ミュージック・アワー～恋するウサギちゃん♡～

32話 【お願い】

ドアを開けた瞬間、

激しく照りつける太陽の光が

まぶしすぎて

私は一瞬

目を細めた。


キミはいつもみたいに

まるで一つの芸術作品のような

美しい青空の下で

プールサイドに腰掛けて

ラジオを聞いていた。


「ねぇ、ケンタ。 何か私に言うことないの？」

聞いてないよ。

やっと素直になれそうだったのに

こんなのヤダよ。

「別に……」

「素直になってよ！！」

お願いだから。

「私、ケンタのキモチ、まだ聞いてないよ！」

「……」

「ケンタ！」

キミはおもむろに立ち上がって

空を見上げた。

「俺、引っ越すんだ。 遠い街に。」

知ってるよ。

私たち、このまま終わってもいいの？


『強い人にはなれそうにもない』

『揺れてる君でいいよ』


「それでも……」

唾をゴクリと

飲み込む音が聞こえた。

「それでも…… アオイのことが好きだ。」

ケンタ……

「だから俺と付き合って欲しい。」


一瞬


セミの演奏会が


中断された。


神様お願い


夢なら覚めないで。