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7 犬小屋

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 それから俺は昴くんの隣に立つために必要なことは全部やった。
 常識と呼ばれるもの、幼稚園での子ども達の様子を観察し、真似した。
 ねえ、昴くんはどんな人が好き?
 優しくて、なんでも出来て、完璧なら昴くんは褒めてくれる?
 凄いねって笑ってくれる?
 また、俺の為にお菓子を作って、食べさせてくれる?
 ねぇ、昴くんの隣に立つためなら俺、何でもするよ。
 この顔で笑うと、色んな人が俺の事を好きになった。そんなの興味ないけれど。昴くんのためにやってる事なんだから、関わらなくてもいいよ? でも昴くんが優しい俺を好きならば、俺は誰に対しても優しくて穏やかな人間になれるんだ。

 ……

「そ、そらくんは、足も早くて、お勉強もたくさんできて、す、すごいなあ……」
「昴くんだって、お菓子作るの上手で凄いよ!」
「ぼ、ぼくは……それしか……あ、そういえば××さんが、そらくんのこと、すきだって言っててね、そらくんかっこいいからって」
「……昴くん、嫌?」
「……? ど、どうして? ぼ、ぼくも、そらくんかっこいいなって思ってるよ? そらくんは、すごくかっこいい! ぼ、ぼくもそらくんみたいに、かみのけとか、き、切ろうかなあ?」
「……ありがとう! でも昴くんは今のままがいいよ。昴くんは……あまり顔を見せない方が、いいかな?」
「ぁっ……そ、そうだよね……ぼ、ぼくの顔なんて、隠してた方が、いいよ、ね」
「そうだよ。昴くんは前髪長い方が似合うよ? 俺はその方が好きだなあ」

 ……

「あっ……そ、そらくん……! あの、あのね! ケーキね、昨日、おばあちゃんと、つ、作ったの! そらくんのお誕生日だから、持ってくるね……!!」
「も、持ってきたよ……っわああ! え、うそ……ご、ごめんなさ……落としちゃっ……ぅ……ぁあ……」
「……昴くん、大丈夫だよ。ほら、まだ上の方は食べれるし。
 ねぇ、昴くん。昴くんの手でさ、食べさせて?」
「ふぇ……? でも、床に落ちたの……ぐちゃぐちゃだし……手だと、その……き、きたないよ?」
「ね、お願い?」
「ぅ……うん……じゃあ、上の、苺だけ……
 あ……あーん……?」
「ん……あはは! すっごく甘くて美味し……
 昴くん、ありがとう」

 ……

「そ、空くん! これクッキー焼いたのあげるね」
「わあ、ありがとう! ……あれ? その袋は?」
「あ、え、えっと……この前図書委員会で一緒になった××さん、この前お世話になったから、お礼に渡そうかなって」
「え? それはやめた方がいいと思うなあ」
「……え?」
「だって昴くんの手作り……うん、手作りのお菓子ってそこまで親しくない人から貰うの、ちょっと……」
「あ……そ、そうだよね……き、きもちわるい……よね……」
「ねぇ、よかったらそれ全部欲しいな? 一緒に食べようよ!」
「そ、空くんは……嫌じゃ、ないの?」
「俺は昴くんのお菓子大好き! 昴くんが作ったお菓子、これからも俺に食べさせてね。そうだ! お礼に夜ごはん作るから、うちに泊まりに来てよ!」
「ぁ……うん……! そ、空くんは本当に、こんな自分にも、優しく……本当に、ありがとう。空くんは、すごいなぁ……」

 ……

「うぅ、難しい……」
「ここの現代語訳、もう一度本文を読んでみて? これは謙譲の意味が含まれているから……」
「えっと……あ、そうか……。答えは、これ、かな?」
「うん、昴くん正解だよ!」
「空くんの教え方が上手だから……空くんに教えてもらうと、授業よりも分かりやすいよ。空くんが先生だったらいいのになあ」
「昴くん、俺が先生になったら嬉しい?」
「え……空くんが先生? それ、凄くいいと思うよ! 空くんみたいな先生だったら、勉強が楽しくなると思うなぁ」
「ふぅん、じゃあ俺、先生になろうかな!」
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