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21話 【りんご飴】

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普段は物静かな雰囲気の港に

祭囃子の太鼓や笛の音が鳴り響いて

道路は色鮮やかな浴衣姿の女の子や

甚平を着た男の子で溢れていた。

屋台のりんご飴の甘い香りが

夜風に運ばれてきて

私は大きく深呼吸した。

5分くらい経ったかな。

「七瀬! すまん遅くなった!」

待ち合わせ場所に

紺色の甚平を着たケンタが現れた。


制服姿か水着姿のケンタしか見たことなかったから

少し新鮮。

うん、このケンタもカッコいい。

甚平姿のケンタに思わず見とれてると

「どうした?」

って聞かれた。

私はすぐに目をそらして

「なんでも。」

って答えた。


頭上で連なるオレンジ色の提灯と

どこまでも続く屋台。

いつもと違う表情の港も好き。

「なぁ七瀬。 なんか腹減らね?」

そう言ってケンタは人混みの中を

ずんずん歩いていく。

「ちょっと待って……!」

下駄履き馴れてないんだよ!

私はケンタの後ろ姿を追いかけた。


その時だった。

「あれ? ケンタじゃん!」

立ち止まるケンタの目の前に

背が高くて綺麗な顔立ちをした、金魚柄の浴衣を着た女の子が嬉しそうな表情で現れた。

「ケンタも来てたんだ♪」

ケンタは少し嬉しそうに答えた。

「まあね。 なぁアリサ。 なんかいい屋台知らね?」

下の名前で呼んでるし。


私のことは苗字呼びなのに……
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