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第2章『聖女王フローラ』
第28話「悩殺お色気作戦発動!」
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「うわあ! 綺麗な景色じゃないですか。お姉さま! ほら! あっち!!」
イルマは年相応の娘のように、マイオ島の美しさに触れて天真爛漫に振舞っている。いつもはフローラの影に隠れて目立たないが、イルマも美しい娘だ。この手付かずの自然がふんだんに残るマイオ島に、イルマという天使か女神が舞い降りた。そんな錯覚をしても無理がないくらいに、嬉しそうな顔をするイルマは輝いている。
「あんまりはしゃぐと転びますよ、イルマ」
でも本当に綺麗ですね。
マイオ島に来たのは今回が初めてですが、島の自然は手付かずのままだと聞いて期待していました。
思った通りの場所で、私も嬉しいです。
今日は先日、イルマと買いに行った新しいお洋服です。
でも、ちょっと露出しすぎじゃないでしょうか?
男性の皆さんの視線が……あわわわわ……
でも今日はイルマに聞いた方法を試すのです。
クレールさまの本心を知るにはこれしか……
でも皆さん、私を見すぎです!
あわわわ……
「思っていたより広い場所でしたね。フローラさま?」
クレールの事を考えていて、"あわあわ"している所を、ヴァージルに声を掛けられた。
「まだ全体を見たわけではありませんが、これなら数千の人間が暮らせますよ」
会話に混じってきたのはリコ司祭だ。
ヴァージルとリコ司祭は、フローラが他者の視線で困っているのを感じ取って、フローラを守ろうとしているのだ。
リコ司祭からしたら女神のような存在で、ヴァージルからしたら娘同然だから、この二人が変な目でフローラを見る事はなかった。
主に変な目で見ている要員は、ユーグ、アルベール、エンシオの3人と、事もあろうにクレールだった。
ユーグら3人はなんだかんだ言っても、まだまだ大人になったばかりの若者だが、正直クレールが頬を染めてフローラを凝視しているのは、如何なものだろうか。
この点については考えている事と、実際の行動がちぐはぐな剣聖さまだった。
傍に控えるアナスタシアが悲しそうな目で、クレールとフローラを交互に見ているのが印象的だ。彼女はクレールの気持ちに気付いているだけに、応援してあげたい反面、クレールとフローラの仲が進展して欲しくない気持ちもあって辛い想いをしていた。
超がつく鈍感でかつ、甲斐性なしの剣聖さまは、二人の美女に想いを寄せられているのを全く気付いていない。
「そうみたいですね。この土地なら農業でも、畜産でもできそうですし、海辺では漁業も。それに広大な森林の恵みも期待できそうですよ」
「まずは王都の場所を定めねばなりませんね」
フローラの心積もりなど、全く気に留めない鈍感男がそう話しかけてきた。
フローラの今日の装いは、今着ているものだけではなく、実は対剣聖さま仕様の最終兵器が残されている。
あれを身に着けたフローラの破壊力に、剣聖クレールは耐えれるのだろうか。
「水利と交通の面でも王都選びは重要です。ヴァージル殿らと協議の上で相談した後に、フローラさまのご裁可を仰ぎます」
フローラは『それでお願いします』と答えた。
ごめんなさい!
今日はクレールさまの事で頭がいっぱいなんです。
司祭さまやヴァージルさんなら、上手くやってくれますから……
任せてしまいます。
とにかく!
クレールさまのお気持ちを……あわわわ……
「フローラさま、ここは司祭さまにお任せして、島の視察にでも行きませんか?」
「あ、はい。アルベールさま、皇子殿下のお陰でこのような素晴らしい土地を得ました。喜んでご一緒させて下さい」
にっこり笑いながら軽く頭を下げて感謝を伝えた。
「そんなに固くならずに! 手の空いているみんなで行きましょう」
厭味なほど清々しい男だ。人心掌握を心得てもいる。決して自分だけが利を得ようとはしないで、周りを巻き込みながら目的に近付こうとする。
ユーグやエンシオのフローラを見る目で、何となく彼らの気持ちに気付いたようだ。
そしてそれらを効果的に使おうとしている。
結局、視察メンバーは、フローラ、アルベール、イルマ、ユーグ、エンシオという若手メンバーだけで、ということになった。
捨てられた子犬のような目でクレールが残念そうにしているが、彼は既にオッサンの領域に片足を突っ込んでいるのだ。無理に混じっても浮いてしまうだろう。
しかも気の利いた事の一つも言えない男である。
―――
わあ。
すごいです。
ホヤ草に、ハモ草……ホッケ草まで!!
この辺は薬草の宝庫ですね。
こんな貴重な薬草がたくさん生えています!
すごいです!!
何がどれくらい生えているかを調べたほうが良さそうですね。
もしかしらこの島は、薬草の群生しやすい場所かもしれません。
そうだとしたらすごいことです!!
あ、あの洞窟の奥を調べたら、皆さんと合流しましょうかね。
ちょっと離れすぎてしまいましたし。
貴重な薬草の群生地を見つけて、フローラはだいぶ舞い上がっていた。
普段は冷静だし、危ない事はしない慎重な性格だが、これだけの量と質の薬草ならば、救えないと諦めるような命も救えるだろう。その想いがフローラの危険を察知する判断に油断を生じさせていた。
あれれ?
ここはさっきも水没していましたか?
おかしいです。
ここから来たはずなのに……道が無いです?
どうしましょう……あわわわ……
薬草探しに興奮しすぎました。
早く戻らないと暗くなってしまいます。
それにここの湿気で服も濡れてしまって……
着替えは……コレしかないですが、コレは……
すっかり途方に暮れているフローラは、下手に動かずにジッとしている事にした。
動き回るよりもジッとしているほうが、見つけて貰えるかもしれない。
そう考えて洞窟の湿った地面に腰を下ろしている。
濡れた服を脱ぎ捨てて、クレールに見せるつもりだった水着に着替えている。羽織るものがなく肌寒いが、濡れた服を着ているよりはマシだろう。
そんな状態でしばらく座っていたが、やがていつの間にか眠ってしまっていた。
そのまましばらくすると、『バシャバシャ』という水の音がして、フローラは薄っすらと目を開ける。そこには居るはずのない男が心配そうに自分を見つめる姿があった。
ここまでやってきたのはクレールだった。
既にフローラがイルマたちとはぐれてから数時間が経過し、外はすっかり夕景色に変わっていた。
クレールはフローラの行方が知れないと聞くと、即座に駆け出して必死に探し回った。そしてやっとのことで彼女を見つけ出したのだ。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。でも寒い……」
それもそのはずだ。
数時間も水着姿で眠っていれば身体も冷えるだろう。
洞窟の湿気のせいで、脱ぎ捨てた服も乾く気配がない。
「何とか火を起こしてみます」
クレールはこんな事もあろうかと、持参した道具を使って火を起こそうとしている。
「クレールさま、ありがとう……」
力なく微笑む。状況は悪いが、何より傍に居て欲しい存在を身近に感じている。もうフローラの中には不安な気持ちは、ほとんど残されていなかった。
「今日はもう戻れそうにないです。でも、明日ここよりお連れしますので、ゆっくり休んで下さい」
いつもは鈍感でフローラを怒らせる男が、やけに頼もしく見える。ここぞと言う時はそつがない。
「はい、貴方が来てくれて良かった。他の誰よりも……」
そう言って水着姿のままで、目のやり場に困り赤面するクレールにしなだれかかった。
*****
お約束ですいません(´ー+`)
*****
イルマは年相応の娘のように、マイオ島の美しさに触れて天真爛漫に振舞っている。いつもはフローラの影に隠れて目立たないが、イルマも美しい娘だ。この手付かずの自然がふんだんに残るマイオ島に、イルマという天使か女神が舞い降りた。そんな錯覚をしても無理がないくらいに、嬉しそうな顔をするイルマは輝いている。
「あんまりはしゃぐと転びますよ、イルマ」
でも本当に綺麗ですね。
マイオ島に来たのは今回が初めてですが、島の自然は手付かずのままだと聞いて期待していました。
思った通りの場所で、私も嬉しいです。
今日は先日、イルマと買いに行った新しいお洋服です。
でも、ちょっと露出しすぎじゃないでしょうか?
男性の皆さんの視線が……あわわわわ……
でも今日はイルマに聞いた方法を試すのです。
クレールさまの本心を知るにはこれしか……
でも皆さん、私を見すぎです!
あわわわ……
「思っていたより広い場所でしたね。フローラさま?」
クレールの事を考えていて、"あわあわ"している所を、ヴァージルに声を掛けられた。
「まだ全体を見たわけではありませんが、これなら数千の人間が暮らせますよ」
会話に混じってきたのはリコ司祭だ。
ヴァージルとリコ司祭は、フローラが他者の視線で困っているのを感じ取って、フローラを守ろうとしているのだ。
リコ司祭からしたら女神のような存在で、ヴァージルからしたら娘同然だから、この二人が変な目でフローラを見る事はなかった。
主に変な目で見ている要員は、ユーグ、アルベール、エンシオの3人と、事もあろうにクレールだった。
ユーグら3人はなんだかんだ言っても、まだまだ大人になったばかりの若者だが、正直クレールが頬を染めてフローラを凝視しているのは、如何なものだろうか。
この点については考えている事と、実際の行動がちぐはぐな剣聖さまだった。
傍に控えるアナスタシアが悲しそうな目で、クレールとフローラを交互に見ているのが印象的だ。彼女はクレールの気持ちに気付いているだけに、応援してあげたい反面、クレールとフローラの仲が進展して欲しくない気持ちもあって辛い想いをしていた。
超がつく鈍感でかつ、甲斐性なしの剣聖さまは、二人の美女に想いを寄せられているのを全く気付いていない。
「そうみたいですね。この土地なら農業でも、畜産でもできそうですし、海辺では漁業も。それに広大な森林の恵みも期待できそうですよ」
「まずは王都の場所を定めねばなりませんね」
フローラの心積もりなど、全く気に留めない鈍感男がそう話しかけてきた。
フローラの今日の装いは、今着ているものだけではなく、実は対剣聖さま仕様の最終兵器が残されている。
あれを身に着けたフローラの破壊力に、剣聖クレールは耐えれるのだろうか。
「水利と交通の面でも王都選びは重要です。ヴァージル殿らと協議の上で相談した後に、フローラさまのご裁可を仰ぎます」
フローラは『それでお願いします』と答えた。
ごめんなさい!
今日はクレールさまの事で頭がいっぱいなんです。
司祭さまやヴァージルさんなら、上手くやってくれますから……
任せてしまいます。
とにかく!
クレールさまのお気持ちを……あわわわ……
「フローラさま、ここは司祭さまにお任せして、島の視察にでも行きませんか?」
「あ、はい。アルベールさま、皇子殿下のお陰でこのような素晴らしい土地を得ました。喜んでご一緒させて下さい」
にっこり笑いながら軽く頭を下げて感謝を伝えた。
「そんなに固くならずに! 手の空いているみんなで行きましょう」
厭味なほど清々しい男だ。人心掌握を心得てもいる。決して自分だけが利を得ようとはしないで、周りを巻き込みながら目的に近付こうとする。
ユーグやエンシオのフローラを見る目で、何となく彼らの気持ちに気付いたようだ。
そしてそれらを効果的に使おうとしている。
結局、視察メンバーは、フローラ、アルベール、イルマ、ユーグ、エンシオという若手メンバーだけで、ということになった。
捨てられた子犬のような目でクレールが残念そうにしているが、彼は既にオッサンの領域に片足を突っ込んでいるのだ。無理に混じっても浮いてしまうだろう。
しかも気の利いた事の一つも言えない男である。
―――
わあ。
すごいです。
ホヤ草に、ハモ草……ホッケ草まで!!
この辺は薬草の宝庫ですね。
こんな貴重な薬草がたくさん生えています!
すごいです!!
何がどれくらい生えているかを調べたほうが良さそうですね。
もしかしらこの島は、薬草の群生しやすい場所かもしれません。
そうだとしたらすごいことです!!
あ、あの洞窟の奥を調べたら、皆さんと合流しましょうかね。
ちょっと離れすぎてしまいましたし。
貴重な薬草の群生地を見つけて、フローラはだいぶ舞い上がっていた。
普段は冷静だし、危ない事はしない慎重な性格だが、これだけの量と質の薬草ならば、救えないと諦めるような命も救えるだろう。その想いがフローラの危険を察知する判断に油断を生じさせていた。
あれれ?
ここはさっきも水没していましたか?
おかしいです。
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着替えは……コレしかないですが、コレは……
すっかり途方に暮れているフローラは、下手に動かずにジッとしている事にした。
動き回るよりもジッとしているほうが、見つけて貰えるかもしれない。
そう考えて洞窟の湿った地面に腰を下ろしている。
濡れた服を脱ぎ捨てて、クレールに見せるつもりだった水着に着替えている。羽織るものがなく肌寒いが、濡れた服を着ているよりはマシだろう。
そんな状態でしばらく座っていたが、やがていつの間にか眠ってしまっていた。
そのまましばらくすると、『バシャバシャ』という水の音がして、フローラは薄っすらと目を開ける。そこには居るはずのない男が心配そうに自分を見つめる姿があった。
ここまでやってきたのはクレールだった。
既にフローラがイルマたちとはぐれてから数時間が経過し、外はすっかり夕景色に変わっていた。
クレールはフローラの行方が知れないと聞くと、即座に駆け出して必死に探し回った。そしてやっとのことで彼女を見つけ出したのだ。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。でも寒い……」
それもそのはずだ。
数時間も水着姿で眠っていれば身体も冷えるだろう。
洞窟の湿気のせいで、脱ぎ捨てた服も乾く気配がない。
「何とか火を起こしてみます」
クレールはこんな事もあろうかと、持参した道具を使って火を起こそうとしている。
「クレールさま、ありがとう……」
力なく微笑む。状況は悪いが、何より傍に居て欲しい存在を身近に感じている。もうフローラの中には不安な気持ちは、ほとんど残されていなかった。
「今日はもう戻れそうにないです。でも、明日ここよりお連れしますので、ゆっくり休んで下さい」
いつもは鈍感でフローラを怒らせる男が、やけに頼もしく見える。ここぞと言う時はそつがない。
「はい、貴方が来てくれて良かった。他の誰よりも……」
そう言って水着姿のままで、目のやり場に困り赤面するクレールにしなだれかかった。
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