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第4章「大根の…もとい、暗黒のアデラール」

閑話休題その13「ベルナルドの願い」

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天界、電脳と水の女神ヘリアの離宮――――


「ルミエラさま、ご立派になられて、、、」


ベルナルドの姿をした霊体が、遥か彼方の地上に向かって想いを馳せている。


『ベルナルドくん。良かったね?キミの主は良い夫を持ったと思うよ!!彼女が本当に好きだったのは、彼ではないけど、あの王太子くんは、歴史に名を残す、偉大な王になる運命を持ってるもの。』


ベルナルドは、女神の離宮でここしばらく、下界の主を姿を見守っていた。どこまでも白く磨かれた床が続き、遥か彼方まで見渡しても、壁ひとつ見当たらない。椅子とテーブルだけが、このだだっ広く、ただただ白い世界に存在する。そんな何も世界でベルナルドは、ルミエラのことだけを考えて過ごしていた。


『おなか減ってない?』

「いえ、死してからは、そのような感覚は、、、」


女神が何かを呟いて、右手をベルナルドに差し向ける。


「あ、、、」

『うん!おなか減ったよね?ほら、”みんなと一緒”に食べようよ!』


女神がそう言うと、ベルナルドの意識は、遥か下界まで一気に下っていく。その余りに急激な速度に思わず、ベルナルドは目を閉じてこらえる。”もう目を開けてもいいよ”、女神の声が脳裏に響く。おそるおそる目を開けると、そこはレンスの私邸の一室、ルミエラたちが食事を楽しんでいる食堂だった。


「あれれ?ルミエラさま~!椅子1個多いよ?」
「リーナさん、いいのです。そこはわたくしの大事な人のための席なのですわ。」


首をかしげて不思議がるリーナに、ルミエラはにこりと微笑む。


(女神さま、私は皆さまには、見えていないのですね?)

『見えてないよ!いまの僕の声も、彼らには聞こえないようにしてある。ベルナルドくん、この食事が終わってしばらくは、みんなはここで楽しく過ごすよ。その間だけキミの意識をここに留めてあげる。』


女神は”あとで迎えにくるね”とだけ告げて去って行った。


(女神さま、感謝いたします。これが末期の宴と思って、皆さまの様子を胸に刻んで、この世を去りたいと思います。)


「しかし、結局、あいつには1回も勝てなかったな~」
「何の話だ?」
「ベルナルドとの試合だよ!同門だからな。あいつとは。」


(はは、殿下。あなたこそ、しばらく見ないうちにすいぶんと、腕を上げられたではないですか?これなら、ルミエラさまをあなたさまに託しても、、、)


「お?何か言ったか?」
「いや?何を言ってないが。」


レンスは誰かに話しかけられたような感覚だった。


「あれれ~!最後にとっといた桃が無いよ!」
「リーナ!自分で食べたのを忘れたんじゃないのか?ははは。」
「違うよ!お兄ちゃん!」


(おっと、リーナさんの桃でしたか。久しぶりに空腹で食べてしまいました。はは。)


「なぜか、いまわたくしの隣に彼が居るような感覚がしますわ。。。」


(おりますよ、ルミエラさま。私がずっと見守っております。)


次第に食事が進むと、ひとり、またひとりと食事を終えて部屋を退出していく。なぜだか、後ろ髪を引かれる気がして、ルミエラだけは一人この場に残り、ベルナルドの為の椅子を眺めていた。いや、正確には椅子のあたりを。


「ベルナルド、そこに居るのでしょう?差し詰め、女神さまの計らいでしょうか。」


(相も変わらず、カンの鋭いお方ですね、、、)


「そこで聞いていてください。ずっとあなたに支えられてきて、本当に感謝しています。もしかしたら、わたくしはあなたを父のように、慕っていたのかもしれませんわね。」


(勿体無いお言葉です、お嬢様。)


ルミエラと、ベルナルドのこの奇妙なやりとりを、部屋の外の廊下で聞いている者がいた。アデラールとである。実は彼は、さきほどベルナルドが降りてきたときに、薄っすらその霊体を視覚しており、部屋を立ち去ったあとに戻って話を聞いていた。


「ふう、言いたいことを言えてすっきりしましたわ。さて、部屋に戻りますか。」


ルミエラは、些か、すっきりした表情で席を立つと、ベルナルドの席へ向かって一礼して部屋を出て行った。ベルナルドは誰も居なくなった部屋で、自分が遺した刀に手を置いて何ごとかを呟いた。


(さて、、、そろそろ、お迎えも来る頃合いだな、、、む?アデラールさん?)


「ベルナルドさん、あとは俺たちに任せてください。」


アデラールはそう言い、ベルナルドの前まで来ると頭を下げて、ふたたび、部屋を立ち去った。


『だーりんには見つかったみたいだね!!彼はちょっと特殊な霊格でね!さあ、帰ろうか。残念だけど、そろそろ時間なんだよ。』


ベルナルドが頷くと目の前が真っ白に輝き、ふたたび、あの白く何もない世界に戻っていた。


「女神さま、私の望みは変わりません。」

『キミのその願いを叶えるには、あと5年ここで過ごさないとダメだね!!どうする?』

「何年でも構いません。願いが叶うならば。」

『わかったよ!!しばらく、ここでゆっくり過ごすといいよ。ここに居れば、だーりんには再会できるんじゃないかな!』


ベルナルドは、一瞬、動揺して女神の顔を凝視する。


『ああ!違うよ。だーりんが死ぬってわけじゃなくて!彼ってね、いろいろ特殊だから。生きてる人間はふつう、ここには来れないけど彼は特別なんだ。』

「それは楽しみですね。」


ベルナルドは、遠い空の先にルミエラの笑顔を描き、想いを巡らせた。




*****

作者です!

ベルナルド後日談でした(´ー+`)

*****

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