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第4章「大根の…もとい、暗黒のアデラール」
第56話「大根の間」
しおりを挟むベラライア王宮、王陛下の執務室――――
「サン?おまえ、それでどうするつもりなのだ?」
王は、息子に対して少々、呆れ顔で尋ねた。
「わかってるよ!ちゃんと言うって!!アデラール、そのとき一緒に居てくれ!」
「断る。」
「おいいい!即答!?」
「当たり前だ。王太子のくせに、女を口説くのに人をアテにするな。」
気持ちを伝えれば、必ず承諾されるのに、何故、迷う?もしかして、ほかに気になる女でもいるのか?ちょっと前にもこんなことを考えた記憶があるな、、、アデラールは記憶をたぐりよせるように思いに耽る。
「魔導師殿の言う通りだぞ?潔く言ってこい!いまからな!これは王ではなく、父として命じることだ。」
レンスは”心の準備”だとか”用意が”などと抵抗したが、やがて諦めたのか、父王に目配せすると、そのまま執務室を出て行った。後姿は覇気の欠片もなく、ありていに言うと”情けなかった”。
「さて、では王陛下。私もそろそろ失礼します。」
アデラールは、王に対して折り目正しく一礼すると、にこやかな笑顔を見せて退出した。
王都ベラライア、レンスの私邸――――
「あれ?アデラールさん。昨夜はどこへ行ってたんですか?」
昨晩は牢獄で過ごしたアデラールが、2日ぶりに私邸に顔を出す。ティリアは少し、不安そうな顔つきだったが、彼がしばらく見せなかった、嬉しそうな顔をしており、それを見て安心したように、ほっと息を吐く。
「ちょっと忙しかった。伝えておかなくて悪かったな。」
「いいえ!大丈夫です。それより、なんだかとても嬉しそうな顔をしてますね♪」
「すごく良いことがあったからな。」
「そうなんですね。ふふふ~」
アデラールが嬉しそうな顔をしていたため、ティリアもつられて、とても幸せな気持ちになった。自然と笑顔がこぼれる。まるでこの2人の周囲だけ、ゆったりとした時の流れのようだ。そんな2人の姿を、私邸の庭から眺めていたレンスは、なにかを諦めたようにため息を吐いて、その場を去った。
王都ベラライア、ホテルラディッシュ『大根の間』――――
「あー、えっと、本日はお日柄もよく、、、」
「ええ、サン殿下。良い天気ですわね。」
あー、ちきしょう!ルミエールを王宮に呼ぶと、親父がうるさそうだから、ここに呼んだのに、うじゃうじゃ何人も、護衛だのなんだのついてきやがって!これじゃ集中できやしねー。
「ル、ルミエール!、、趣味は?」
「趣味ですか?魔法の勉強や、乗馬、最近は剣術の稽古も、少々嗜んでおりますわ。」
「そ、そうか、、はは、、」
「殿下は、わたくしのような女は、お好みではありませんか?」
やべ!女に気を使わせてどうすんだ!もういいわ!言ってやる!!
「え、いや、そんなことはねーよ。あぁ!もうアレだ!俺と婚約してくれ!!」
「なかなか言ってくださらないので、お好みではないのかと」
ルミエラは待たされたお返しとばかりに、少々いじわるっぽく返答した。
「そ、それで?」
「もちろん、喜んでお受けいたしますわ。」
「そ、そうか、あは、、ははは、、えーとだな、立太子のあとに、神殿で婚約の儀があるから、、な!」
「わかりました。殿下。」
よ、よし!男らしく、ビシっと言った!親父とアデラールめ!俺をいじくり回しやがってぇ~。俺もやるときはやるんだよ!
「じゃ、じゃあ、またな!」
レンスは慌てて部屋を出ようとして、足元を滑らせて隣の寝室に倒れこんだ。
「な。。殿下。。これは。。」
寝室には布団が一組敷いてあり、枕元には大根が置いてあった。護衛たちを見ると”コクコク”と首を縦に振って、心なしかニヤニヤしているようだった。
「ち、、ちがっ」
「あの。。こういうのは。。結婚してからで。。それに大根って。。」
ルミエラは顔を真っ赤にして、足早に部屋から出て行った。
「違うぞ!おい!犯人はコイツらだ!おいおまえら!この大根はなんだ!!何に使うんだコレはあああああああああああああああああああああ」
大根の間に、レンスの悲しい悲鳴がこだました。
*****
作者です!
R15指定でお送りしました(´ー+`)
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