細かく少しバランスを崩すと立て直すのが大変だ。
 まぁ、コノハは普通に使うが飛行魔法より劣ってる感は否めない。
 
 兎に角、転移魔法が完成してようがいまいが状況は変わらない。
 他の人に頼んで送ってもらう、という手はない。
 今作っている転移魔法はコノハオリジナルの魔法であるので。
 勿論、作ろうとしている人は多いがまだ完成に至っていない。
 まだ誰も転移魔法を完成させていないのだ。
 
 「とりあえず、調べよう……」
 
 そう思ってキョロキョロと首を動かしながら手がかりを探す。
 
 そして、見つけた。
 コノハはそれを拾いまじまじと見る。
 
 「これって―――」
 
 コノハが推測から確信したそのとき。
 
 「―――~~って!!!」
 
 誰かの怒鳴り声。
 コノハは即座にその方向へ目を向ける。
 遠すぎてあまり何を叫んでいるのかは聞こえないが、森の中で叫ぶのは良くない。
 その声で気づいた魔物がやってくる可能性がある。
 
 コノハは面倒くさがりだがさすがに人を見捨てることはあまりしない。
 
 (しょうがない)
 
 正直気が向かないがそれでほったらかして人が死ぬとかたまらない。
 さっき見つけたものをマジックボックスに入れてから、コノハは声が聞こえた方向へ走りだした―――
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