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第17話 一人一殺
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「ホシが動き出すようです!」
「黄昏村の主要道路に緊急配備! 職質を掛けて引っ張れ!」
「了解しました!」
「武器を携帯している可能性が高い。十分注意しろ! ただし殺すな、生け捕りにしろ! いいな!」
「はい!」
公安たちが一気に色めき立った。
その頃、片桐は暗視ゴーグルを使い、ひとりで山越えをしていた。
そして明け方、自衛隊のヘリに回収され、市ヶ谷の本隊へと帰投した。
厳重なセキュリティシステムを幾度も通り、地下4階の作戦司令室に片桐は辿り着いた。
片桐は幕僚長の山神に敬礼をした。
「片桐一佐、これより『ヨハネの黙示録作戦』を開始する。
現場での指揮権はすべて貴様に与える」
「はっつ! これよりヒトサンマルマル(13時00分)『ヨハネの黙示録作戦』にかかります!」
「よし、かかれ!」
「はっつ!」
「片桐一佐、俺も後から行くからな」
片桐は山神幕僚長に敬礼をし、7人の使徒たちが待つ、教会へと向かった。
内閣官房調査室、いわゆる『内調』も行動を開始した。
「この令和の時代にクーデター計画など、実に馬鹿げた話だ。
あの自衛隊発足以来、最も切れ者と言われたカミソリ山神幕僚長、気でも触れたか?
退官まであと1年、黙って天下りすればいいものを」
「この法治国家、日本において要人暗殺なんてどうかしていますよ」
「内閣直属の我々も、あの人たちが何を考えているのか理解出来んよ。
自分たちで『別班』を秘密裏に組織しておきながら、都合が悪くなると今度は「潰せ」と言う」
「ヘンな話ですよね?」
「上はクーデターだと騒いでいるが、おそらくそれはあるまい。
自衛隊内部に大掛かりな不穏な動きはないからだ。いずれにせよ暗殺は絶対に阻止しなければならない。神父と7人の使徒を消せ。間抜けな公安に先を越されるなよ」
「分かりました」
片桐と7人の使徒たちは、都内の古い教会の礼拝堂の中にいた。
「神父さん、いよいよですね?」
「みなさん、よろしくお願いします。私たちで日本の未来を変えるのです。
この腐敗した日本の政治を浄化しようじゃありませんか」
「日本に光を!」
「弱き者が救われる社会を!」
「子供たちに夢と愛! そして希望を!」
片桐はガラスのゴブレットに注がれたワインをみんなに回した。
その盃が片桐に戻って来ると、片桐はそのゴブレットを大理石の床に叩きつけて砕いた。
「神父さん。では一人一殺ということで」
「この神国日本から『腐ったミカン』を捨て去りましょう!」
「一人一殺!」
「一人一殺!」
そして片桐たちはそれぞれ警備員の制服に着替えると、国葬の行われる千鳥ヶ淵記念ドームへと向かった。
囲炉裏の炭が赤く燃えていた。
真一君と沙織ちゃんが酷く落胆していた。
「洋介さん、どうして僕たちにここを出ることを言ってくれなかったんでしょうね?」
「家族なのにね?」
「一番辛かったのは洋介さんだったと思います。
君たちの顔を見たら悲しくなるからではないでしょうか?」
「でも私たちに黙って出て行くなんて・・・」
「また海外を歩いて来ると言っていました。
そしてまたいつの日か、この黄昏村に戻って来るかもしれません。
真っ黒に日焼けした顔で」
「そうか、旅行に行ったと思えばいいんですものね?」
「洋介さんはまた、この家に戻って来ますよ、必ず。
だって僕たち家族なんですから」
私たちは頷きあった。
だが私たちは洋介さんがここへは二度と戻らないことを知っていた。
「黄昏村の主要道路に緊急配備! 職質を掛けて引っ張れ!」
「了解しました!」
「武器を携帯している可能性が高い。十分注意しろ! ただし殺すな、生け捕りにしろ! いいな!」
「はい!」
公安たちが一気に色めき立った。
その頃、片桐は暗視ゴーグルを使い、ひとりで山越えをしていた。
そして明け方、自衛隊のヘリに回収され、市ヶ谷の本隊へと帰投した。
厳重なセキュリティシステムを幾度も通り、地下4階の作戦司令室に片桐は辿り着いた。
片桐は幕僚長の山神に敬礼をした。
「片桐一佐、これより『ヨハネの黙示録作戦』を開始する。
現場での指揮権はすべて貴様に与える」
「はっつ! これよりヒトサンマルマル(13時00分)『ヨハネの黙示録作戦』にかかります!」
「よし、かかれ!」
「はっつ!」
「片桐一佐、俺も後から行くからな」
片桐は山神幕僚長に敬礼をし、7人の使徒たちが待つ、教会へと向かった。
内閣官房調査室、いわゆる『内調』も行動を開始した。
「この令和の時代にクーデター計画など、実に馬鹿げた話だ。
あの自衛隊発足以来、最も切れ者と言われたカミソリ山神幕僚長、気でも触れたか?
退官まであと1年、黙って天下りすればいいものを」
「この法治国家、日本において要人暗殺なんてどうかしていますよ」
「内閣直属の我々も、あの人たちが何を考えているのか理解出来んよ。
自分たちで『別班』を秘密裏に組織しておきながら、都合が悪くなると今度は「潰せ」と言う」
「ヘンな話ですよね?」
「上はクーデターだと騒いでいるが、おそらくそれはあるまい。
自衛隊内部に大掛かりな不穏な動きはないからだ。いずれにせよ暗殺は絶対に阻止しなければならない。神父と7人の使徒を消せ。間抜けな公安に先を越されるなよ」
「分かりました」
片桐と7人の使徒たちは、都内の古い教会の礼拝堂の中にいた。
「神父さん、いよいよですね?」
「みなさん、よろしくお願いします。私たちで日本の未来を変えるのです。
この腐敗した日本の政治を浄化しようじゃありませんか」
「日本に光を!」
「弱き者が救われる社会を!」
「子供たちに夢と愛! そして希望を!」
片桐はガラスのゴブレットに注がれたワインをみんなに回した。
その盃が片桐に戻って来ると、片桐はそのゴブレットを大理石の床に叩きつけて砕いた。
「神父さん。では一人一殺ということで」
「この神国日本から『腐ったミカン』を捨て去りましょう!」
「一人一殺!」
「一人一殺!」
そして片桐たちはそれぞれ警備員の制服に着替えると、国葬の行われる千鳥ヶ淵記念ドームへと向かった。
囲炉裏の炭が赤く燃えていた。
真一君と沙織ちゃんが酷く落胆していた。
「洋介さん、どうして僕たちにここを出ることを言ってくれなかったんでしょうね?」
「家族なのにね?」
「一番辛かったのは洋介さんだったと思います。
君たちの顔を見たら悲しくなるからではないでしょうか?」
「でも私たちに黙って出て行くなんて・・・」
「また海外を歩いて来ると言っていました。
そしてまたいつの日か、この黄昏村に戻って来るかもしれません。
真っ黒に日焼けした顔で」
「そうか、旅行に行ったと思えばいいんですものね?」
「洋介さんはまた、この家に戻って来ますよ、必ず。
だって僕たち家族なんですから」
私たちは頷きあった。
だが私たちは洋介さんがここへは二度と戻らないことを知っていた。
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