うっかり聖女を追放した王国は、滅びの道をまっしぐら! 今更戻れと言われても戻りません。~いつの間にか伝説の女王になっていた女の物語~

珠川あいる

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第2章『聖女王フローラ』

閑話「愚王クラウスの末路⑦…行商人生活」

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 ここは辺境のある村。
 最近人気の露店が集まる場所の一角で、今日もこの男が商売に精を出していた。

「へい! らっしゃい!! 今日はニラとドリアンが入ってまっせ!!」

「今日はっていうか、いつもニラとドリアンでしょ」

「へへへへ。そうでした! 安くしますよ奥さん!」

 そろそろ、新しい野菜も欲しいのだがな!

 

 あの方はオークもお救いになる偉大な救世主!!
 フローラさまによって、この辺境に送り込まれてしばらく経つが、ここの暮らしにも慣れた。

 頭のニラ畑と、胸毛のドリアン農園のお陰で、私は生かされている!!

 私はきっと人間たちに、ニラとドリアンを配る使命を受けたに違いない。そうでなければオークの私が、ここまで人間に受け入れられるわけがない!!

 しかも私は臭いのだ!

 下水道を百倍濃縮したくらいの臭さ!

 辺境一の最凶の男は間違いなく私だろう。

 正に臭王! この名に恥じぬ!!

「臭王の旦那! 調子いいみたいじゃねえか」

「ああ、フロキさん。集金ですよね? どうぞ今日の分です」

 銀色の硬貨を数十枚、両手ですくって差し出している。

「悪いね! あんたが来てから俺たちも儲かっててさ!」

「あと、例の件はどうですか?」

「ちゃんとやってるよ! ここからオルビアは遠いからな。しばらく時間が掛かるんだよ!!」

 フロキと呼ばれた男は、額に脂汗をかきながらも笑顔を絶やさなかったが、臭王クラウスは一個存在するだけでも強烈な臭気を放つドリアンを、常時十個は胸気の農園で栽培しているのだ。

「そうですよね。また追加料金が必要になったら、事前に教えてください」

「おう、あんたの娘さんは、俺たちが必ず見つけてやるからよ!」

「有難う御座います!!」

 クラウスが立ち上がって勢い良く頭を下げる。

 そうなのだ。
 ニラだけの時ならまだしも、ドリアンが加わったクラウスは凄まじい臭さである。
 この露店広場においても、彼の露店だけ周囲とはだいぶ距離がある。

 それでも味の良さ、価格の安さで、固定客を掴んでいる。

 クラウスは稼いだ金のほとんどを注ぎ込んで、プリシラの消息を探していた。
 今度こそ父娘で暮らして行くために、彼女の行方を探しているのだ。
 ただ、自分が町に行くことはできないので、人に頼んでいるというわけだ。



―――



 先ほどクラウスの露店を訪れたフロキが、仲間たちと酒場でたむろしていた。

「へへへ。あのバカのお陰で最近は儲かって笑いが止まんねえ。ゲハハハハ」

「そっすね! さすがフロキの兄貴っす!!」

 フロキは人口百人ほどの小さな村を仕切っている小悪党だ。
 だが、頭はそこそこ使えるらしく、クラウスの露店の噂を近隣にも広めている。その影響で隣の村や町からもクラウスの露店に客が来る。
 そしてクラウスの稼ぎはフロキに、『プリシラの捜索費用』として渡っているのだ。

「オルビアは遠くてっていうか、ここはオルビアだっつーの! 隅っこの辺境だけどな!」

 懐の銀貨の袋を確かめながら、フロキは大層ご満悦にしている。
 こんな辺境の小村では、仕切っているといっても、本来なら小銭を稼げればいいほうだろう。
 それがクラウスのお陰で、この男は生まれてはじめて金貨を拝んだのだ。

 それなら確かに笑いは止まらないだろう。

「しばらくはアイツを騙して荒稼ぎできますね!」

「娘なんか探すわけないのに、バカっすよね!!」

「気付かれたら仕方ねえから、アイツを殺って、有り金と、どこかにあるはずのドリアン農園を奪うぞ! ニラはともかく、ドリアンは高級品だしな」

 閑散とした場末の酒場で、フロキと子分たちは陰謀をさかなに、さぞかし旨そうに酒を飲んでいた。



―――



「ふう、今日はこの辺で終わりにするか……」

 待っていろプリシラ。

 必ずお前を見つけてやるから。

 そうしたら、また一緒に暮らせるぞ!

 その為にも金を稼がなくてはな!
 




*****

野菜モーニングスターで殴られた影響です(´ー+`)

*****

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