★未完成交響曲

菊池昭仁

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第38話

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 海上自衛隊の夏服のような制服で外出するため、ハワイでは色んな嫌がらせも受けた。
 マックで「ラージサイズのコーラを下さい」と言うと、わざとラージサイズのアイスコーヒーを寄越したり、水を下さいと「ウォーター、プリーズ」というと聴こえないフリをする。
 仕方なく「ワラ!」と叫ぶとイライラしながら水を出す始末。ハワイのABCストアーに行くと、真珠湾攻撃の新聞が今もおみやげとして売られていた。

 
 私たちは折角ハワイに来たのだからとレストランでTボーン・ステーキを食べようということになり、4人で有名店に出掛けた。

 「お勧めを4人前」

 私たちはバドワイザーとポンド・ステーキを楽しんだ。
 テーブルでチェックをすると、それを見ていた日系二世のようなご夫婦がウエイターを呼んで私たちのレシートを見て、なにやら早口でまくし立てていた。部分的に分かったのは、

 「日本人の青年にこんな高い請求をして! やり直しなさい!」

 と叱ってくれていたようだった。おかげで請求が30ドルほど安くなった。
 私たちがそのご夫婦に礼を言うと、

 「日本の海軍の人?」
 「いえ、帆船・日本丸の実習生です」
 「船まで送って行ってあげよう」

 と言われ、キャデラックに乗せくれた。
 途中、ご夫婦が話をして、

 「良かったらウチに寄って行きませんか?」

 と言って下さり、クルマはハワイの高級住宅街へと入って行った。
 すばらしい豪邸だった。まるでハリウッドのビバリーヒルズのような屋敷だった。
 お屋敷の中に入ると、玄関にご家族のメモリアル・スペースがあり、沢山の家族写真やトロフィーや勲章などが飾ってあった。

 「こちらの方が息子さんですね?」

 その青年はアメリカ海軍の白い制服を着て写真に写っていた。

 「ネイビーのドクターなんだよ」
 「軍医さんですか?」
 「そうだよ」

 なるほど、ハワイで苦労した日系二世だけはあると私たちは感心した。
 お茶をごちそうになり、帰りにマカダミアナッツにチョコ、ビーフジャーキーなどをおみやげにいただき、本船まで送っていただいたので、お礼に日本丸の中を案内して、一緒に記念写真を撮った。
 気持ちがほっこりとした。


 家族にも色々土産を買った。親父には高級ブランデー、小学生の妹にはぬいぐるみ、おふくろにはGIVENCHYのバッグを買った。
 
 本船に戻り、バッグを確認すると、Made in Spain  と刻印がしてあり、騙されたと思った。

 「菊池、騙されたんじゃねえのか?」
 「スペインだもんな?」

 するとそれを見たパーサーが調べてくれた。

 「GIVENCHYはスペインでいいんだってよ」
 「フランスじゃなくてですか?」
 「そうらしいよ、良かったね?」

 私は安心した。
 ポリネシア文化センターやハナウマベイ、ヌアヌパリにパンチボウルなどを巡り、私はその時誓った。

 「新婚旅行は絶対ハワイに来よう」

 そして5年後、私はその誓いを実現した。

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