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第4章 アリーシア一家の危機
第22話 皇帝陛下に謁見後、地下牢獄に送られる
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「お父さま、どうかご無事で。カシウス皇子のこと、お願いします」
翌朝。アリーシアは、邸宅の前で旅立つエステルハージ侯爵を見送る。
「もちろんだ。これだけ証拠がそろえば、西の王国の世論を動かすこともできる。できるだけ早く戻ってくるよ」
それだけ言い残し、エステルハージ侯爵を乗せた馬車は去っていく。
「ぜったいにだいじょーぶだよ! だって、今回はおじーさまもいるし、前とはぜんぜん状況も違うし」
前世では、もともと外交官である父の死を発端とする紛争が発生しており、両国の感情も悪化していた。すでに強硬派の意見が通りやすい状況だったのだ。
その時のことを知っていると、今回の開戦は準備不足と言える。
(そうよ、きっと大丈夫よ。無事に帰ってきて、カシウス様)
アリーシアは西の方向に向けて瞳を閉じ祈る。
目をあけた時、別の馬車が、エステルハージ邸にやってくるのが見えた。
「アリーシア侯爵令嬢ですね? 皇帝陛下がお召しです。すぐに準備をして、皇宮までおこしください」
(陛下からの呼び出し? いったいどういったご用なのかしら?)
エステルハージ侯爵と入れ替わる形の呼び出しに、アリーシアは困惑する。
だが、皇帝陛下に呼び出されて向かわないわけにはいかない。
アリーシアは急ぎ準備を整え、皇宮へと向かう。
牢獄の時と同じく、みーちゃんには巾着状の袋の中に隠れて入ってもらい、一緒に連れていく。
皇宮に着くと、アリーシアはすぐに謁見の間に通された。
そこには皇帝陛下をはじめ、皇后や第二皇子、そして主だった臣下もそろっている。ぴんと張り詰めた空気がただよっており、居心地の悪さを感じる。
「アリーシアと言ったか、よく来てくれた。そなたから、タリマンドでのことを詳しく聞かせてほしい。……カシウスは西の王国の奴らへの対応があったからな」
(タリマンドのお話が聞きたいということだったのね)
理由がわかり、アリーシアはほっとする。
陛下にとっても、タリマンドでのことは複雑な思いがあるのだろう。
戦争には勝ち、併合したものの、その時の傷がもとで足が不自由になってしまった。それに、カシウス皇子の母である前皇妃の尽力で講和となったが、カシウス皇子を産んだ後すぐに亡くなってしまい、タリマンドとの関係は悪いままだ。
「タリマンドに着き、カシウス皇子が、すぐに疫病の発生源を探しあて、治療するための薬の作成を指示しました。また、タリマンドの宰相になっていた、ヴァルゲという男が西の王国の間者であることもつきとめました」
陛下はもちろん周囲の者たちも静かにアリーシアの言葉に耳を傾けている。
「カシウス皇子の活躍により、タリマンドの疫病は大きくなる前に収束できました。これも、カシウス皇子の派遣を裁可した、皇帝陛下の威光の賜物かと存じます」
ここぞとばかりに、アリーシアはカシウス皇子の功績を伝える。
「うむ、戦場での槍さばきについては知っていたが、まさか医術にも通じているとはな」
「は、はい、皇宮の書物をよく読んでいたと伺っております」
本当はみーちゃんからの情報が大きかったが、それを伝えることはできない。
「ところで、カシウスはなぜタリマンドにそなたを連れて行ったのだ? 疫病が発生しているところに貴族令嬢を連れていく理由などあるまい」
「そ、それは……カシウス殿下にはわたしの後見人となって頂きました。デビュタントでの事件の直後でしたし、手元において、護っていただけたのだと考えております」
真実をのべることはできないため、それらしい言い訳を言うしかない。
「たしかに、あの事件があったな。ならば無理からぬことか。てっきり、カシウスはそなたに特別な感情を抱いているものと思っていたが」
「そ、それは! わ、わたしにはわかりかねます」
カシウス皇子が自分のことを大切にしてくれているのは間違いない。
だけど、それが恋愛感情なのかどうかはわからない。
「まあいい。それよりそなたのことを聞かせてくれ。タリマンドでは『形代を持つ聖女』と呼ばれているそうだな?」
「は、はい。わたしもカシウス皇子と同じく母がタリマンド出身ですので。親しみやすかったのでしょう」
子供たちから「人形を持ったお姉ちゃん」と呼ばれていたことが、いつの間にか大人たちからも「形代を持つ聖女」と呼ばれることにつながっていた。
自身としては大層な名で呼ばれるほど活躍したとは思っておらず、気恥ずかしい。
「タリマンドでは、常に形代――人形を持っていたそうだが? 何か理由があるのか?」
「そ、それは……母の形見の品で。母の故郷であるタリマンドに連れていってあげたかったのです」
みーちゃんのことが子供受けにつながったのは間違いなく、そういう意味ではタリマンドとの和平に一役買ったといえなくもない。
「今も持っておるのか?」
皇帝陛下の視線が、アリーシアが持つ巾着袋へと向かう。
「は、はい」
できるかぎりみーちゃんを人目にさらしたくなかったが、皇帝陛下にこういわれては見せないわけにはいかない。
アリーシアは袋からみーちゃんを取り出す。
皇帝陛下をはじめ、みーちゃんへと注目が集まる。
「ふむ、それが形代か。……それが、タリマンドの呪術の源というのは真か?」
皇帝陛下の突然の言葉。
(ま、まさか、気づかれてしまった!?)
アリーシアの心臓が跳ね上がる。
「そ、それは! ただの人形で、呪術とは関係ございません!」
いつか、誰かに気づかれる時はくると思っていた。だが、よりにもよってカシウス皇子が帝都に居ない今、皇帝陛下から問われてしまうとは。
(なんとかこの場をおさめないと!)
アリーシアは気を引き締める。
「……そなたの人形が、呪いの源であり、疫病もその力で引き起こされたと言う者がいる。自ら疫病を引き起こし、それを自分で治したように見せかけたとな」
第二皇子派の誰かから、そのように告げられたのだろう。
「けっしてそのようなことはございません! それに、カシウス皇子とタリマンドに向かう前から、疫病は起こっておりました。辻褄が合いません!」
「たしかにな。だが、呪術にはわからぬことが多い。わしも戦争では痛い目にあった。遠くに居ながらにして、疫病を引き起こすことも可能かもしれぬぞ?」
みーちゃんにそんな力はないが、呪術に対して悪い感情を持っている皇帝陛下にそれを言っても仕方がない。
「わ、わたしには呪術のことはわかりません。母は幼いときに亡くなり、それからタリマンドに行ったこともございません。父もわたしも、忠実な帝国のしもべです。どうか、賢明な判断を頂きますよう、お願いします」
アリーシアはそう言い、礼をつくす。
「ふむ、わしもカシウスのお気に入りであるそなたがそのようなことをしたとは考えておらぬ。……ただ呪術でないということがわかればよい。人形を調べさえすれば、すぐに疑いは晴れるだろう」
父の救出や疫病の解決で功績をあげ、世間の皇子への人気はうなぎのぼりだ。
皇帝陛下としては、皇妃をはじめ、第二皇子派ともバランスを取りたいのだろう。
だから、カシウス皇子と父――エステルハージ侯もいない今、この話を持ち出してきた。
「か、かしこまりまして。調べる際にはいつでも必ずこの人形をお持ちいたします」
「……今、この場では渡せぬということか?」
「母の形見の品で、肌身離さず持ち歩く必要があるのです。どうか、それだけはご容赦ください」
離れてしまえば、みーちゃんの力は失われる。
(みーちゃんと離れることだけは絶対にできない!)
それはアリーシアにとって最も大切な存在の消滅につながってしまう。
「ふむ、しかし、そなたが人形を持ち始めたのは、せいぜい数か月と聞くが?」
「は、はい。――父が不在で心細くなったのがきっかけです!」
回帰する前はベッドにおいてあったただの人形だった。
だが今は違う。
――みーちゃんは娘のミーシャなのだ。
「それにたしか、デビュタントの時も、人形は持っていなかったな?」
「あ、あの時は、事件があってそれどころではなかったのです!」
あの事件で離れたせいで、みーちゃんの力を大きく失わせてしまった。
もう二度と同じことはできない。
「ワシとしても、そなたを虐めるつもりはない。ただその人形を渡すだけでよい。もちろん調べが終わったら必ずそなたに返すことを約束しよう」
「そ、それだけはご容赦ください」
アリーシアは再び頭を下げる。
「そこまで拒むとは。ワシの命に背くということは、罪人として、この皇都の地下につながれることになる。それでも良いのだな?」
陛下の言葉に怒気が混ざりはじめる。
「――人形を渡すか、それとも罪人として地下牢へ入るかどちらかを選べ」
かたくななアリーシアの態度に、陛下は不機嫌に告げる。
ここまで言えば、人形を渡すと考えたのだろう。
だが、アリーシアにとっては、悩む必要のない選択だった。
「かしこまりました。それが陛下の命というのならば、喜んで地下牢に入ります」
アリーシアの言葉に、地下牢の過酷さを知る周囲のざわめきが大きくなる。
「……よかろう。それがそなたの選択であれば、そうしよう。だが、ここまで言っても離れぬということは、呪術に関係がある疑いが強まったぞ? 大人しく、言うことを聞いていれば良いものを」
皇帝陛下としては大事にするつもりはなかったのだろう。
アリーシアもそれは伝わってはいたが、それでもみーちゃんを、娘を守ることは他の何にも変えられない。
「申し訳ございません、ですが、誓って帝国へ弓をひくようなことは一切しておりません」
アリーシアに言えることは、それだけだった。
皇帝陛下が命令をくだし、アリーシアはみーちゃんとともに兵士に連れられる。
――前世でつながれた、帝国地下牢へと。
翌朝。アリーシアは、邸宅の前で旅立つエステルハージ侯爵を見送る。
「もちろんだ。これだけ証拠がそろえば、西の王国の世論を動かすこともできる。できるだけ早く戻ってくるよ」
それだけ言い残し、エステルハージ侯爵を乗せた馬車は去っていく。
「ぜったいにだいじょーぶだよ! だって、今回はおじーさまもいるし、前とはぜんぜん状況も違うし」
前世では、もともと外交官である父の死を発端とする紛争が発生しており、両国の感情も悪化していた。すでに強硬派の意見が通りやすい状況だったのだ。
その時のことを知っていると、今回の開戦は準備不足と言える。
(そうよ、きっと大丈夫よ。無事に帰ってきて、カシウス様)
アリーシアは西の方向に向けて瞳を閉じ祈る。
目をあけた時、別の馬車が、エステルハージ邸にやってくるのが見えた。
「アリーシア侯爵令嬢ですね? 皇帝陛下がお召しです。すぐに準備をして、皇宮までおこしください」
(陛下からの呼び出し? いったいどういったご用なのかしら?)
エステルハージ侯爵と入れ替わる形の呼び出しに、アリーシアは困惑する。
だが、皇帝陛下に呼び出されて向かわないわけにはいかない。
アリーシアは急ぎ準備を整え、皇宮へと向かう。
牢獄の時と同じく、みーちゃんには巾着状の袋の中に隠れて入ってもらい、一緒に連れていく。
皇宮に着くと、アリーシアはすぐに謁見の間に通された。
そこには皇帝陛下をはじめ、皇后や第二皇子、そして主だった臣下もそろっている。ぴんと張り詰めた空気がただよっており、居心地の悪さを感じる。
「アリーシアと言ったか、よく来てくれた。そなたから、タリマンドでのことを詳しく聞かせてほしい。……カシウスは西の王国の奴らへの対応があったからな」
(タリマンドのお話が聞きたいということだったのね)
理由がわかり、アリーシアはほっとする。
陛下にとっても、タリマンドでのことは複雑な思いがあるのだろう。
戦争には勝ち、併合したものの、その時の傷がもとで足が不自由になってしまった。それに、カシウス皇子の母である前皇妃の尽力で講和となったが、カシウス皇子を産んだ後すぐに亡くなってしまい、タリマンドとの関係は悪いままだ。
「タリマンドに着き、カシウス皇子が、すぐに疫病の発生源を探しあて、治療するための薬の作成を指示しました。また、タリマンドの宰相になっていた、ヴァルゲという男が西の王国の間者であることもつきとめました」
陛下はもちろん周囲の者たちも静かにアリーシアの言葉に耳を傾けている。
「カシウス皇子の活躍により、タリマンドの疫病は大きくなる前に収束できました。これも、カシウス皇子の派遣を裁可した、皇帝陛下の威光の賜物かと存じます」
ここぞとばかりに、アリーシアはカシウス皇子の功績を伝える。
「うむ、戦場での槍さばきについては知っていたが、まさか医術にも通じているとはな」
「は、はい、皇宮の書物をよく読んでいたと伺っております」
本当はみーちゃんからの情報が大きかったが、それを伝えることはできない。
「ところで、カシウスはなぜタリマンドにそなたを連れて行ったのだ? 疫病が発生しているところに貴族令嬢を連れていく理由などあるまい」
「そ、それは……カシウス殿下にはわたしの後見人となって頂きました。デビュタントでの事件の直後でしたし、手元において、護っていただけたのだと考えております」
真実をのべることはできないため、それらしい言い訳を言うしかない。
「たしかに、あの事件があったな。ならば無理からぬことか。てっきり、カシウスはそなたに特別な感情を抱いているものと思っていたが」
「そ、それは! わ、わたしにはわかりかねます」
カシウス皇子が自分のことを大切にしてくれているのは間違いない。
だけど、それが恋愛感情なのかどうかはわからない。
「まあいい。それよりそなたのことを聞かせてくれ。タリマンドでは『形代を持つ聖女』と呼ばれているそうだな?」
「は、はい。わたしもカシウス皇子と同じく母がタリマンド出身ですので。親しみやすかったのでしょう」
子供たちから「人形を持ったお姉ちゃん」と呼ばれていたことが、いつの間にか大人たちからも「形代を持つ聖女」と呼ばれることにつながっていた。
自身としては大層な名で呼ばれるほど活躍したとは思っておらず、気恥ずかしい。
「タリマンドでは、常に形代――人形を持っていたそうだが? 何か理由があるのか?」
「そ、それは……母の形見の品で。母の故郷であるタリマンドに連れていってあげたかったのです」
みーちゃんのことが子供受けにつながったのは間違いなく、そういう意味ではタリマンドとの和平に一役買ったといえなくもない。
「今も持っておるのか?」
皇帝陛下の視線が、アリーシアが持つ巾着袋へと向かう。
「は、はい」
できるかぎりみーちゃんを人目にさらしたくなかったが、皇帝陛下にこういわれては見せないわけにはいかない。
アリーシアは袋からみーちゃんを取り出す。
皇帝陛下をはじめ、みーちゃんへと注目が集まる。
「ふむ、それが形代か。……それが、タリマンドの呪術の源というのは真か?」
皇帝陛下の突然の言葉。
(ま、まさか、気づかれてしまった!?)
アリーシアの心臓が跳ね上がる。
「そ、それは! ただの人形で、呪術とは関係ございません!」
いつか、誰かに気づかれる時はくると思っていた。だが、よりにもよってカシウス皇子が帝都に居ない今、皇帝陛下から問われてしまうとは。
(なんとかこの場をおさめないと!)
アリーシアは気を引き締める。
「……そなたの人形が、呪いの源であり、疫病もその力で引き起こされたと言う者がいる。自ら疫病を引き起こし、それを自分で治したように見せかけたとな」
第二皇子派の誰かから、そのように告げられたのだろう。
「けっしてそのようなことはございません! それに、カシウス皇子とタリマンドに向かう前から、疫病は起こっておりました。辻褄が合いません!」
「たしかにな。だが、呪術にはわからぬことが多い。わしも戦争では痛い目にあった。遠くに居ながらにして、疫病を引き起こすことも可能かもしれぬぞ?」
みーちゃんにそんな力はないが、呪術に対して悪い感情を持っている皇帝陛下にそれを言っても仕方がない。
「わ、わたしには呪術のことはわかりません。母は幼いときに亡くなり、それからタリマンドに行ったこともございません。父もわたしも、忠実な帝国のしもべです。どうか、賢明な判断を頂きますよう、お願いします」
アリーシアはそう言い、礼をつくす。
「ふむ、わしもカシウスのお気に入りであるそなたがそのようなことをしたとは考えておらぬ。……ただ呪術でないということがわかればよい。人形を調べさえすれば、すぐに疑いは晴れるだろう」
父の救出や疫病の解決で功績をあげ、世間の皇子への人気はうなぎのぼりだ。
皇帝陛下としては、皇妃をはじめ、第二皇子派ともバランスを取りたいのだろう。
だから、カシウス皇子と父――エステルハージ侯もいない今、この話を持ち出してきた。
「か、かしこまりまして。調べる際にはいつでも必ずこの人形をお持ちいたします」
「……今、この場では渡せぬということか?」
「母の形見の品で、肌身離さず持ち歩く必要があるのです。どうか、それだけはご容赦ください」
離れてしまえば、みーちゃんの力は失われる。
(みーちゃんと離れることだけは絶対にできない!)
それはアリーシアにとって最も大切な存在の消滅につながってしまう。
「ふむ、しかし、そなたが人形を持ち始めたのは、せいぜい数か月と聞くが?」
「は、はい。――父が不在で心細くなったのがきっかけです!」
回帰する前はベッドにおいてあったただの人形だった。
だが今は違う。
――みーちゃんは娘のミーシャなのだ。
「それにたしか、デビュタントの時も、人形は持っていなかったな?」
「あ、あの時は、事件があってそれどころではなかったのです!」
あの事件で離れたせいで、みーちゃんの力を大きく失わせてしまった。
もう二度と同じことはできない。
「ワシとしても、そなたを虐めるつもりはない。ただその人形を渡すだけでよい。もちろん調べが終わったら必ずそなたに返すことを約束しよう」
「そ、それだけはご容赦ください」
アリーシアは再び頭を下げる。
「そこまで拒むとは。ワシの命に背くということは、罪人として、この皇都の地下につながれることになる。それでも良いのだな?」
陛下の言葉に怒気が混ざりはじめる。
「――人形を渡すか、それとも罪人として地下牢へ入るかどちらかを選べ」
かたくななアリーシアの態度に、陛下は不機嫌に告げる。
ここまで言えば、人形を渡すと考えたのだろう。
だが、アリーシアにとっては、悩む必要のない選択だった。
「かしこまりました。それが陛下の命というのならば、喜んで地下牢に入ります」
アリーシアの言葉に、地下牢の過酷さを知る周囲のざわめきが大きくなる。
「……よかろう。それがそなたの選択であれば、そうしよう。だが、ここまで言っても離れぬということは、呪術に関係がある疑いが強まったぞ? 大人しく、言うことを聞いていれば良いものを」
皇帝陛下としては大事にするつもりはなかったのだろう。
アリーシアもそれは伝わってはいたが、それでもみーちゃんを、娘を守ることは他の何にも変えられない。
「申し訳ございません、ですが、誓って帝国へ弓をひくようなことは一切しておりません」
アリーシアに言えることは、それだけだった。
皇帝陛下が命令をくだし、アリーシアはみーちゃんとともに兵士に連れられる。
――前世でつながれた、帝国地下牢へと。
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