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第4章「大根の…もとい、暗黒のアデラール」

閑話休題その7「カルロ、運命のヒトと再会する」(カルロ視点)

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どっかの森、廃屋――


「はぁ、、、腹減った、もう、ぶりのお頭は食いたくねぇ、、」


よう!俺はカルロだ。
もう半月近く、ぶりのお頭しか食えてねぇ!生姜が恋しい。
自慢じゃねぇが!生臭さが半端ねぇんだ!おまけに額に
ふざけたオブジェがついてるっつぅわけでよ、、、
もう生きていけねぇ、、、、、、ぐすっ、、、


「おい!居たぞーーー!この匂いは間違いない!」
「や、、やべぇ!またあいつらかああぁぁぁ、しつけぇぇぇぇ」
「まてカルロ!この野郎!額におかしなもんつけやがって!俺たちへの
嫌がらせか、コラぁぁぁくせぇんだよ!」
「だったら、追ってくんじゃねぇ!!」
「うるせ!落とし前つけさせてやるぜ!まずは、そのふざけたオブジェから
叩き斬ってやるぜ!うらー」


これを叩き斬る?叩き斬れるなら苦労しねぇよ!
食っても食っても!生えてくるんだよ!その上、、
走るたびに、魚の口から滴り落ちる生臭せぇ汁がどれだけ不快か
おめぇらに分かるのか!それが目に入って染みるんだよ!

くそ!アデラールの野郎!!

今度会ったら必殺必中の狙撃で、あの世へ送ってやるぜ!
だいたい、なんでこんなことになったんだ!
俺が何をしたって言うんだ?仕返しするにもあんまりじゃねぇか!


「まいたか?畜生!この分じゃ街には近寄れねぇ、、、仕方ねぇ、、、」


しばらく、ほとぼりを冷まそう。
森に入って自給自足するしかねぇ。ぶりのお頭に食い飽きて
思わずふらふらっと街に近づいちまった。

俺としたことが、ぶりのお頭に養分を吸い取られているのか
思考に冴えがない気がするぜ、、、なんか、こう、たまに
夢を見るんだ、、水の中を身体をバタバタさせながら泳ぐっていう!
それがすげぇ、気持ち良さそうな感じなんだぜ?

それに今朝なんか、川に落っこちた時も苦しくなくてよぉ
水の中で呼吸?してるような、、、おいおい、俺は何を考えてる?
それじゃ魚になったようじゃねぇか!
あ、ありえねぇ、考えるな!無だ、無になるんだ!

はぁはぁ、、、だめだ、今日はあのいい感じに寂れてる廃屋で
身体を休めよう、、、疲れて頭がイカれやがった。


「ぼろい廃屋だな、、ま!雨風しのげるだけマシだな、、じゃまするぜ!
って誰もいな――

なんだ?大根?なんか、でけぇ大根が生えた、、、男?暗くて良くみえねぇ


「お、おい?おまえ?生きてるか!返事しろ!!」
「、、、むにゃむにゃ」
「おい!起きろ、こっちに顔を向けろ!お前、魔物か?」


やべぇ!魔物かもしれねぇ!だが、大根だ。運が向いてきたぜ。
こいつが油断してるスキにトドメを刺して今夜は『ぶり大根』だぜ!
ひゃっはー!神様も味な演出してくれるじゃねぇか!


「おら!あの世へ行きな!!」
「、、、お?、、あんだてめぁ!やんのかって、、、カルロ?」
「あ?、、、ちっと顔をよくみせ、、、イオスじゃねぇか!てめぇ
こんなとこで何やってんだ!」


イオス?なんで大根がって、、あ!アデラールが言ってたのは
こういうことか!あの野郎!


「それはこっちのセリフだ、、、ってお前、額に何つけてんだ?
って、ぎゃははははは、ぶり!ぶり生えてるよ!」
「んだと!てめぇこそ!大根生えてるじゃねぇか!」
「うる、、、せ、、ひゃはは!だめだ!近寄るな!俺を笑い死に
させるつもりか!ぎゃはは」
「な、、なんだ、、と、、俺だってな、、ぐすっ、、、」
「ひゃは?、、、おい、、カルロ、、泣いてんのか?ガラにも
ねぇな!ぎゃはは、、、は、、まあ、そのなんだ。気持ちは
わ、わかるよ!」
「ぐすっ、、、おめぇも、大根生えてつれぇな、、、」
「おう。独りぼっちで寂しくて、でも、この姿じゃ街や村行ったところで
見つかった瞬間に魔物扱いでひでぇ目にあっちまう」


そうか。こいつも俺と同じ苦労をしていたのか。
わかる、わかるぜ!痛いほどわかる!


「なぁ、イオス?仲直りして今夜はぶり大根で一杯やろうぜ」
「おう、いいなソレ、もう大根の煮物は飽き飽きしてたんだよ
大根なら生でも、、おろしでもイケるがな、、」


生でもイケるのは羨ましいな、、、俺も大根がよかっ、、、
いや、そうじゃねぇだろ!


―――――その夜


「うめぇ!イオスの大根はなんかこぅ、まろやかでイイな!」
「カルロのぶりのお頭もいい味でてんじゃぇか!エキスが染み出て
口の中に広がってイクぜ!」
「やべぇ!何杯でもイケそうだぜぇ!イオスお前に会えて俺は
幸せだぜ!」
「何言ってやがんだ、、て、、照れるじゃねぇか!お前最高だぜ!」


やべぇ!イオスがキラキラ輝いて見えやがる!
こいつこんなにイイ男だったか?


「イオス!こいつはイケるぜ!」
「な、なんども言うなって照れるぜ!」
「ちげぇよ!、いや違うわけじゃねぇが!」
「ああん?何が言いてぇんだ?」
「このぶり大根を売り出すんだよ!これならこの国1番のぶり大根を出す
小料理屋として天下取れるぜぇ!!」
「な、、なんだって、、お、おう!確かにイケるかもしれねぇ!!」
「だろ!やべぇな、、ま、まさか?これが俺たちのサクセスストーリー?
アデラールのくれた最高のプレゼント?!」
「なんだと!そ、そうか!そうも考えられるな!ぶり大根長者!!」


すげぇ。こんなところで、こんな劇的な運命に出会うとは
この森へ入るのも必然だったのか!そうにちがいねぇ。
今度こそ、ぶり大根でノシあがるぜぇ!


待ってろ!アデラール!!
俺のぶり大根で、お前に必ず『うめぇ!』と言わせてやるぜぇ!


*****

3章オープニングには、この2人に出演してもらいました!
カルロが相変わらずアホなのは仕様です(´ー+`)

※BL的な展開はありません。予めご了承ください(´ー+`)

次回、第3章開演です♪


*****
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