狂ったドリアン

菊池昭仁

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お笑いって何ですか?

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 松本人志の非道が話題になっている。
 ジジイの俺には吉本芸人を見て笑う人の気持がわからない。

 「何が面白いの? どこが面白いの?
 酒を飲みながら松本に気を遣って、自分たちしか分からないような話で馬鹿騒ぎをしたり、人をどついたり、裸になって大声で関西弁で喚き散らして・・・」

 不快である。
 横山やすしはダウンタウンを酷評した。「お前らのお笑いはお笑いやない」と。
 あの物静かな教授、坂本龍一までもが「ダウンタウンの登場でお笑いが変わってしまった」と嘆いていた。

 「爺さん、松本人志はお笑いの天才やで! キム兄とケンコバの見分けもつかんくせに!」

 確かにキム兄とケンコバの見分けはつかない。
 初めて見た時、「どこのチンピラ?」と思ってしまった。

 東日本の殆どの人間は、「関西人=吉本芸人」だと思っている。
 威圧的で自分が一番だと思っている。

 「なんや、関西人は納豆なんかよう食わんで。気色ワル」

 東の人間を平気で馬鹿にする。

 大阪で床屋に入った時、

 「お客さん、どっから来たん?」
 「福島からです」
 「福島? 知っとるでえ。仙台の上やろ? 北海道の?」

 いきなりタメ口だったが、それは嫌いではない。本音で付き合えるからだ。

 私は関西に友人が多い。
 いいやつばかりだ。
 下品で下劣な吉本芸人のような友人はひとりもいない。
 真面目で誠実でハートの熱い連中ばかりだ。
 松本人志のようなクズはいない。

 
 松本人志は論外だが、その松本を庇う連中はもっと嫌いだ。
 自民党の二階や森、安倍晋三の子分たちと同じだからだ。

 「私は松本さんの味方ですから。
 応援しています、がんばって下さい」

 それは犯された女性たちに「唾を吐く行為」だという事を知らない。
 あるいは「そんなん、ヤラんのわかっててホテルについて来たんとちゃうの?」
 と蔑んでいる。

 
 お笑いってなんだろう?

 それは辛い事が多い世の中を、笑い声で明るくすることだと思う。
 世の中の不公平や不条理、腐敗などを風刺しながら人に考えさせ、奮起させる力になるものだと思う。

 私は加藤茶も志村けんも好きではない。たけしもさんまも嫌いだ。
 お笑いが下品だからだ。

 でもそれが老若男女にはウケている。

 私はレオナルド熊さんが好きだった。
 あの独特の間合いが好きだった。
 笑った。

 横山やすしさんも破天荒だったが鯉のぼりの鯉のような芸人だった。
 爽快に風が吹き抜けて行くような芸風だった。

 間寛平さんも凄いと思う。
 辛坊治郎とは大違いだ。


 お笑いには温かさ、思いやりのあるやさしさがなくてはならない。
 自民党政治が角栄さんの頃とは違うのは、弱い人たちの立場に立った、温かい政治だったからそれが今でも評価されている。

 よく「笑わせても嗤われてはいけない」と言う。
 すでに受賞者が決まっているようなお笑いのコンテストに出るだけで持て囃される。
 とても芸があるとは思えない。

 チャップリンもバスター・キートンも、人を笑わすために命懸けだった。
 ただ金持ちになりたくてやったわけではない筈だ。
 結果的にカネが後からついて来ただけなのだ。
 彼らを本当のコメディアンと呼ぶ。

 でもナイツさんは好きだよ。

 
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