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第4話
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シルバー恋愛センターに明美がやって来た。
「ねえ、北大路は?」
「外でタバコを吸っていると思うから、呼んでくるからちょっと待っててね? それでご要件は?」
「川村、北大路に会ってから話す」
北大路は庭で草毟りをしていた。
「北大路さーん、先日の川村さんが事務所に来ています。お話があるそうです。
要件を訊いても北大路さんに会ってから話すと言って、教えてくれません」
北大路は立ち上がって腰を伸ばした。
「そうか」
明美は美紀の出してくれたアイスコーヒーを飲んでいた。
「どうした?」
「マサルが出て行っちゃったの」
「そうか。あの男はダメだ。別れて正解だ」
「北大路が悪いんだよ! 川村、マサルのことが好きだったのに! 北大路がマサルのことシメたからだよ!」
シルバー恋愛センターの連中は相談室の前で聞き耳を立てていた。
「北大路さんがクライアントの相手の男をシメた?」
みんなが顔を見合わせた。
「アイツがそう言ってんのか? 俺のせいだって」
「北大路はヤーさんだから「ヤバい」んだって言ってた」
「確かに俺は元極道だ。だが今は年金暮らしのタダのジジイだ。
あの男はお前を愛してはいない」
「どうしてそんなこと言うの! マサルは川村を愛してくれていたんだよ!」
「アイツは俺が極道だからお前と別れると言ったんだよな?」
「そうだよ」
「もしマサルが本当にお前を愛していたら、俺がヤクザだろうが何だろうがお前を簡単に諦めたりしねえ。
たとえば俺がお前の父親だったらどうする? 親父がヤクザだったら明美と付き合うのを辞めるのか?
もしそれが理由でお前と別れるというのなら、所詮マサルはその程度の男だったということだ。
アイツは俺をお前と別れるための口実にしただけだ」
「違うもん! マサルは、マサルは・・・ちがうもん! ううううう」
明美は泣き出してしまった。
「そんなにアイツのことが好きなのか?」
「うん。川村、マサルのことが大好き」
「それじゃあ俺がマサルに頼んでやるよ。明美と仲直りしてくれってな?」
「ホント! マサルに謝ってくれるの? 北大路!」
「ああ、お前がそれで気が済むのならな? 今夜7時、あそこの焼肉屋に来るようにマサルに言え。
お前も一緒にだ」
「うん、わかった!」
シルバー恋愛センターの恋愛アドバイザーたちは小声で囁いていた。
ありゃかなり重症だぜ?」
山田棟梁が言った。
「元ヤクザの北大路さんが本当にその若造に謝罪なんかするんでしょうか? 私には疑問です。
ヤクザは面子を重んじる人たちでしょう? 自分が悪くないのに謝ったりするんでしょうか?」
源次郎さんが言った。
「うーん、どうかしら? 北大路さんがあんな村重とフワちゃんを足して2で割ったような女の子のために頭をさげるとは思えないけど。Unbelievable!」
今度は寺門道子さんが言った。
「でも自分が悪くなくてもクライアントのためなら頭をさげるのが侠気というものでしょうなあ?」
橋田所長が言った。
「私は頭を下げると思います。北大路さんなら」
最後に美紀がそう断言をした。(きくりんの断言)
源次郎さんと道子さんと所長は頷き、山田棟梁だけは首を横に振った。
「だってヤクザだぜ? 元だけどよお。
おそらくその兄ちゃん、かわいそうに焼肉の七輪で焼かれちまうな? 間違いねえ」
「そんな、それじゃあ『仁義なき戦い』じゃないですか!」
「いや『極道の妻たち』だな?」
「違いますよ、『カイジ』です。「ゴリラはチンパンジーより重い」って言うじゃありませんか?」
「それを言うなら「カネは命より重い」ですよ」
「なあ、俺たちもその焼肉屋に行って北大路さんが本当に謝るかどうか、あるいは七輪でその彼氏が焼かれちゃうかどうか確かめに行かねえか? 15日に年金も入ったことだしよお」
「いいわねえ、それ賛成!」
「僕も参加します!」
「私も行きますよ、経費で落ちるようにしますから」
「そうかい? たまには肉も食わねえとな? チ◯コが立たなくなっちまう」
「棟梁のはいつもごめんなさいしていますけどね?」
「ばかやろう! 俺のチ◯コの凄さを知らねえなあ? 大谷のバットより凄えんだぞ」
「はいはい、下ネタはそれくらいにして、それじゃあみなさん、待ち合わせ時間の10分前、18時50分に集合ですからね?」
「了解!」
一同はうれしそうにそれに賛同した。
何しろ時間だけはたっぷりある老人たちである。
いい暇つぶしが出来たと、老人たちは大喜びであった。
「ねえ、北大路は?」
「外でタバコを吸っていると思うから、呼んでくるからちょっと待っててね? それでご要件は?」
「川村、北大路に会ってから話す」
北大路は庭で草毟りをしていた。
「北大路さーん、先日の川村さんが事務所に来ています。お話があるそうです。
要件を訊いても北大路さんに会ってから話すと言って、教えてくれません」
北大路は立ち上がって腰を伸ばした。
「そうか」
明美は美紀の出してくれたアイスコーヒーを飲んでいた。
「どうした?」
「マサルが出て行っちゃったの」
「そうか。あの男はダメだ。別れて正解だ」
「北大路が悪いんだよ! 川村、マサルのことが好きだったのに! 北大路がマサルのことシメたからだよ!」
シルバー恋愛センターの連中は相談室の前で聞き耳を立てていた。
「北大路さんがクライアントの相手の男をシメた?」
みんなが顔を見合わせた。
「アイツがそう言ってんのか? 俺のせいだって」
「北大路はヤーさんだから「ヤバい」んだって言ってた」
「確かに俺は元極道だ。だが今は年金暮らしのタダのジジイだ。
あの男はお前を愛してはいない」
「どうしてそんなこと言うの! マサルは川村を愛してくれていたんだよ!」
「アイツは俺が極道だからお前と別れると言ったんだよな?」
「そうだよ」
「もしマサルが本当にお前を愛していたら、俺がヤクザだろうが何だろうがお前を簡単に諦めたりしねえ。
たとえば俺がお前の父親だったらどうする? 親父がヤクザだったら明美と付き合うのを辞めるのか?
もしそれが理由でお前と別れるというのなら、所詮マサルはその程度の男だったということだ。
アイツは俺をお前と別れるための口実にしただけだ」
「違うもん! マサルは、マサルは・・・ちがうもん! ううううう」
明美は泣き出してしまった。
「そんなにアイツのことが好きなのか?」
「うん。川村、マサルのことが大好き」
「それじゃあ俺がマサルに頼んでやるよ。明美と仲直りしてくれってな?」
「ホント! マサルに謝ってくれるの? 北大路!」
「ああ、お前がそれで気が済むのならな? 今夜7時、あそこの焼肉屋に来るようにマサルに言え。
お前も一緒にだ」
「うん、わかった!」
シルバー恋愛センターの恋愛アドバイザーたちは小声で囁いていた。
ありゃかなり重症だぜ?」
山田棟梁が言った。
「元ヤクザの北大路さんが本当にその若造に謝罪なんかするんでしょうか? 私には疑問です。
ヤクザは面子を重んじる人たちでしょう? 自分が悪くないのに謝ったりするんでしょうか?」
源次郎さんが言った。
「うーん、どうかしら? 北大路さんがあんな村重とフワちゃんを足して2で割ったような女の子のために頭をさげるとは思えないけど。Unbelievable!」
今度は寺門道子さんが言った。
「でも自分が悪くなくてもクライアントのためなら頭をさげるのが侠気というものでしょうなあ?」
橋田所長が言った。
「私は頭を下げると思います。北大路さんなら」
最後に美紀がそう断言をした。(きくりんの断言)
源次郎さんと道子さんと所長は頷き、山田棟梁だけは首を横に振った。
「だってヤクザだぜ? 元だけどよお。
おそらくその兄ちゃん、かわいそうに焼肉の七輪で焼かれちまうな? 間違いねえ」
「そんな、それじゃあ『仁義なき戦い』じゃないですか!」
「いや『極道の妻たち』だな?」
「違いますよ、『カイジ』です。「ゴリラはチンパンジーより重い」って言うじゃありませんか?」
「それを言うなら「カネは命より重い」ですよ」
「なあ、俺たちもその焼肉屋に行って北大路さんが本当に謝るかどうか、あるいは七輪でその彼氏が焼かれちゃうかどうか確かめに行かねえか? 15日に年金も入ったことだしよお」
「いいわねえ、それ賛成!」
「僕も参加します!」
「私も行きますよ、経費で落ちるようにしますから」
「そうかい? たまには肉も食わねえとな? チ◯コが立たなくなっちまう」
「棟梁のはいつもごめんなさいしていますけどね?」
「ばかやろう! 俺のチ◯コの凄さを知らねえなあ? 大谷のバットより凄えんだぞ」
「はいはい、下ネタはそれくらいにして、それじゃあみなさん、待ち合わせ時間の10分前、18時50分に集合ですからね?」
「了解!」
一同はうれしそうにそれに賛同した。
何しろ時間だけはたっぷりある老人たちである。
いい暇つぶしが出来たと、老人たちは大喜びであった。
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