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第1章『お仕置き生活は突然に』
第12話「定期魔法試験、十日後…カミラとランチデート?」
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その日、学食の一角で、ジュリアンとその取り巻きたちが有頂天で大騒ぎをしていた。
普段なら迷惑そうにする他の生徒たちも、この時ばかりは羨望の視線を注いでいた。むしろ、自分もその輪に加わりたいと、男女の区別なく、多くの生徒たちがそう思っていた。
『魔法聖人』とはそのくらい、いいや、そんなものではない。もし本当に魔法聖人に叙階されるとしたら、ジュリアンの名は千年先でも賞賛され続けるだろう。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
小便王子ジュリアンは有頂天だった。
小便を漏らし、王太子を廃嫡されて以来、遠ざかっていた美女たちが何もしなくても、向こうから集まってくるのだ。
それにジュリアンをスカウトしようと、魔法ギルド、冒険者ギルドをはじめ、魔法に関わるあらゆる民間団体から超優良条件でのオファーが相次いでいた。
持参金や手土産の額面も凄まじく笑いが止まらなかった。
「すげえ!! ジュリアンさま! アヴリア神聖王国からの養子縁組依頼っすよ!」
「アヴリアって言ったら東方最大の王国ですよ! 殿下に一生付いて行きます!!」
何故、アヴリアにまで話が伝わったかというと、ガ・スキーと、モ・スキーが辺り構わず言いふらしまくっているからである。
そしてジュリアンもかつて、王太子だった頃よりもずっと好待遇を受けていることで、オレンジの火炎の事など、とっくに忘却の彼方へすっ飛んでしまっている。
この仮初めの栄華が決して長続きするものでなく、終わりが来た時に地獄に落ちるという事実を全く認識できていない。
「やっぱりジュリアンさまは凄いな、漏らしたって聞いた時は引いたけどなー」
「あたし、今からでも告ろうかな?」
女子学生Aはジュリアンをチラ見しては、両手で頬を抑えて照れてしまっている。
「無理無理。うちらはあの取り巻きくらいが似合いよ。でも私はそれでもいいかも……」
女子学生Bは、趣味の悪い事を言いながら、ガ・スキーに告ってダメだったら、次はモ・スキーにしようと心に決めて、ガッツポーズで気合を入れた。
とにかくこんな感じで、昼休みの食堂はジュリアンたちの噂で持ち切りだった。
自分の名前が生徒たちの口の端に上る度に、ジュリアンはただでさえアホ面なのを、一層アホ面にさせて薄気味の悪い笑みを浮かべている。
折角のイケメンが台無しだが、今の彼は向かう所敵無しと言う感じにモテまくっている。
「あとで父上に会いに行くぜ! 王太子位と領地、あと私財も、ノシ付けて返して貰うぜ」
「ごねたらドラゴンブレスっすね!」
このモ・スキーの発言は、普通に謀反を示唆しているのだが、そんな事実も彼らの人気の前では、霞のようなものだった。
「もう王さまは引退して貰って王位継承とか?」
ガ・スキー、そういうのは『王位簒奪』って言うのだぞ? どこからか天の声が聞こえてきた。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! いいなそれ!!」
そんな彼らを苦々しく見つめる者もいた。
暗殺妄想系女子カミラである。
「チッ! あのゴミどもを斬殺してきます!!」
音もなく立ち上がると、禍々しいオーラを放つ魔剣を片手に、小便王子に殺気を迸らせる。
「あ、い、いや、カミラさん?」
この人なんで、『斬殺』一択なの?
あとその魔剣どこから出したの???
「はい♥ 何でしょうか♪」
ユベールに呼び掛けられた途端に、恋するカミラちゃんに早変わりした。
「あの、普通に注意するとか、叱るって選択肢は?」
「ありません!!!」
即答だった。
ユベールが言い切るのと、ほぼ同時に返答している。
「え……?」
超絶ドS男もカミラには、たじたじだった。
「ユベールさま以外の男は全員斬殺対象ですから!!」
「ち、父上も男だけど……?」
「じゃあ、この国だけでしておきます!!」
「それでもだいぶ問題あると思うけど……」
最近いつも一緒に居るけど。
やっぱりダメな人?
そのうち、本当に斬り殺して来そう。
僕がこんなに動揺するなんて、貴女くらいですよ?
などと、いつものようにカミラとの甘い? 昼休みを送っているユベールたちの元に一人の女性が声を掛けてきた。
*****
女子学生Bが意外と不誠実(´ー+`)
*****
普段なら迷惑そうにする他の生徒たちも、この時ばかりは羨望の視線を注いでいた。むしろ、自分もその輪に加わりたいと、男女の区別なく、多くの生徒たちがそう思っていた。
『魔法聖人』とはそのくらい、いいや、そんなものではない。もし本当に魔法聖人に叙階されるとしたら、ジュリアンの名は千年先でも賞賛され続けるだろう。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
小便王子ジュリアンは有頂天だった。
小便を漏らし、王太子を廃嫡されて以来、遠ざかっていた美女たちが何もしなくても、向こうから集まってくるのだ。
それにジュリアンをスカウトしようと、魔法ギルド、冒険者ギルドをはじめ、魔法に関わるあらゆる民間団体から超優良条件でのオファーが相次いでいた。
持参金や手土産の額面も凄まじく笑いが止まらなかった。
「すげえ!! ジュリアンさま! アヴリア神聖王国からの養子縁組依頼っすよ!」
「アヴリアって言ったら東方最大の王国ですよ! 殿下に一生付いて行きます!!」
何故、アヴリアにまで話が伝わったかというと、ガ・スキーと、モ・スキーが辺り構わず言いふらしまくっているからである。
そしてジュリアンもかつて、王太子だった頃よりもずっと好待遇を受けていることで、オレンジの火炎の事など、とっくに忘却の彼方へすっ飛んでしまっている。
この仮初めの栄華が決して長続きするものでなく、終わりが来た時に地獄に落ちるという事実を全く認識できていない。
「やっぱりジュリアンさまは凄いな、漏らしたって聞いた時は引いたけどなー」
「あたし、今からでも告ろうかな?」
女子学生Aはジュリアンをチラ見しては、両手で頬を抑えて照れてしまっている。
「無理無理。うちらはあの取り巻きくらいが似合いよ。でも私はそれでもいいかも……」
女子学生Bは、趣味の悪い事を言いながら、ガ・スキーに告ってダメだったら、次はモ・スキーにしようと心に決めて、ガッツポーズで気合を入れた。
とにかくこんな感じで、昼休みの食堂はジュリアンたちの噂で持ち切りだった。
自分の名前が生徒たちの口の端に上る度に、ジュリアンはただでさえアホ面なのを、一層アホ面にさせて薄気味の悪い笑みを浮かべている。
折角のイケメンが台無しだが、今の彼は向かう所敵無しと言う感じにモテまくっている。
「あとで父上に会いに行くぜ! 王太子位と領地、あと私財も、ノシ付けて返して貰うぜ」
「ごねたらドラゴンブレスっすね!」
このモ・スキーの発言は、普通に謀反を示唆しているのだが、そんな事実も彼らの人気の前では、霞のようなものだった。
「もう王さまは引退して貰って王位継承とか?」
ガ・スキー、そういうのは『王位簒奪』って言うのだぞ? どこからか天の声が聞こえてきた。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! いいなそれ!!」
そんな彼らを苦々しく見つめる者もいた。
暗殺妄想系女子カミラである。
「チッ! あのゴミどもを斬殺してきます!!」
音もなく立ち上がると、禍々しいオーラを放つ魔剣を片手に、小便王子に殺気を迸らせる。
「あ、い、いや、カミラさん?」
この人なんで、『斬殺』一択なの?
あとその魔剣どこから出したの???
「はい♥ 何でしょうか♪」
ユベールに呼び掛けられた途端に、恋するカミラちゃんに早変わりした。
「あの、普通に注意するとか、叱るって選択肢は?」
「ありません!!!」
即答だった。
ユベールが言い切るのと、ほぼ同時に返答している。
「え……?」
超絶ドS男もカミラには、たじたじだった。
「ユベールさま以外の男は全員斬殺対象ですから!!」
「ち、父上も男だけど……?」
「じゃあ、この国だけでしておきます!!」
「それでもだいぶ問題あると思うけど……」
最近いつも一緒に居るけど。
やっぱりダメな人?
そのうち、本当に斬り殺して来そう。
僕がこんなに動揺するなんて、貴女くらいですよ?
などと、いつものようにカミラとの甘い? 昼休みを送っているユベールたちの元に一人の女性が声を掛けてきた。
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女子学生Bが意外と不誠実(´ー+`)
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