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第2章『聖女王フローラ』
第45話「論功行賞①」
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オールバンズ侯爵はこの日を待ちに待っていた。
今日はアタナシアの論功行賞の日であった。建国前からフローラに協力し、従ってきた者たちに報いる為に、特別に祝いの席を設けたいとの女王フローラの意を汲んで行われる。
なのに何故かオールバンズ侯爵や、その他の旧オルビアの貴族たちは結果にとても期待を寄せていた。
『論功行賞』とは言い換えるなら、働きや功績に見合った褒美や報酬を与える事。それが王国がする事で、与えるのがこの場合の女王ならば、授かるのは爵位だったり、領地だったり、財貨だったりと言う事になるが、アタナシアの現状を考えると今回授かるのは、主に爵位になるだろう。
事前の告知で最も功績のある者から、順に賞される事が皆に周知されている。
だから一番目か二番目に、自分の名が呼ばれるだろうと、オールバンズ侯爵は手に汗をかきながら晴れ舞台を待っていた。
彼の気持ちは分からなくもない、何せこのように賞されるのは初めてだからだ。
やがて式典の開始を告げる合図の鐘が鳴らされた。
最後に会場に姿を現したフローラは、並み居る家臣たちを前にしてこう宣言をした。
「今日の特別な日に、良く集まってくれました。ようやく皆に報いる事ができて、胸のつかえが取れた気がします」
言葉の通りに女王フローラは、心の底から嬉しさが込み上げている。
今まで色々な問題に追われたり、向き合ってきたが、いつも傍で支えてくれる者たちがいた。その者たちにやっと形として報いる事ができることに本当に喜んでいた。
今回の論功行賞はフローラとアタナシアに対しての功績は勿論の事、旧オルビアにおいての功罪も争点の一つになっている。フローラが元オルビア神殿の聖女だった事や、その後の経緯もそうだし、アタナシアの成立の経過を考えれば、旧オルビアでの功罪を切り離して考えるのは無理があるからだ。
例えば今回の式典で名を呼ばれる事がないユリウス将軍は、罪としては愚王に、忠義心からとは言え、言われるがままに従っていたことで、功績としては諸国の一斉蜂起と、王都で起こった反乱から多くの民を救った事などだが、その両者を相殺してユリウス将軍には罪も功績も与えられない。
当然ながらユリウス将軍の場合は、功績の方がずっと大きいだろう。だが往々にして、罪とか悪い事の方が大きく取り沙汰されるものだ。愚王が余りにも愚かな王だった事が、ユリウス将軍の罪をも大きくしてしまっている。
そういう経緯も踏まえれば、ヴァージルが一番初めに名を呼ばれるのは然るべき事だ。
「ヴァージル卿」
リコ司祭の口から最大功績者の名が『ヴァージル卿』と告げられた。
建国前からフローラに従う者たちは、事前の予想でリコ司祭か、ヴァージルのどちらかが一番最初に名を呼ばれるだろうと、皆が予想していた。そしてその予想通りに、まずヴァージルの名が呼ばれることになった。
一方には予想通りだったが、もう一方の旧オルビア貴族たちは大変に驚いた顔をしている。特にダミアンとアイダの様子は顕著で、アイダは不安が的中したと狼狽し、ダミアンの顔つきは傑作だった。青くなったり赤くなったりと忙しそうにしている。
(クソ兄貴が最大功績者? 最初に呼ばれるって事は……最も高位の爵位を? バカな!! 有り得ない!!)
厳かな雰囲気の中、ヴァージルは壇上に立っている、フローラの前まで進み出て片膝をつく。
思えば彼がフローラを買い取ったのは運命だった。
ヴァージルがそうしなかったのなら、今日のアタナシアは成立していなかったかもしれない。オルビアは未だ愚王の支配の下だっただろうし、フローラの身がどうなっていたのか見当もつかない。
勿論その後の彼のさまざな活躍は、女王とアタナシアに大きく貢献してきている。
「ヴァージル卿、貴方をまず最初に報いる事が私の切なる願いでした。その想いを達する事ができて本当に幸せです。貴方をアタナシアの公爵に任命します。今後も国と民によく仕える事を期待していますよ」
ヴァージルにとっては、爵位が公爵になろうと何になろうと、そんな事はどうでも良かった。ただ、フローラと培ってきた絆が形あるものとして認められた事と、娘のように愛を注いできたフローラが立派な女王になった事を本当に誇らしく思っていた。
いつかの時のように、ヴァージルの頬を涙が伝っている。
この場の多くの者たちが、この女王フローラの言葉に頷いたりして賛意を示しているが、ダミアンの表情には醜い憎悪の念がありありと浮かんでいた。
*****
加筆しました(´ー+`)
*****
今日はアタナシアの論功行賞の日であった。建国前からフローラに協力し、従ってきた者たちに報いる為に、特別に祝いの席を設けたいとの女王フローラの意を汲んで行われる。
なのに何故かオールバンズ侯爵や、その他の旧オルビアの貴族たちは結果にとても期待を寄せていた。
『論功行賞』とは言い換えるなら、働きや功績に見合った褒美や報酬を与える事。それが王国がする事で、与えるのがこの場合の女王ならば、授かるのは爵位だったり、領地だったり、財貨だったりと言う事になるが、アタナシアの現状を考えると今回授かるのは、主に爵位になるだろう。
事前の告知で最も功績のある者から、順に賞される事が皆に周知されている。
だから一番目か二番目に、自分の名が呼ばれるだろうと、オールバンズ侯爵は手に汗をかきながら晴れ舞台を待っていた。
彼の気持ちは分からなくもない、何せこのように賞されるのは初めてだからだ。
やがて式典の開始を告げる合図の鐘が鳴らされた。
最後に会場に姿を現したフローラは、並み居る家臣たちを前にしてこう宣言をした。
「今日の特別な日に、良く集まってくれました。ようやく皆に報いる事ができて、胸のつかえが取れた気がします」
言葉の通りに女王フローラは、心の底から嬉しさが込み上げている。
今まで色々な問題に追われたり、向き合ってきたが、いつも傍で支えてくれる者たちがいた。その者たちにやっと形として報いる事ができることに本当に喜んでいた。
今回の論功行賞はフローラとアタナシアに対しての功績は勿論の事、旧オルビアにおいての功罪も争点の一つになっている。フローラが元オルビア神殿の聖女だった事や、その後の経緯もそうだし、アタナシアの成立の経過を考えれば、旧オルビアでの功罪を切り離して考えるのは無理があるからだ。
例えば今回の式典で名を呼ばれる事がないユリウス将軍は、罪としては愚王に、忠義心からとは言え、言われるがままに従っていたことで、功績としては諸国の一斉蜂起と、王都で起こった反乱から多くの民を救った事などだが、その両者を相殺してユリウス将軍には罪も功績も与えられない。
当然ながらユリウス将軍の場合は、功績の方がずっと大きいだろう。だが往々にして、罪とか悪い事の方が大きく取り沙汰されるものだ。愚王が余りにも愚かな王だった事が、ユリウス将軍の罪をも大きくしてしまっている。
そういう経緯も踏まえれば、ヴァージルが一番初めに名を呼ばれるのは然るべき事だ。
「ヴァージル卿」
リコ司祭の口から最大功績者の名が『ヴァージル卿』と告げられた。
建国前からフローラに従う者たちは、事前の予想でリコ司祭か、ヴァージルのどちらかが一番最初に名を呼ばれるだろうと、皆が予想していた。そしてその予想通りに、まずヴァージルの名が呼ばれることになった。
一方には予想通りだったが、もう一方の旧オルビア貴族たちは大変に驚いた顔をしている。特にダミアンとアイダの様子は顕著で、アイダは不安が的中したと狼狽し、ダミアンの顔つきは傑作だった。青くなったり赤くなったりと忙しそうにしている。
(クソ兄貴が最大功績者? 最初に呼ばれるって事は……最も高位の爵位を? バカな!! 有り得ない!!)
厳かな雰囲気の中、ヴァージルは壇上に立っている、フローラの前まで進み出て片膝をつく。
思えば彼がフローラを買い取ったのは運命だった。
ヴァージルがそうしなかったのなら、今日のアタナシアは成立していなかったかもしれない。オルビアは未だ愚王の支配の下だっただろうし、フローラの身がどうなっていたのか見当もつかない。
勿論その後の彼のさまざな活躍は、女王とアタナシアに大きく貢献してきている。
「ヴァージル卿、貴方をまず最初に報いる事が私の切なる願いでした。その想いを達する事ができて本当に幸せです。貴方をアタナシアの公爵に任命します。今後も国と民によく仕える事を期待していますよ」
ヴァージルにとっては、爵位が公爵になろうと何になろうと、そんな事はどうでも良かった。ただ、フローラと培ってきた絆が形あるものとして認められた事と、娘のように愛を注いできたフローラが立派な女王になった事を本当に誇らしく思っていた。
いつかの時のように、ヴァージルの頬を涙が伝っている。
この場の多くの者たちが、この女王フローラの言葉に頷いたりして賛意を示しているが、ダミアンの表情には醜い憎悪の念がありありと浮かんでいた。
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