9 / 10
第9話
しおりを挟む
「いやあ、エリーゼの「萌え萌え、キュンキュン」は最高だったよなあ。
キャンディ、明日も来ようよ、ね、いいでしょう?」
「またあ? もういいわよ、お金が勿体ないわよ、ジュニア」
「キャンディ様、私もまた来たいです!
私もあのエレガントな床の掃き方、私はあのジルバちゃんに惚れましたー!
誰から褒められるでもなく、ただひたすらに床を這いずり回るあのお姿! なんと健気、何という奥ゆかしさ! ああ、ジルバ!」
「あんたたち、頭おかしいんじゃないの?」
JR萌え萌え駅を通りかかると、オーロラビジョンにはダ・サイタマ国王と、『国民がいちばんの党』の女性党首、オバ・タリアンがテレビ討論をしている模様を実況中継していた
「あれ? ガガ王女のパパじゃないかしら?」
ベテラン人気MCの、みの・もん太郎がスムーズな司会進行をしていた。
「では国王、あなたはいつでも『国民がいちばんの党』にダ・サイタマ国の実権を明け渡してもいいと仰るのですね?」
「もちろんじゃ。ワシは国民がそれを望むのであれば、いつでも国王の座を譲っても構わん。
王の座を争ってまで、国民が血を流すのは望んではおらん。
平和のためだと王国を混乱させ、人民の尊い命が失われてはならんのじゃ」
すると『国民がいちばんの党』の党首が言った。
「このカントリーはペリーの来航により、アトミック・ボムが落とされ、多くの国民が死に絶え、巨大なメリケン帝国の植民地となってしまいました。
日本がジパングに改名させられ、市町村合併により、この限界集落だった海もないダ・サイタマも王制となり、くじ引きでYouが国王になった。
すぐに辞めるべきだったのよ!
今すぐお辞めなさい! Now!」
「確かにワシは10年前まではただの小松菜栽培の農家じゃった。
だがこのダ・サイタマをワシは愛しておる。
ワシは自分の生活費は自分が育てた小松菜を売った収入でまかなっておる。税金は1円も使ってはおらん。
ロイヤルホストにすら行ったこともない。
たまに行くのは回転寿司の『寿司ジロー』くらいなものじゃ。しかも109円皿しか食わん。
あなたのようにザギン王国の『十兵衛』で、大トロとウニ、イクラ、ノドグロしか食べん党首とは違うのじゃ」
それを暴露された党首、オバ・タリアンは黙ってはいなかった。
「そ、それがどうしたのよ、レジェンドの私に逆らうの!
王様はこの国を豊かにしようとしないじゃないの!
築地マルシェの移動にも反対したわよね!
放射性廃棄物処理場もダメ、飛行場もダメ、高速道路も新幹線も止まらない、メイドカフェもHなお店もない!
そんな王国にヤングは定着しないと言っていっているのよ!
アキバ王国を少しは見習いなさい! アニメにメイド、それにエッチなお店とAKB37であんなに栄えたじゃないの!
おまけに成田エクスプレスまである!
アンタは無能な王様、パンツしか履いていない「裸の王様」なのよ!」
すると王様は静かに言った。
「安心してくれ、ワシはパンツは履いておる。
よし分かった。すまんがADさん、私の王の椅子をここへお願いします」
ふたりのADがいっちらおっちら玉座をスタジオに運んで来た。
「ゼイゼイ(息が上がっている)、国王、これでよろしいですか?」
「結構、ではオバ・タリアン党首、ここに座りたければ座るがよい。ホレ、遠慮はいらんぞ」
「な、何のマネよ! こんな危険な椅子に誰が座るもんですか! アホ、ボケ、短足、包茎!」
みのもん太郎が驚いて言った。
「こ、これはあの有名な伝説、「ダモクレスの剣」ですね!
まさか王様の玉座にもあったとは!」
「そうじゃ、これがワシの国王の椅子じゃ。
この一本の馬のシッポの毛で吊るされた、大剣の下にいつもワシは座っておる。
王とはこういうものなのじゃ。
欲しければいつでもくれてやるぞ。
ワシがアキバ国のように風俗エッチ文化を許可しないのは、それにより若者の生活が乱れるのを危惧しておるからじゃ。
本当にダ・サイタマ国を愛してくれる者だけがここにいてくれればそれでよい。
便利になってカネ儲けをすることだけが幸福ではないのじゃ。
ワシはこの緑の小松菜畑の広がるダ・サイタマが好きなんじゃ!
しあわせはお金だけでは得ることは出来ん。
本当の幸福は愛なのじゃ。愛こそすべてなのじゃ」
するとそこへガガ王女とアカサカ王国のヨシキ王子がやって来た。
「王様、私はガガ王女とこの国とアカサカ国をまとめて見せます。
華やかさとこの長閑な田園地帯を共存させて、本当に豊かな王国を作ってご覧にいれてみせます」
「ヨシキ王子、ガガ・・・」
「パパ、カッコ良かったわよ! パパ大好き!」
コメンテーターのミッツ・マングローブの叔父さんも号泣していた。
これでガガ王女とヨシキ王子の結婚式の司会で、ガッポリとギャラが入るからだ。
湧き上がる国民の拍手とシュプレヒコール!
みの・もん太郎がガラスのグランドピアノを引き摺って来た。
うんしょ うんしょ
「それでは歌っていただきましょう! ヨシキ王子とガガ王女、デュエット『エンドレス・ラブ』です、どうぞ!」
出っ歯のマチャミとチビ太郎・田中も『ザ・王国SHOW 極み』で「わんこそば」を食べながら泣いていた。
いつの間にか小池、じゃなかったオバ・タリアン党首はどこかへいなくなっていた。
「2番じゃダメなの!」
と捨て台詞を残して。
曲が終わり、ガガがカメラに向かって叫んだ。
「キャンディ! ジャスティン王子としあわせになるのよ! 私たちも絶対しあわせになるから!」
キャンディは号泣し、オーロラビジョンの前で泣き崩れた。
「ガガ王女、私も絶対にしあわせになりたい!」
その小さな肩には白いフクロウのペドウィッグ.Jrと、周りをせっせと掃き掃除をしながらプリウスがキャンディを慰めていた。
不思議そうにそこをゾンビの集団が通っていった。
まもなくハロウィンが始まろうとしていた。
キャンディ、明日も来ようよ、ね、いいでしょう?」
「またあ? もういいわよ、お金が勿体ないわよ、ジュニア」
「キャンディ様、私もまた来たいです!
私もあのエレガントな床の掃き方、私はあのジルバちゃんに惚れましたー!
誰から褒められるでもなく、ただひたすらに床を這いずり回るあのお姿! なんと健気、何という奥ゆかしさ! ああ、ジルバ!」
「あんたたち、頭おかしいんじゃないの?」
JR萌え萌え駅を通りかかると、オーロラビジョンにはダ・サイタマ国王と、『国民がいちばんの党』の女性党首、オバ・タリアンがテレビ討論をしている模様を実況中継していた
「あれ? ガガ王女のパパじゃないかしら?」
ベテラン人気MCの、みの・もん太郎がスムーズな司会進行をしていた。
「では国王、あなたはいつでも『国民がいちばんの党』にダ・サイタマ国の実権を明け渡してもいいと仰るのですね?」
「もちろんじゃ。ワシは国民がそれを望むのであれば、いつでも国王の座を譲っても構わん。
王の座を争ってまで、国民が血を流すのは望んではおらん。
平和のためだと王国を混乱させ、人民の尊い命が失われてはならんのじゃ」
すると『国民がいちばんの党』の党首が言った。
「このカントリーはペリーの来航により、アトミック・ボムが落とされ、多くの国民が死に絶え、巨大なメリケン帝国の植民地となってしまいました。
日本がジパングに改名させられ、市町村合併により、この限界集落だった海もないダ・サイタマも王制となり、くじ引きでYouが国王になった。
すぐに辞めるべきだったのよ!
今すぐお辞めなさい! Now!」
「確かにワシは10年前まではただの小松菜栽培の農家じゃった。
だがこのダ・サイタマをワシは愛しておる。
ワシは自分の生活費は自分が育てた小松菜を売った収入でまかなっておる。税金は1円も使ってはおらん。
ロイヤルホストにすら行ったこともない。
たまに行くのは回転寿司の『寿司ジロー』くらいなものじゃ。しかも109円皿しか食わん。
あなたのようにザギン王国の『十兵衛』で、大トロとウニ、イクラ、ノドグロしか食べん党首とは違うのじゃ」
それを暴露された党首、オバ・タリアンは黙ってはいなかった。
「そ、それがどうしたのよ、レジェンドの私に逆らうの!
王様はこの国を豊かにしようとしないじゃないの!
築地マルシェの移動にも反対したわよね!
放射性廃棄物処理場もダメ、飛行場もダメ、高速道路も新幹線も止まらない、メイドカフェもHなお店もない!
そんな王国にヤングは定着しないと言っていっているのよ!
アキバ王国を少しは見習いなさい! アニメにメイド、それにエッチなお店とAKB37であんなに栄えたじゃないの!
おまけに成田エクスプレスまである!
アンタは無能な王様、パンツしか履いていない「裸の王様」なのよ!」
すると王様は静かに言った。
「安心してくれ、ワシはパンツは履いておる。
よし分かった。すまんがADさん、私の王の椅子をここへお願いします」
ふたりのADがいっちらおっちら玉座をスタジオに運んで来た。
「ゼイゼイ(息が上がっている)、国王、これでよろしいですか?」
「結構、ではオバ・タリアン党首、ここに座りたければ座るがよい。ホレ、遠慮はいらんぞ」
「な、何のマネよ! こんな危険な椅子に誰が座るもんですか! アホ、ボケ、短足、包茎!」
みのもん太郎が驚いて言った。
「こ、これはあの有名な伝説、「ダモクレスの剣」ですね!
まさか王様の玉座にもあったとは!」
「そうじゃ、これがワシの国王の椅子じゃ。
この一本の馬のシッポの毛で吊るされた、大剣の下にいつもワシは座っておる。
王とはこういうものなのじゃ。
欲しければいつでもくれてやるぞ。
ワシがアキバ国のように風俗エッチ文化を許可しないのは、それにより若者の生活が乱れるのを危惧しておるからじゃ。
本当にダ・サイタマ国を愛してくれる者だけがここにいてくれればそれでよい。
便利になってカネ儲けをすることだけが幸福ではないのじゃ。
ワシはこの緑の小松菜畑の広がるダ・サイタマが好きなんじゃ!
しあわせはお金だけでは得ることは出来ん。
本当の幸福は愛なのじゃ。愛こそすべてなのじゃ」
するとそこへガガ王女とアカサカ王国のヨシキ王子がやって来た。
「王様、私はガガ王女とこの国とアカサカ国をまとめて見せます。
華やかさとこの長閑な田園地帯を共存させて、本当に豊かな王国を作ってご覧にいれてみせます」
「ヨシキ王子、ガガ・・・」
「パパ、カッコ良かったわよ! パパ大好き!」
コメンテーターのミッツ・マングローブの叔父さんも号泣していた。
これでガガ王女とヨシキ王子の結婚式の司会で、ガッポリとギャラが入るからだ。
湧き上がる国民の拍手とシュプレヒコール!
みの・もん太郎がガラスのグランドピアノを引き摺って来た。
うんしょ うんしょ
「それでは歌っていただきましょう! ヨシキ王子とガガ王女、デュエット『エンドレス・ラブ』です、どうぞ!」
出っ歯のマチャミとチビ太郎・田中も『ザ・王国SHOW 極み』で「わんこそば」を食べながら泣いていた。
いつの間にか小池、じゃなかったオバ・タリアン党首はどこかへいなくなっていた。
「2番じゃダメなの!」
と捨て台詞を残して。
曲が終わり、ガガがカメラに向かって叫んだ。
「キャンディ! ジャスティン王子としあわせになるのよ! 私たちも絶対しあわせになるから!」
キャンディは号泣し、オーロラビジョンの前で泣き崩れた。
「ガガ王女、私も絶対にしあわせになりたい!」
その小さな肩には白いフクロウのペドウィッグ.Jrと、周りをせっせと掃き掃除をしながらプリウスがキャンディを慰めていた。
不思議そうにそこをゾンビの集団が通っていった。
まもなくハロウィンが始まろうとしていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
★【完結】歌姫(前編)作品230427
菊池昭仁
恋愛
マリア・カラスの再来と言われた歌姫、海音寺琴子。
彼女は夫との結婚生活に疲れ、一人、傷心旅行にパリを訪れる。
そこで琴子は絶望の詩人、星野銀河と出会い、恋に落ちる。
燃え上がる人妻の歌姫と詩人の恋。冬のパリを舞台に繰り広げられる禁断の恋。
真実の愛を問う物語です。
★【完結】曼殊沙華(作品240212)
菊池昭仁
恋愛
夫を失った高岡千雪は悲しみのあまり毎日のように酒を飲み、夜の街を彷徨っていた。
いつもの行きつけのバーで酔い潰れていると、そこに偶然、小説家の三島慶がやって来る。
人生に絶望し、亡き夫との思い出を引き摺り生きる千雪と、そんな千雪を再び笑顔にしたいと願う三島。
交錯するふたりの想い。
そして明かされていく三島の過去。
それでも人は愛さずにはいられない。
★【完結】冬の線香花火(作品230620)
菊池昭仁
恋愛
国際航路のコンテナ船の二等航海士、堂免寛之は船長になることが子供の頃からの夢だった。
そんなある日、妻の華絵が病に倒れる。妻の看病のために堂免は船を降りる決意をする。
夫婦愛の物語です。
★【完結】樹氷(作品240107)
菊池昭仁
恋愛
凍結されていた愛が今、燃え上がる。
20年前、傷心旅行で訪れたパリで、奈緒は留学生の画家、西山伊作と恋をした。
そして20年後、ふたりは偶然東京で再会する。
忘れかけていた愛が目の前に現れた時、ふたりの取った行動とは?
★【完結】パパじゃないけどパパが好き!(作品240604)
菊池昭仁
恋愛
奈々は医学部受験を控えた高校3年生。母親を3年前にガンで亡くし、今は4年前に母親が再婚した相手、つまり義父とふたりで暮らしていた。
義父といっても40才。死んだ母親よりも3才年下だった。
そんな見習パパの清彦と、義理の娘、奈々との心温まるヒューマン・コメディーです。
家族とは何か? 一緒に考えてみませんか?
★【完結】スナック『海猫』(作品240412)
菊池昭仁
恋愛
二等航海士をしている寺島数馬は日本、カナダ、豪州航路の貨物船に乗船していた。
富山新港での行きつけは、新湊にある小さなスナック『海猫』だった。
2か月に1度、2日間だけ立ち寄る『海猫』に勤める順子という女と関係を持つ寺島。
わずかな逢瀬の中で愛を育むふたり。それは七夕のような恋だった。
暗い日本海に彷徨う二人の恋愛模様。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる