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成り行き
余所者。
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「父さん!! 大変だよ。」
ジャズが溶け込む静寂したバーの中に、突然、扉を押し開ける音が鳴り響いた。
ジジイはシラフに戻ると、ピクッと立ち上がった。
俺も彼らの後を追い、そして、嫌な予感は、だんだん確信へと変わっていった。
ストリートに人だかりが出来ており、その全容を確認できない。
俺は二人を押し退けると、手を後ろで縛られている二人の連れを見た。
ヨーコは、無抵抗で町人たちのされるがままになっている。
エーコも、彼女の忠告に従ってか、ダークマタを必死に押さえ込んでいた。
ジジイが俺を吹き飛ばし、町人たちの前へと出た。
「やめんかぁ!! 」
「ジジイ下がってろ。コイツらは新エネルギー陣営のスパイだ。」
「やめなさい。その客人たちは、私が招き入れた。スパイなどでは無い。今すぐ縄を解きなさい。」
新エネルギー陣営……か。
化石燃料を使う彼らからすれば、一次エネルギーも零次エネルギーも大差ないのかも知れない。
「ならこうするしかねえな。」
男の一人がナイフを取り出して、ヨーコへと向けた。
「ええい。本性を表やがれ。」
彼女の身体が、そんな貧相なモノで傷つくはずがない。
だけど。
なんでかな?
酒のせいもあり、俺は自然と彼らの前に出ていた。
「なんだ? お前は? 」
「ソイツらの連れだ。ソイツらが無礼を働いたというのなら、俺が代わりに詫びよう。すまない。今は訳あって治安局から追われている。しばらく匿って欲しくて、藁もを掴むつもりで、ジジイにすがってしまったんだ。」
周りの人間がざわめく。
良い、どっちにしろ隠し通せるのも時間の問題だっただろう。
「その代わりに、このモノたちには、この街の護衛をしてもらうことにした。安心せい若僧たち。このモノたちの腕は確かだ。昔、ここの街を救ってくれたりもした。」
「もしかして、あんちゃんジェット・ブラックか? 」
「左腕と、目はどうした? 」
男たちは次第に焦燥し始めた。
男のうちの一人が、ヨーコの腰からマギアトスの短剣を引き抜くと、エーコの喉笛へとソレを押し当てる。
「嘘だ。コイツがジェット・ブラックだなんて。」
「ホントだ。試してみるか? 」
彼らはヨーコとエーコを放り出すと、背中の剣を抜いた。
「ジェブ? 」
「分かってる。この場を納めるのは俺が適任だ。」
ファンタズマは今、ジジイが持っている。
だから俺は、投げ捨てられた手入れの行き届いていない一振りの鈍を拾い上げた。
元よりファンタズマを使うつもりは無かったが。
徐々に歓声や喧騒が消えていく。
世界は俺と、三人の男たちだけになった。
一番見栄えの良い剣を持っているのは真ん中の男の男だが、右の男と同じく刀身が汚れている。
左の男は、剣をあまり使っていないのか、若しくは。
俺は次に構えから、彼らの力量を推測した。
間違いない。
剣技に至っては、左が一番だろう。
俺は視線を真ん中の剣士に寄せる。
すると、一番最初に左側の剣士が動き出した。
嫌な感じがする。
長らくファンタズマを握っていたせいか、左腕に自由が効かないことに今気づく。
真ん中と右の剣士が先に俺に斬りかかってきた。
俺は彼らの刃を限界まで引きつけると。
真ん中の剣士を鍔迫り合いで押し出して、右の剣士の刃が、背中を掠る。
髪が斬れ、軽い出血が起こる。
俺は背中を振い、血を、彼顔目掛けて振るい飛ばした。
そのまま鍔迫り合いをしていた真ん中の剣士に足払いをかけて、体勢を崩させる。
バランスを崩した剣士が、背中から地面に落ちた。
真後ろの目を押さえている剣士のケツを蹴飛ばして、手練れの剣士へと飛ばした。
彼は慌てて、剣の持ち方を変えると、右の剣士の刃を受け止めた。
「おい、バカ、何をやっている。」
「すまねえ、前が見えねえんだ。」
目が見えない剣士の肩を踏みつけると、跳躍し、右腕を大きく振りかぶる。
手練れの剣士は、即座に反応すると、俺の右腕向けて、刃を斬り上げてきた。
俺は紙一重でソレを交わすと、そのまま回転し、その攻撃を弾き返した。
仰け反る彼へ向けて、更なる追撃を加える。
左脚の踵でブレーキをかけながら着地すると、右脚で、地面を蹴り上げ、防御姿勢を取る彼へ向けて、さらに距離を詰めた。
水平斬り、切り下ろし、足払い。
彼は俺の攻撃を軽々と交わしてみせた。
民衆のホルスターから銃を抜き取ると、お構いなしに撃ってくる。
俺は腰からレーザーブレードを取り出すと、鉛球を剣で燃焼させる。
ナマクラを足で蹴り上げると、口で咥えた。
「パンパンパン。」
俺が銃弾を捌けるということを知った彼は、今度はお構いなしに撃ってきた。
「おむえ。おるぇが銃弾をはじゅかながったら、ひとぉがしゅんでりゅぞ。」
口をモコモコさせて、彼を非難する。
民衆たちにパニックが起こり、人だかりは散り散りに逃げ始めた。
俺はナマクラを奴の腕の拳銃向けて投げ飛ばした。
銃が弾かれる。
そのまま低空姿勢で彼へと一瞬で距離を詰め、斬り上げで、刀身を焼き切った。
「俺の勝ちだ。投了しろ。」
ジャズが溶け込む静寂したバーの中に、突然、扉を押し開ける音が鳴り響いた。
ジジイはシラフに戻ると、ピクッと立ち上がった。
俺も彼らの後を追い、そして、嫌な予感は、だんだん確信へと変わっていった。
ストリートに人だかりが出来ており、その全容を確認できない。
俺は二人を押し退けると、手を後ろで縛られている二人の連れを見た。
ヨーコは、無抵抗で町人たちのされるがままになっている。
エーコも、彼女の忠告に従ってか、ダークマタを必死に押さえ込んでいた。
ジジイが俺を吹き飛ばし、町人たちの前へと出た。
「やめんかぁ!! 」
「ジジイ下がってろ。コイツらは新エネルギー陣営のスパイだ。」
「やめなさい。その客人たちは、私が招き入れた。スパイなどでは無い。今すぐ縄を解きなさい。」
新エネルギー陣営……か。
化石燃料を使う彼らからすれば、一次エネルギーも零次エネルギーも大差ないのかも知れない。
「ならこうするしかねえな。」
男の一人がナイフを取り出して、ヨーコへと向けた。
「ええい。本性を表やがれ。」
彼女の身体が、そんな貧相なモノで傷つくはずがない。
だけど。
なんでかな?
酒のせいもあり、俺は自然と彼らの前に出ていた。
「なんだ? お前は? 」
「ソイツらの連れだ。ソイツらが無礼を働いたというのなら、俺が代わりに詫びよう。すまない。今は訳あって治安局から追われている。しばらく匿って欲しくて、藁もを掴むつもりで、ジジイにすがってしまったんだ。」
周りの人間がざわめく。
良い、どっちにしろ隠し通せるのも時間の問題だっただろう。
「その代わりに、このモノたちには、この街の護衛をしてもらうことにした。安心せい若僧たち。このモノたちの腕は確かだ。昔、ここの街を救ってくれたりもした。」
「もしかして、あんちゃんジェット・ブラックか? 」
「左腕と、目はどうした? 」
男たちは次第に焦燥し始めた。
男のうちの一人が、ヨーコの腰からマギアトスの短剣を引き抜くと、エーコの喉笛へとソレを押し当てる。
「嘘だ。コイツがジェット・ブラックだなんて。」
「ホントだ。試してみるか? 」
彼らはヨーコとエーコを放り出すと、背中の剣を抜いた。
「ジェブ? 」
「分かってる。この場を納めるのは俺が適任だ。」
ファンタズマは今、ジジイが持っている。
だから俺は、投げ捨てられた手入れの行き届いていない一振りの鈍を拾い上げた。
元よりファンタズマを使うつもりは無かったが。
徐々に歓声や喧騒が消えていく。
世界は俺と、三人の男たちだけになった。
一番見栄えの良い剣を持っているのは真ん中の男の男だが、右の男と同じく刀身が汚れている。
左の男は、剣をあまり使っていないのか、若しくは。
俺は次に構えから、彼らの力量を推測した。
間違いない。
剣技に至っては、左が一番だろう。
俺は視線を真ん中の剣士に寄せる。
すると、一番最初に左側の剣士が動き出した。
嫌な感じがする。
長らくファンタズマを握っていたせいか、左腕に自由が効かないことに今気づく。
真ん中と右の剣士が先に俺に斬りかかってきた。
俺は彼らの刃を限界まで引きつけると。
真ん中の剣士を鍔迫り合いで押し出して、右の剣士の刃が、背中を掠る。
髪が斬れ、軽い出血が起こる。
俺は背中を振い、血を、彼顔目掛けて振るい飛ばした。
そのまま鍔迫り合いをしていた真ん中の剣士に足払いをかけて、体勢を崩させる。
バランスを崩した剣士が、背中から地面に落ちた。
真後ろの目を押さえている剣士のケツを蹴飛ばして、手練れの剣士へと飛ばした。
彼は慌てて、剣の持ち方を変えると、右の剣士の刃を受け止めた。
「おい、バカ、何をやっている。」
「すまねえ、前が見えねえんだ。」
目が見えない剣士の肩を踏みつけると、跳躍し、右腕を大きく振りかぶる。
手練れの剣士は、即座に反応すると、俺の右腕向けて、刃を斬り上げてきた。
俺は紙一重でソレを交わすと、そのまま回転し、その攻撃を弾き返した。
仰け反る彼へ向けて、更なる追撃を加える。
左脚の踵でブレーキをかけながら着地すると、右脚で、地面を蹴り上げ、防御姿勢を取る彼へ向けて、さらに距離を詰めた。
水平斬り、切り下ろし、足払い。
彼は俺の攻撃を軽々と交わしてみせた。
民衆のホルスターから銃を抜き取ると、お構いなしに撃ってくる。
俺は腰からレーザーブレードを取り出すと、鉛球を剣で燃焼させる。
ナマクラを足で蹴り上げると、口で咥えた。
「パンパンパン。」
俺が銃弾を捌けるということを知った彼は、今度はお構いなしに撃ってきた。
「おむえ。おるぇが銃弾をはじゅかながったら、ひとぉがしゅんでりゅぞ。」
口をモコモコさせて、彼を非難する。
民衆たちにパニックが起こり、人だかりは散り散りに逃げ始めた。
俺はナマクラを奴の腕の拳銃向けて投げ飛ばした。
銃が弾かれる。
そのまま低空姿勢で彼へと一瞬で距離を詰め、斬り上げで、刀身を焼き切った。
「俺の勝ちだ。投了しろ。」
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