ファートゥム・サルウァトル(運命救世主)

ちょちょいのよったろー/羽絶 与鎮果

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第九章 【瞳良】の【力】

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 放課後、【吟撫】と【琴花】、それに【勇至狼】の3人は【葦永家】に行った。
 【葦永家】の玄関前には【瞳良】が待っていた。
 【子イヌ】の姿になって、【アーモンドチョコレート】と【フルーツ大福】をほおばっている【ティニディス】も一緒だ。
 【瞳良】は、
「おかえり。
 その人……」
 と言った。
 【勇至狼】が来たので多少驚いたのだ。
 【琴花】は、
「改めて、紹介するわね。
 【叶羽 勇至狼(かなう ゆうしろう)】。
 私達の冒険に同行してもらう男よ。
 それと、こっちが三女の【瞳良(どうら)】よ」
 と言った。
 【勇至狼】は、
「ど、どうも……」
 と言って挨拶した。
 【瞳良】は、
「………
 こっちもどうも……」
 と返した。
 【ティニディス】は、
『小僧……
 よく来たな』
 と言った。
 【勇至狼】は、また、
「ど、どうも……」
 と挨拶した。
 【吟撫】は、
「【瞳良】。
 悪いけどさ、
 彼にあんたの【力】を見せてあげて」
 と言った。
 【瞳良】は、
「【力】?
 なんの?」
 と聞いた。
 その事からも【瞳良】の【力】が一つではない事がわかる。
 【吟撫】は、
「何でも良いわ。
 とにかく、私達が役立たずじゃないって彼に示せれば何でも良いわ」
 と言った。
 【瞳良】は、
「何?
 私達の事、疑ってんの?」
 と言った。
 【勇至狼】は、
「う、疑っているっていうか、女の子に危険な冒険はいかがなものかって思っているだけで……」
 と言った。
 【瞳良】は、
「……わかった。
 そういう事ね。
 こいつ(【勇至狼】)をびびらせたら良いのね」
 と言った。
 【琴花】は、
「そゆこと。
 派手なのお願いね」
 と言った。
 【勇至狼】は、
「待ってくれ。
 そんなつもりで言った訳じゃ……」
 と言ったが、【吟撫】は、
「彼の理屈だと、私達は【男】より弱いんですって。
 私達だと頼りないって。
 だから、安心させてあ・げ・て」
 と言った。
 【瞳良】は、
「了解。
 たっぷり教えてあげるわ」
 と言ったのだった。
 【勇至狼】は、
「ちょいちょいちょいちょい……
 顔が怖い。
 怖いって。
 もう少し、笑顔で……ね?」
 となだめるが、【瞳良】は、
「もう、遅い。
 覚悟して」
 と言って【力】を使った。
 【瞳良】は、
「【インビジブルエフェクト(見えない効果)】!」
 と言った。
 そして、続けて、
「【インビジブルファイヤ】、
 【インビジブルブリザード】、
 【インビジブルサンダー】、
 【インビジブルロック】、
 【インビジブルストーム】、
 【インビジブルホール】、
 【インビジブルアシッド】!」
 と叫んだ。
 【インビジブルファイヤ】→【見えない炎】、
 【インビジブルブリザード】→【見えない吹雪】、
 【インビジブルサンダー】→【見えない雷】、
 【インビジブルロック】→【見えない岩】、
 【インビジブルストーム】→【見えない嵐】、
 【インビジブルホール】→【見えない穴】、
 【インビジブルアシッド】→【見えない酸】、
 七種類の見えない攻撃を、【葦永家】の壁に向かって放った。
 威力は弱めにしているとは言え七つの攻撃を喰らった壁は跡形も無く吹き飛んだ。
 そして、【瞳良】は、
「じゃあ、戻すわよ。
 ほいっと【アピアランスエフェクト(出現させる効果)】!」
 と言った。
 すると【壁】が元通りになった。
 【勇至狼】は、
「な、なんだ?
 何が起きたんだ?」
 と言った。
 【瞳良】は、
「これはね……
 最初に言った【インビジブルエフェクト(見えない効果)】。
 これで、本物の【壁】とダミーの【壁】を入れ替えたのよ。
 それで、そのダミーの【壁】を、
 【インビジブルファイヤ】っていう【見えない炎】、
 【インビジブルブリザード】っていう【見えない吹雪】、
 【インビジブルサンダー】っていう【見えない雷】、
 【インビジブルロック】っていう【見えない岩】、
 【インビジブルストーム】っていう【見えない嵐】、
 【インビジブルホール】っていう【見えない穴】、
 【インビジブルアシッド】っていう【見えない酸】、
 の七種類の攻撃で破壊したの。
 見えなかったけど、燃えたり凍ったりしてたのよ、ダミーの【壁】はね。
 それで粉々になった所で、【アピアランスエフェクト(出現させる効果)】。
 取り替えていた【壁】を元に戻したの。
 さすがに自宅の【壁】を壊す訳には行かなかったからね。
 それをやって見せたの。
 なぁに?
 わかんなかったの?
 ふぅん~。
 まぁ、見えない効果だったからね。
 わかりにくかったのは否めないか。
 じゃあ、違う【力】にする?」
 と言った。
 【勇至狼】は、
「いやいやいやいや……
 わかったから。
 君達は実力があるのはわかったから。
 も、もう、結構です……」
 と言って制止したのだった。
 【瞳良】は、
「あら、そう?
 ざぁんねん。
 これからが本番にしようと思ってたのに……」
 と残念そうな表情を浮かべたのだった。
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