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第27話 水着の購入
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「はあ……」
『Honey Pot』の控室にてさなえはため息をついていた。
夏祭りでの一件、後少しで仁志と結ばれる。その直前に邪魔が入り繋がることができなかった。
あのまま勢いで流されるままにやってしまえたらどれだけ楽だったことか。
もう1度あの時と同じ雰囲気になれるような気がしない。そんな悩みを抱えていた。
そんな、さなえを見て先輩のせりなは心配そうに声をかける。
「さなえちゃん。どうしたの? なにか悩みでもあるの?」
「いえ……ただ、ちょっと人生うまくいかないことが多いなって」
さすがに愛しの彼とエッチ寸前まで行って邪魔されたなんて言えない。
「ふーん。まあ、あえて事情は聞かないでおくよ」
せりなも男の娘をやっているだけあって、人には言えない事情というものを理解している。
変につつかれたくないことは無理に触らないようにする大人の気遣いであった。
「まあ、どんな悩みかはしらないけどさ。これで吹き飛ばしちゃえばいいんだよ」
せりなは掲示物を指さした。さなえはその掲示物をまだ読んでいなかった。
「え、えーと……ナイトプールの貸し切り?」
「そう。福利厚生の一環としてオーナーが所有しているナイトプールを従業員のために貸し切ってくれるんだ」
貸し切りのナイトプールは男の娘にとってはありがたいのかもしれない。
周りには事情を知っている人間だけしかいない状況。思う存分にかわいい水着を着用することができる。
「一応、1人までなら付き添いの人を連れていっても大丈夫みたい。もちろん、男の娘に理解がある人って前提だけどね」
「なるほど……」
さなえはまじまじと掲示物を見た。ナイトプールの貸し切り。さらに併設しているホテルにも宿泊が可能ということで中々にそそられるものがあった。
もし、ここを仁志と一緒に行けることができるなら……夏祭り以上にロマンチックな雰囲気になれるかもしれない。
「まあ、福利厚生で格安になっているとは言え、それなりにお金がかかるから注意をしてね」
「はい」
さなえは早速、仁志にこのことをメッセージで伝えた。
◇
「さなえちゃんとナイトプール……」
スマホの通知を見た仁志は思わずごくりと唾を飲み込んでしまった。
仁志も夏祭りの時にあのまま押せなかったことを後悔していた。
ナイトプール。更に併設しているホテルに宿泊が可能。これはどう考えても夏祭り以上に良い雰囲気に当てられることは間違いなかった。
「よし……アレを買っていくか」
男性同士の接触の場合では妊娠のリスクはないにしても、感染症を予防するためにコンドームの使用が推奨されている。
もし、そういう雰囲気になった場合に備えて用意しておいて損はない。
というか、仁志にはもう行ける気しかしてなかった。
あの、夏祭りの後にさなえが見せた顔。潤んだ瞳、少しぷっくりと膨らんだ唇。どう見てもキス待ちの顔をしていたし、それから先のことも勢いで押しきれる予感しかしない。
「決める! このナイトプールで絶対に決める!」
仁志はすぐにさなえに「OK」の返信をした。
「デート……デート……さなえちゃんとナイトプールで水着デート」
仁志は壊れたレコーダーのように同じことをうわ言のように繰り返していた。
それほどまでにさなえとのデートは楽しみなものであり、今度こそ脱童貞を決めてやると本気で挑もうとしていた。
希子とデートしていた時でもここまで本気になったことがなかった仁志。それほどまでに仁志はさなえのことを好きになっていたのだった。
◇
「うーん……水着を買わないとねえ……」
さなえに新たな悩みが増えた。さなえは店での営業と仁志とのデート以外に女装をしたことがなかった。
だから、こうして水着と女装の組み合わせを考える時に困ってしまう。
どんな水着が良いのか。それがわからずに1人で悩んでしまっている。
特に水着の女装については骨格をごまかすことができない。更に言えば女性用の水着を股間がすっきりしている前提で作られている。
そんなものを股間にモノが付いている男性が着用すると大体股間がもっこりとしてしまう。
その状態ではもう自分が男性であることを隠すのは不可能と言っても良い。
男性用の水着のトランクスタイプならば股間部分がゆったりとした作りなので、もっこりの心配はないのであるが、それを女性が着用するのはあまりにも不自然である。
でも、だからこそ周りが男の娘に理解がある環境での貸し切りナイトプールという環境はありがたかった。
特に骨格や股間についているものを隠す必要もない。
もうデザインだけで水着を決めても良い説すらある。
水着を着てもっこりとさせてしまうところに恥ずかしさを感じないわけではなかった。
「まあ、今更だよね……」
既に女性用下着を仁志に見せつけてそういう部分は見せてしまっている。
その時も恥ずかしいと言えば恥ずかしかったが、仁志に引かれることもなく受け入れられたのでその辺は助かっている。
さなえは覚悟を決めて水着を選ぶことにした。女性用の水着を買えるECサイトを検索してオーバーサイズのものを探すことにした。
「えーと……こっちの水着の方がいいかな。でも、なんか攻めすぎなような気が……」
さなえは色々な水着をチェックしながら確認をする。
色々な柄の水着をお気に入りに入れながら、自分が着る姿を想像してみる。
「この色はわたしには合わないかな……こっちの方が風見君の好みかもしれない」
自分に似合うようなものと仁志の好みを考えつつ水着を選んでいく。
「この水着に決めようかな? いや、でも、こっちの水着の方も捨てがたいし」
さなえはどの水着を買おうとしようとするが悩みに悩んだ。そして、最終的に2着の水着を買ってその日の気分で決めることにした。
「まあ、ちょっと奮発しようかな」
スマホを見ながら、さなえは自分の水着姿を想像してニヤニヤと笑みを浮かべるのであった。
そして、水着を決めた後に仁志に電話をする。
「もしもし、風見君? どう、ナイトプールに着ていく水着は決めた?」
「ああ。こっちは決まった。あ、言っておくけど別に普通の男物の水着だからな。もう女装はしないから!」
仁志は女装をしないことを強調する。
「なーんだ。それは残念」
さなえは少しはにかみながら冗談っぽく言う。
「ねえ。風見君。わたしの水着。どんなもの買ったかわかる?」
さなえは少し艶っぽく仁志に問いかける。仁志はさなえのその言葉に動揺していることが電話口からでも伝わってくる。
「あ、えっと……そうだな。うーん……白とか?」
「あはは。浴衣が白だったから、水着も白かなって思ったの? うーん。どうだろうね。白い水着かな? ふふ」
「な、なんだよ。教えてくれないのかよ」
「ねえ、風見君。わたしが白の水着を着ているところを想像しちゃった?」
さなえは少し煽りながら仁志に問いかける。仁志はその煽りに更に動揺してしまう。
「じゃ、じゃあ黒か?」
「白か黒の2択しかないの? まあ、わたしもそういう系統の色は好きだけどね」
今までのさなえのセンスを考えると白系か黒系が多かった。だから仁志もそれを想像してみたのだけれど、どうやら口ぶりからして違うらしい。
「まあ、当日を楽しみにしていてよ。わたしがどんな色の水着を着てくるかをね」
「う、うーむ……」
仁志はナイトプールの当日まで悶々とした日々を過ごすことになった。
さなえの水着姿が楽しみすぎて、色々な妄想をしてしまい、夏風邪を引いていないのにも関わらずにティッシュの消費量が増えてしまった。
『Honey Pot』の控室にてさなえはため息をついていた。
夏祭りでの一件、後少しで仁志と結ばれる。その直前に邪魔が入り繋がることができなかった。
あのまま勢いで流されるままにやってしまえたらどれだけ楽だったことか。
もう1度あの時と同じ雰囲気になれるような気がしない。そんな悩みを抱えていた。
そんな、さなえを見て先輩のせりなは心配そうに声をかける。
「さなえちゃん。どうしたの? なにか悩みでもあるの?」
「いえ……ただ、ちょっと人生うまくいかないことが多いなって」
さすがに愛しの彼とエッチ寸前まで行って邪魔されたなんて言えない。
「ふーん。まあ、あえて事情は聞かないでおくよ」
せりなも男の娘をやっているだけあって、人には言えない事情というものを理解している。
変につつかれたくないことは無理に触らないようにする大人の気遣いであった。
「まあ、どんな悩みかはしらないけどさ。これで吹き飛ばしちゃえばいいんだよ」
せりなは掲示物を指さした。さなえはその掲示物をまだ読んでいなかった。
「え、えーと……ナイトプールの貸し切り?」
「そう。福利厚生の一環としてオーナーが所有しているナイトプールを従業員のために貸し切ってくれるんだ」
貸し切りのナイトプールは男の娘にとってはありがたいのかもしれない。
周りには事情を知っている人間だけしかいない状況。思う存分にかわいい水着を着用することができる。
「一応、1人までなら付き添いの人を連れていっても大丈夫みたい。もちろん、男の娘に理解がある人って前提だけどね」
「なるほど……」
さなえはまじまじと掲示物を見た。ナイトプールの貸し切り。さらに併設しているホテルにも宿泊が可能ということで中々にそそられるものがあった。
もし、ここを仁志と一緒に行けることができるなら……夏祭り以上にロマンチックな雰囲気になれるかもしれない。
「まあ、福利厚生で格安になっているとは言え、それなりにお金がかかるから注意をしてね」
「はい」
さなえは早速、仁志にこのことをメッセージで伝えた。
◇
「さなえちゃんとナイトプール……」
スマホの通知を見た仁志は思わずごくりと唾を飲み込んでしまった。
仁志も夏祭りの時にあのまま押せなかったことを後悔していた。
ナイトプール。更に併設しているホテルに宿泊が可能。これはどう考えても夏祭り以上に良い雰囲気に当てられることは間違いなかった。
「よし……アレを買っていくか」
男性同士の接触の場合では妊娠のリスクはないにしても、感染症を予防するためにコンドームの使用が推奨されている。
もし、そういう雰囲気になった場合に備えて用意しておいて損はない。
というか、仁志にはもう行ける気しかしてなかった。
あの、夏祭りの後にさなえが見せた顔。潤んだ瞳、少しぷっくりと膨らんだ唇。どう見てもキス待ちの顔をしていたし、それから先のことも勢いで押しきれる予感しかしない。
「決める! このナイトプールで絶対に決める!」
仁志はすぐにさなえに「OK」の返信をした。
「デート……デート……さなえちゃんとナイトプールで水着デート」
仁志は壊れたレコーダーのように同じことをうわ言のように繰り返していた。
それほどまでにさなえとのデートは楽しみなものであり、今度こそ脱童貞を決めてやると本気で挑もうとしていた。
希子とデートしていた時でもここまで本気になったことがなかった仁志。それほどまでに仁志はさなえのことを好きになっていたのだった。
◇
「うーん……水着を買わないとねえ……」
さなえに新たな悩みが増えた。さなえは店での営業と仁志とのデート以外に女装をしたことがなかった。
だから、こうして水着と女装の組み合わせを考える時に困ってしまう。
どんな水着が良いのか。それがわからずに1人で悩んでしまっている。
特に水着の女装については骨格をごまかすことができない。更に言えば女性用の水着を股間がすっきりしている前提で作られている。
そんなものを股間にモノが付いている男性が着用すると大体股間がもっこりとしてしまう。
その状態ではもう自分が男性であることを隠すのは不可能と言っても良い。
男性用の水着のトランクスタイプならば股間部分がゆったりとした作りなので、もっこりの心配はないのであるが、それを女性が着用するのはあまりにも不自然である。
でも、だからこそ周りが男の娘に理解がある環境での貸し切りナイトプールという環境はありがたかった。
特に骨格や股間についているものを隠す必要もない。
もうデザインだけで水着を決めても良い説すらある。
水着を着てもっこりとさせてしまうところに恥ずかしさを感じないわけではなかった。
「まあ、今更だよね……」
既に女性用下着を仁志に見せつけてそういう部分は見せてしまっている。
その時も恥ずかしいと言えば恥ずかしかったが、仁志に引かれることもなく受け入れられたのでその辺は助かっている。
さなえは覚悟を決めて水着を選ぶことにした。女性用の水着を買えるECサイトを検索してオーバーサイズのものを探すことにした。
「えーと……こっちの水着の方がいいかな。でも、なんか攻めすぎなような気が……」
さなえは色々な水着をチェックしながら確認をする。
色々な柄の水着をお気に入りに入れながら、自分が着る姿を想像してみる。
「この色はわたしには合わないかな……こっちの方が風見君の好みかもしれない」
自分に似合うようなものと仁志の好みを考えつつ水着を選んでいく。
「この水着に決めようかな? いや、でも、こっちの水着の方も捨てがたいし」
さなえはどの水着を買おうとしようとするが悩みに悩んだ。そして、最終的に2着の水着を買ってその日の気分で決めることにした。
「まあ、ちょっと奮発しようかな」
スマホを見ながら、さなえは自分の水着姿を想像してニヤニヤと笑みを浮かべるのであった。
そして、水着を決めた後に仁志に電話をする。
「もしもし、風見君? どう、ナイトプールに着ていく水着は決めた?」
「ああ。こっちは決まった。あ、言っておくけど別に普通の男物の水着だからな。もう女装はしないから!」
仁志は女装をしないことを強調する。
「なーんだ。それは残念」
さなえは少しはにかみながら冗談っぽく言う。
「ねえ。風見君。わたしの水着。どんなもの買ったかわかる?」
さなえは少し艶っぽく仁志に問いかける。仁志はさなえのその言葉に動揺していることが電話口からでも伝わってくる。
「あ、えっと……そうだな。うーん……白とか?」
「あはは。浴衣が白だったから、水着も白かなって思ったの? うーん。どうだろうね。白い水着かな? ふふ」
「な、なんだよ。教えてくれないのかよ」
「ねえ、風見君。わたしが白の水着を着ているところを想像しちゃった?」
さなえは少し煽りながら仁志に問いかける。仁志はその煽りに更に動揺してしまう。
「じゃ、じゃあ黒か?」
「白か黒の2択しかないの? まあ、わたしもそういう系統の色は好きだけどね」
今までのさなえのセンスを考えると白系か黒系が多かった。だから仁志もそれを想像してみたのだけれど、どうやら口ぶりからして違うらしい。
「まあ、当日を楽しみにしていてよ。わたしがどんな色の水着を着てくるかをね」
「う、うーむ……」
仁志はナイトプールの当日まで悶々とした日々を過ごすことになった。
さなえの水着姿が楽しみすぎて、色々な妄想をしてしまい、夏風邪を引いていないのにも関わらずにティッシュの消費量が増えてしまった。
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