尊敬と恋愛、時々友情。

憧れ

チャイムが鳴る5分前。

楓が鞄から携帯を取り出し机の中に直していた。うちの学校は、携帯自体持ち込み禁止な為、見つかった場合は没収されてしまう。

チャイムが鳴った途端、ちょっぴり太っちょの先生が入ってきた。
見た目は怖い感じではなく、優しそうな先生だ。
先生は、入ってきて早々、

「国語を担当する飯塚です。えっとー独身です。よろしくお願いします。」

と自己紹介すると毎回恒例の質問攻めになった。
「先生、どこの大学ですか？」という質問に対して
「国立の教育大学です」という答えに私は反応してしまった。

私の将来の夢が教師になることで、飯塚先生が行きたい大学の出身だったからだ。
それを分かった瞬間、先生のことを凄く尊敬した。何も知らない先生のことを出身大学を聞いただけで、尊敬するのは馬鹿げていると思う。

後に飯塚先生にたくさんお世話になることは、この時は思ってもいなかった。

先生が自己紹介している間も楓は、机の中で彼氏と連絡をとっていた。
私は彼女に話しかけることもなく、ただただ先生の話を聞いていた。

自己紹介が終わり授業が始まった途端、楓が私にノートの切れ端で手紙を書いて渡してきた。
中学生の頃、授業中に手紙交換なんてあまりしたことがなかった私は、授業中なのに。と不安とちょっとしたドキドキ感を感じながら私は、その手紙を開いた。

手紙の内容は、"やっほ～"から始まる普通の手紙だった。
どう返したらいいのか分からない。
私は、とりあえず、そのまま言葉を返すように書いて、1枚の紙切れを彼女に渡した。

すると何分か時間が経ち、再び隣から紙切れが飛んできた。
手紙の内容は、恋愛話によるものだった。
"好きな人はいるのか"という問いに対し、私は戸惑った。つい最近、振られたばかりだからである。さらに私が恋をしていた相手は、中学校の先生であった為、友達になって、2、3日の子にこの話は、ちょっと引かれるのではないかと不安があった。
そう思いながらも彼女には、いる。という返事だけして手紙を返した。
彼女は、何か聞きたがっている様子だったが、いい所で、予鈴がなった。
私は、少し安心してしまった。