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その11
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レッサー・パンダのショウ・コウシュは沈んでいた。
「はあ~ ラオチュウ料理長、どうしたらしあわせになれますかねえ?」
「しあわせになりたいなら溜息は吐くな。どうしてしあわせになりたい?」
ラオチュウは中華鍋を振りながら言った。
「そりゃそうですよ、不幸になりたいレッサー・パンダなんて聞いたことがありませんよ。ジャイアント・パンダはよう知らんけど。
ジャイアント・パンダはいつもみんなから愛されているじゃないですか?
動物園の人気者ですからね!
料理長はいいですよ! 周珍平の秘密工作員だから」
「しあわせになるのは簡単だ」
「教えて下さいよ! しあわせになる秘訣を! レッサー・パンダのボクにもわかるように!」
「見わパンダ、聞かパンダ、言わパンダだよ」
「それって猿ですよね? 見わ猿、聞か猿、言わ猿。パンダじゃなくて」
「まあどっちでもいいことだ。嫌なことは見ない、聞かない、言わない。そうすれば幸福になれる」
「それだけですか?」
「そうだ、それだけだ」
「それはお腹の真っ黒なボクにはむずかしいかもしれませんねえ。人の不幸は密の味ですから。うへへ」
「それなら人の成功を喜んであげることだな?」
「それも無理ですよ! あの裏金の議員さんたち、何のお咎めもないじゃないですか! 恨んで憎んで妬んでいますよ、国民は」
「天網恢恢疎にして漏らさずだよ。アイツらはいずれ自滅して行く。
仮にそのまま長生きしたとしても、地獄で閻魔大王様が待っているよ、恐ろしい顔でな?」
「そうかなあ?」
「梅本だって罰を受けているじゃないか? お笑いの天才と言われた男の末路は哀れだ」
「それはそうですけど」
「それにショウはもう既にしあわせになっているじゃないか?」
「えっ? ボク、しあわせなんかじゃないですよ、こんな小さな街中華のボーイですよ?
こんなにかわいいのに。テヘペロ」
「目が見えて耳が聴こえて鼻も効く。手も足もあって枕になるフサフサの尻尾もある。そしてしゃべることも食べることもウンコもオシッコもすることが出来るじゃないか?
それは決して当たり前なんかじゃない、奇跡なんだ。
三度のまかないも食べられて、やるべき仕事もある、エアコンのある快適な家で眠ることも出来る。水浴びも出来るじゃないか? 休みの日にはメスのレッサー・パンダのショウ・ロンポウとも会えるしね?
しあわせとはな、今あるしあわせに気づくことなんだよ。
ないものを数えるんじゃない、今、自分にあるものを数えるんだ。
しあわせはショウの周りにたくさん落ちている。はい、海老チャーハン、あがったよ」
「しあわせになりたいなあ~」
「ほら、早く持っていかないと、折角の海老チャーハンが冷めちゃうぞ」
「はーい」
まだしあわせに気付かない、レッサー・パンダのショウ・コウシュであった。
「はあ~ ラオチュウ料理長、どうしたらしあわせになれますかねえ?」
「しあわせになりたいなら溜息は吐くな。どうしてしあわせになりたい?」
ラオチュウは中華鍋を振りながら言った。
「そりゃそうですよ、不幸になりたいレッサー・パンダなんて聞いたことがありませんよ。ジャイアント・パンダはよう知らんけど。
ジャイアント・パンダはいつもみんなから愛されているじゃないですか?
動物園の人気者ですからね!
料理長はいいですよ! 周珍平の秘密工作員だから」
「しあわせになるのは簡単だ」
「教えて下さいよ! しあわせになる秘訣を! レッサー・パンダのボクにもわかるように!」
「見わパンダ、聞かパンダ、言わパンダだよ」
「それって猿ですよね? 見わ猿、聞か猿、言わ猿。パンダじゃなくて」
「まあどっちでもいいことだ。嫌なことは見ない、聞かない、言わない。そうすれば幸福になれる」
「それだけですか?」
「そうだ、それだけだ」
「それはお腹の真っ黒なボクにはむずかしいかもしれませんねえ。人の不幸は密の味ですから。うへへ」
「それなら人の成功を喜んであげることだな?」
「それも無理ですよ! あの裏金の議員さんたち、何のお咎めもないじゃないですか! 恨んで憎んで妬んでいますよ、国民は」
「天網恢恢疎にして漏らさずだよ。アイツらはいずれ自滅して行く。
仮にそのまま長生きしたとしても、地獄で閻魔大王様が待っているよ、恐ろしい顔でな?」
「そうかなあ?」
「梅本だって罰を受けているじゃないか? お笑いの天才と言われた男の末路は哀れだ」
「それはそうですけど」
「それにショウはもう既にしあわせになっているじゃないか?」
「えっ? ボク、しあわせなんかじゃないですよ、こんな小さな街中華のボーイですよ?
こんなにかわいいのに。テヘペロ」
「目が見えて耳が聴こえて鼻も効く。手も足もあって枕になるフサフサの尻尾もある。そしてしゃべることも食べることもウンコもオシッコもすることが出来るじゃないか?
それは決して当たり前なんかじゃない、奇跡なんだ。
三度のまかないも食べられて、やるべき仕事もある、エアコンのある快適な家で眠ることも出来る。水浴びも出来るじゃないか? 休みの日にはメスのレッサー・パンダのショウ・ロンポウとも会えるしね?
しあわせとはな、今あるしあわせに気づくことなんだよ。
ないものを数えるんじゃない、今、自分にあるものを数えるんだ。
しあわせはショウの周りにたくさん落ちている。はい、海老チャーハン、あがったよ」
「しあわせになりたいなあ~」
「ほら、早く持っていかないと、折角の海老チャーハンが冷めちゃうぞ」
「はーい」
まだしあわせに気付かない、レッサー・パンダのショウ・コウシュであった。
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