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第4話 デートの準備
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仁志は学校へと向かった。登校中は1人。希子と付き合っていた時は2人で登校していたが別れたのでいつもより隣が広く感じてしまう。
そんな寂しさを感じながら教室に入る。教室には既にクラスメイトが何人か座っている。その中に郁人の姿があった。
仁志は自分の席につくために歩く。その道中で郁人の席に立ちよりすれ違いざまに一言。
「おはよう」
「あ……おはよう」
普段挨拶をするような仲でもないクラスメイト同士だった2人。挨拶をしたはいいが、ここで気まずい雰囲気が流れる。
仁志は自分の席に座り、ホームルームが始まるのを待った。
◇
体育の授業が始まった。生徒たちが半袖の体操着に着替えてグラウンドに集まる。
「よーし、それじゃあ二人組作って準備体操してくれ」
仁志と郁人は流れでペアを組んで準備体操をすることになった。
仁志は郁人の肌に注目してみる。白くきめ細やかな肌に毛は一切生えていなかった。
「飯塚。君の肌はキレイだな」
「あ、へ……?」
仁志はふとそんな言葉を口にしてしまった。スキンケアをきちんとしていないとならない仕上がりの肌。
そこまで興味がない相手で、今までよくみる機会がなかったから気づかなかったけれど、そこらの女子よりか肌がキレイで思わず見てしまう。
「ま、まあケアしているからね」
「やっぱり、あそこで働いているからか?」
「その話はやめてくれ」
仁志が準備体操として郁人の肌に触れる。見た目だけでなくて、肌も触った感じがつるつるでまるで赤ん坊の肌を触っているかのような気分になる。
そりゃ、郁人も女子にモテるわけであると仁志は思ってしまう。でも、この肌がどうしてここまでケアされているのか。その秘密を仁志だけが知っている。
男子の肌に触れているだけなのに、その男子の女装した姿を見てしまった仁志は、どことなく罪悪感めいたものを感じてしまう。同性だから変に意識をする必要はないのに、気持ちは異性の肌を触ってしまったかのような気分である。
希子もこの郁人の肌に触れているのだろうか。手を繋いでいるとかそれ以上のことをした可能性だってありえる。そう思うと仁志は不思議とイラつく感情が沸いてくる。
「今度の日曜日空いてる?」
準備体操の途中で仁志が郁人に話しかける。
「え、まあ、空いているけど」
「例の約束。その日にしようか」
急に予定を決められて郁人は焦せる。日曜日の予定を頭の中で確認してみる。午前からバイトを始めて昼過ぎまでシフトが入っている。
その後ならなんとか会えないこともないかと頭の中でシミュレートをした。
「わ、わかった……時間帯は昼過ぎでもいいなら……そのバイトの都合で」
「まあ、そこは仕方ないな。バイト優先でもいいや」
仁志もさすがに郁人のバイト先に迷惑をかけることを望んでいるわけではない。
「まあ、やることがやることだし、着替えとか準備とかもあるから会えるのは夕方になるかも」
「そっか。それじゃあちょうど夕飯時だな。どっか一緒に飯でも食うか?」
「風見君がそうしたいなら、僕はそれでいいよ」
郁人は仁志に逆らわないように素直に従う。コンカフェで働いていることを誰にも知られたくない。特に希子には。
郁人は少し憂鬱な気分になりながらも、仁志に会うためのコーディネートを今から考え始めるのであった。
◇
体育の授業が終わった後、昼休みとなり郁人は希子と一緒にお弁当を食べていた。
郁人が弁当箱の中にある卵焼きを箸でつかむ。その時に希子が話を切り出す。
「ねえ。飯塚君。今度の日曜日。デートしない」
「え……デート」
郁人が卵焼きをポロっと落とした。日曜日は仁志と約束があり、その日は空いていない。
「え? デートいやなの?」
希子は郁人の反応からなにか忌避のようなものを感じ取った。しかし、郁人は慌てて取り繕うとする。
「あ、ごめん。佐倉さんとのデートはすごく嬉しいんだけど、その日は予定があって……ごめん」
「そっか。予定があるんじゃ仕方ないよね」
希子は落ち込んでしまう。自分とのデートよりも予定の方を優先されたことに対して少し残念に思う気持ちがあった。
しかし、ここで郁人を困らせてはいけないと言葉と感情を飲み込む。せっかく、仁志をフってまで手に入れた優良物件。機嫌を損ねて別れるわけにはいかない。
希子は郁人と付き合えたことで学内でのカーストもそれなりに上がった。女子たちの間でも一目置かれるようになり、郁人の持っている人気の一部が恋人である希子にも加算されているような扱いだ。
この地位を失うわけにはいかない。希子は郁人の望むことならなんでもするような覚悟で彼と付き合っているのである。
「それじゃあ、別の日にデートしようよ。土曜日の午後からはだめ?」
希子も土曜日は午前中に予定があるために、午後からの提案を試みる。しかし、郁人も土曜日は都合が悪かった。
「あ、土曜日はダメかな」
土曜日は1日中バイトがあり、そこも予定が潰れている。仕事終わりは遅い時間帯になってしまう。相手は女子であり、防犯の観点からもあんまり遅い時間帯まで付き合わせるわけにはいかない。
「そっか。残念。じゃあ、デートはまた別の機会にしよっか」
「うん。ごめんね佐倉さん」
郁人は希子に対しての罪悪感を覚えてしまう。先に仁志に予定を入れられてなければと苦い思いをする。
「大丈夫。わたしたち、こうして毎日会えているわけだし。休日も少しガマンすればいいだけだから」
休日に思い切り好きな相手と遊びたい気持ちもあるが、毎日会えていることに希子はとりあえず感謝をしていた。
◇
郁人は帰宅して自室へとこもっていた。スマホを手に取り、大きめのレディースものを扱っているECサイトを見ながらどんな衣装が自分に会うかを吟味している。
郁人はプライベートでは女装をしていなかったため、バイト先の制服しか女装をしたことがない。だから女装用の衣装を持っていないのであった。
プライベートでバイト先の衣装を着るわけにもいかずに郁人は仕方なく女装衣装の購入を決意するのであった。
「んー……どうしたら風見君は満足してくれるんだろうか」
仁志と会う条件。それは女装していくことである。でも、中途半端な女装だと仁志を怒らせてしまう可能性だってある。
やるんだったら全力でかわいくならなければならない。郁人は無理矢理な女装デートだとしても、そこは手を抜く気にはなれなかった。
「んー……風見君の好みがわからない」
仁志がどういうタイプの衣装が好きなのか、郁人にはそれを知る由がなかった。バイト先で会う前までは本当にただの他人に過ぎなかった存在。クラスメイトの1人で仲が良かったわけでもない。
そんな相手の好みのタイプを知っているわけがなかった。
「あんまり攻めすぎないで万人受けする用が良いかな?」
とりあえず、万人受けしそうな清楚系のコーデにしようとその方向に舵を切る。
「これとこれ、かわいいな」
仁志の好みを考えるというよりかは、自分の好みも反映させながら郁人は衣装を選んでいく。その衣装にあうウィッグやメイクも考えながら、とりあえず購入する者は決まった。
「後は……ごくり」
郁人は更に突き詰めようかと悩んだ。郁人が穿いていくのはスカートである。もしかしたらその中身を見られる可能性だってある。見せるつもりはないけれど、そこで男物の下着が見えたらがっかりされるのではないかと考える。
別にスカートの下にインナーを穿けば解決する話である。郁人はそれに気づいて下着までこだわる必要はないと思うのであるが……
「やっぱり……やるんだったら中途半端は良くないよね……バイト先でも見せないようにしているのに女物の下着は着用するし」
郁人は下着まで購入することに決定した。
「わ、わあ……こんな派手なの……僕には着れないよ。それにはみ出ちゃうかもしれないし、こっちの方がいいかな」
女性にはついていないものも考慮しながら郁人は下着を決めていく。最初はそこまで乗り気ではなかった女装デートも準備の段階で楽しく感じてきてしまっていることに郁人はまだ気づいていなかった。
そんな寂しさを感じながら教室に入る。教室には既にクラスメイトが何人か座っている。その中に郁人の姿があった。
仁志は自分の席につくために歩く。その道中で郁人の席に立ちよりすれ違いざまに一言。
「おはよう」
「あ……おはよう」
普段挨拶をするような仲でもないクラスメイト同士だった2人。挨拶をしたはいいが、ここで気まずい雰囲気が流れる。
仁志は自分の席に座り、ホームルームが始まるのを待った。
◇
体育の授業が始まった。生徒たちが半袖の体操着に着替えてグラウンドに集まる。
「よーし、それじゃあ二人組作って準備体操してくれ」
仁志と郁人は流れでペアを組んで準備体操をすることになった。
仁志は郁人の肌に注目してみる。白くきめ細やかな肌に毛は一切生えていなかった。
「飯塚。君の肌はキレイだな」
「あ、へ……?」
仁志はふとそんな言葉を口にしてしまった。スキンケアをきちんとしていないとならない仕上がりの肌。
そこまで興味がない相手で、今までよくみる機会がなかったから気づかなかったけれど、そこらの女子よりか肌がキレイで思わず見てしまう。
「ま、まあケアしているからね」
「やっぱり、あそこで働いているからか?」
「その話はやめてくれ」
仁志が準備体操として郁人の肌に触れる。見た目だけでなくて、肌も触った感じがつるつるでまるで赤ん坊の肌を触っているかのような気分になる。
そりゃ、郁人も女子にモテるわけであると仁志は思ってしまう。でも、この肌がどうしてここまでケアされているのか。その秘密を仁志だけが知っている。
男子の肌に触れているだけなのに、その男子の女装した姿を見てしまった仁志は、どことなく罪悪感めいたものを感じてしまう。同性だから変に意識をする必要はないのに、気持ちは異性の肌を触ってしまったかのような気分である。
希子もこの郁人の肌に触れているのだろうか。手を繋いでいるとかそれ以上のことをした可能性だってありえる。そう思うと仁志は不思議とイラつく感情が沸いてくる。
「今度の日曜日空いてる?」
準備体操の途中で仁志が郁人に話しかける。
「え、まあ、空いているけど」
「例の約束。その日にしようか」
急に予定を決められて郁人は焦せる。日曜日の予定を頭の中で確認してみる。午前からバイトを始めて昼過ぎまでシフトが入っている。
その後ならなんとか会えないこともないかと頭の中でシミュレートをした。
「わ、わかった……時間帯は昼過ぎでもいいなら……そのバイトの都合で」
「まあ、そこは仕方ないな。バイト優先でもいいや」
仁志もさすがに郁人のバイト先に迷惑をかけることを望んでいるわけではない。
「まあ、やることがやることだし、着替えとか準備とかもあるから会えるのは夕方になるかも」
「そっか。それじゃあちょうど夕飯時だな。どっか一緒に飯でも食うか?」
「風見君がそうしたいなら、僕はそれでいいよ」
郁人は仁志に逆らわないように素直に従う。コンカフェで働いていることを誰にも知られたくない。特に希子には。
郁人は少し憂鬱な気分になりながらも、仁志に会うためのコーディネートを今から考え始めるのであった。
◇
体育の授業が終わった後、昼休みとなり郁人は希子と一緒にお弁当を食べていた。
郁人が弁当箱の中にある卵焼きを箸でつかむ。その時に希子が話を切り出す。
「ねえ。飯塚君。今度の日曜日。デートしない」
「え……デート」
郁人が卵焼きをポロっと落とした。日曜日は仁志と約束があり、その日は空いていない。
「え? デートいやなの?」
希子は郁人の反応からなにか忌避のようなものを感じ取った。しかし、郁人は慌てて取り繕うとする。
「あ、ごめん。佐倉さんとのデートはすごく嬉しいんだけど、その日は予定があって……ごめん」
「そっか。予定があるんじゃ仕方ないよね」
希子は落ち込んでしまう。自分とのデートよりも予定の方を優先されたことに対して少し残念に思う気持ちがあった。
しかし、ここで郁人を困らせてはいけないと言葉と感情を飲み込む。せっかく、仁志をフってまで手に入れた優良物件。機嫌を損ねて別れるわけにはいかない。
希子は郁人と付き合えたことで学内でのカーストもそれなりに上がった。女子たちの間でも一目置かれるようになり、郁人の持っている人気の一部が恋人である希子にも加算されているような扱いだ。
この地位を失うわけにはいかない。希子は郁人の望むことならなんでもするような覚悟で彼と付き合っているのである。
「それじゃあ、別の日にデートしようよ。土曜日の午後からはだめ?」
希子も土曜日は午前中に予定があるために、午後からの提案を試みる。しかし、郁人も土曜日は都合が悪かった。
「あ、土曜日はダメかな」
土曜日は1日中バイトがあり、そこも予定が潰れている。仕事終わりは遅い時間帯になってしまう。相手は女子であり、防犯の観点からもあんまり遅い時間帯まで付き合わせるわけにはいかない。
「そっか。残念。じゃあ、デートはまた別の機会にしよっか」
「うん。ごめんね佐倉さん」
郁人は希子に対しての罪悪感を覚えてしまう。先に仁志に予定を入れられてなければと苦い思いをする。
「大丈夫。わたしたち、こうして毎日会えているわけだし。休日も少しガマンすればいいだけだから」
休日に思い切り好きな相手と遊びたい気持ちもあるが、毎日会えていることに希子はとりあえず感謝をしていた。
◇
郁人は帰宅して自室へとこもっていた。スマホを手に取り、大きめのレディースものを扱っているECサイトを見ながらどんな衣装が自分に会うかを吟味している。
郁人はプライベートでは女装をしていなかったため、バイト先の制服しか女装をしたことがない。だから女装用の衣装を持っていないのであった。
プライベートでバイト先の衣装を着るわけにもいかずに郁人は仕方なく女装衣装の購入を決意するのであった。
「んー……どうしたら風見君は満足してくれるんだろうか」
仁志と会う条件。それは女装していくことである。でも、中途半端な女装だと仁志を怒らせてしまう可能性だってある。
やるんだったら全力でかわいくならなければならない。郁人は無理矢理な女装デートだとしても、そこは手を抜く気にはなれなかった。
「んー……風見君の好みがわからない」
仁志がどういうタイプの衣装が好きなのか、郁人にはそれを知る由がなかった。バイト先で会う前までは本当にただの他人に過ぎなかった存在。クラスメイトの1人で仲が良かったわけでもない。
そんな相手の好みのタイプを知っているわけがなかった。
「あんまり攻めすぎないで万人受けする用が良いかな?」
とりあえず、万人受けしそうな清楚系のコーデにしようとその方向に舵を切る。
「これとこれ、かわいいな」
仁志の好みを考えるというよりかは、自分の好みも反映させながら郁人は衣装を選んでいく。その衣装にあうウィッグやメイクも考えながら、とりあえず購入する者は決まった。
「後は……ごくり」
郁人は更に突き詰めようかと悩んだ。郁人が穿いていくのはスカートである。もしかしたらその中身を見られる可能性だってある。見せるつもりはないけれど、そこで男物の下着が見えたらがっかりされるのではないかと考える。
別にスカートの下にインナーを穿けば解決する話である。郁人はそれに気づいて下着までこだわる必要はないと思うのであるが……
「やっぱり……やるんだったら中途半端は良くないよね……バイト先でも見せないようにしているのに女物の下着は着用するし」
郁人は下着まで購入することに決定した。
「わ、わあ……こんな派手なの……僕には着れないよ。それにはみ出ちゃうかもしれないし、こっちの方がいいかな」
女性にはついていないものも考慮しながら郁人は下着を決めていく。最初はそこまで乗り気ではなかった女装デートも準備の段階で楽しく感じてきてしまっていることに郁人はまだ気づいていなかった。
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