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第3話
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新橋の蒸気機関車の前で待っていると、由美子が手を振りながら走って来た。
「陽介さーん!」
息を切らしながら由美子は言った。
「はあはあ、ごめんなさい、待たせちゃって」
「ここまで走って来たの?」
「そうよ、だって待たせちゃ悪いでしょ?」
由美子は小夜子と同じことを言った。
小夜子はいつも待ち合わせに走って来る女だった。
「ごめん、待った?」
はにかむ姿も由美子は小夜子にそっくりだった。
「銀座だからここからタクシーで行こう」
「うん」
私はタクシーを止め、由美子と銀座の焼鳥屋へと向かった。
後部座席に並んで座る時、彼女の太腿が私の膝に触れた。
店を出る時に着けて来たのだろう、ほんのりとディオールの香水の香りがした。
この香りは小夜子のお気に入りと同じだった。
「銀座の焼鳥屋さんなんて初めて、楽しみだなあ」
「たぶん気に入ってくれると思うよ。お任せなんだけど苦手な物はある?」
「苦手な人は多いけど、食べ物は平気、好き嫌いはありません。うふっ」
「それは良かった。ということは僕は由美ちゃんの苦手な男じゃないということでいいのかな?」
「当たり前じゃない、そうじゃなければ一緒にご飯なんか行きませんよ。陽介さんはうちのお店の常連さんだし。
あっ、今日、一緒に飲むことはお店には内緒にして下さいね?」
「わかっているよ」
すると由美子は私の膝にさりげなく手を置いた。
小さくてしっとりと柔らかい手だった。
繁盛店だったので、予め予約をしておいて良かった。店はほぼ満席だった。
早い時間であれば、銀座のホステスとの同伴客が多いが、金曜日の夜ということもあり、サラリーマンが数人と後はアベックだった。
「お飲み物は?」
「ビールでいいかい?」
「はい」
取り敢えず、私たちは生ビールで乾杯をした。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
由美子は美味しそうにビールを飲んだ。
細くて白い喉仏が上下し、色っぽいと思った。
ビールを飲む仕草も由美子は小夜子にそっくりだった。
「あー、美味しいー」
「由美ちゃんはいつも晩酌をするの?」
「しますよ。彼がいつもお酒を飲むので」
「彼? 由美ちゃんは同棲しているの?」
私はがっかりした。急にビールが苦く感じた。
「私、人妻さんなんです。子供もいるんですよ、小学4年生の女の子が。ルナって言います」
「いいのかい? 人妻さんが俺なんかと一緒に飲みに来て?」
「全然平気ですよ、だって今私、離婚調停中なんです」
「離婚調停中?」
「ええ、私、旦那と別居して、今は実家暮らしなんです」
そう言うと由美子は残ったビールを一気に飲み干した。
「お替りしてもいいですか?」
「もちろん」
「今日は久ぶりに酔いたい気分なんですよ。潰れちゃったら介抱して下さいね? 陽介?」
由美子は私のことを呼び捨てにした。
私はずっと女とご無沙汰だったこともあり、その由美子の言葉に欲情した。
彼女はビールを焼酎に変え、よく飲んでよく食べた。
「ねえ陽介、カラオケが歌いたい」
「カラオケかあ? 久しぶりだなあ」
「私、『逢いたくていま』が私の主題歌なの」
「MISIAだっけ?」
「そう、私あの歌が大好きなの」
私たちはカラオケボックスへと移動した。
移動中、由美子は歩きながら私に突然キスをして来た。
「初めて陽介を見た時から、あなたのことが好きだった」
彼女は私に腕を絡ませた。柔らかい乳房が私の腕に触れた。
「陽介さーん!」
息を切らしながら由美子は言った。
「はあはあ、ごめんなさい、待たせちゃって」
「ここまで走って来たの?」
「そうよ、だって待たせちゃ悪いでしょ?」
由美子は小夜子と同じことを言った。
小夜子はいつも待ち合わせに走って来る女だった。
「ごめん、待った?」
はにかむ姿も由美子は小夜子にそっくりだった。
「銀座だからここからタクシーで行こう」
「うん」
私はタクシーを止め、由美子と銀座の焼鳥屋へと向かった。
後部座席に並んで座る時、彼女の太腿が私の膝に触れた。
店を出る時に着けて来たのだろう、ほんのりとディオールの香水の香りがした。
この香りは小夜子のお気に入りと同じだった。
「銀座の焼鳥屋さんなんて初めて、楽しみだなあ」
「たぶん気に入ってくれると思うよ。お任せなんだけど苦手な物はある?」
「苦手な人は多いけど、食べ物は平気、好き嫌いはありません。うふっ」
「それは良かった。ということは僕は由美ちゃんの苦手な男じゃないということでいいのかな?」
「当たり前じゃない、そうじゃなければ一緒にご飯なんか行きませんよ。陽介さんはうちのお店の常連さんだし。
あっ、今日、一緒に飲むことはお店には内緒にして下さいね?」
「わかっているよ」
すると由美子は私の膝にさりげなく手を置いた。
小さくてしっとりと柔らかい手だった。
繁盛店だったので、予め予約をしておいて良かった。店はほぼ満席だった。
早い時間であれば、銀座のホステスとの同伴客が多いが、金曜日の夜ということもあり、サラリーマンが数人と後はアベックだった。
「お飲み物は?」
「ビールでいいかい?」
「はい」
取り敢えず、私たちは生ビールで乾杯をした。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
由美子は美味しそうにビールを飲んだ。
細くて白い喉仏が上下し、色っぽいと思った。
ビールを飲む仕草も由美子は小夜子にそっくりだった。
「あー、美味しいー」
「由美ちゃんはいつも晩酌をするの?」
「しますよ。彼がいつもお酒を飲むので」
「彼? 由美ちゃんは同棲しているの?」
私はがっかりした。急にビールが苦く感じた。
「私、人妻さんなんです。子供もいるんですよ、小学4年生の女の子が。ルナって言います」
「いいのかい? 人妻さんが俺なんかと一緒に飲みに来て?」
「全然平気ですよ、だって今私、離婚調停中なんです」
「離婚調停中?」
「ええ、私、旦那と別居して、今は実家暮らしなんです」
そう言うと由美子は残ったビールを一気に飲み干した。
「お替りしてもいいですか?」
「もちろん」
「今日は久ぶりに酔いたい気分なんですよ。潰れちゃったら介抱して下さいね? 陽介?」
由美子は私のことを呼び捨てにした。
私はずっと女とご無沙汰だったこともあり、その由美子の言葉に欲情した。
彼女はビールを焼酎に変え、よく飲んでよく食べた。
「ねえ陽介、カラオケが歌いたい」
「カラオケかあ? 久しぶりだなあ」
「私、『逢いたくていま』が私の主題歌なの」
「MISIAだっけ?」
「そう、私あの歌が大好きなの」
私たちはカラオケボックスへと移動した。
移動中、由美子は歩きながら私に突然キスをして来た。
「初めて陽介を見た時から、あなたのことが好きだった」
彼女は私に腕を絡ませた。柔らかい乳房が私の腕に触れた。
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