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ファイル:5ネオ・リベリオン

アッシー・A・プレンテス

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 マーリンが俺の両肩に義手を装着させる
「魔法を解除して。神経接続するから。」
「止血は? 」
「必要ない。大丈夫だから。」
 言われるがまま、魔法を解除し、神経が結合するとともに、喉が焼けるような痙攣が全身を襲う。
「痛みは……ごめん。慣れてくるはずだから。」
 腕を振る。
 問題ない。
 指の感覚を確かめた。
 身体に馴染んでいる。ラグはない。俺の身体の電気信号をそのまま義手が受け取っているのか。
「なんで俺が腕を落とされると分かった?? 」
「それは…… 」
 マーリンが答えるよりも先に、答えが分かった。
 アッシーは俺の両腕を拾い上げると、アクリルの容器にそれを放り込む。
「さぁ私のラバーズたちよ!!大好きな食事の時間だ!! 」
 彼はケーブルをアクリルの容器に接続すると、機材を起動させた。
「させません!! 」
 ロバスは左手から短剣を引き抜くと、オートマタたちの間を抜けようとした。
「ぐっ。」
 彼女たちがロバスを受け止める。
「ぎぁは。」
 そのまま俺たちの方へ吹き飛ばされた。
 俺はマーリンを庇うように、ロバスを受け止める。
 自身の身体で出来るだけ衝撃を外へ逃す。
「重っ。」
「レディーに対して失礼ですわよッ!! 」
 彼女の固く冷たい一撃が俺の脳天に突き刺さる。
 重くて当然だ。
 彼女の身体は機械そのものだし。
 だからマーリンに当たらなくて良かった。
「インストール完了だぁ。」
 彼女たちは白く輝き……
「あれは……天岩流の構え。」
「やってしまいましたか。」
 ロバスは苦虫を噛み潰すと、彼女たちに特攻した。
 彼女たちが、石壁を撃つするでのところで、垂直に上昇し、一番後ろの人形のうなじ辺りを触ろうとする。
「捉えましたわ。」
 いつもよりワントーン高い声。
 彼女は勝利を確信している。
 だが、他視点から見ている俺は、彼女に危険が迫っていることに気がついていた。
 まだ身体の平衡感覚を保つことは難しい。
 慣れない身体で必死に速く走る方法を模索する。
 そして、ロバスの首に手刀を差し出そうとしているオートマタの顔へと拳を繰り出す。
「止まらねえ。」
 彼女たちが人間でないと言うことを忘れていた。
 関節が外れ、攻撃だけがロバスに迫る。
 驚いたロバスの顔がこちらに振り返る。
「前をみろぉ!! そっちのオートマタもお前の心臓を狙っているぞ。」
「クソッタレぇ。」
 力ずくで、オートマタを引き剥がす。
 手刀が、ロバスの健康的な髪を掠った。
 ロバスは肘から銃口を突き出すと、正面のオートマタへと銃弾を撃ち込む。
 俺たちは背中合わせになった。
「俺は人形たちをやる。」
「ロバスはアッシーを止めてくれ。」
 彼女は小さく頷いた。
「この方たちは少々分が悪いようですわ。貴方にお任せします。」
 彼女は跳躍し、アッシーへと向かう。
 彼女を止めようと、人形たちが動き出す。
「お前らの相手はこっちだ。」
貝独楽ベイゴマ
 足先で彼女たちを絡みとり、壁の方へと叩きつけた。
「待てっ。」
 マーリンの声に気を取られる。
 振り返ると、金川が尻尾を巻いて逃げていた。
「追うなマーリン。」
「ハハハハ、公安が来たみたいだぜじゃあなぁ。」
「アッシー。お前もキリの良いところで逃げろよ。」
 彼はロバスと取っ組み合いになりながら、顔を金川の方へ向けて答えた。
「ええ、貴方はネオ・リベリオンの未来です。それに私もまだ満足していませんしねえぇぇぇぇぇ!! 」
 アッシーは、両腕を刃に変化させる。
 咄嗟に気がついたロバスが、彼から離れる。
「何も、身体を改造しているのはアナタだけじゃあないんですよぉぉぉぉぉぉぉ。」
 俺は彼女たちの攻撃を避けながら、横目で、ロバスの戦況を確認していた。
 彼とオートマタたちとの接続が解かれる。
「有線から無線に切り替えたか!! 」
 人形たちの動きが少し鈍くなった。
 俺も徐々に、この新しい腕が身体に馴染んできた頃だ。
「ロバス、コレを受け取って!! 」
 マーリンが、ロバスに向けて、鈍色の筒を放り投げた。
「マーリン、余計なお世話ですことよ。」
 彼女は片手でそれを受け取ると、スイッチを起動した。
 オートマタの座標軸が揃う。
 俺はその瞬間を見逃さなかった。
 バックステップで宙を舞い、それらを全て、武術のレンジの中へと放り込む。
 プラズマプレードが展開する。
 彼女はそれをヒュンヒュン振うと、構えた。
流星一閃メテオ・ストライク】【雷斬ライザン
 二つの迸る閃光が、彼らを貫いた。
 俺は手を払い、ロバスは刀で血振りを行い、機械油を払い落とす。
 少し遅れて、彼らは文字通り鉄屑となった。
      
      * * *

 俺が現場検証を終える頃には、銃声を嗅ぎつけた公安の人間たちがゾロゾロとやって来た。
 俺の両腕を見た小子は、俺の頬を殴り飛ばした。
「何一人で行動してんのよ。」
              「仕事が忙しくて、俺のことなんて頭の片隅にも無かった人がよく言うよ。」
「何か言ったかしら。」
「別に。」
 彼女は今回の騒動のMVPであるロバスとマーリンを見つけると彼女たちの方へ走って行った。
 何やら頭を下げているようだ。
「お前は俺のカーチャンか。」
「やぁやぁ。無事で何よりじゃぁないか? 」
 俺がこんな目にあった元凶は、ノソノソとこちらにやって来る。
「アンタのせいでな。本当は知っていたんじゃないか? 玉鉄が俺をつけていたのを。」
「いいんや、別に? 」
 長官様は明後日の方向を向くと、口笛を吹いて文字通り嘯いた。
「君が身体を張ってくれたおかげで、ドブネズミたちの動向を掴むことができた。いい仕事っぷりだよ北条クン。」
 人が大怪我をしていると言うのに、ウチの上司様は何を言っているのだろうか。
「おおっと、そんなに怒らないでくれたまえ。ああ、救護班に見てもらわないとダメだよ。マーリン君は毒抜きをしてくれたみたいだけど、万が一のことがあってはいけないからね。」
「万が一のこと……ありましたよ。」
 長官はため息をつく。
「魔法使いが、腕の一本、二本ほどで…… 君ももう薄々気がついているだろう?自分の奥底に眠る力に。」
 彼は俺の心臓の辺りを凝視した。
「まざかアナタ。魔法が見えて…… 」
「さぁどうだろうね。コレはなんなのか。ワールド221に左遷されて、魔法に触れて、人類の祖に触れて、私の能力も変異しているのかもしれない。」
 ちょうど、犯罪課の人間が、アッシーの首を持ち上げているところだった。
「私は……リングィスト師匠と同じ独房に入れてもらえるのかね。」
「そりゃ難しいかもな。だが、安心しろ。罪人にゃ退屈することなんてない場所だがらよ。」
「ハハハハ、心踊る新天地か。楽しみだ!! 今行くぞ。私の師よ!! 」
 俺と本堂は向き直って、話を続けた。
「奴らはどこへ? 」
「平等の象徴、安田倫子の像をぶち倒し、再びビック・ファーザーの像を復活させるつもりだ。いかにも、ませたガキが考えそうなことじゃないと思わないか北条クン? 」
「さぁな。」
 本堂は真剣な顔になる。
 まじめな質問をする時の顔だ。
「金川君から何か動機を聞き出せたか。」
 彼と話しておおよそ動機は分かった。
「さぁな。テロリズムか、恋煩いか。俺には理解できないね。」
「私達は今すぐに、支配の塔へ向かう。キミも、治療が終わったら、すぐに来たまえ。公安は常に人手不足なのだよ。」
 彼は車の方へ方向を変えると、右手をヒラヒラと振りながら、それへ乗り込んだ。
 そこへ、ロバス達がやって来る。
「腕……大丈夫ですか? 」
「ごめん北条。アッシーがリベリオンにいると聞いて、急いで来たんだけど。」
 マーリンが俺に頭を下げる。
 俺が両手を無くしたのは、俺の不注意のせいだ。
 それよりか、彼女たちは、公安が来るよりも早く俺を見つけ出し、俺のことを助けてくれた。
「おいおい、俺が悪いことしたみたいじゃないか。顔を上げてくれ。」
「ふーん。マーリンさんには優しいのね。」
 俺は遅れてやって来た上官様の言葉を無視して、義手をスリスリと触った。
「とても良い腕だ。マーリンが作ってくれたのか? 」
「いやいや、プログラムしたのは、ロバスだよ。」
 そう言って彼は俺の手の橈骨を強く握った。
 腕が銃口へと変化する。
「右手はレーザー砲。相手は能力者だし、こんなガラクタ役に立つかわからないけどさ。」
「左手はどうなっているんだ? 」
 俺は右手を元に戻すと、今度は左手の橈骨に触れた。
 手首がパックリ割れて、中からサバイバルナイフが出て来る。
「凄いけど…… 」
 コレって、平等社会で禁止されている武器を携帯していることになるんじゃぁ……
 俺は顔から血の気が引いていくのを感じた。
「さぁ、私たちも行きましょうマーリン。」
 黒服を来た男達が、こちらにやって来る。ロバスの護衛兼監視役だ。
「北条。キミも早く医者に診てもらって、長官達の後を追わなきゃだな。引き止めてごめんよ。」
「ありがとう。この埋め合わせは必ずどこかでするからさ。」
 俺は何者かに手を引かれる。
 小子だ。
「早く。アンタの身に何かあったら目覚めが悪いでしょ。」
 俺たちは歩き出した。

 
 
 
 
 
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