★【完結】街中華『ちゃらんぽらん』(作品241015)

菊池昭仁

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その4

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 「酒や酒、酒持って来んかい!」

 老人が暴れている。

 「どうします? ラオチュウ料理長。
 あのお爺さん、長崎から出て来た元国会議員さんらしいんですけど」
 「これを持って行ってやれ」

 ラオチュウはコップをショウ・コウシュに渡した。
 それをお爺さんの前に運んで行くショウ・コウシュ。

 「お待たせしました」
 「遅い! このクソタヌキ!」
 「タヌキじゃありません! ボクは・・・」

 そのコップを一気に飲み干そうとしたお爺さん。

 「ゲボッ なんじゃこれ! 塩水やないかい!」

 するとラオチュウが声を掛けた。

 「それは国民が飲んでいる塩水です。
 あなたたちがいつも飲んでいる、富士屋の甘い『完熟・どっさり桃ネクター』ではありません」
 「なんやと! パンダのくせに生意気な事を言いおって! お前はバカか? バカなのか?
 ワシは長年、国民のために働いて来た政治家やぞ!
 誰にモノを言っておるんや!」
 「それは国民のためではなく、地元の有権者のためですよね?」
 「それがなぜ悪い? ワシは長崎県人から選出された代議士や!
 地元に貢献して何が悪い!」
 「あなたがしていたのは長崎の人のためではありません。
 自分が大臣になるための利益供与、つまり税金の還流です。
 地元の企業に便宜を図り、その見返りにカネを貰う。
 それを政治資金だと言い訳をする。
 それで国会議員と言えますか?」
 「やかましいわい! たかが5,000万やぞ5,000万!
 それで在宅起訴じゃ? ふざけるな!
 安倍場あべば派の中にはもっとワルい奴が沢山おるやないか!
 安牛田あんぎゅうだや村西、なぜワシばっかり起訴されて、議員を辞めないかんのや!
 ワシはもう84才やぞ! 地元長崎に銅像くらい立ててくれてもええやないか!」
 「本来、国会議員は65才定年にするべきなのです。
 いつまでも議員に居座ろうとするから国民の知らないところで役者が決められ、議員に有利な法律が出来てしまう。
 私は裏金が悪いとは言いません。
 問題なのはそれを国民のために使ったのかどうかなんです。
 『チューリップを見る会』とか、愛人や海外の有力政治家、反社の人間に渡すべきお金ではないのです。
 それらはすべて、国民の税金なのですから」
 「それ以上言うならアンタ、ワシは死ぬしかないな?」
 「私は自分から「死ぬ」と言って死んだ人を見たことがありません。
 本当に死ぬ人は黙って死んでしまうものです」
 「パンダのお前に何がわかる?
 後からやって来た東大出や二世、三世のボンボン、ボンクラ議員たちに先を越され、高卒のワシはカネで大臣の椅子を買うしかないんや。ワシは大臣になりたかった。
 それが子供の頃からの夢やった。
 もうええ、帰る。なんぼや?」

 するとショウ・コウシュが言った。

 「193,000パンダだよ」
 「ほら、200,000パンダ。釣りはいらん」
 「そうはいかないよ、これも税金なんだから。はい、7,000パンダのお返し。
 また来てね? お爺ちゃん」
 「お爺ちゃんやない! 先生と呼ばんかい!」

 お爺ちゃんはショウ・コウシュの手に1万円札を渡した。

 「タヌキ、さっきは悪かったな? チップや。
 これで笹でも食べてくれ」
 「ありがとうお爺さん! でもボク、タヌキじゃないからね? かわいいレッサーパンダだよ。
 テヘペロ」

 ショウ・コウシュは嬉しそうに1万円をすぐにポシェットに仕舞った。
 流石は腹が黒いだけはある。

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