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9月26日(土)曇り 入院21日目
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三等航海士をしていた時、50代の二等航海士がハッチの金具に指を挟んでしまい、怪我をしたことがあった。
ちょうど日本を出港したばかりで、船舶衛生管理者だった私が傷の応急処置をした。
どうやら骨までは達してはいないようだったが、かなり出血していた。引き返すべきかどうか、キャプテンに進言すべきかどうか、私は迷った。
港に戻るとなると、数百万円の損害になる。
キャプテンが私に尋ねた。
「どうだ? 重症か?」
「出血が多いようです」
するとその二等航海士は言った。
「大丈夫ですからこのまま航海を続けましょう」
幸い、出血は止まったが、指は変形していた。
包帯を替えてあげていると彼は言った。
「五体満足の船乗りなんていないからね?」
彼は笑ってそう言った。家族はいない人だった。
確かに船乗りは危険な仕事だ。ちょっとした気の緩みで命を落としかねない。
山本五十六は軍人ではあるが、日本海海戦で左手の人差指と中指を失い、左大腿部を欠損していたという。
軍人も商船乗りも怪我はつきものだ。そして山本五十六は59歳でこの世を去った。
独眼竜と呼ばれた伊達政宗や海賊キング、キャプテン・ハーロックに丹下段平。タモリにパティシェの鎧塚。樹木希林なども片目だった。そしておすぎとピーコのどちらかも。
私の場合はたとえ見えなくなっても義眼にはならず、右目と連動して動くらしい。
カッコいいじゃないか? 「キャプテンハーロック・菊池」だなんて。
劉備玄徳は言った。
私欲を捨て 事にあたれ
ただ眼の前のことに集中すること。これしかないのだ。
先のことなど考えても仕方がない、なるようにしかならないのも人生である。
私は航海士を辞めて、食えない時は何でもやりながら、それでも建設業一筋で来た。
そして何度も高い業績をあげ、お客さんたちからも喜ばれた。
だが、難度試練を乗り越えても成功は長続きしなかった。
斎藤一人さんのお言葉を思い出した。
「それをやって何度も失敗するのは、それがあなたには向いていないという、神様からのメッセージなんだよ」という言葉をだ。
俺には建設業は向いていないということかもしれないと思った。
私が事業で失敗した最大の原因は、予算を度外視した家づくりにあった。
少ない予算で建築の技術者向けの雑誌に掲載されるような家ばかりを作っていたからだ。
私はいつの間にか、経営者であることを忘れ、芸術家になってしまっていたのだ。
予算を考えて作品を作るアーティストはいない。
私は自分の作品に酔っていたのだ。
では本当に私にあっている仕事とはなんだろう?
仕事とは自分が選ぶものではなく、仕事から選ばれるべきものであると言う。
私は毎日、それを自問自答しながらうつ伏せ寝に耐えていた。
ちょうど日本を出港したばかりで、船舶衛生管理者だった私が傷の応急処置をした。
どうやら骨までは達してはいないようだったが、かなり出血していた。引き返すべきかどうか、キャプテンに進言すべきかどうか、私は迷った。
港に戻るとなると、数百万円の損害になる。
キャプテンが私に尋ねた。
「どうだ? 重症か?」
「出血が多いようです」
するとその二等航海士は言った。
「大丈夫ですからこのまま航海を続けましょう」
幸い、出血は止まったが、指は変形していた。
包帯を替えてあげていると彼は言った。
「五体満足の船乗りなんていないからね?」
彼は笑ってそう言った。家族はいない人だった。
確かに船乗りは危険な仕事だ。ちょっとした気の緩みで命を落としかねない。
山本五十六は軍人ではあるが、日本海海戦で左手の人差指と中指を失い、左大腿部を欠損していたという。
軍人も商船乗りも怪我はつきものだ。そして山本五十六は59歳でこの世を去った。
独眼竜と呼ばれた伊達政宗や海賊キング、キャプテン・ハーロックに丹下段平。タモリにパティシェの鎧塚。樹木希林なども片目だった。そしておすぎとピーコのどちらかも。
私の場合はたとえ見えなくなっても義眼にはならず、右目と連動して動くらしい。
カッコいいじゃないか? 「キャプテンハーロック・菊池」だなんて。
劉備玄徳は言った。
私欲を捨て 事にあたれ
ただ眼の前のことに集中すること。これしかないのだ。
先のことなど考えても仕方がない、なるようにしかならないのも人生である。
私は航海士を辞めて、食えない時は何でもやりながら、それでも建設業一筋で来た。
そして何度も高い業績をあげ、お客さんたちからも喜ばれた。
だが、難度試練を乗り越えても成功は長続きしなかった。
斎藤一人さんのお言葉を思い出した。
「それをやって何度も失敗するのは、それがあなたには向いていないという、神様からのメッセージなんだよ」という言葉をだ。
俺には建設業は向いていないということかもしれないと思った。
私が事業で失敗した最大の原因は、予算を度外視した家づくりにあった。
少ない予算で建築の技術者向けの雑誌に掲載されるような家ばかりを作っていたからだ。
私はいつの間にか、経営者であることを忘れ、芸術家になってしまっていたのだ。
予算を考えて作品を作るアーティストはいない。
私は自分の作品に酔っていたのだ。
では本当に私にあっている仕事とはなんだろう?
仕事とは自分が選ぶものではなく、仕事から選ばれるべきものであると言う。
私は毎日、それを自問自答しながらうつ伏せ寝に耐えていた。
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