45 / 77
第2章『聖女王フローラ』
閑話「愚王クラウスの末路⑥…野菜モーニングスター」
しおりを挟む
や、やあ、私は臭王……じゃなく、聖王クラウスだ。
ぐぅ! あの婆さんのせいで、すっかり『ばば専』が定着してしまって、村中の婆さんが私に夢中に……なんて生き地獄なんだ。
折角、居心地が良い村に落ち着けたと思っていたのに……
最近ではパインのせいで―――って! 思ってるそばから食うな! 痛い! いたたたッ! 同居人の髪の毛を食うな!
「こら! パイン! このニラは私の毛だ!! お前が食べまくるから、すっかり毛が濃くなって凄い事になっているのだぞ!!」
私はすっかりニラ臭いのに慣れてしまったが、村人はそうでもないらしく、異臭騒ぎがある度に何でもかんでも私のせいにされる……
居候ゆえに文句は言えないのだ……はああ。
「ねえ? おじさん!」
見た目20歳前後くらいの、ボンキュッボンな娘が臭王クラウスに話しかけてきた。
「ん? 見ない顔だな。旅人か?」
ほおお。なかなか美しい娘じゃないか。
過去最高の巨乳娘かもしれない。
しかし、またヒルダが変身しているかもしれないし。
もう騙されないぞ!
「おじさんに私……恋しちゃったかも」
頬をピンク色に染めて恥ずかしがっている。
身体をくねくねさせる度、その豊かな胸がふるえて、何ともなまめかしい。
「な、何?」
な、なんだと!!!!
ニラ臭い貧相なオークに恋をしただと?
信じられん。
しかし、私の溢れる魅力がそうさせているのでは……?
「おっぱい触る?」
うおおおおおおお!!!!!!!!!!
これは恋だ!!
私も罪なオークだな!
人間の美しい娘を魅了してしまうとは……
オークではなく人間に生まれたかった!!!
「ねえ、触らないの?」
彼女は自ら胸をモミモミして、臭王を誘惑し始めた。時折、切なそうに吐息を漏らしている。
「触る! 揉んでもいいか!」
臭王は強烈なニラ臭を振り撒きながら興奮しまくっている。
いつもの騙されパターンに嵌っている事など、最早このオークには認識できていない。
しかし、まさかこの後に、あんな悲劇が待ち受けているとは思っていないだろう。
「好きにしていいよ♪」
これはヒルダではない。
ヒルダではない!!
「もう、早くアッチに行こう?」
「行く行く! 臭王行きまーす!」
「んもう! 何それぇ♥ うふふふ」
―――
今日はヒルダさんから新作の『野菜モーニングスター』を頂きました♪
前回頂いたのが『素振り練習用』で、今日頂いたのが『本番用』だそうですが?
本番って何の事でしょうか?
それに『実況機能つき』って何でしょう?
とにかく、これを持ってここで待つようにと……。
あ! あれはヒルダさん……?
でも、ヒルダさんにしては若そうな見た目で…………
フローラはヒルダが変身した若い娘と、その隣を歩くオークを見ている。そしてそのオークを見るなり、彼女の脳裏に野菜の杖の記憶が再生されていた。
その直後、フローラの目には、復讐の炎がメラメラと燃え始めていた。
「あ、おじさん。実はおじさんが好きな娘がもう一人いてね♪」
「うはははは!! 何人でもいいぞ! おっぱいなら何個でも大歓迎だ!!」
有頂天の臭王クラウスは、ほんの百メートルくらい先で、野菜モーニングスターを『ぶうんぶうん』と、轟音を立てながら素振りをしているフローラの姿など、まるで気付いていなかった。
フローラの持つ最新型野菜モーニングスターには、その先端にドリアン型の突起がついていた。
「おじさん、紹介するね♪ 私の友達のフローラちゃんよ」
この瞬間、臭王クラウスは全身の血の気が引くのを感じていた。
『また騙された』と言う考えが脳裏を駆け巡っているが、今更もう遅すぎた。フローラはこの日の為とは知らなかったが、毎日、試作型野菜モーニングスターで素振りを続けていたのだ。
最早彼女のスイングスピードは、平凡を絵に描いたようなクラウスが反応できる限界を遥に超越している。
『フオンッ』という何かを振り抜く音がした時には、既に野菜モーニングスターは臭王クラウスの胸の辺りに命中していた。
「ぐはあああああ!!!! ゴホッゴホッ!! げぼおおおおお!!」
「フローラちゃんナイスバッティング!!」
道端で胸を抑えて悶絶するクラウスは、ニラの匂いに混じってドリアン臭がするのを感じていたが、『ザッザッザッ』と、砂利を踏みしめながら近づいてくる、暗黒のオーラを纏ったフローラに戦慄していた。
「今度はドリアンですか!! 愚王クラウス! 貴方という人は……どれだけ私を苦しめれば気が済むのですか!!」
「ま…まて! ゴホッ! ぜ、前回も私は何もしていな……あ、あああ、まて! 話せばわかる!! それを振りかぶって何をする気だああああ!!!!」
臭王クラウスの胸毛はドリアンに様変わりしていた。
そのドリアン型胸毛は、フローラに新たな復讐心を植え付けて、激しく燃え上がらせていたのだ。
臭王クラウスは胸のドリアンを揺らしながら、この場から一秒でも早く逃げ出そうと試みるが、過去最高速を記録したフローラの野菜モーニングスターの一撃が、クラウスを雲一つない青空の彼方にまで打ち上げていた。
(おおっと! これは大きい!! 凄まじいライナーの特大ホームランが、フローラファンで埋め尽くされた超満員のライトスタンド一直線! 9回裏に飛び出した、大、大、大逆転勝利! フローラ選手、これが嬉しい今シーズン初ホームラン!!)
野菜モーニングスターの実況機能は、臭王クラウスを彼方まで吹き飛ばして、清々しい心地に満たされるフローラの心の内を映しているようだった。
「これで私は野菜の杖のトラウマを克服できた気がします!」
フローラの顔には、最早一点の曇りもなかった。彼女は今日のこの出来事を糧にして、女王として大きく成長するだろう。
哀れ臭王クラウス。汝の前途に幸あれ。
*****
ニラ、ドリアンと来て、次はどうしよう(´ー+`)
*****
ぐぅ! あの婆さんのせいで、すっかり『ばば専』が定着してしまって、村中の婆さんが私に夢中に……なんて生き地獄なんだ。
折角、居心地が良い村に落ち着けたと思っていたのに……
最近ではパインのせいで―――って! 思ってるそばから食うな! 痛い! いたたたッ! 同居人の髪の毛を食うな!
「こら! パイン! このニラは私の毛だ!! お前が食べまくるから、すっかり毛が濃くなって凄い事になっているのだぞ!!」
私はすっかりニラ臭いのに慣れてしまったが、村人はそうでもないらしく、異臭騒ぎがある度に何でもかんでも私のせいにされる……
居候ゆえに文句は言えないのだ……はああ。
「ねえ? おじさん!」
見た目20歳前後くらいの、ボンキュッボンな娘が臭王クラウスに話しかけてきた。
「ん? 見ない顔だな。旅人か?」
ほおお。なかなか美しい娘じゃないか。
過去最高の巨乳娘かもしれない。
しかし、またヒルダが変身しているかもしれないし。
もう騙されないぞ!
「おじさんに私……恋しちゃったかも」
頬をピンク色に染めて恥ずかしがっている。
身体をくねくねさせる度、その豊かな胸がふるえて、何ともなまめかしい。
「な、何?」
な、なんだと!!!!
ニラ臭い貧相なオークに恋をしただと?
信じられん。
しかし、私の溢れる魅力がそうさせているのでは……?
「おっぱい触る?」
うおおおおおおお!!!!!!!!!!
これは恋だ!!
私も罪なオークだな!
人間の美しい娘を魅了してしまうとは……
オークではなく人間に生まれたかった!!!
「ねえ、触らないの?」
彼女は自ら胸をモミモミして、臭王を誘惑し始めた。時折、切なそうに吐息を漏らしている。
「触る! 揉んでもいいか!」
臭王は強烈なニラ臭を振り撒きながら興奮しまくっている。
いつもの騙されパターンに嵌っている事など、最早このオークには認識できていない。
しかし、まさかこの後に、あんな悲劇が待ち受けているとは思っていないだろう。
「好きにしていいよ♪」
これはヒルダではない。
ヒルダではない!!
「もう、早くアッチに行こう?」
「行く行く! 臭王行きまーす!」
「んもう! 何それぇ♥ うふふふ」
―――
今日はヒルダさんから新作の『野菜モーニングスター』を頂きました♪
前回頂いたのが『素振り練習用』で、今日頂いたのが『本番用』だそうですが?
本番って何の事でしょうか?
それに『実況機能つき』って何でしょう?
とにかく、これを持ってここで待つようにと……。
あ! あれはヒルダさん……?
でも、ヒルダさんにしては若そうな見た目で…………
フローラはヒルダが変身した若い娘と、その隣を歩くオークを見ている。そしてそのオークを見るなり、彼女の脳裏に野菜の杖の記憶が再生されていた。
その直後、フローラの目には、復讐の炎がメラメラと燃え始めていた。
「あ、おじさん。実はおじさんが好きな娘がもう一人いてね♪」
「うはははは!! 何人でもいいぞ! おっぱいなら何個でも大歓迎だ!!」
有頂天の臭王クラウスは、ほんの百メートルくらい先で、野菜モーニングスターを『ぶうんぶうん』と、轟音を立てながら素振りをしているフローラの姿など、まるで気付いていなかった。
フローラの持つ最新型野菜モーニングスターには、その先端にドリアン型の突起がついていた。
「おじさん、紹介するね♪ 私の友達のフローラちゃんよ」
この瞬間、臭王クラウスは全身の血の気が引くのを感じていた。
『また騙された』と言う考えが脳裏を駆け巡っているが、今更もう遅すぎた。フローラはこの日の為とは知らなかったが、毎日、試作型野菜モーニングスターで素振りを続けていたのだ。
最早彼女のスイングスピードは、平凡を絵に描いたようなクラウスが反応できる限界を遥に超越している。
『フオンッ』という何かを振り抜く音がした時には、既に野菜モーニングスターは臭王クラウスの胸の辺りに命中していた。
「ぐはあああああ!!!! ゴホッゴホッ!! げぼおおおおお!!」
「フローラちゃんナイスバッティング!!」
道端で胸を抑えて悶絶するクラウスは、ニラの匂いに混じってドリアン臭がするのを感じていたが、『ザッザッザッ』と、砂利を踏みしめながら近づいてくる、暗黒のオーラを纏ったフローラに戦慄していた。
「今度はドリアンですか!! 愚王クラウス! 貴方という人は……どれだけ私を苦しめれば気が済むのですか!!」
「ま…まて! ゴホッ! ぜ、前回も私は何もしていな……あ、あああ、まて! 話せばわかる!! それを振りかぶって何をする気だああああ!!!!」
臭王クラウスの胸毛はドリアンに様変わりしていた。
そのドリアン型胸毛は、フローラに新たな復讐心を植え付けて、激しく燃え上がらせていたのだ。
臭王クラウスは胸のドリアンを揺らしながら、この場から一秒でも早く逃げ出そうと試みるが、過去最高速を記録したフローラの野菜モーニングスターの一撃が、クラウスを雲一つない青空の彼方にまで打ち上げていた。
(おおっと! これは大きい!! 凄まじいライナーの特大ホームランが、フローラファンで埋め尽くされた超満員のライトスタンド一直線! 9回裏に飛び出した、大、大、大逆転勝利! フローラ選手、これが嬉しい今シーズン初ホームラン!!)
野菜モーニングスターの実況機能は、臭王クラウスを彼方まで吹き飛ばして、清々しい心地に満たされるフローラの心の内を映しているようだった。
「これで私は野菜の杖のトラウマを克服できた気がします!」
フローラの顔には、最早一点の曇りもなかった。彼女は今日のこの出来事を糧にして、女王として大きく成長するだろう。
哀れ臭王クラウス。汝の前途に幸あれ。
*****
ニラ、ドリアンと来て、次はどうしよう(´ー+`)
*****
0
お気に入りに追加
5,000
あなたにおすすめの小説

出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??
新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる