36 / 48
春の嵐
1
しおりを挟む
二月十六日。風がごうごうとうねっている。並べられた掻盾や逆茂木が、いとも簡単に吹き飛ばされて転がった。
春の嵐だ。
昨晩おそくから吹きはじめた大風は、朝には雷雨を伴うものとなっていた。大粒の雨が、城の垣根や蔀を容赦なく叩いている。
増水した肱川の水流に、田口の軍舟がひっくり返されたり流されたりしていた。本陣はあっけなく水没し、濁流が河岸沿いの田畑にまであふれていた。
この日、かねてより軍議を招集していたために、城には景高、景平をはじめ、主だったものたちが集まっていた。荒天のなか七郎も久しぶりに姿を見せていた。田口の兵が大風で混乱しているので、単身潜りこむのはさほど難しくはなかったという。
通信は七郎を労うと、すぐさま海の様子を聞いた。七郎曰く、海は高波がひどく、できる限りの対策は施してきたが、もはやなるようにしかならない。むしろひとが波に浚われかねないので、水夫もみな高台に避難させてきた、とのことだった。
軍議には梶原友景も参加していた。野営地から来た友景は、気の毒に思えるほどに全身ずぶ濡れであった。横殴りの雨で蓑も笠もまったく意味をなさなかったらしい。通信は手を打って、城内の雑人に乾いた布を持ってこさせた。
「どうも田口教能は阿波に帰還したらしい」
濡れたままの直垂を絞る間もなく、友景が言った。
「この大嵐だ。奴らの本陣を見たろう。陸路で帰ることができるものは、被害が大きくならないうちに撤退したんだろう」
友景が話しているあいだにも、郎等らが甲斐甲斐しく体の水を拭きとっている。
「まあ、田口教能の撤退はいいとして、いまだこの城をかこんでいるあれらは?」
「帰れなくなったんじゃねぇの。舟で来たからあし馬がねぇとかそういう」
横から景高がひょいと口を挟む。
「しかし、ちょっと困りましたね。彼らも田口教能と同時に撤退してもらわないと。田口を追う形でないと、こちらの水軍が出せません」
信家の言葉に、座についている一同が呻いた。
「嵐がおさまれば奴らは順次撤退するでしょう。それにこの嵐では兄の率いる九州の水軍も、被害を受けているかもしれません」
友景の冷静な分析に、通信は首を縦に振った。
「ちょいと予定が後ろ倒しになるってか? でもそれを伝える術がもうねぇわな」
「九郎判官は」
「さぁ……どうでしょう」
義経の名前を出した通信に、友景が曖昧な表情を浮かべる。
「あっちの水軍、淡路の梶取なんだけれど、どうすると思う」
通信は七郎に話を振った。海のことは、この男がもっとも当を得たことを言う。
「淡路の――ようは、地元の馴れた航路を行くってんでしょ? なら、意地になって出航するかもしれねぇです」
「お前、おれが出せっていったら、どんな高波でも舟を出すかい?」
「西海ならやります」
再び一同は沈黙した。
義経の役割は陸地から屋島の平家を攪乱することである。それは沖から来る味方の水軍を頼りとした遊撃部隊ということでもあった。つまり後援が遅れれば遅れるほど、義経たちが危険にさらされるということでもある。
屋島で義経が討たれてしまったら、西国の源氏に味方する軍勢の士気は一気に下がるだろう。そして四国の平家方は息を吹きかえし、次々と勢力を増していく。それは通信にとっては痛手でしかない。
「では、こちらはやはり予定どおり十八日には出航しなければならないということか」
「嵐が通りすぎ次第、一気に追い立ててみましょうか。所詮、将のいない軍勢ですから散り散りになると思います」
友景が言った。
「じゃあ頃合いを見計らって、おれらが兵をまとめて海岸のとこまで引っぱっていきゃぁいいってこと?」
「兵たちには、すぐにでも城を発てるように準備をさせてあります」
景高の問いに、信家がうなずく。
やることは決まった。想定外の嵐ではあったが、もしこの嵐がなければ通信たちは土佐勢とともに、田口の軍勢と決戦をする覚悟であったから、むしろ良かったのかもしれない。
ただ、覚悟を決めていた気持ちの置き所がなくなって、少しふわふわとしていると思う。出鼻をくじかれた、とでもいうものだろうか。烈風が、あざ笑うかのように轟々と蔀を叩いた。
その後、座にいた一同は翌日の戦勝を願って、ささやかに杯を重ねた。肴は軽く干した魚である。七郎の持参した海の幸に、通信は舌鼓を打った。
ほろりと酔いが適度にまわり、皆が充実した気持ちになっていた頃。急に城内に兵たちの喚く声が響いた。信家が短刀を手にして腰をあげる。敵が攻めてきたのかと全員が体を硬くした、そのときだ。
庭に面している蔀戸がこじ開けられた。すぐさま大粒の雨が室内に吹きこんでくる。雨粒を払いながら庭に目をやると、全身ずぶ濡れの兵と女が、泥にまみれることも厭わずに平伏している。高縄城からの伝令兵だった。兵は、緊急のために馬を潰しかけながら駆けてきたのだと言った。
薄気味悪い黄色い空に、紫がかった黒雲が風に蹴散らされて筋を引いている。なんとも不穏な空模様であった。吹き荒れる風はいまだおさまらず、柱がぎしぎしと悲鳴をあげている。
通信は、板の間が濡れるのも構わずに、兵と女を室内に上げてやった。蔀が開いていると、酔いが風に浚われてしまいそうだったからだ。
「高縄城が軍勢に包囲されました」
「え」
伝令兵の言葉に、通信は息をのんだ。帰還しがてら田口教能が報復に高縄城を攻めたのか。否、動きが早すぎるだろう。高縄城からここまで、この伝令とて一日は駆けてきたはずだ。いまさきほど撤退した田口勢が、城を包囲したとは考えにくい。
「どこの手か」
「新居の軍勢です」
田口教能が撤退したと思えば、今度は新居玉氏か。信家と忠員が、苦々しい表情を浮かべていた。
これまでは無益な争いを避けようと、玉氏の娘の美津と通信が婚姻関係を結ぶことによって、両氏間での均衡を保っていた。しかし新居の親戚でもある高市を破り、比志城に籠もる通信を、さすがの玉氏も見逃せなくなったのだろう。あるいは平家から圧力があったのか。
それに美津と離縁したいま、通信と玉氏とのあいだには、なんの繋がりもなくなっている。玉氏が高縄城を攻めるのは、考えてみれば自然なことでもあった。
高縄城には籠城の構えがある。構えがあるとはいっても、数少ない兵しか残っていない高縄城で戦う気など通経にはないはずだ。数日、思わせぶりに軍勢を引きつけたら、さっさと裏手の山に逃げこんで落ちのびるつもりだろう。あの山にはそういった逃げ道や、隠れ場所となる獣道や洞窟がたくさんある。
「それで、その……奥方様のことをどうしましょうやと」
「いまなんて」
伝令兵の背後に隠れていた女が、通信の足もとに擦り寄ってきた。どこかで見たことのある顔だ。たしか美津に仕えていた侍女のうちの一人だったか。
「旦那様。わたくし萩野が恐れ多くも、もうしあげます」
侍女――萩野は額を床にこすりつけた。かぼそい声はうわずって、細い肩が小刻みに震えている。雨に濡れてこごえているのだろうか。
「どうぞ、奥様をお助けください」
「どういうことか。奥はもう新居殿のもとに」
「いいえ、いいえ。まだお城にいらっしゃいます」
萩野が通信を見あげた。
「新居殿は、とにかく娘を返せと通経様に書状を送ってきております。しかし、奥様は通経様の説得には応じず」
「だから、おれは、あのとき、実家に帰せとお前たちに命じただろうが!」
春の嵐だ。
昨晩おそくから吹きはじめた大風は、朝には雷雨を伴うものとなっていた。大粒の雨が、城の垣根や蔀を容赦なく叩いている。
増水した肱川の水流に、田口の軍舟がひっくり返されたり流されたりしていた。本陣はあっけなく水没し、濁流が河岸沿いの田畑にまであふれていた。
この日、かねてより軍議を招集していたために、城には景高、景平をはじめ、主だったものたちが集まっていた。荒天のなか七郎も久しぶりに姿を見せていた。田口の兵が大風で混乱しているので、単身潜りこむのはさほど難しくはなかったという。
通信は七郎を労うと、すぐさま海の様子を聞いた。七郎曰く、海は高波がひどく、できる限りの対策は施してきたが、もはやなるようにしかならない。むしろひとが波に浚われかねないので、水夫もみな高台に避難させてきた、とのことだった。
軍議には梶原友景も参加していた。野営地から来た友景は、気の毒に思えるほどに全身ずぶ濡れであった。横殴りの雨で蓑も笠もまったく意味をなさなかったらしい。通信は手を打って、城内の雑人に乾いた布を持ってこさせた。
「どうも田口教能は阿波に帰還したらしい」
濡れたままの直垂を絞る間もなく、友景が言った。
「この大嵐だ。奴らの本陣を見たろう。陸路で帰ることができるものは、被害が大きくならないうちに撤退したんだろう」
友景が話しているあいだにも、郎等らが甲斐甲斐しく体の水を拭きとっている。
「まあ、田口教能の撤退はいいとして、いまだこの城をかこんでいるあれらは?」
「帰れなくなったんじゃねぇの。舟で来たからあし馬がねぇとかそういう」
横から景高がひょいと口を挟む。
「しかし、ちょっと困りましたね。彼らも田口教能と同時に撤退してもらわないと。田口を追う形でないと、こちらの水軍が出せません」
信家の言葉に、座についている一同が呻いた。
「嵐がおさまれば奴らは順次撤退するでしょう。それにこの嵐では兄の率いる九州の水軍も、被害を受けているかもしれません」
友景の冷静な分析に、通信は首を縦に振った。
「ちょいと予定が後ろ倒しになるってか? でもそれを伝える術がもうねぇわな」
「九郎判官は」
「さぁ……どうでしょう」
義経の名前を出した通信に、友景が曖昧な表情を浮かべる。
「あっちの水軍、淡路の梶取なんだけれど、どうすると思う」
通信は七郎に話を振った。海のことは、この男がもっとも当を得たことを言う。
「淡路の――ようは、地元の馴れた航路を行くってんでしょ? なら、意地になって出航するかもしれねぇです」
「お前、おれが出せっていったら、どんな高波でも舟を出すかい?」
「西海ならやります」
再び一同は沈黙した。
義経の役割は陸地から屋島の平家を攪乱することである。それは沖から来る味方の水軍を頼りとした遊撃部隊ということでもあった。つまり後援が遅れれば遅れるほど、義経たちが危険にさらされるということでもある。
屋島で義経が討たれてしまったら、西国の源氏に味方する軍勢の士気は一気に下がるだろう。そして四国の平家方は息を吹きかえし、次々と勢力を増していく。それは通信にとっては痛手でしかない。
「では、こちらはやはり予定どおり十八日には出航しなければならないということか」
「嵐が通りすぎ次第、一気に追い立ててみましょうか。所詮、将のいない軍勢ですから散り散りになると思います」
友景が言った。
「じゃあ頃合いを見計らって、おれらが兵をまとめて海岸のとこまで引っぱっていきゃぁいいってこと?」
「兵たちには、すぐにでも城を発てるように準備をさせてあります」
景高の問いに、信家がうなずく。
やることは決まった。想定外の嵐ではあったが、もしこの嵐がなければ通信たちは土佐勢とともに、田口の軍勢と決戦をする覚悟であったから、むしろ良かったのかもしれない。
ただ、覚悟を決めていた気持ちの置き所がなくなって、少しふわふわとしていると思う。出鼻をくじかれた、とでもいうものだろうか。烈風が、あざ笑うかのように轟々と蔀を叩いた。
その後、座にいた一同は翌日の戦勝を願って、ささやかに杯を重ねた。肴は軽く干した魚である。七郎の持参した海の幸に、通信は舌鼓を打った。
ほろりと酔いが適度にまわり、皆が充実した気持ちになっていた頃。急に城内に兵たちの喚く声が響いた。信家が短刀を手にして腰をあげる。敵が攻めてきたのかと全員が体を硬くした、そのときだ。
庭に面している蔀戸がこじ開けられた。すぐさま大粒の雨が室内に吹きこんでくる。雨粒を払いながら庭に目をやると、全身ずぶ濡れの兵と女が、泥にまみれることも厭わずに平伏している。高縄城からの伝令兵だった。兵は、緊急のために馬を潰しかけながら駆けてきたのだと言った。
薄気味悪い黄色い空に、紫がかった黒雲が風に蹴散らされて筋を引いている。なんとも不穏な空模様であった。吹き荒れる風はいまだおさまらず、柱がぎしぎしと悲鳴をあげている。
通信は、板の間が濡れるのも構わずに、兵と女を室内に上げてやった。蔀が開いていると、酔いが風に浚われてしまいそうだったからだ。
「高縄城が軍勢に包囲されました」
「え」
伝令兵の言葉に、通信は息をのんだ。帰還しがてら田口教能が報復に高縄城を攻めたのか。否、動きが早すぎるだろう。高縄城からここまで、この伝令とて一日は駆けてきたはずだ。いまさきほど撤退した田口勢が、城を包囲したとは考えにくい。
「どこの手か」
「新居の軍勢です」
田口教能が撤退したと思えば、今度は新居玉氏か。信家と忠員が、苦々しい表情を浮かべていた。
これまでは無益な争いを避けようと、玉氏の娘の美津と通信が婚姻関係を結ぶことによって、両氏間での均衡を保っていた。しかし新居の親戚でもある高市を破り、比志城に籠もる通信を、さすがの玉氏も見逃せなくなったのだろう。あるいは平家から圧力があったのか。
それに美津と離縁したいま、通信と玉氏とのあいだには、なんの繋がりもなくなっている。玉氏が高縄城を攻めるのは、考えてみれば自然なことでもあった。
高縄城には籠城の構えがある。構えがあるとはいっても、数少ない兵しか残っていない高縄城で戦う気など通経にはないはずだ。数日、思わせぶりに軍勢を引きつけたら、さっさと裏手の山に逃げこんで落ちのびるつもりだろう。あの山にはそういった逃げ道や、隠れ場所となる獣道や洞窟がたくさんある。
「それで、その……奥方様のことをどうしましょうやと」
「いまなんて」
伝令兵の背後に隠れていた女が、通信の足もとに擦り寄ってきた。どこかで見たことのある顔だ。たしか美津に仕えていた侍女のうちの一人だったか。
「旦那様。わたくし萩野が恐れ多くも、もうしあげます」
侍女――萩野は額を床にこすりつけた。かぼそい声はうわずって、細い肩が小刻みに震えている。雨に濡れてこごえているのだろうか。
「どうぞ、奥様をお助けください」
「どういうことか。奥はもう新居殿のもとに」
「いいえ、いいえ。まだお城にいらっしゃいます」
萩野が通信を見あげた。
「新居殿は、とにかく娘を返せと通経様に書状を送ってきております。しかし、奥様は通経様の説得には応じず」
「だから、おれは、あのとき、実家に帰せとお前たちに命じただろうが!」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
陸のくじら侍 -元禄の竜-
陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた……
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
三国志〜終焉の序曲〜
岡上 佑
歴史・時代
三国という時代の終焉。孫呉の首都、建業での三日間の攻防を細緻に描く。
咸寧六年(280年)の三月十四日。曹魏を乗っ取り、蜀漢を降した西晋は、最後に孫呉を併呑するべく、複数方面からの同時侵攻を進めていた。華々しい三国時代を飾った孫呉の首都建業は、三方から迫る晋軍に包囲されつつあった。命脈も遂に旦夕に迫り、その繁栄も終止符が打たれんとしているに見えたが。。。
異・雨月
筑前助広
歴史・時代
幕末。泰平の世を築いた江戸幕府の屋台骨が揺らぎだした頃、怡土藩中老の三男として生まれた谷原睦之介は、誰にも言えぬ恋に身を焦がしながら鬱屈した日々を過ごしていた。未来のない恋。先の見えた将来。何も変わらず、このまま世の中は当たり前のように続くと思っていたのだが――。
<本作は、小説家になろう・カクヨムに連載したものを、加筆修正し掲載しています>
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名とは一切関係ありません。
※この物語は、「巷説江戸演義」と題した筑前筑後オリジナル作品企画の作品群です。舞台は江戸時代ですが、オリジナル解釈の江戸時代ですので、史実とは違う部分も多数ございますので、どうぞご注意ください。また、作中には実際の地名が登場しますが、実在のものとは違いますので、併せてご注意ください。
神造のヨシツネ
ワナリ
SF
これは、少女ウシワカの滅びの物語――。
神代の魔導と高度文明が共存する惑星、ヒノモト。そこは天使の魔導鎧を科学の力で蘇らせたロボット『機甲武者』で、源氏、平氏、朝廷が相争う戦乱の星。
混迷を深める戦局は、平氏が都落ちを目論み、源氏がそれを追って首都キョウトに進撃を開始。そんな中、少女ウシワカは朝廷のツクモ神ベンケイと出会い、神造の機甲武者シャナオウを授けられる。
育ての親を討たれ、平氏討滅を誓い戦士へと覚醒するウシワカ。そして戦地ゴジョウ大橋で、シャナオウの放つ千本の刃が、新たなる争乱の幕を切って落とす。
【illustration:タケひと】
北武の寅 <幕末さいたま志士伝>
海野 次朗
歴史・時代
タイトルは『北武の寅』(ほくぶのとら)と読みます。
幕末の埼玉人にスポットをあてた作品です。主人公は熊谷北郊出身の吉田寅之助という青年です。他に渋沢栄一(尾高兄弟含む)、根岸友山、清水卯三郎、斎藤健次郎などが登場します。さらにベルギー系フランス人のモンブランやフランスお政、五代才助(友厚)、松木弘安(寺島宗則)、伊藤俊輔(博文)なども登場します。
根岸友山が出る関係から新選組や清河八郎の話もあります。また、渋沢栄一やモンブランが出る関係からパリ万博などパリを舞台とした場面が何回かあります。
前作の『伊藤とサトウ』と違って今作は史実重視というよりも、より「小説」に近い形になっているはずです。ただしキャラクターや時代背景はかなり重複しております。『伊藤とサトウ』でやれなかった事件を深掘りしているつもりですので、その点はご了承ください。
(※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる