神様の胃袋は満たされない

叶 青天

文字の大きさ
19 / 20
7 犬小屋

しおりを挟む
  ♢    ♢    ♢

 それから俺は昴くんの隣に立つために必要なことは全部やった。
 常識と呼ばれるもの、幼稚園での子ども達の様子を観察し、真似した。
 ねえ、昴くんはどんな人が好き?
 優しくて、なんでも出来て、完璧なら昴くんは褒めてくれる?
 凄いねって笑ってくれる?
 また、俺の為にお菓子を作って、食べさせてくれる?
 ねぇ、昴くんの隣に立つためなら俺、何でもするよ。
 この顔で笑うと、色んな人が俺の事を好きになった。そんなの興味ないけれど。昴くんのためにやってる事なんだから、関わらなくてもいいよ? でも昴くんが優しい俺を好きならば、俺は誰に対しても優しくて穏やかな人間になれるんだ。

 ……

「そ、そらくんは、足も早くて、お勉強もたくさんできて、す、すごいなあ……」
「昴くんだって、お菓子作るの上手で凄いよ!」
「ぼ、ぼくは……それしか……あ、そういえば××さんが、そらくんのこと、すきだって言っててね、そらくんかっこいいからって」
「……昴くん、嫌?」
「……? ど、どうして? ぼ、ぼくも、そらくんかっこいいなって思ってるよ? そらくんは、すごくかっこいい! ぼ、ぼくもそらくんみたいに、かみのけとか、き、切ろうかなあ?」
「……ありがとう! でも昴くんは今のままがいいよ。昴くんは……あまり顔を見せない方が、いいかな?」
「ぁっ……そ、そうだよね……ぼ、ぼくの顔なんて、隠してた方が、いいよ、ね」
「そうだよ。昴くんは前髪長い方が似合うよ? 俺はその方が好きだなあ」

 ……

「あっ……そ、そらくん……! あの、あのね! ケーキね、昨日、おばあちゃんと、つ、作ったの! そらくんのお誕生日だから、持ってくるね……!!」
「も、持ってきたよ……っわああ! え、うそ……ご、ごめんなさ……落としちゃっ……ぅ……ぁあ……」
「……昴くん、大丈夫だよ。ほら、まだ上の方は食べれるし。
 ねぇ、昴くん。昴くんの手でさ、食べさせて?」
「ふぇ……? でも、床に落ちたの……ぐちゃぐちゃだし……手だと、その……き、きたないよ?」
「ね、お願い?」
「ぅ……うん……じゃあ、上の、苺だけ……
 あ……あーん……?」
「ん……あはは! すっごく甘くて美味し……
 昴くん、ありがとう」

 ……

「そ、空くん! これクッキー焼いたのあげるね」
「わあ、ありがとう! ……あれ? その袋は?」
「あ、え、えっと……この前図書委員会で一緒になった××さん、この前お世話になったから、お礼に渡そうかなって」
「え? それはやめた方がいいと思うなあ」
「……え?」
「だって昴くんの手作り……うん、手作りのお菓子ってそこまで親しくない人から貰うの、ちょっと……」
「あ……そ、そうだよね……き、きもちわるい……よね……」
「ねぇ、よかったらそれ全部欲しいな? 一緒に食べようよ!」
「そ、空くんは……嫌じゃ、ないの?」
「俺は昴くんのお菓子大好き! 昴くんが作ったお菓子、これからも俺に食べさせてね。そうだ! お礼に夜ごはん作るから、うちに泊まりに来てよ!」
「ぁ……うん……! そ、空くんは本当に、こんな自分にも、優しく……本当に、ありがとう。空くんは、すごいなぁ……」

 ……

「うぅ、難しい……」
「ここの現代語訳、もう一度本文を読んでみて? これは謙譲の意味が含まれているから……」
「えっと……あ、そうか……。答えは、これ、かな?」
「うん、昴くん正解だよ!」
「空くんの教え方が上手だから……空くんに教えてもらうと、授業よりも分かりやすいよ。空くんが先生だったらいいのになあ」
「昴くん、俺が先生になったら嬉しい?」
「え……空くんが先生? それ、凄くいいと思うよ! 空くんみたいな先生だったら、勉強が楽しくなると思うなぁ」
「ふぅん、じゃあ俺、先生になろうかな!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話〜君の想いが届くまで〜

一優璃 /Ninomae Yuuri
BL
異世界での記憶を胸に、元の世界へ戻った真白。 けれど、彼を待っていたのは あの日とはまるで違う姿の幼馴染・朔(さく)だった。 「よかった。真白……ずっと待ってた」 ――なんで僕をいじめていた奴が、こんなに泣いているんだ? 失われた時間。 言葉にできなかった想い。 不器用にすれ違ってきたふたりの心が、再び重なり始める。 「真白が生きてるなら、それだけでいい」 異世界で強くなった真白と、不器用に愛を抱えた朔の物語。 ※第二章…異世界での成長編 ※第三章…真白と朔、再会と恋の物語

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...