11 / 21
第11話
しおりを挟む
新居には海の見える汐留のタワーマンションを義父が買い与えてくれた。
「碧ちゃん、この段ボールはどこに置けばいいの?」
「それはキッチン、そしてこの段ボールは私の部屋へ持っていけ」
「はい、わかりました」
碧が早川の部屋を覗くと、たくさんのヱヴァンゲリヲンのフィギュアが見えた。
「なんだこれ? おまえ小学生か?」
碧が綾波レイのフィギュアを掴んだ時、早川が叫んだ。
「僕のレイちゃんに触らないで!」
「だったら鍵でもかけておけ! この変態ドMブタ!」
碧はそれを早川に向かって投げつけた。
慌ててそれをキャッチする早川に碧は呆れた。
掃除や食材の買い出し、食事の後片付けはすべて早川にさせたが、料理と洗濯だけは碧が自分でした。
料理に何を入れられるかわからないし、洗濯は下着などを早川に触らせたくはなかったからだ。
もちろん寝室は別々。リビングは碧が占領し、早川は6帖の自室に籠っていた。
碧はこのタワマンが気に入っていた。
東京駅や銀座にも近く、新橋、ゆりかもめにも便利で、都庁への通勤へも楽だったからだ。
職場の同僚も比較的少ないこともあり、碧にとっては都合がよかった。
臨月になり、碧の出産が近づいていたが初産ということもあり、予定日からはすでに1週間が経過していた。
碧は多少の運動も兼ねて自室の片づけをしていると、突然陣痛に襲われた。
すぐにタクシーで病院へ向かった。
一応、早川にはラインをし、母には電話をした。
「お母さん、これから病院に行くね?」
「そう、がんばるのよ碧、私たちもすぐに行くからね!」
早川も息を切らせて病院にやって来た。
「碧ちゃん大丈夫! 痛いよね? 痛いよね?」
「痛いに決まってんだろう! お前が代われよ! このブタ野郎!」
破水するまでにはかなりの時間を要したが、碧は無事、男の子を出産をした。
早川の喜びようは異常なほどだった。
「かわいいね、かわいいね!
ありがとう、碧ちゃん! 産んでくれて、本当にありがとう・・・、ううううう」
そう言って早川はわが子を抱いて泣いた。
「とてもきれいな顔の赤ちゃんね? バアバとジイジですよー。
早く一緒にお散歩しましょうねー?」
初孫ということもあり、両親もとてもうれしそうだった。
晴子もすぐに来てくれた。
「すっごくかわいいねー⁉ ジャニーズに入れちゃおうよ、碧。
ああ~、私も早く子供が欲しくなっちゃった!」
「結婚すればいいじゃない、あのハイスペックな彼と」
「それがさあ、色々とあるのよ私たちも。
ウチの親が中々許してくれなくってねー。
彼、弁護士志望で未だに司法浪人中でしょう?
就職もしないでバイト生活だから、私の親の受けが悪いのよ。
結婚したら私が彼を養ってあげて、司法試験に集中出来るようにしてあげたいんだけどね?」
晴子は真面目にそう言った。
翌日、義母の麗子もおっとり刀でやって来た。
麗子は真っ先に子供の小さな指に触れ、うっとりとしてこう言った。
「まだ小さいけれどいい指をしているわ、これはピアニストの指よ」
名前を智樹と名付けたのは義母の麗子だった。
「孫の名前はもう決めていますからね?
大事な早川家の跡取りですから、智之の智と大樹のような大物に育つようにとの願いを込めて、智樹にしましたから異存はないわね? 碧さん?」
麗子は「智樹」と書かれた命名書を息子である早川に渡した。
碧は名前などどうでもよかった。
ただうれしかった。自分の子供が無事に生まれて来てくれたことに。
碧はそれを承諾した。
「智樹、私がママよ」
智樹を抱いた碧は、慈愛に満ちた母親の顔になっていた。
「碧ちゃん、この段ボールはどこに置けばいいの?」
「それはキッチン、そしてこの段ボールは私の部屋へ持っていけ」
「はい、わかりました」
碧が早川の部屋を覗くと、たくさんのヱヴァンゲリヲンのフィギュアが見えた。
「なんだこれ? おまえ小学生か?」
碧が綾波レイのフィギュアを掴んだ時、早川が叫んだ。
「僕のレイちゃんに触らないで!」
「だったら鍵でもかけておけ! この変態ドMブタ!」
碧はそれを早川に向かって投げつけた。
慌ててそれをキャッチする早川に碧は呆れた。
掃除や食材の買い出し、食事の後片付けはすべて早川にさせたが、料理と洗濯だけは碧が自分でした。
料理に何を入れられるかわからないし、洗濯は下着などを早川に触らせたくはなかったからだ。
もちろん寝室は別々。リビングは碧が占領し、早川は6帖の自室に籠っていた。
碧はこのタワマンが気に入っていた。
東京駅や銀座にも近く、新橋、ゆりかもめにも便利で、都庁への通勤へも楽だったからだ。
職場の同僚も比較的少ないこともあり、碧にとっては都合がよかった。
臨月になり、碧の出産が近づいていたが初産ということもあり、予定日からはすでに1週間が経過していた。
碧は多少の運動も兼ねて自室の片づけをしていると、突然陣痛に襲われた。
すぐにタクシーで病院へ向かった。
一応、早川にはラインをし、母には電話をした。
「お母さん、これから病院に行くね?」
「そう、がんばるのよ碧、私たちもすぐに行くからね!」
早川も息を切らせて病院にやって来た。
「碧ちゃん大丈夫! 痛いよね? 痛いよね?」
「痛いに決まってんだろう! お前が代われよ! このブタ野郎!」
破水するまでにはかなりの時間を要したが、碧は無事、男の子を出産をした。
早川の喜びようは異常なほどだった。
「かわいいね、かわいいね!
ありがとう、碧ちゃん! 産んでくれて、本当にありがとう・・・、ううううう」
そう言って早川はわが子を抱いて泣いた。
「とてもきれいな顔の赤ちゃんね? バアバとジイジですよー。
早く一緒にお散歩しましょうねー?」
初孫ということもあり、両親もとてもうれしそうだった。
晴子もすぐに来てくれた。
「すっごくかわいいねー⁉ ジャニーズに入れちゃおうよ、碧。
ああ~、私も早く子供が欲しくなっちゃった!」
「結婚すればいいじゃない、あのハイスペックな彼と」
「それがさあ、色々とあるのよ私たちも。
ウチの親が中々許してくれなくってねー。
彼、弁護士志望で未だに司法浪人中でしょう?
就職もしないでバイト生活だから、私の親の受けが悪いのよ。
結婚したら私が彼を養ってあげて、司法試験に集中出来るようにしてあげたいんだけどね?」
晴子は真面目にそう言った。
翌日、義母の麗子もおっとり刀でやって来た。
麗子は真っ先に子供の小さな指に触れ、うっとりとしてこう言った。
「まだ小さいけれどいい指をしているわ、これはピアニストの指よ」
名前を智樹と名付けたのは義母の麗子だった。
「孫の名前はもう決めていますからね?
大事な早川家の跡取りですから、智之の智と大樹のような大物に育つようにとの願いを込めて、智樹にしましたから異存はないわね? 碧さん?」
麗子は「智樹」と書かれた命名書を息子である早川に渡した。
碧は名前などどうでもよかった。
ただうれしかった。自分の子供が無事に生まれて来てくれたことに。
碧はそれを承諾した。
「智樹、私がママよ」
智樹を抱いた碧は、慈愛に満ちた母親の顔になっていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
★【完結】ダブルファミリー(作品230717)
菊池昭仁
恋愛
結婚とはなんだろう?
生涯1人の女を愛し、ひとつの家族を大切にすることが人間としてのあるべき姿なのだろうか?
手を差し伸べてはいけないのか? 好きになっては、愛してはいけないのか?
結婚と恋愛。恋愛と形骸化した生活。
結婚している者が配偶者以外の人間を愛することを「倫理に非ず」不倫という。
男女の恋愛の意義とは?
★【完結】樹氷(作品240107)
菊池昭仁
恋愛
凍結されていた愛が今、燃え上がる。
20年前、傷心旅行で訪れたパリで、奈緒は留学生の画家、西山伊作と恋をした。
そして20年後、ふたりは偶然東京で再会する。
忘れかけていた愛が目の前に現れた時、ふたりの取った行動とは?
★【完結】アントワープ恋物語(作品240120)
菊池昭仁
恋愛
元家族、恋人とも別れ、すべてを捨ててアントワープへやって来た北川伸之。
夫を失った声楽家、嶋村由紀恵。
ふたりは異国の地、アントワープで出会い、恋に落ちる。
冬のアントワープを舞台に、北川と由紀恵の切ない想いが交錯してゆく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる