16 / 28
師の元へ
修行
しおりを挟む
「アンチマテリアと戦うとは言ったゲド。具体的にはどうすれば良いんだ? 」
俺たちは街の外の森林へと足を踏み入れ、懐かしいの修行場へと連れてこられた。
師匠は鼻を高くして語り始める。
「相手の素性が分かれば、自然と弱点も見えてくる。そう教えたはずだ。ワシはもう彼らと対抗する技を手に入れたぞ。」
「なら俺にも教えてくれよ。」
「お前が、技を習得出来なかった理由。お前も分かっているな。」
師匠は俺の背中にぶら下がっている分厚い鉄塊を指差す。
「確かにファンタズマの能力に頼っていたことは認める。」
そう言ってから、俺は両腕を彼の元へと差し出した。
「隻腕で勝てるほど、奴らは甘くないぞ。」
ソレは没収しておく。
代わりに師匠は、俺に何かを投げて来た。
「メカニックが、マギアトスの技術力を応用して作った義手だ。」
「普通の腕として機能する他に、スイッチを押せば、手首から大砲が出てくる。」
「そこで、もう一度自分自身と向き合え。」
「さすれば、答えは不思議と見えてくるはずだ。」
合理的だとは思う。
俺はブロークンシャドーの後、創造主を名乗る謎の男から、あの原理もよく分からない幻影剣を授かってから、あの鉄の塊に頼りっきりだった。
アレが無ければ、両手で剣を握れないほどであったのだから。
だからといって……
「なんでお前まで、一緒に修行を受けてるんだよ。」
俺だって、散々頼み込んで、奴に稽古をつけてもらうために、奴の出した課題で毎回死にかけて、ようやく、奴の剣を教わる権利を手に入れたってのに。
「スケベなジジイであることは昔から変わらねえみたいだな。」
「ジェブは私のことをそんな目で見ていないの? 」
「テメェが勝手に付いて来ただけだろうが。」
俺は身体を大にして、土の上に寝転がった。
「そんなことしてて良いの? 」
彼女が少しムスッとした。
「良いわけないだろ。一刻も早く、力の真髄を手に入れて、アンチマテリアに対抗できる術を編み出さなくては。」
「ってのに、師匠はこんな周りくどいことをしてよ。」
「あの時もそうだった。」
そうだ。
俺は、師匠の出す修行を受けるための試練を乗り越えて、やっと、剣で兵器を越える術を身につけられるって、そう思ったのに。
『自分で考えろ。』
ソレが師匠の流派だった。
美しい言葉ではあると思う。
だけど、放任主義も良いところではないか。
こんなものに命をかけていたのかと、俺はゲンナリしたっけ。
<また修行サボってる。>
俺は起き上がり、振り返った。
そこには誰もいない。
木々が、さわさわと音を鳴らしただけだ。
俺は幻影剣の影響で頭がおかしくなっているのかもしれない。
・
・
・
「じいちゃんはね。人を教えることが下手くそなの。」
「なんで? お前のじいちゃんは天才なんだろ。一千年に一度の剣豪だって、鉄を斬る鬼神だって。」
「そう。だからね。私たちがなぜ敵軍のアーマーを刃で切れないのかが分からないのよ。」
僕は手を頭で組んで、寝転がると、脚を組んだ。
「贅沢な悩みだな。」
「じいちゃんは弟子を取らなかったんじゃ無い。取れなかったのよ。」
だから僕に、あんな無理難題を押し付けたのか。
なんだよ。だったらこんなこと早く辞めちまえば良かった。
「でも、じいちゃんは弟子を取った。」
「ジェブを弟子として。じいちゃんは私を後継にすることを諦めたって。」
「そのじいちゃんが……だよ。」
・
・
・
「思い……出した。」
俺は飛び上がると、修行場の木製のダミー向けて、木刀を振るった。
ダミーは少しの間を置いて、バラバラに砕け散る。
「なんで、早く気づかなかったんだろ。」
俺はあの時、師匠の技を覚えるために、鍛冶屋に行った。
そして、敵のアーマーを斬る練習を、手の豆が潰れて剣が握れなくなるまで、何度も何度も打ち込んだモノだ。
最初は鉄製の剣で。
慣れて来たら、木刀でも、アーマーを斬ることが出来るようになっていた。
「エーコに相手になってもらうぜ。」
「ちょっと。ホントに斬っちゃうんじゃ無いでしょうね? 」
「ノンノン。彼女に少しばかり反物質を分けてもらうのさ。」
「反物質を斬るのに、物質を斬る練習をしてもしょうがないだろ? 」
「ソレはそうだけども。」
* * *
彼女を連れて来たのは良いが、非常に不機嫌である。
「ジェブ? ご飯は? くれないなら、街の人間食べちゃうよ。焼き鳥の屋台を出している丸々肥ったおじさん……美味しそうだったな。」
俺は慌てて手を振った。
「夕方になれば、また食わしてやる。だから、今はどうか協力してくれねえか? この通りだ。」
「最近、ジェブって、私にお願いしてばっかりだよね。ここで私も一丁アンチマテリアの貫禄って奴を見せてやらないと。」
彼女は目を細めると、俺をジト目で睨んだ。
「お願いエーコ。私からも。この通りだから。」
彼女は頬を膨らませると、顔を真っ赤にして「ヨーコ。カシ1ね。」と許諾してくれた。
俺たちは街の外の森林へと足を踏み入れ、懐かしいの修行場へと連れてこられた。
師匠は鼻を高くして語り始める。
「相手の素性が分かれば、自然と弱点も見えてくる。そう教えたはずだ。ワシはもう彼らと対抗する技を手に入れたぞ。」
「なら俺にも教えてくれよ。」
「お前が、技を習得出来なかった理由。お前も分かっているな。」
師匠は俺の背中にぶら下がっている分厚い鉄塊を指差す。
「確かにファンタズマの能力に頼っていたことは認める。」
そう言ってから、俺は両腕を彼の元へと差し出した。
「隻腕で勝てるほど、奴らは甘くないぞ。」
ソレは没収しておく。
代わりに師匠は、俺に何かを投げて来た。
「メカニックが、マギアトスの技術力を応用して作った義手だ。」
「普通の腕として機能する他に、スイッチを押せば、手首から大砲が出てくる。」
「そこで、もう一度自分自身と向き合え。」
「さすれば、答えは不思議と見えてくるはずだ。」
合理的だとは思う。
俺はブロークンシャドーの後、創造主を名乗る謎の男から、あの原理もよく分からない幻影剣を授かってから、あの鉄の塊に頼りっきりだった。
アレが無ければ、両手で剣を握れないほどであったのだから。
だからといって……
「なんでお前まで、一緒に修行を受けてるんだよ。」
俺だって、散々頼み込んで、奴に稽古をつけてもらうために、奴の出した課題で毎回死にかけて、ようやく、奴の剣を教わる権利を手に入れたってのに。
「スケベなジジイであることは昔から変わらねえみたいだな。」
「ジェブは私のことをそんな目で見ていないの? 」
「テメェが勝手に付いて来ただけだろうが。」
俺は身体を大にして、土の上に寝転がった。
「そんなことしてて良いの? 」
彼女が少しムスッとした。
「良いわけないだろ。一刻も早く、力の真髄を手に入れて、アンチマテリアに対抗できる術を編み出さなくては。」
「ってのに、師匠はこんな周りくどいことをしてよ。」
「あの時もそうだった。」
そうだ。
俺は、師匠の出す修行を受けるための試練を乗り越えて、やっと、剣で兵器を越える術を身につけられるって、そう思ったのに。
『自分で考えろ。』
ソレが師匠の流派だった。
美しい言葉ではあると思う。
だけど、放任主義も良いところではないか。
こんなものに命をかけていたのかと、俺はゲンナリしたっけ。
<また修行サボってる。>
俺は起き上がり、振り返った。
そこには誰もいない。
木々が、さわさわと音を鳴らしただけだ。
俺は幻影剣の影響で頭がおかしくなっているのかもしれない。
・
・
・
「じいちゃんはね。人を教えることが下手くそなの。」
「なんで? お前のじいちゃんは天才なんだろ。一千年に一度の剣豪だって、鉄を斬る鬼神だって。」
「そう。だからね。私たちがなぜ敵軍のアーマーを刃で切れないのかが分からないのよ。」
僕は手を頭で組んで、寝転がると、脚を組んだ。
「贅沢な悩みだな。」
「じいちゃんは弟子を取らなかったんじゃ無い。取れなかったのよ。」
だから僕に、あんな無理難題を押し付けたのか。
なんだよ。だったらこんなこと早く辞めちまえば良かった。
「でも、じいちゃんは弟子を取った。」
「ジェブを弟子として。じいちゃんは私を後継にすることを諦めたって。」
「そのじいちゃんが……だよ。」
・
・
・
「思い……出した。」
俺は飛び上がると、修行場の木製のダミー向けて、木刀を振るった。
ダミーは少しの間を置いて、バラバラに砕け散る。
「なんで、早く気づかなかったんだろ。」
俺はあの時、師匠の技を覚えるために、鍛冶屋に行った。
そして、敵のアーマーを斬る練習を、手の豆が潰れて剣が握れなくなるまで、何度も何度も打ち込んだモノだ。
最初は鉄製の剣で。
慣れて来たら、木刀でも、アーマーを斬ることが出来るようになっていた。
「エーコに相手になってもらうぜ。」
「ちょっと。ホントに斬っちゃうんじゃ無いでしょうね? 」
「ノンノン。彼女に少しばかり反物質を分けてもらうのさ。」
「反物質を斬るのに、物質を斬る練習をしてもしょうがないだろ? 」
「ソレはそうだけども。」
* * *
彼女を連れて来たのは良いが、非常に不機嫌である。
「ジェブ? ご飯は? くれないなら、街の人間食べちゃうよ。焼き鳥の屋台を出している丸々肥ったおじさん……美味しそうだったな。」
俺は慌てて手を振った。
「夕方になれば、また食わしてやる。だから、今はどうか協力してくれねえか? この通りだ。」
「最近、ジェブって、私にお願いしてばっかりだよね。ここで私も一丁アンチマテリアの貫禄って奴を見せてやらないと。」
彼女は目を細めると、俺をジト目で睨んだ。
「お願いエーコ。私からも。この通りだから。」
彼女は頬を膨らませると、顔を真っ赤にして「ヨーコ。カシ1ね。」と許諾してくれた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
What a Wonderful World
一兎風タウ
SF
紀元後3518年。
荒廃したこの地には、戦闘用アンドロイド軍『オリュンポス軍』のみが存在していた⋯。
ー⋯はずだった。
十数年前に壊滅させた戦闘用アンドロイド軍『高天原軍』が再侵攻を始めた。
膠着状態となり、オリュンポス軍最高司令官のゼウスは惑星からの離脱、および爆破を決定した。
それに反発したポー、ハデス、ヘスティアの3人は脱走し、この惑星上を放浪する旅に出る。
これは、彼らが何かを見つけるための物語。
SF(すこしふしぎ)漫画の小説版。
我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
虚界生物図録
nekojita
SF
序論
1. 虚界生物
界は、生物学においてドメインに次いで2番目に高い分類階級である。古典的な生物学ではすべての生物が六界(動物界、植物界、菌界、原生生物界、古細菌界、細菌/真正細菌)に分類される。しかしこれらの「界」に当てはまらない生物も、我々の知覚の外縁でひそかに息づいている。彼らは既存の進化の法則や生態系に従わない。あるものは時間を歪め、あるものは空間を弄び、あるものは因果の流れすら変えてしまう。
こうした異質な生物群は、「界」による分類を受け付けない生物として「虚界生物」と名付けられた。
虚界生物の姿は、地球上の動植物に似ていることもあれば、夢の中の幻影のように変幻自在であることもある。彼らの生態は我々の理解を超越し、認識を変容させる。目撃者の証言には概して矛盾が多く、科学的手法による解析が困難な場合も少なくない。これらの生物は太古の伝承や神話、芸術作品、禁断の書物の中に断片的に記され、伝統的な科学的分析の対象とはされてこなかった。しかしながら各地での記録や報告を統合し、一定の体系に基づいて分析を行うことで、現代では虚界生物の特性をある程度明らかにすることが可能となってきた。
本図録は、こうした神秘的な存在に関する情報、観察、諸記録、諸仮説を可能な限り収集、整理することで、未知の領域へと踏み出すための道標となることを目的とする。
2. 研究の意義と目的
本図録は、初学者にも分かりやすく、虚界生物の不思議と謎をひも解くことを目的としている。それぞれの記録には、観察された異常現象や生態、目撃談、さらには学術的仮説までを網羅する。
各項は独立しており、前後の項目と直接の関連性はない。読者は必要な、あるいは興味のある項目だけを読むことができる。
いくつかの虚界生物は、人間社会に直接的、あるいは間接的に影響を及ぼしている。南極上空に黄金の巣を築いた帝天蜂は、巣の内部で異常に発達した知性と生産性を持つ群体を形成している。この巣の研究は人類の生産システムに革新をもたらす可能性がある。
カー・ゾン・コーに代表される、人間社会に密接に関与する虚界生物や、逆に復讐珊瑚のように、接触を避けるべき危険な存在も確認されている。
一方で、一部の虚界生物は時空や因果そのものを真っ向から撹乱する。逆行虫やテンノヒカリは、我々の時間概念に重大な示唆を与える。
これらの異常な生物を研究することは単にその生物への対処方法を確立するのみならず、諸々の根源的な問いに新たな視点を与える。本図録が、虚界生物の研究に携わる者、または未知の存在に興味を持つ者にとっての一助となることを願う。
※※図や文章の一部はAIを用いて作成されている。
※※すべての内容はフィクションであり、実在の生命、科学、人物、出来事、団体、書籍とは関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる