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第1章『流浪の元聖女』
第2話「クラウス王の見込み違い」
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もっぱら玉座に座っているだけで、自分が名君だと勘違いできるクラウス王は、愛娘のプリシラ王女が聖女のお告げを受けたことを殊の外、喜んでいた。
良い気分で午後のお茶を楽しんでいたところに、彼の弟に当たるフォルリ公爵クレールが怒鳴り込んできた。
クレールは兄を敬愛する弟であるだけでなく、文武に秀でた名将でありながら、その剣術の腕前は剣聖と呼ばれるほどに、あまねく諸国に鳴り響いている。
この剣聖クレールと、長年隣国と戦い続ける王立騎士団長のユリウスが、オルビア王国を支える『オルビアの双璧』と呼ばれていた。
クレールとユリウス、そして聖女フローラの名声が、オルビア王国に優れた人材を呼び込み、繁栄の礎になっていたのだが……
本来、オルビア王国の王位はクレールが継ぐはずだった。
クレールを騙して王位に就いたのがクラウス王だったのだが、クレールに王位への野心が無かったことと、無用に争いを起こすことを好まない周到さが、クラウス王を敬愛するという形でオルビアを平和に導く一助になっていた。
もっともクラウス王のほうは、自身の器量でクレールを心服させていると思い込んでいる。彼はこういった根拠のない、都合の良い勘違いをするのが得意な男だ。
それだけに普段は礼儀正しく、控え目な弟が、激昂していることに驚きを隠せないでいた。
「兄上! どういうことですか!」
謁見の間に入るなり、挨拶もせずに、クレールは激昂している。柄にもなく興奮した面持ちで、語気を強めて兄王に対して詰め寄っていた。
「何をそんなに興奮している? それよりお前に話がある」
クラウス王のほうはそんな弟の様子を余り気に留めず、自分の用事を伝えようとした。
「今は聖女さまの件が最優先でしょう!」
暖簾に腕押し。そんな感じの態度を取る兄王に、クレールは苛立ちを感じていた。
冷静沈着なクレールのことだ、自分がどんな顔つきなのかは把握している。余り兄王を責めすぎない程度に、怒りを露わにしていた。
「だからその話だ」
「その話とは、プリシラの話ですか……」
「聖女はプリシラだけだ。貧農の娘など捨て置け!」
聖女フローラは自身が功績を積んでいるだけでなく、彼女の母親もオルビアを大きな災いから救う為に、自らの命と引き換えに女神を地上に降臨させている。
クレールはもとより、国中の大勢の人間が、フローラと、その母親ユハを大変に崇敬している。
クラウス王にしても、フローラ親子には多大な借りがあると言っても過言では無かった。
「しかし、プリシラにはお告げが……」
「お告げならあっただろう? あの子が夢で女神から受けている。それで十分だ。過去にも夢でお告げを聞いた者が聖女になった例は幾つもあるじゃないか」
確かにクラウス王の言うことに間違いは無いが、それらはすべて『事前に託宣を受けている』という前提があってこそだ。
だが、愛娘であるプリシラ王女が聖女になるのだから、クラウス王にとっては結果が大事だった。経過に何があろうとも、どんなに問題であろうとも関係ないのだ。
クラウス王とはそういう人間だ。
「ですから、そのお告げがあることを、事前に神々からお聞きする役目なのが聖女さまでしょう!」
「そうだ。だからフローラを追放した」
さも当たり前という感じに、クラウス王はぬけぬけと言い放った。
「フローラさまに何の非があるというのですか!」
クレールの忍耐もそろそろ限界に近付いている。
相手は王だし、実の兄でもあるのだから、極端なことをするつもりはないが、クレールとて聖人君子というわけでもない。何でも受け入れるつもりなど彼には無かった。
「お前らしくもないな? あの貧農の娘は自分の立場を守るために、プリシラにお告げあることを伏せていたのだぞ」
「そんなはずはありません」
フローラを良く知る者なら、皆がクレールと同様の返答をするだろう。
それにそもそもの話、クラウス王の言い分には根拠が存在しない。プリシラ王女が言うことを確認もせずに、すべてを鵜呑みにしている。
「いいか? クレール。あの不届き者はお告げの事実を隠蔽し、私と、この国と、そして神々に背いたのだぞ。本来ならば死罪に値する大罪なのを、追放で済ませてやったのだ」
『済ませてやった』ではなく、本当は殺そうとしたが、幾ら何でもと家臣たちに反対されている。
大臣ら文官は概ね、クラウス王寄りだが、それでも大臣たちも、フローラの処刑には難色を示していた。
「プリシラが間違っていたらどうなさるのですか?」
「ふん。王女であるプリシラが、たかが貧農の娘に劣るわけがないだろう」
「……わかりました。兄上には頼みません」
一縷の望みを抱いて兄王を訪ねるも、事前の予想通りになってしまい、クレールはがっくりと肩を落としている。顔中に苦悶の色を滲ませている。悔しさが込み上げているのだろう。
「勝手は許さんぞ。お前には婚礼の準備をしてもらわねばならん」
「……私に誰の世話をさせるつもりですか」
「お前の婚礼だ。プリシラを娶れ。聖女となるのだ、これ以上の名誉はないだろう? 何よりあの子がそうなりたいと望んでいる」
以前からクレールにとっては姪に当たる、プリシラ王女との結婚を薦められていた。
彼が未だに独身なのは、自身の影響力が強くなることで、オルビアの勢力図に悪影響を与えない為だ。
ただ、プリシラ王女と結婚をするならば、王権の強化に繋がる。
選択肢としては悪くはないと言えよう。
ただ、それはあくまでも、クレールが『そう望むなら』の話である。
「しかし兄上、私は……」
「話は終わりだクレール。プリシラに会いに行け」
クラウス王は玉座から立ち上がると、一瞥もくれずに奥の間にそそくさと立ち去った。
一人残されたクレールは、何かを固く決心したような面持ちをしている。
そして足早に謁見の間を出て行き、そのままプリシラ王女の居室のほうへ向かった。
―――
表に控える侍女の口から『クレールさまがお見えになりました』と告げられて、プリシラ王女は喜色満面な表情になっている。
ここ最近はずっと彼女の思い通りになっているのだから、愛しの君の来訪も吉祥に違いないと考えたようだ。
プリシラ王女はおよそ3年ほど前から、クレールに片想いをしている。
その想いの実現が間近に迫り、これ以上ないほどに幸せを感じていた。
「クレール叔父さま! お聞きになりましたか? 私が聖女になるのですよ!」
クレールの姿が目に入るなり、プリシラ王女は歓喜の声を上げた。
自分のことばかりを考えているのだろう。クレールの表情が暗く沈んでいることには、一向に気付く気配も、気に留める様子も見せない。
「フローラさまに何をした?」
フローラ追放の張本人がプリシラ王女なのは、クレールも当然、知っている。その上で何をしたのかと、感情を表に出さないよう、細心の注意を払って尋ねていた。
「あんな偽物など、放っておきましょう。オルビアは私が守護します!」
クレールの期待とは裏腹に、プリシラ王女の返答も酷いものだった。
「聖女さまの仕事が務められるのか?」
いいか、プリシラ。
そなたに聖女の仕事が務まるとは思えない。
それがどんな事態を招くのか、良く考えることだ。
「当然ですよ! フローラの時よりもオルビアは繁栄します。だから私を支えて下さいますよね?」
「婚儀の話は兄上から聞いているが……」
「ずっと叔父さまをお慕いしてきたのです。貴方が夫となって支えてくださるなら、聖女の重責にも耐えて行けると思います!」
そもそも、私と結婚しないと担えない時点で、そなたには向いていない。
大方、私を振り向かせようと、極端な手段を取ったのだろうが……
フローラさまを巻き込んでしまい、私はなんと罪深い。
「婚礼の準備をするには領地に戻らないといけない」
「はい! お戻りになるのをお待ちしております!!」
好きなだけ待っていろ。
もうこんな国にも、あんな兄にも愛想が尽きた。
私はフローラさまの為だけに生きる。
我が剣と、この身を捧げて、あの御方をお支えする。
さらばだ、オルビアよ。
*****
2020/06/04 推敲
*****
良い気分で午後のお茶を楽しんでいたところに、彼の弟に当たるフォルリ公爵クレールが怒鳴り込んできた。
クレールは兄を敬愛する弟であるだけでなく、文武に秀でた名将でありながら、その剣術の腕前は剣聖と呼ばれるほどに、あまねく諸国に鳴り響いている。
この剣聖クレールと、長年隣国と戦い続ける王立騎士団長のユリウスが、オルビア王国を支える『オルビアの双璧』と呼ばれていた。
クレールとユリウス、そして聖女フローラの名声が、オルビア王国に優れた人材を呼び込み、繁栄の礎になっていたのだが……
本来、オルビア王国の王位はクレールが継ぐはずだった。
クレールを騙して王位に就いたのがクラウス王だったのだが、クレールに王位への野心が無かったことと、無用に争いを起こすことを好まない周到さが、クラウス王を敬愛するという形でオルビアを平和に導く一助になっていた。
もっともクラウス王のほうは、自身の器量でクレールを心服させていると思い込んでいる。彼はこういった根拠のない、都合の良い勘違いをするのが得意な男だ。
それだけに普段は礼儀正しく、控え目な弟が、激昂していることに驚きを隠せないでいた。
「兄上! どういうことですか!」
謁見の間に入るなり、挨拶もせずに、クレールは激昂している。柄にもなく興奮した面持ちで、語気を強めて兄王に対して詰め寄っていた。
「何をそんなに興奮している? それよりお前に話がある」
クラウス王のほうはそんな弟の様子を余り気に留めず、自分の用事を伝えようとした。
「今は聖女さまの件が最優先でしょう!」
暖簾に腕押し。そんな感じの態度を取る兄王に、クレールは苛立ちを感じていた。
冷静沈着なクレールのことだ、自分がどんな顔つきなのかは把握している。余り兄王を責めすぎない程度に、怒りを露わにしていた。
「だからその話だ」
「その話とは、プリシラの話ですか……」
「聖女はプリシラだけだ。貧農の娘など捨て置け!」
聖女フローラは自身が功績を積んでいるだけでなく、彼女の母親もオルビアを大きな災いから救う為に、自らの命と引き換えに女神を地上に降臨させている。
クレールはもとより、国中の大勢の人間が、フローラと、その母親ユハを大変に崇敬している。
クラウス王にしても、フローラ親子には多大な借りがあると言っても過言では無かった。
「しかし、プリシラにはお告げが……」
「お告げならあっただろう? あの子が夢で女神から受けている。それで十分だ。過去にも夢でお告げを聞いた者が聖女になった例は幾つもあるじゃないか」
確かにクラウス王の言うことに間違いは無いが、それらはすべて『事前に託宣を受けている』という前提があってこそだ。
だが、愛娘であるプリシラ王女が聖女になるのだから、クラウス王にとっては結果が大事だった。経過に何があろうとも、どんなに問題であろうとも関係ないのだ。
クラウス王とはそういう人間だ。
「ですから、そのお告げがあることを、事前に神々からお聞きする役目なのが聖女さまでしょう!」
「そうだ。だからフローラを追放した」
さも当たり前という感じに、クラウス王はぬけぬけと言い放った。
「フローラさまに何の非があるというのですか!」
クレールの忍耐もそろそろ限界に近付いている。
相手は王だし、実の兄でもあるのだから、極端なことをするつもりはないが、クレールとて聖人君子というわけでもない。何でも受け入れるつもりなど彼には無かった。
「お前らしくもないな? あの貧農の娘は自分の立場を守るために、プリシラにお告げあることを伏せていたのだぞ」
「そんなはずはありません」
フローラを良く知る者なら、皆がクレールと同様の返答をするだろう。
それにそもそもの話、クラウス王の言い分には根拠が存在しない。プリシラ王女が言うことを確認もせずに、すべてを鵜呑みにしている。
「いいか? クレール。あの不届き者はお告げの事実を隠蔽し、私と、この国と、そして神々に背いたのだぞ。本来ならば死罪に値する大罪なのを、追放で済ませてやったのだ」
『済ませてやった』ではなく、本当は殺そうとしたが、幾ら何でもと家臣たちに反対されている。
大臣ら文官は概ね、クラウス王寄りだが、それでも大臣たちも、フローラの処刑には難色を示していた。
「プリシラが間違っていたらどうなさるのですか?」
「ふん。王女であるプリシラが、たかが貧農の娘に劣るわけがないだろう」
「……わかりました。兄上には頼みません」
一縷の望みを抱いて兄王を訪ねるも、事前の予想通りになってしまい、クレールはがっくりと肩を落としている。顔中に苦悶の色を滲ませている。悔しさが込み上げているのだろう。
「勝手は許さんぞ。お前には婚礼の準備をしてもらわねばならん」
「……私に誰の世話をさせるつもりですか」
「お前の婚礼だ。プリシラを娶れ。聖女となるのだ、これ以上の名誉はないだろう? 何よりあの子がそうなりたいと望んでいる」
以前からクレールにとっては姪に当たる、プリシラ王女との結婚を薦められていた。
彼が未だに独身なのは、自身の影響力が強くなることで、オルビアの勢力図に悪影響を与えない為だ。
ただ、プリシラ王女と結婚をするならば、王権の強化に繋がる。
選択肢としては悪くはないと言えよう。
ただ、それはあくまでも、クレールが『そう望むなら』の話である。
「しかし兄上、私は……」
「話は終わりだクレール。プリシラに会いに行け」
クラウス王は玉座から立ち上がると、一瞥もくれずに奥の間にそそくさと立ち去った。
一人残されたクレールは、何かを固く決心したような面持ちをしている。
そして足早に謁見の間を出て行き、そのままプリシラ王女の居室のほうへ向かった。
―――
表に控える侍女の口から『クレールさまがお見えになりました』と告げられて、プリシラ王女は喜色満面な表情になっている。
ここ最近はずっと彼女の思い通りになっているのだから、愛しの君の来訪も吉祥に違いないと考えたようだ。
プリシラ王女はおよそ3年ほど前から、クレールに片想いをしている。
その想いの実現が間近に迫り、これ以上ないほどに幸せを感じていた。
「クレール叔父さま! お聞きになりましたか? 私が聖女になるのですよ!」
クレールの姿が目に入るなり、プリシラ王女は歓喜の声を上げた。
自分のことばかりを考えているのだろう。クレールの表情が暗く沈んでいることには、一向に気付く気配も、気に留める様子も見せない。
「フローラさまに何をした?」
フローラ追放の張本人がプリシラ王女なのは、クレールも当然、知っている。その上で何をしたのかと、感情を表に出さないよう、細心の注意を払って尋ねていた。
「あんな偽物など、放っておきましょう。オルビアは私が守護します!」
クレールの期待とは裏腹に、プリシラ王女の返答も酷いものだった。
「聖女さまの仕事が務められるのか?」
いいか、プリシラ。
そなたに聖女の仕事が務まるとは思えない。
それがどんな事態を招くのか、良く考えることだ。
「当然ですよ! フローラの時よりもオルビアは繁栄します。だから私を支えて下さいますよね?」
「婚儀の話は兄上から聞いているが……」
「ずっと叔父さまをお慕いしてきたのです。貴方が夫となって支えてくださるなら、聖女の重責にも耐えて行けると思います!」
そもそも、私と結婚しないと担えない時点で、そなたには向いていない。
大方、私を振り向かせようと、極端な手段を取ったのだろうが……
フローラさまを巻き込んでしまい、私はなんと罪深い。
「婚礼の準備をするには領地に戻らないといけない」
「はい! お戻りになるのをお待ちしております!!」
好きなだけ待っていろ。
もうこんな国にも、あんな兄にも愛想が尽きた。
私はフローラさまの為だけに生きる。
我が剣と、この身を捧げて、あの御方をお支えする。
さらばだ、オルビアよ。
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2020/06/04 推敲
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