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第3話

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 1週間が経ち2週間が過ぎた。そして今日で1ヶ月。
 飼主は依然現れなかった。

 「こんなにかわいい子猫ちゃんなのにねえ? インスタにも載せているのになあ。
 ねえママ、このままこの子をウチで飼っちゃダメかなあ?」

 最近はママさんも俺を抱っこしたり撫でてくれていた。そして猫じゃらしで遊んでくれたりもしていたのである。

 「もうすっかりウチの猫だもんね? 一平とも仲が良さそうだし、しょうがない、ウチの猫にするかあ?」
 「ありがとうママ! ママ大好き!」
 「大丈夫なの? 世話をするのは純連だからね?」
 「わかってるよママ。良かったね? 子猫ちゃん」
 「ニャア(良かったニャ、ここなら安心ニャ。ありがとニャ、純連ニャン)」
 「名前はどうするの?」
 「えへへ、実はずっと前から決めていたの」
 「どんな名前なの? 「あんこ」はダメよ、間違って呼んだら大変なことになるから。まさか純連、アンタおでんが好きだからって「チクワブ」じゃないわよね?」
 「惜しい! この子は「ちくわ」にするつもりなんだ。かわいい名前でしょ?」
 「チクワかあ? なんだか「チワワ」みたいじゃない? だったら「なると」の方がいいんじゃないの?」 
 「NARUTOだと忍者のアニメみたいじゃない?」
 「だったらガンモドキは?」
 「それじゃあ長くない? 呼ぶのに「おいで、ガンモドキ」なんて言うの?」
 「だったら餅巾着もちきんちゃく。それを縮めて「モチキン」はどう? 美味しそうだし高級感があるでしょう? 餅巾着はお高いから」
 「なんだかヨダレが出てきちゃうね? あー、おでんが食べたーい!」
 「純連は食べることばっかりなんだから」
 「ということで子猫ちゃんは今日から「ちくわ」に命名します。
 今日から君は「ちくわ」だよ。ムギュ」
 「ニャア(まあ「チクワブ」よりはマシだニャ?)」

 銀次郎はこの日から「ちくわ」となり、「猫山ちくわ」となった。

 
 「ニャオン(よかったやニャいか? 「猫山ちくわ」にニャれて。でもなんや売れない落語家の前座みたいニャけったいなニャ前ニャな?)」
 「ニャオン(ニャ前なんかどうでもいいニャ。よろしくニャ、一平)」
 
 すると一平の隣に薄っすらと猫の姿が見えるではないか!
 
 「ニャオニャオ(それから紹介しとくニャ。こちらはスコッティシュ・フォールドのマルさんニャ。
 10年前に腎臓病で亡くなってしまった初代、猫山家の飼いニャンコ様ニャ。マル様、コイツが銀次郎、じゃニャかった「ちくわ」ですニャ。ほれちくわ、ご挨拶ニャ」
 「ニャオーン(初めまして猫山ちくわですニャ。以後お見知りおきをニャ)」
 「よろしくね? ちくわ」
 「ニャオニャオ(姐ニャンは猫語は喋らニャいんですかニャ?)」
 「猫は死ぬと人間の言葉が話せるようになるのよ。もちろん人間には私の姿は見えないし、言葉も聞こえないけどね?」
 「ニャー?(へえー、そうニャンねすね?)」
 「今ご主人の医師、猫山礼次郎さんはアフガニスタンで井戸を掘って、医療に当たっているわ。だから礼次郎先生がいない間は、私たちみんなでこの猫山家を守っていきましょうね?」
 「ニャア(了解ですニャ!)」
 「ニャオ(任せて下さいニャ、マル姐ニャン!)」


 ちなみに銀次郎の飼主が中々現れなかったのは、純連がわざとインスタグラムに「販売価格1億円」と書いておいたからであった。
 こうして銀次郎は「猫山ちくわ」となって、新たな生活が始まったのである。

 
 
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