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第34話 浮気?
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学校の休み時間。各々が仲の良い友人と話したり、1人の時間を過ごしたりとしている時間帯。仁志は郁人と話をしていた。
「なあ、郁人。今度の日曜日に一緒に遊びに行かないか?」
仁志は郁人をデートに誘ってみた。しかし、郁人は残念そうに眉を下げる。
「あ、ごめん。日曜日は用事があるんだ」
「そっか。俺は土曜日はバイトで1日潰れるしなあ。日曜しか空いてないから残念だ」
バイトをしている高校生同士はなかなか予定があいにくい。仁志と郁人もその例に漏れずにこうしてすれ違いが発生してしまっている。
仁志は残念な気持ちになりながらも、日曜日は1人で過ごすことにした。
バイトしている高校生ということで経済的に余裕がある仁志は、日曜日に映画を見に行くことにした。
近場のショッピングモールに行き、そこにある映画館を目指す。
日曜日のショッピングモールということで人が多くいる。家族連れ、恋人連れ、友人同士で楽しんでいる者などさまざまである。
そんな中、1人でショッピングモールに来ている仁志はなんだか物悲しい気分になる。
みんな誰かと一緒にいる中で1人なのは自分だけである。
仁志の他の友人たちも急な誘いに対応できずに予定がある人ばかりだった。
そんな大勢の人に囲まれた孤独を仁志が感じていると、目の前に見知った顔を見つけた。
それは郁人だった。仁志は自分の目をなんども擦り、郁人の姿を確認する。
「……?」
何度見ても郁人である。そして、その隣には郁人と親し気に話す女性の姿があった。
一体どういうことだろうか。自分との予定を蹴ってまで、郁人は女性と2人でデートをしている。そんな事実を仁志は突き付けられてしまった。
「ねえ、郁人君。お昼は何食べたい?」
「うーん、そうだなあ……」
「郁人君はかわいいから、なんでも奢ってあげるよ」
仁志は遠くから郁人たちの会話を聞いていた。その会話内容に仁志は絶望した。
これは……まさか、ママ活というやつではないかと。郁人は留学費用を貯めるために一生懸命にバイトをしている。
もしかしたら、バイトだけでは足りずにこうしたことに手を出しているのかもしれない。
しかし、仁志は冷静になる。女性はそこまで郁人と歳が離れているわけではなかった。
自分たちより少し上かもしれない程度。そんな年齢差でママ活が成立するのであろうかと仁志は考える。
ママ活でないとするなら……純粋に郁人に年上の女性の恋人がいるということか?
仁志はそっちの方が絶望度は高かった。自分というものがありながら、郁人は浮気をしている。
希子にフラれた時以上にダメージを受けてしまう仁志。その場に膝から崩れ去りそうになったその時だった。
「あれ? 仁志。どうしてここにいるの?」
「え?」
郁人が仁志に声をかける。仁志は郁人に存在がバレてしまったことで、開き直る。
「お、お前! その隣の人は誰だ!」
仁志の言葉に郁人と隣の女性がお互いに顔を見合わせる。そして、郁人は冷静に答える。
「え? 誰って? 僕のお姉ちゃんだけど?」
「へ……? お姉ちゃん? それって実の姉?」
仁志は混乱してわけのわからないことを言ってしまう。
「そうだよ。それ以外になにがあるの?」
郁人はきょとんとした顔で逆に訊く。しかし、仁志に答えるわけにはいかなかった。
まさか、浮気だと思っていたって郁人の姉の前で言えるわけなかった。
「こんにちは。郁人君の友達かな? 弟がいつもお世話になってます」
「あ、はい。すみません。こちらこそ、お世話になってます」
郁人の姉がぺこりと頭を下げると、釣られて仁志も頭を下げる。
「私の名前は茉莉香。よろしくね」
「あ、はい。俺は風見 仁志です。よろしくお願いします」
茉莉香はほんわかとした感じの女性で、服装も白いブラウスに紺色のプリーツスカートと女子っぽい感じで非情にかわいらしい。
仁志は郁人の面影がある茉莉香に少し見惚れてしまう。郁人をそのまんま女子にしたらこんな感じになるのではないかと思ってしまう。
さなえにはない本物の胸があり、ついそこに目をやってしまう。その視線に郁人が気づいたのか、仁志に近づいて軽く小突く。
「あだ……」
「ん?」
茉莉香は仁志がいきなり声をあげたので首を傾げた。
「な、なにするんだよ」
「ごめーん。手が滑っちゃった」
郁人は舌をぺろっと突き出す。仁志はその愛らしい仕草にドキっとしてしまう。
「まあ、今日はお姉ちゃんと一緒にショッピングをする予定があったから、一緒に遊べなかったんだ。ごめんね」
「そういうことだったのか。なんだ」
仁志はそれなら仕方ないと納得をした。
「じゃあ、俺はそろそろ……」
仁志がその場を去ろうとした時、茉莉香が仁志を呼び止めようとする。
「待って、仁志君。良ければ一緒にショッピングしない?」
「え?」
「ほら、ウチの弟と仲がいいみたいだし、一緒に遊ぶ予定だったんでしょ?」
「まあ、そうですけど……」
茉莉香に急に誘われて仁志はドギマギとしてしまう。
「あ、えっと……俺は構わないけど……」
「じゃあ、決まりね」
こうして、仁志は郁人と茉莉香と一緒にショッピングをすることにした。
茉莉香が先頭を歩いて、その後ろに仁志と郁人が歩いている。
「仁志。さっきお姉ちゃんをジロジロ見てたでしょ」
「み、見てねえよ!」
仁志はどもりながら答える。
「ふーん。そうなんだ。さっき、思いっきりお姉ちゃんの胸を見てたような気がするけどね」
「し、仕方ないだろ」
「なにが仕方ないの? ねえ。なんで? そんなにおっぱいが好きなら女の子と付き合えばいいじゃない」
郁人は完全に拗ねてしまっている。姉のことをジロジロ見られたというよりかは、仁志が胸を見てデレデレとした反応を見せてしまったせいである。
「だ、だって……! まあ、その……郁人と似た雰囲気の女性で、おっぱいあったらそっち見るだろ」
「言っておくけど、お姉ちゃんに手を出したら一生許さないから。普通の浮気でも許せないのに、家族は一生付き合っていくものだから余計にたちが悪いよ」
「う、浮気ってお前……! 別に俺は茉莉香さんに手を出そうとかそういう気はなくてだな」
仁志は必死に否定をする。機嫌を損ねた郁人はなかなかに面倒であった。
「ふーん。どうだか。だったら、どうして僕がいるのに、お姉ちゃんをじろじろと見ていたのさ。わかりやすく鼻の下を伸ばしてさ」
郁人は完全に嫉妬してしまっている。
「わかったよ。もう。もう茉莉香さんの方を見ないから」
「他の女の子を見るのも禁止」
郁人は男子であるのにも関わらずに仁志の彼女面をする。仁志もそれに対して悪く思っているわけでもない。
「わかった。見ないから」
「それならよし」
この一連の流れの郁人は確かにめんどくさくあった。しかし、仁志はそのめんどくささも愛おしく思ってしまう。
「ねえ、2人共。何話しているの? 私を仲間外れにしたら悲しいよ?」
茉莉香はすこし拗ねたように2人に語り掛ける。
「あ、ごめんごめん。お姉ちゃん。さあ、行こうか」
「ああ」
茉莉香はアパレルショップに入る。
「もう9月だから、そろそろ秋物のファッションを先取りしたいんだよねえ」
茉莉香はそう言いながら、服を色々と見ている。
9月でもまだまだ暑い時期が続く。仁志はまだ夏という感じしかしていなかった。それでも世間では秋を先取りしようとしているのだ。
「ねえ。郁人君。仁志君。この服どうかな? 今年の流行色だって言われてるんだけど、どう? 私に似合う? かわいい?」
茉莉香は服を持ち、自分の体に合わせてみる。
「まあ、良いんじゃない。ねえ。仁志」
「うん。似合うと思います」
「そっかー。でもこっちの方がいいかなー?」
茉莉香は服を見始める。
「仁志。覚悟した方が良いよ。ここからお姉ちゃん長いから」
「なあ、郁人。今度の日曜日に一緒に遊びに行かないか?」
仁志は郁人をデートに誘ってみた。しかし、郁人は残念そうに眉を下げる。
「あ、ごめん。日曜日は用事があるんだ」
「そっか。俺は土曜日はバイトで1日潰れるしなあ。日曜しか空いてないから残念だ」
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仁志は残念な気持ちになりながらも、日曜日は1人で過ごすことにした。
バイトしている高校生ということで経済的に余裕がある仁志は、日曜日に映画を見に行くことにした。
近場のショッピングモールに行き、そこにある映画館を目指す。
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そんな中、1人でショッピングモールに来ている仁志はなんだか物悲しい気分になる。
みんな誰かと一緒にいる中で1人なのは自分だけである。
仁志の他の友人たちも急な誘いに対応できずに予定がある人ばかりだった。
そんな大勢の人に囲まれた孤独を仁志が感じていると、目の前に見知った顔を見つけた。
それは郁人だった。仁志は自分の目をなんども擦り、郁人の姿を確認する。
「……?」
何度見ても郁人である。そして、その隣には郁人と親し気に話す女性の姿があった。
一体どういうことだろうか。自分との予定を蹴ってまで、郁人は女性と2人でデートをしている。そんな事実を仁志は突き付けられてしまった。
「ねえ、郁人君。お昼は何食べたい?」
「うーん、そうだなあ……」
「郁人君はかわいいから、なんでも奢ってあげるよ」
仁志は遠くから郁人たちの会話を聞いていた。その会話内容に仁志は絶望した。
これは……まさか、ママ活というやつではないかと。郁人は留学費用を貯めるために一生懸命にバイトをしている。
もしかしたら、バイトだけでは足りずにこうしたことに手を出しているのかもしれない。
しかし、仁志は冷静になる。女性はそこまで郁人と歳が離れているわけではなかった。
自分たちより少し上かもしれない程度。そんな年齢差でママ活が成立するのであろうかと仁志は考える。
ママ活でないとするなら……純粋に郁人に年上の女性の恋人がいるということか?
仁志はそっちの方が絶望度は高かった。自分というものがありながら、郁人は浮気をしている。
希子にフラれた時以上にダメージを受けてしまう仁志。その場に膝から崩れ去りそうになったその時だった。
「あれ? 仁志。どうしてここにいるの?」
「え?」
郁人が仁志に声をかける。仁志は郁人に存在がバレてしまったことで、開き直る。
「お、お前! その隣の人は誰だ!」
仁志の言葉に郁人と隣の女性がお互いに顔を見合わせる。そして、郁人は冷静に答える。
「え? 誰って? 僕のお姉ちゃんだけど?」
「へ……? お姉ちゃん? それって実の姉?」
仁志は混乱してわけのわからないことを言ってしまう。
「そうだよ。それ以外になにがあるの?」
郁人はきょとんとした顔で逆に訊く。しかし、仁志に答えるわけにはいかなかった。
まさか、浮気だと思っていたって郁人の姉の前で言えるわけなかった。
「こんにちは。郁人君の友達かな? 弟がいつもお世話になってます」
「あ、はい。すみません。こちらこそ、お世話になってます」
郁人の姉がぺこりと頭を下げると、釣られて仁志も頭を下げる。
「私の名前は茉莉香。よろしくね」
「あ、はい。俺は風見 仁志です。よろしくお願いします」
茉莉香はほんわかとした感じの女性で、服装も白いブラウスに紺色のプリーツスカートと女子っぽい感じで非情にかわいらしい。
仁志は郁人の面影がある茉莉香に少し見惚れてしまう。郁人をそのまんま女子にしたらこんな感じになるのではないかと思ってしまう。
さなえにはない本物の胸があり、ついそこに目をやってしまう。その視線に郁人が気づいたのか、仁志に近づいて軽く小突く。
「あだ……」
「ん?」
茉莉香は仁志がいきなり声をあげたので首を傾げた。
「な、なにするんだよ」
「ごめーん。手が滑っちゃった」
郁人は舌をぺろっと突き出す。仁志はその愛らしい仕草にドキっとしてしまう。
「まあ、今日はお姉ちゃんと一緒にショッピングをする予定があったから、一緒に遊べなかったんだ。ごめんね」
「そういうことだったのか。なんだ」
仁志はそれなら仕方ないと納得をした。
「じゃあ、俺はそろそろ……」
仁志がその場を去ろうとした時、茉莉香が仁志を呼び止めようとする。
「待って、仁志君。良ければ一緒にショッピングしない?」
「え?」
「ほら、ウチの弟と仲がいいみたいだし、一緒に遊ぶ予定だったんでしょ?」
「まあ、そうですけど……」
茉莉香に急に誘われて仁志はドギマギとしてしまう。
「あ、えっと……俺は構わないけど……」
「じゃあ、決まりね」
こうして、仁志は郁人と茉莉香と一緒にショッピングをすることにした。
茉莉香が先頭を歩いて、その後ろに仁志と郁人が歩いている。
「仁志。さっきお姉ちゃんをジロジロ見てたでしょ」
「み、見てねえよ!」
仁志はどもりながら答える。
「ふーん。そうなんだ。さっき、思いっきりお姉ちゃんの胸を見てたような気がするけどね」
「し、仕方ないだろ」
「なにが仕方ないの? ねえ。なんで? そんなにおっぱいが好きなら女の子と付き合えばいいじゃない」
郁人は完全に拗ねてしまっている。姉のことをジロジロ見られたというよりかは、仁志が胸を見てデレデレとした反応を見せてしまったせいである。
「だ、だって……! まあ、その……郁人と似た雰囲気の女性で、おっぱいあったらそっち見るだろ」
「言っておくけど、お姉ちゃんに手を出したら一生許さないから。普通の浮気でも許せないのに、家族は一生付き合っていくものだから余計にたちが悪いよ」
「う、浮気ってお前……! 別に俺は茉莉香さんに手を出そうとかそういう気はなくてだな」
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郁人は完全に嫉妬してしまっている。
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「わかった。見ないから」
「それならよし」
この一連の流れの郁人は確かにめんどくさくあった。しかし、仁志はそのめんどくささも愛おしく思ってしまう。
「ねえ、2人共。何話しているの? 私を仲間外れにしたら悲しいよ?」
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「あ、ごめんごめん。お姉ちゃん。さあ、行こうか」
「ああ」
茉莉香はアパレルショップに入る。
「もう9月だから、そろそろ秋物のファッションを先取りしたいんだよねえ」
茉莉香はそう言いながら、服を色々と見ている。
9月でもまだまだ暑い時期が続く。仁志はまだ夏という感じしかしていなかった。それでも世間では秋を先取りしようとしているのだ。
「ねえ。郁人君。仁志君。この服どうかな? 今年の流行色だって言われてるんだけど、どう? 私に似合う? かわいい?」
茉莉香は服を持ち、自分の体に合わせてみる。
「まあ、良いんじゃない。ねえ。仁志」
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