うっかり聖女を追放した王国は、滅びの道をまっしぐら! 今更戻れと言われても戻りません。~いつの間にか伝説の女王になっていた女の物語~

珠川あいる

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第3章『女王陛下と剣聖』

第55話「正統お爺ちゃん王座決定戦②…ハネムーン?」

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「お前ら亡き後は、ワシが聖女を面倒見てやるわ!! 安心して燃え尽きろ!!」

「「うはははは! いいから掛かってこい!!」」

 カシナシオスが大きな口を開くと、いっぱいに並んだ牙の向こうから赤い炎の塊が飛び出してくる。
 一直線に竜の息吹がユリウスたちの正面から放出された。

「ぬおおおお!!! な、何のこれしき!!! も、もう一杯!!」

「うぐううう!!! ま、まだまだあ!! お、おかわり!!」

 二人は立派な顎髭をちりちり焦がし、頭髪を爆発させつつも、ブレスを正面から受けても耐えていた。

(あわわわ……お、お爺ちゃんたちのせいで……島が……島が……)

 やっと意識を取り戻したフローラが見たのは、迷惑な爺さん二人と、怒れる竜による深刻な環境破壊の図だった。

 竜神カシナシオスの怒りの波動に触発されて、温泉は沸騰し、地面はグラグラと揺れている。海の方を眺めてみれば大きな波が立っているのが見えるだろう。

 正統お爺ちゃん王座決定戦は、爺さん二人と一匹の戦いではなく、マイオ島と島内に棲む者たちを巻き込む争いになりつつあった。

 迷惑この上ない様相を呈しているが、それだけフローラのお爺ちゃんの座は尊いのだ。

(と、止めないと、アタナシアが滅んでしまいます……クレールさまも失神しているみたいですし……わ、私が止めないといけません……あわわわ……)

 しかし、フローラの心配の通り、このままでは建国して数か月で国が滅ぶ事になる。

「お、お爺ちゃんたち! やめなさい!!」

 声を限りにフローラは叫んでいた。決して大きくはない身体を反らして腹の底から大声を出していた。

「なかなかやるではないか!! しかし、最大火力なら耐えれまい!!」

「ぜ、全然効いてないわい!! げぼっ……ごほっ……ぐはああ……」

「こ、こっちもじゃ! ぐふっ……ぶはあ……ごはああ……」

「も、もういい加減にしないと、孫娘をやめますからね!!」

 全く言う事を聞かなそうな爺さんたちに、孫娘が放つ必殺技が発動された。全国のお爺さん、お婆さんが卒倒する事が予想される究極の一撃は、ユリウスたちはもとより、竜神カシナシオスの心を揺さぶるのに十分な破壊力を秘めていた。

「「「な、なんじゃと! そ、それはイカン!!!」」」

「だったらもうやめなさい!!」

 ほっぺを膨らませて怒るフローラを、爺さんたちがキュンキュンしながら見入っていた。

「「「か、可愛い!!」」」

「どうしても続きがしたいなら、他所でやってください!!」

「ふむ。それは良い案だ。確かにこの島を破壊するのは不味いからのう」

 まだやるつもりなのかと、フローラは呆れる思いだったが、他所でやってくれる分には勝手にさせようと思っていた。

 失神しているクレールを起こして帰ろうとしたところ、不意に身体がふわっと何かに掴まれて、持ち上がっているような感覚がした。

「わわわわ……う、浮いてます!?」

 そうこうしているうちに竜の背中に運ばれる。
 カシナシオスの背に乗って、大空高く舞い上がっている。眼下の地上は遥か彼方にあるように見えた。
 マイオ島の遠景が手の平くらいのサイズになっていた。

「な、何を?」

「続きをするのに辺境まで飛んで行く。しっかり捕まっているのだ」

 周りを見渡せば、ユリウスとヴァレンテ、それに未だ失神中のクレールもカシナシオスの背に乗せられていた。

「な、何で私たちまで!?」

「折角だから婿殿も一緒に乗せてあるぞ。失神するとは情けない男だが」

「「それについては同意じゃ。クレールさまも情けないのう」」

(む、むむ婿殿って……あわわわ……わ、私たちは……)

「「「これは気の早いハネムーンじゃな!」」」

(ま、まだ結婚もしていないのに? あわわわ……)

 ハネムーンが辺境と言うのもどうかと思うが、お爺ちゃん王座決定戦の続きをするついでに、フローラとクレールはお爺ちゃんたちと旅をする事になってしまった。

「「「もう、チューくらいはしたのじゃろ?」」」

「し、してません……」

「「「なんじゃ? 情けない男じゃのう」」」

(あわわわ……何か変な雲行きに……)

「よし。婿殿がそなたにキスをするまで島には帰らぬ事としよう」

「「それは良い考えじゃ!」」

(ええ! わ、私も興味はありますが……)

 フローラが島へ帰還できるかどうかは、あの情けない男クレールの双肩に掛かる事態に発展してしまった。

 気持ちを打ち明けて一皮むけた剣聖クレールは、果たして想い人とキスのイベントをこなす事ができるのか?

 お爺ちゃんたちが冗談で言っている言葉を、真面目なフローラは真に受けてしまうのだった。





*****

まだ気絶したままですけど(´ー+`)

*****

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