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第18話 3人でお出かけ(2回目)
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ダンジョンから帰還したアルドとクララ。今回は発掘を中心にして稼ぎ、発掘品をディガー協会へと持ち帰った。
「クララ様の協会への貢献ポイントが一定に達したので、こちらの勲章と金一封を差し上げます」
ディガー協会の受付がクララに勲章のメダルと封筒を手渡した。クララはそれを受け取った。
「ありがとうございます」
「これからもクララ様のご活躍を期待しております」
受付がペコリと頭を下げた。得意気な顔をするクララ。
協会から出た後にアルドはクララに質問をする。
「クララ。さっきの勲章ってなんだ?」
「ああ、アルドさんは、まだもらったことがないから知らないんだ。私たちディガーには貢献ポイントってものがあってね。ダンジョンに潜って邪霊を倒したり、発掘したりして素材を入手して、それを協会に売るとポイントが増えるの」
「ふむふむ」
「これは同行者がやった場合でも増えるんだよ。例えば、アルドさんが発掘した素材をディガー協会に売ると私にも貢献ポイントがもらえるんだ。まあ、やった本人に比べたら目減りはしちゃうんだけどね」
アルドはアゴに手を添えて「なるほど」と頷いた。
「どう? アルドさん。これから、一緒にお茶でもしていかない? ディガーの心得とか今みたいな情報を先輩の私が教えてあげないこともないよ!」
「うーん、折角だけど、イーリスが家で待ってるんだ。ごめん」
申し訳なさそうに断るアルドにイーリスは明るく振る舞う。
「ああ、いいよいいよ! やっぱり、アルドさんは家族を大切にするいい人だね!」
クララがアルドの背中軽く押す。
「ほらほら、イーリスちゃんが待ってるんでしょ! ダッシュ!」
「ダ、ダッシュって。そこまでしなくても」
アルドはクララの行動にたじたじになってしまう。
「あはは。それじゃあね、アルドさん。イーリスちゃんによろしく!」
「うん。じゃあ、また」
クララと別れて、アルドは家へと帰宅した。帰宅するなりいつものようにイーリスがアルドを出迎えにきた。
「お父さんおかえりー! おっと……」
イーリスはアルドが持っている剣を見て踏みとどまった。絶対に触るなと言われている邪霊の武器。イーリスは、それを見てぐぬぬと歯を食いしばった。
「ただいま。イーリス。元気にしてたか?」
「うん、元気だよ。お父さんが早く帰って来てくれたら、もっと元気になるんだけどな」
イーリスの言葉にアルドの胸にチクっと言葉のトゲが刺さる。痛い、とても痛いところを突かれた。と胸を抑えた。
「あはは。そうだね。イーリスともっと一緒にいられるようにがんばるよ」
「うん!」
娘が不自由なく暮らせるためにがんばるアルドであったが、がんばりすぎても娘に寂しい想いをさせてしまうというジレンマ。
「ところで、イーリス。クララと2人きりで遊ぶ心の準備はできた?」
「うーん……まだちょっと不安かな」
「そっか……」
アルドはイーリスの意思を尊重している。イーリスがクララをまだ警戒しているなら無理に一緒にいさせることはしない。でも、アルドとしては、クララに面倒を見てもらう方が安心するところはある。
「じゃあ、今度はまたお父さんと一緒にクララと遊ぼうか」
「うん、お父さんと一緒なら……」
イーリスはこくりと頷いた。小さい頃からずっと家に閉じ込められていたイーリス。まだまだ父親以外の人間と2人きりになるのは心細いところはあるが、父親と一緒ならば警戒心は少しは薄れる。
◇
アルドはイーリスを連れて街に出た。2人仲良く手を繋いでクララと待ち合わせしていた場所へと向かった。クララはまだ来ていない様子だから待ち合わせ場所で待つ2人。
「やっほー。アルドさん。イーリスちゃんお待たせ」
「ああ、クララ。こんにちは」
「こんにちは。クララさん」
伏し目がちで挨拶をするイーリス。クララはしゃがんでイーリスと目線をあわせた。
「こんにちは。イーリスちゃん。今日も可愛いね。お、この前、私が選んだ服を着てくれてるね。嬉しいな」
イーリスは照れてしまった。クララと目線を合わせられないが、クララはそれを気にせずニコっと笑った。
「さあ、今日は都市部で大道芸をやっているからそれを見るよ。出発ー!」
クララが都市部の方向を指さして、意気込む。先陣を切って歩くクララに付いていくアルドとイーリス。
アルドたちが住んでいるA区と都市部はそれほど離れていない。歩いていける距離である。ちょうど、そこで大道芸人たちが集まるイベントをしていたのだ。
まだイベント開始前なのにそれなりに人だかりができている。背が低いイーリスは前が見えなくて困惑していた。
「イーリス。ほら」
「わ……」
アルドがイーリスを持ち上げて抱っこした。9歳ともなれば、それなりの重さがあって抱っこするのにも大変である。しかし、炭鉱夫の仕事で鍛えているアルドならば、簡単とまでは言わないものの持ち上げることができた。
「よってらっしゃい! みてらっしゃい! 大道芸の始まりだー」
司会役の女性が声をあげる。観衆たちの声が響き渡る。そして、檀上に現れる1人の大男。その大男が酒瓶に口をつけて中身をごくごくと飲んでから……口から火を噴いた。
「お、おおー!」
イーリスが声をあげて驚いている。初めてみる大道芸にイーリスはすぐに夢中になった。
「お父さん、見た! 火を噴いた! ねえ、火を噴いたよ!」
「ああ、火を噴いたね。すごいね」
アルドは純粋なイーリスに合わせた。イーリスは魔法の存在は知ってはいたが、こうして魔法めいた存在を実際に見るのは初めてだった。まあ、これは魔法ではなくて、種も仕掛けもあるものではあるが。
「イーリスちゃん。大道芸を見るの初めてなんだ。かわいいー」
クララはイーリスの様子を見て微笑ましく笑った。
次に大男がナイフを手にしてそれを上空に投げる。くるくると回転するナイフ。そのナイフを見事にキャッチをする大男。それだけで観客からもイーリスからも「おおー!」と歓声が上がる。
だが、本番はこれからである。大男はもう1本のナイフを取り出して、ナイフを時間差で上空に投げた。そして、バラバラに落ちて来るナイフをキャッチ。キャッチしたナイフをまた投げる。そのジャグリングを始めた。
「え、えぇー! お父さん、見て! あれすごいよ! よく、手を怪我しないね!」
「うん、確かにあれは凄いね。きっと何回も練習したんだろうね」
「練習かー。私も練習すればできるようになるかな?」
イーリスは目を輝かせて言う。しかし、アルドは渋い顔をしてしまう。
「いや、ダメだ。イーリスには危険すぎる」
「えー。私もナイフでアレやりたい」
イーリスは、ぶーと不機嫌に口を尖らせる。だが、アルドは譲る気はない。
「ダメったら、ダメ。お父さんは許しませんよ。もし、家にあるナイフでやったら……注意するよ!」
「むー。わかったよ」
アルドに注意されたら素直に言うことを聞くのがイーリスである。環境的に従順にならざるを得なかったからのある種の不幸である。
「イーリスちゃん。あの大道芸よりももっと凄いことを教えてあげようか?」
「え? なになに? すごいことって何?」
大男が舞台袖にはけて、次の演者に入れ替わる瞬間、その時にイーリスはクララの話に興味を持った。クララはしーと人差し指を立ててイーリスを黙らせる。
「ふふ、それはね……魔法。私、魔法を使えるの。イーリスちゃん、使ったことないでしょ?」
「おお!」
イーリスが魔法って言葉に興味を示した。なにせ、イーリスは魔法使いになりたいと言うような子である。クララの話に興味を持たないわけがない。
「ふふ、でも、それは後でね。まずは芸をしっかり見ないと芸人さんたちに失礼だから」
「うん!」
「クララ様の協会への貢献ポイントが一定に達したので、こちらの勲章と金一封を差し上げます」
ディガー協会の受付がクララに勲章のメダルと封筒を手渡した。クララはそれを受け取った。
「ありがとうございます」
「これからもクララ様のご活躍を期待しております」
受付がペコリと頭を下げた。得意気な顔をするクララ。
協会から出た後にアルドはクララに質問をする。
「クララ。さっきの勲章ってなんだ?」
「ああ、アルドさんは、まだもらったことがないから知らないんだ。私たちディガーには貢献ポイントってものがあってね。ダンジョンに潜って邪霊を倒したり、発掘したりして素材を入手して、それを協会に売るとポイントが増えるの」
「ふむふむ」
「これは同行者がやった場合でも増えるんだよ。例えば、アルドさんが発掘した素材をディガー協会に売ると私にも貢献ポイントがもらえるんだ。まあ、やった本人に比べたら目減りはしちゃうんだけどね」
アルドはアゴに手を添えて「なるほど」と頷いた。
「どう? アルドさん。これから、一緒にお茶でもしていかない? ディガーの心得とか今みたいな情報を先輩の私が教えてあげないこともないよ!」
「うーん、折角だけど、イーリスが家で待ってるんだ。ごめん」
申し訳なさそうに断るアルドにイーリスは明るく振る舞う。
「ああ、いいよいいよ! やっぱり、アルドさんは家族を大切にするいい人だね!」
クララがアルドの背中軽く押す。
「ほらほら、イーリスちゃんが待ってるんでしょ! ダッシュ!」
「ダ、ダッシュって。そこまでしなくても」
アルドはクララの行動にたじたじになってしまう。
「あはは。それじゃあね、アルドさん。イーリスちゃんによろしく!」
「うん。じゃあ、また」
クララと別れて、アルドは家へと帰宅した。帰宅するなりいつものようにイーリスがアルドを出迎えにきた。
「お父さんおかえりー! おっと……」
イーリスはアルドが持っている剣を見て踏みとどまった。絶対に触るなと言われている邪霊の武器。イーリスは、それを見てぐぬぬと歯を食いしばった。
「ただいま。イーリス。元気にしてたか?」
「うん、元気だよ。お父さんが早く帰って来てくれたら、もっと元気になるんだけどな」
イーリスの言葉にアルドの胸にチクっと言葉のトゲが刺さる。痛い、とても痛いところを突かれた。と胸を抑えた。
「あはは。そうだね。イーリスともっと一緒にいられるようにがんばるよ」
「うん!」
娘が不自由なく暮らせるためにがんばるアルドであったが、がんばりすぎても娘に寂しい想いをさせてしまうというジレンマ。
「ところで、イーリス。クララと2人きりで遊ぶ心の準備はできた?」
「うーん……まだちょっと不安かな」
「そっか……」
アルドはイーリスの意思を尊重している。イーリスがクララをまだ警戒しているなら無理に一緒にいさせることはしない。でも、アルドとしては、クララに面倒を見てもらう方が安心するところはある。
「じゃあ、今度はまたお父さんと一緒にクララと遊ぼうか」
「うん、お父さんと一緒なら……」
イーリスはこくりと頷いた。小さい頃からずっと家に閉じ込められていたイーリス。まだまだ父親以外の人間と2人きりになるのは心細いところはあるが、父親と一緒ならば警戒心は少しは薄れる。
◇
アルドはイーリスを連れて街に出た。2人仲良く手を繋いでクララと待ち合わせしていた場所へと向かった。クララはまだ来ていない様子だから待ち合わせ場所で待つ2人。
「やっほー。アルドさん。イーリスちゃんお待たせ」
「ああ、クララ。こんにちは」
「こんにちは。クララさん」
伏し目がちで挨拶をするイーリス。クララはしゃがんでイーリスと目線をあわせた。
「こんにちは。イーリスちゃん。今日も可愛いね。お、この前、私が選んだ服を着てくれてるね。嬉しいな」
イーリスは照れてしまった。クララと目線を合わせられないが、クララはそれを気にせずニコっと笑った。
「さあ、今日は都市部で大道芸をやっているからそれを見るよ。出発ー!」
クララが都市部の方向を指さして、意気込む。先陣を切って歩くクララに付いていくアルドとイーリス。
アルドたちが住んでいるA区と都市部はそれほど離れていない。歩いていける距離である。ちょうど、そこで大道芸人たちが集まるイベントをしていたのだ。
まだイベント開始前なのにそれなりに人だかりができている。背が低いイーリスは前が見えなくて困惑していた。
「イーリス。ほら」
「わ……」
アルドがイーリスを持ち上げて抱っこした。9歳ともなれば、それなりの重さがあって抱っこするのにも大変である。しかし、炭鉱夫の仕事で鍛えているアルドならば、簡単とまでは言わないものの持ち上げることができた。
「よってらっしゃい! みてらっしゃい! 大道芸の始まりだー」
司会役の女性が声をあげる。観衆たちの声が響き渡る。そして、檀上に現れる1人の大男。その大男が酒瓶に口をつけて中身をごくごくと飲んでから……口から火を噴いた。
「お、おおー!」
イーリスが声をあげて驚いている。初めてみる大道芸にイーリスはすぐに夢中になった。
「お父さん、見た! 火を噴いた! ねえ、火を噴いたよ!」
「ああ、火を噴いたね。すごいね」
アルドは純粋なイーリスに合わせた。イーリスは魔法の存在は知ってはいたが、こうして魔法めいた存在を実際に見るのは初めてだった。まあ、これは魔法ではなくて、種も仕掛けもあるものではあるが。
「イーリスちゃん。大道芸を見るの初めてなんだ。かわいいー」
クララはイーリスの様子を見て微笑ましく笑った。
次に大男がナイフを手にしてそれを上空に投げる。くるくると回転するナイフ。そのナイフを見事にキャッチをする大男。それだけで観客からもイーリスからも「おおー!」と歓声が上がる。
だが、本番はこれからである。大男はもう1本のナイフを取り出して、ナイフを時間差で上空に投げた。そして、バラバラに落ちて来るナイフをキャッチ。キャッチしたナイフをまた投げる。そのジャグリングを始めた。
「え、えぇー! お父さん、見て! あれすごいよ! よく、手を怪我しないね!」
「うん、確かにあれは凄いね。きっと何回も練習したんだろうね」
「練習かー。私も練習すればできるようになるかな?」
イーリスは目を輝かせて言う。しかし、アルドは渋い顔をしてしまう。
「いや、ダメだ。イーリスには危険すぎる」
「えー。私もナイフでアレやりたい」
イーリスは、ぶーと不機嫌に口を尖らせる。だが、アルドは譲る気はない。
「ダメったら、ダメ。お父さんは許しませんよ。もし、家にあるナイフでやったら……注意するよ!」
「むー。わかったよ」
アルドに注意されたら素直に言うことを聞くのがイーリスである。環境的に従順にならざるを得なかったからのある種の不幸である。
「イーリスちゃん。あの大道芸よりももっと凄いことを教えてあげようか?」
「え? なになに? すごいことって何?」
大男が舞台袖にはけて、次の演者に入れ替わる瞬間、その時にイーリスはクララの話に興味を持った。クララはしーと人差し指を立ててイーリスを黙らせる。
「ふふ、それはね……魔法。私、魔法を使えるの。イーリスちゃん、使ったことないでしょ?」
「おお!」
イーリスが魔法って言葉に興味を示した。なにせ、イーリスは魔法使いになりたいと言うような子である。クララの話に興味を持たないわけがない。
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