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第3章『長期休暇は辺境で』
第44話「寄生虫コンビの末路④…因果応報」
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「ごほごほッ……ぶふッ……ぐうう、空気が淀んでいて息苦しい……」
粗末な食事を急いで口に入れながらも、ガ・スキーは息苦しさに咳き込んで、辛い表情をしている。
「……そうっすね。酷い所っすよ……それにこのメシにも、うんざりっすよ」
ガ・スキーとモ・スキーは労役場送りにされて、わずか数日も耐えられずに嫌気が差していた。
毎朝4時に叩き起こされて、昼前までひたすらツルハシを振るか、鉱石を満載した一輪車を押す。
それからこの時間になって昼食にありつけるのだが、味気がしない硬いパンと、カップ一杯分の具が浮いていないスープが配られる。
鉱山内は空調が整備されておらず、常に濃い粉塵が舞っている。スープが粉っぽい気がするのは、その粉塵が混じっているからかもしれない。
どちらにせよ酷い食事だ。
ただ、そんな物でも腹に入れておかないと、午後の労役には耐えれない。
だから仕方なくでも食べるしかない。
「これがあと30年って……無理だろ……」
ガ・スキーのこの台詞に答える者は居なかった。
ガ・スキーとモ・スキー以外にも、この鉱山とその周辺の施設には数百人の罪人が収容されている。
その中でも、この鉱山内の労役が最も過酷だった。
何しろ眠るときでさえ、鉱山内の施設で眠らなくてはならない。
次に太陽を拝める日は相当先になるだろう。
それはもしかすると、本当に30年後かもしれない。
そう思っているから、モ・スキーは答える気にはなれなかった。
―――
「ぐあッ……か、身体があちこち痛い。メシを食うのが辛い……」
一日の労役を終えてガ・スキーの身体は悲鳴を上げていた。
「ほんとっすよ……、腕がぱんぱんでスープを口に運ぶのが辛いっす……」
モ・スキーにしても同様だった。
この二人は魔法学園に通っていた生徒だ。
そもそもの話、力仕事には向いていない。これが剣術とか弓術の学生だったなら、腕力にも筋力にも優れていただろうから、過酷な労役にもある程度は耐えられたかもしれない。
だがこの二人は重労働に全く向いていないのだ。
しかし、早めに慣れた方が身のためだ。
病気にでもなったらろくに治療もされずに放置される。
それでも運が良ければ生き延びるが、そのまま死ぬ可能性も低くはない。
もし感染症でも患えば、まず間違いなく命を落とすだろう。
だから、早めに慣れておいた方がいいのだ。
むしろ30年後まで無事に生き永らえれば運が良いとも言える。
47歳で解放されれば、それからでも第二の人生は歩めるだろう。
「おい、お前ら。悪い事は言わねえ。早めに慣れておけ……」
「ああ、その方がいい。じゃないと後が辛いぞ?」
ガ・スキーたちの会話が耳に入ったのだろう。
中年の男が二人、近寄ってきてそう言ってきた。
「……慣れるの自体が無理っぽい……そもそも力仕事は向いていないのに」
「そうっすよ。元魔法学園の学生なのに……」
「そんな事は関係ねえんだよ。何でここに来たのかは知らねえが……もう諦める事だな」
男の一人が自嘲気味にそう言っている。
「どこで間違ってこうなったんだ?」
「騙されただけなのに……こんなの酷いっす。何もしていないのに、理不尽な目に遭わされる人間の気持ちにもなれってやつっすよ……」
「そうだよな……酷い目に遭う人間の気持ちを考えろよな……世の中、本当にクズばっかりだぜ……」
この二人には恨む時間も、悔い改める時間も、それこそ30年分ある。
今はまだ収容されて間もないが、全く人の気持ちの分からないこの二人でも、30年もあれば悔恨の極みに達して反省できるかもしれない。
だが、もう遅すぎだ。
彼らの場合、因果応報なのだ。
やった分以上に返ってきてはいるが、やらなければこうはならなかった。
後はもう無事に、30年後を迎えられるように祈るしかない。
*****
30年もあれば反省くらいするかもしません(´ー+`)
*****
粗末な食事を急いで口に入れながらも、ガ・スキーは息苦しさに咳き込んで、辛い表情をしている。
「……そうっすね。酷い所っすよ……それにこのメシにも、うんざりっすよ」
ガ・スキーとモ・スキーは労役場送りにされて、わずか数日も耐えられずに嫌気が差していた。
毎朝4時に叩き起こされて、昼前までひたすらツルハシを振るか、鉱石を満載した一輪車を押す。
それからこの時間になって昼食にありつけるのだが、味気がしない硬いパンと、カップ一杯分の具が浮いていないスープが配られる。
鉱山内は空調が整備されておらず、常に濃い粉塵が舞っている。スープが粉っぽい気がするのは、その粉塵が混じっているからかもしれない。
どちらにせよ酷い食事だ。
ただ、そんな物でも腹に入れておかないと、午後の労役には耐えれない。
だから仕方なくでも食べるしかない。
「これがあと30年って……無理だろ……」
ガ・スキーのこの台詞に答える者は居なかった。
ガ・スキーとモ・スキー以外にも、この鉱山とその周辺の施設には数百人の罪人が収容されている。
その中でも、この鉱山内の労役が最も過酷だった。
何しろ眠るときでさえ、鉱山内の施設で眠らなくてはならない。
次に太陽を拝める日は相当先になるだろう。
それはもしかすると、本当に30年後かもしれない。
そう思っているから、モ・スキーは答える気にはなれなかった。
―――
「ぐあッ……か、身体があちこち痛い。メシを食うのが辛い……」
一日の労役を終えてガ・スキーの身体は悲鳴を上げていた。
「ほんとっすよ……、腕がぱんぱんでスープを口に運ぶのが辛いっす……」
モ・スキーにしても同様だった。
この二人は魔法学園に通っていた生徒だ。
そもそもの話、力仕事には向いていない。これが剣術とか弓術の学生だったなら、腕力にも筋力にも優れていただろうから、過酷な労役にもある程度は耐えられたかもしれない。
だがこの二人は重労働に全く向いていないのだ。
しかし、早めに慣れた方が身のためだ。
病気にでもなったらろくに治療もされずに放置される。
それでも運が良ければ生き延びるが、そのまま死ぬ可能性も低くはない。
もし感染症でも患えば、まず間違いなく命を落とすだろう。
だから、早めに慣れておいた方がいいのだ。
むしろ30年後まで無事に生き永らえれば運が良いとも言える。
47歳で解放されれば、それからでも第二の人生は歩めるだろう。
「おい、お前ら。悪い事は言わねえ。早めに慣れておけ……」
「ああ、その方がいい。じゃないと後が辛いぞ?」
ガ・スキーたちの会話が耳に入ったのだろう。
中年の男が二人、近寄ってきてそう言ってきた。
「……慣れるの自体が無理っぽい……そもそも力仕事は向いていないのに」
「そうっすよ。元魔法学園の学生なのに……」
「そんな事は関係ねえんだよ。何でここに来たのかは知らねえが……もう諦める事だな」
男の一人が自嘲気味にそう言っている。
「どこで間違ってこうなったんだ?」
「騙されただけなのに……こんなの酷いっす。何もしていないのに、理不尽な目に遭わされる人間の気持ちにもなれってやつっすよ……」
「そうだよな……酷い目に遭う人間の気持ちを考えろよな……世の中、本当にクズばっかりだぜ……」
この二人には恨む時間も、悔い改める時間も、それこそ30年分ある。
今はまだ収容されて間もないが、全く人の気持ちの分からないこの二人でも、30年もあれば悔恨の極みに達して反省できるかもしれない。
だが、もう遅すぎだ。
彼らの場合、因果応報なのだ。
やった分以上に返ってきてはいるが、やらなければこうはならなかった。
後はもう無事に、30年後を迎えられるように祈るしかない。
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30年もあれば反省くらいするかもしません(´ー+`)
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