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第3話
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「なんで夜中にこんなことしなきゃならないのよー」
「それは俺が言いたいよ」
「だったら止めようよ」
「そうはいかない。始めたからには最後までやるんだ。
それが人間のあるべき姿だ」
「私はもう人間じゃない、廃人よ」
千雪と私はゴミ袋にゴミを詰め、マンションのごみ置き場へ何度も往復した。
ようやくゴミが無くなったのは朝の7時を過ぎていた。
埃を払い、掃除機をかけ、拭き掃除が完了したのはお昼近くになっていた。
「あー、やっと終わったー。いい気持ちー。こんなに広かったのね? この部屋。忘れてた」
千雪はソファに寝そべった。
東京湾の海風が、リビングを吹き抜けて行った。
私はベランダに出て、タバコに火を点けた。
千雪が私の背中に抱き付いて来た。
「ありがとう。凄くスッキリした」
「物には魂が宿る。だから物は少ない方がいい。
ゴミはダメだ、悪霊の集りになるからな?」
「ねえ、疲れたでしょ?」
「いい眺めだな? ここからの景色は」
「だからここに決めたの。東京タワーも見えるし、それに汐留っていい名前でしょ?」
「そうだな? 銀座にも近いし、いいところだ」
「お風呂、一緒に入ろうよ」
「だいぶ汚れたからな?」
浴槽に湯を張り、私が先に湯船に浸かった。
心地よい達成感があった。
「お邪魔しまーす」
恥ずかしそうに千雪がバスルームに入って来た。
「君の家だろ? こちらこそお邪魔してます」
アルコールがすっかり抜けた千雪は嬉しそうに笑った。
狭い浴室に私たちの笑い声が響いた。
千雪の肌は少し荒れていた。
アザや傷もあった。おそらく酒に酔って転倒したか、行きずりのセックスが原因なのかもしれない。
千雪は浴槽に体を沈めた。
私たちはキスをし、お互いのカラダを確かめ合った。
その時私は千雪の秘密を知ってしまった。
千雪の腕には、あのクスリの注射痕があった。
私たちはそれには触れず、お互いに体を洗った。
「うふっ ここ、こんなに硬くなってる」
「オスだからな? 俺も一応」
千雪は愛おしそうに、私のそそり立った男根をスポンジで丁寧に泡立てると、焦らすように上下させた。
「どう? 気持ちいい?」
私はそれに答える代わりに千雪の下半身に触れた。
「千雪のここはどうだ?」
「ねえ、早くベッドに行きましょうよ」
私たちは全裸のまま、「戦いの場」をベッドへと移動した。
私は千雪の腕の注射痕をじっくりと舐めた。
「気付いた? そうよ、私はそうゆう女なの。どう? あなたも一緒に楽しまない?」
私は千雪を抱き締め、耳元で囁くように言った。
「シャブは何でシャブって言うか知ってるか?」
「知らないわ、そんなこと」
「クスリをやると骨までボロボロになり、火葬すると骨も残らなくなる。
骨まで「しゃぶり尽くす」からシャブなんだ」
「じゃあ、私だけやってもいい?」
「俺との関係を今日で終わらせたいならやればいい」
「強烈な快感がカラダ中を駆け巡るのよ? 普通のセックスでは味わえない、脳が蕩けちゃいそうになるの」
「そうだろうな? でも俺は千雪と恋がしたい」
千雪は泣いた。
「私、どうしたらいいの?」
「俺を愛して欲しい。俺への愛を取るか? クスリを取るかだ? それは千雪が決めろ」
「抱いて、お願い強く!」
私は強く千雪を抱き締めた。
それは千雪のカラダを抱き締めたというより、すり抜けていきそうな愛を逃すまいとする抱擁だった。
「それは俺が言いたいよ」
「だったら止めようよ」
「そうはいかない。始めたからには最後までやるんだ。
それが人間のあるべき姿だ」
「私はもう人間じゃない、廃人よ」
千雪と私はゴミ袋にゴミを詰め、マンションのごみ置き場へ何度も往復した。
ようやくゴミが無くなったのは朝の7時を過ぎていた。
埃を払い、掃除機をかけ、拭き掃除が完了したのはお昼近くになっていた。
「あー、やっと終わったー。いい気持ちー。こんなに広かったのね? この部屋。忘れてた」
千雪はソファに寝そべった。
東京湾の海風が、リビングを吹き抜けて行った。
私はベランダに出て、タバコに火を点けた。
千雪が私の背中に抱き付いて来た。
「ありがとう。凄くスッキリした」
「物には魂が宿る。だから物は少ない方がいい。
ゴミはダメだ、悪霊の集りになるからな?」
「ねえ、疲れたでしょ?」
「いい眺めだな? ここからの景色は」
「だからここに決めたの。東京タワーも見えるし、それに汐留っていい名前でしょ?」
「そうだな? 銀座にも近いし、いいところだ」
「お風呂、一緒に入ろうよ」
「だいぶ汚れたからな?」
浴槽に湯を張り、私が先に湯船に浸かった。
心地よい達成感があった。
「お邪魔しまーす」
恥ずかしそうに千雪がバスルームに入って来た。
「君の家だろ? こちらこそお邪魔してます」
アルコールがすっかり抜けた千雪は嬉しそうに笑った。
狭い浴室に私たちの笑い声が響いた。
千雪の肌は少し荒れていた。
アザや傷もあった。おそらく酒に酔って転倒したか、行きずりのセックスが原因なのかもしれない。
千雪は浴槽に体を沈めた。
私たちはキスをし、お互いのカラダを確かめ合った。
その時私は千雪の秘密を知ってしまった。
千雪の腕には、あのクスリの注射痕があった。
私たちはそれには触れず、お互いに体を洗った。
「うふっ ここ、こんなに硬くなってる」
「オスだからな? 俺も一応」
千雪は愛おしそうに、私のそそり立った男根をスポンジで丁寧に泡立てると、焦らすように上下させた。
「どう? 気持ちいい?」
私はそれに答える代わりに千雪の下半身に触れた。
「千雪のここはどうだ?」
「ねえ、早くベッドに行きましょうよ」
私たちは全裸のまま、「戦いの場」をベッドへと移動した。
私は千雪の腕の注射痕をじっくりと舐めた。
「気付いた? そうよ、私はそうゆう女なの。どう? あなたも一緒に楽しまない?」
私は千雪を抱き締め、耳元で囁くように言った。
「シャブは何でシャブって言うか知ってるか?」
「知らないわ、そんなこと」
「クスリをやると骨までボロボロになり、火葬すると骨も残らなくなる。
骨まで「しゃぶり尽くす」からシャブなんだ」
「じゃあ、私だけやってもいい?」
「俺との関係を今日で終わらせたいならやればいい」
「強烈な快感がカラダ中を駆け巡るのよ? 普通のセックスでは味わえない、脳が蕩けちゃいそうになるの」
「そうだろうな? でも俺は千雪と恋がしたい」
千雪は泣いた。
「私、どうしたらいいの?」
「俺を愛して欲しい。俺への愛を取るか? クスリを取るかだ? それは千雪が決めろ」
「抱いて、お願い強く!」
私は強く千雪を抱き締めた。
それは千雪のカラダを抱き締めたというより、すり抜けていきそうな愛を逃すまいとする抱擁だった。
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