★ランブルフィッシュ

菊池昭仁

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第3話

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 15時にピンサロに出勤し、店の掃除と備品の補充を行う。そして18時頃になるとキャバクラの女たちを迎えに行った。

 「それから女に手を出せばどうなるかわかっているな?」
 
 入社の時、聖沢から厳命された。
 女との接点が多くなればそれだけ色恋沙汰になるのも当然だ。女は大事な商品である、それを盗めば容赦はされない。よくあることなのだろうと思った。

 時間にだらしない女が殆どだった。時間通りに迎えに行っても三十分以上も待たされた。
 彼女たちは男を信用しないし、自分たちより男性スタッフは下に見ている。
 それは聖沢の女の管理が行き届いている証拠だった。女たちは会長の言う事しか聞かない。
 会長とホットラインで結ばれており、気に食わないことがあるとすぐに会長に告げ口されるシステムだった。
 
 系列店のキャバクラにキャストをクルマで迎えに行くと、店に鍵が掛かって中からカラオケの音と女の子たちの笑い声が聞こえていた。
 既に2店舗のキャバ嬢たちを乗せていて、彼女たちも早く家に帰りたいはずだったが文句を言う者は誰もいない。  
 おそらくいつものことなのだろう。
 俺はリーダーの携帯に電話をしたが出なかった。
 15分くらいして店から出て来て不機嫌そうにクルマに乗り込んで来る女たち。

 「みんな待っていたんだぞ、一体何をやっていたんだ!」

 俺は語気を荒げた。

 「ウザい。私降りる」

 20歳の沙羅がワゴン車から降りて行ってしまった。
 リーダーのレイも誰も沙羅を止めようとしない。
 俺は仕方なくクルマを発進させた。


 すると5分位してすぐに聖沢から携帯に電話が掛かって来た。

 「川村、お前、沙羅ちゃんに何を言った? 俺のところに来て泣いているぞ。
 「ドライバーを変えてくれ」と言っている。送迎が終わったら俺の所に来い」
 「分かりました」


 
 女の子たちを送り終えて聖沢のところへ行った。
 聖沢は真顔で言った。

 「初めてだぞ、女の子に文句を言った奴は」
 「文句ではありません、迎えに行くと連絡したにもかかわらず、客もいないのに店でカラオケしていたのでそれを注意したまでです」
 「お前はクビだ」

 私が会長室を出ようとすると呼び止められた。

 「いいか川村? ウチの店で働く女の子たちはみんな心療内科だ。それをよく理解して管理しろ。
 常識がないから夜の店で働く、それを忘れるな」
 
 私は初日から風俗業界の洗礼を浴びた。


 
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