54 / 108
ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト
皇帝
しおりを挟む
「お前らの行動は全てこのカメラを通じて生中継されている。」
家臣が持つビデオカメラが黒く光る。
「極東の技術さまざまだな。ところで、後で下水道の件もしっかり聞いて置かなくては。なぁ台与鬼子。」
慎二は何も答えない。
それから皇帝はカーミラの方を見た。
「カーミラ殿? 人様の城にコソコソと入り込んで、どういう了見かな? 」
「国際情勢を悪化させたくなければ、どうか手をひいてほしい。」
慎二とカーミラは、祖国を思ってか、一歩後ずさった。
対称的に俺は一歩前に出ると、皇帝を仰ぐ。
「なんだテメエは被害者ヅラしやがって。オメエは加害者だろうが? 天に唾を吐いてみろ。自分に帰ってくるからよ。」
皇帝は、俺に矛を向ける家臣を下がらせると、前に出て、ロバスに命令した。
「ロバス。ソイツらを始末しろ。」
彼女は退屈そうな顔で俺たちの会話を聞いていたかと思うと、ため息をついて、それから皇帝の方を見た。
「王様と言いましても、ワタクシの邪魔をするなら容赦はしませんよ。」
ロバスの冷たい眼光が赫く光る。
「オイオイ、お嬢ちゃんよ。キミが相手をするのは奴らだ。」
「多少手荒な真似をしても構わない。他所の国で好き勝手した奴らだ。それぐらいの報いは受けるべきだろう。」
「死ね。」
彼女の左前足が、皇帝を狙った。
「キンッ。」
彼女を止めたのは、身体強化をしたカーミラだ。
「会談に何度もお誘いしたのに、応じていただけなかったのは、アナタの方です。」
「私が今日ここに来たのは、それをお伝えするためでもあります。」
それからカーミラはロバスの脚を押し戻しながら、彼女へと迫る。
押し返された脚の影響で、ロバスは体勢を大きく崩した。
それを、俺も慎二も見逃さない。
「凛月。薙ぎ払え!! 」
---雷鞭---
「キャッ!! 」
身体を支えているただ一本の右脚を、慎二の凛月がふり払った。
俺もその隙を見逃さない。
「【天岩流ッ】」
【捌ノ岩】
【天岩烈波】
宇宙から崩れ落ちてくる巨大なソレを、右手で砕いた。
鉄屑の雨が降る。
その雨の中、カーミラは俺を踏み台にすると、何が起こったのか分からないまま唖然としているロバスを抱き抱え、安全な所で着地した。
城の兵たちは慌てて逃げていく。
そして最後に家臣と皇帝だけが残った。
「素晴らしい。さすが、蝠岡が認めただけはある。」
蝠岡? 奴を知っている?
「私と彼は同窓生だ。私が二十七で博士号を手に入れた時、彼はまだたったの五歳だった。」
慎二の叫び声が聞こえる。
「北条!! ソイツの言葉を聞くな。」
リングィストは彼の言葉を無視して続けている。
「その頃には、彼も、国際政府から隷属世界プロジェクトの話がついていた頃でね。」
「私は本気で信じていたんだ。彼は人類の上位種を作ろうとしていると…… 」
彼は自らの手で頭にある白髪をむしり取った。
血が出るほど頭皮をむしり取った。
「何が『人類にあるべきものを思い出させる。』だ。」
「彼のやっていることは、天界に帰った人類たちに、再び知恵の実を授け、地上に叩き落とすようなものだ。」
「そうだ。奴は蛇だ蛇ダァ。」
俺の前で光る何かが通った。
遅れてカーミラが真紅の血を撒き散らして、俺と同じく何が起こったのか分からないまま、仰向けにバッタリと倒れる。
リングィストは、さっきの気が狂った様子とは、違う、落ち着いた叔父の声で優しくロバスに話しかけた。
「ロバス。彼の黄金剣には触れないようにな。それは使用者の生命力を吸い取る禁断の剣だ。」
「はいッ!! お祖父様ぁ。」
「北条ぅぅぅぅぅぅぅ。」
慎二の叫び声が聞こえる。
あまりにも多くのことが起きすぎていて、脳の処理が追いつかない。
---時空壊---
慎二が俺の身体を押し退けた。
それと同時に真っ赤な液体が俺の顔に掛かる。
「十数分、俺は起き上がれない。それまで、カーミラのことを頼んだぞ。」
そう言って慎二はその場にどっさりと倒れた。
「さて、ロバス、早急に終わらせるぞ。
ソイツらは化け物だから、数分すれば何事もなかったかのように動き出す。」
「それまでに彼を始末するんだ。」
「わかっておりますわよ。」
俺は事態を認識し直すと、冷や汗をかきながら、構え直した。
心拍数を上げ、ほぼ勘で彼の攻撃を捌いていく。
捌くだけならいい。
だが反撃の一手を加えなくては、この猛撃は止まない。
この賭けも、いつまで勝ち続けられるか分からない。
攻撃自体は単調だ。
だが、あまりにも俊敏すぎる。
奴の姿すら目で追えない。
「ババババババ。」
ヘリコプター?
彼女が風を斬る音に混じって、何かがこちらに迫っている。
[科学者リングィスト!! 貴様を不法出国罪と国家転覆罪で拘束する。]
間違いない。公安のヘリだ。
皇帝は慌てて家臣に命じた。
「消せ消せ消せ消せ。」
家臣は慌ててビデオカメラを切るが、もうこの事態は隠し通せないだろう。
そしてヘリから、一人の少女が飛び出してくる。
「【天鵝流】拳闘術」
【漆ノ拳】
【翡翠】
急降下しながらロバスに迫り、その技は彼女にクリーンヒットした。
「ごめん、待たせたわね北条? 」
家臣が持つビデオカメラが黒く光る。
「極東の技術さまざまだな。ところで、後で下水道の件もしっかり聞いて置かなくては。なぁ台与鬼子。」
慎二は何も答えない。
それから皇帝はカーミラの方を見た。
「カーミラ殿? 人様の城にコソコソと入り込んで、どういう了見かな? 」
「国際情勢を悪化させたくなければ、どうか手をひいてほしい。」
慎二とカーミラは、祖国を思ってか、一歩後ずさった。
対称的に俺は一歩前に出ると、皇帝を仰ぐ。
「なんだテメエは被害者ヅラしやがって。オメエは加害者だろうが? 天に唾を吐いてみろ。自分に帰ってくるからよ。」
皇帝は、俺に矛を向ける家臣を下がらせると、前に出て、ロバスに命令した。
「ロバス。ソイツらを始末しろ。」
彼女は退屈そうな顔で俺たちの会話を聞いていたかと思うと、ため息をついて、それから皇帝の方を見た。
「王様と言いましても、ワタクシの邪魔をするなら容赦はしませんよ。」
ロバスの冷たい眼光が赫く光る。
「オイオイ、お嬢ちゃんよ。キミが相手をするのは奴らだ。」
「多少手荒な真似をしても構わない。他所の国で好き勝手した奴らだ。それぐらいの報いは受けるべきだろう。」
「死ね。」
彼女の左前足が、皇帝を狙った。
「キンッ。」
彼女を止めたのは、身体強化をしたカーミラだ。
「会談に何度もお誘いしたのに、応じていただけなかったのは、アナタの方です。」
「私が今日ここに来たのは、それをお伝えするためでもあります。」
それからカーミラはロバスの脚を押し戻しながら、彼女へと迫る。
押し返された脚の影響で、ロバスは体勢を大きく崩した。
それを、俺も慎二も見逃さない。
「凛月。薙ぎ払え!! 」
---雷鞭---
「キャッ!! 」
身体を支えているただ一本の右脚を、慎二の凛月がふり払った。
俺もその隙を見逃さない。
「【天岩流ッ】」
【捌ノ岩】
【天岩烈波】
宇宙から崩れ落ちてくる巨大なソレを、右手で砕いた。
鉄屑の雨が降る。
その雨の中、カーミラは俺を踏み台にすると、何が起こったのか分からないまま唖然としているロバスを抱き抱え、安全な所で着地した。
城の兵たちは慌てて逃げていく。
そして最後に家臣と皇帝だけが残った。
「素晴らしい。さすが、蝠岡が認めただけはある。」
蝠岡? 奴を知っている?
「私と彼は同窓生だ。私が二十七で博士号を手に入れた時、彼はまだたったの五歳だった。」
慎二の叫び声が聞こえる。
「北条!! ソイツの言葉を聞くな。」
リングィストは彼の言葉を無視して続けている。
「その頃には、彼も、国際政府から隷属世界プロジェクトの話がついていた頃でね。」
「私は本気で信じていたんだ。彼は人類の上位種を作ろうとしていると…… 」
彼は自らの手で頭にある白髪をむしり取った。
血が出るほど頭皮をむしり取った。
「何が『人類にあるべきものを思い出させる。』だ。」
「彼のやっていることは、天界に帰った人類たちに、再び知恵の実を授け、地上に叩き落とすようなものだ。」
「そうだ。奴は蛇だ蛇ダァ。」
俺の前で光る何かが通った。
遅れてカーミラが真紅の血を撒き散らして、俺と同じく何が起こったのか分からないまま、仰向けにバッタリと倒れる。
リングィストは、さっきの気が狂った様子とは、違う、落ち着いた叔父の声で優しくロバスに話しかけた。
「ロバス。彼の黄金剣には触れないようにな。それは使用者の生命力を吸い取る禁断の剣だ。」
「はいッ!! お祖父様ぁ。」
「北条ぅぅぅぅぅぅぅ。」
慎二の叫び声が聞こえる。
あまりにも多くのことが起きすぎていて、脳の処理が追いつかない。
---時空壊---
慎二が俺の身体を押し退けた。
それと同時に真っ赤な液体が俺の顔に掛かる。
「十数分、俺は起き上がれない。それまで、カーミラのことを頼んだぞ。」
そう言って慎二はその場にどっさりと倒れた。
「さて、ロバス、早急に終わらせるぞ。
ソイツらは化け物だから、数分すれば何事もなかったかのように動き出す。」
「それまでに彼を始末するんだ。」
「わかっておりますわよ。」
俺は事態を認識し直すと、冷や汗をかきながら、構え直した。
心拍数を上げ、ほぼ勘で彼の攻撃を捌いていく。
捌くだけならいい。
だが反撃の一手を加えなくては、この猛撃は止まない。
この賭けも、いつまで勝ち続けられるか分からない。
攻撃自体は単調だ。
だが、あまりにも俊敏すぎる。
奴の姿すら目で追えない。
「ババババババ。」
ヘリコプター?
彼女が風を斬る音に混じって、何かがこちらに迫っている。
[科学者リングィスト!! 貴様を不法出国罪と国家転覆罪で拘束する。]
間違いない。公安のヘリだ。
皇帝は慌てて家臣に命じた。
「消せ消せ消せ消せ。」
家臣は慌ててビデオカメラを切るが、もうこの事態は隠し通せないだろう。
そしてヘリから、一人の少女が飛び出してくる。
「【天鵝流】拳闘術」
【漆ノ拳】
【翡翠】
急降下しながらロバスに迫り、その技は彼女にクリーンヒットした。
「ごめん、待たせたわね北条? 」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
コンビニバイト店員ですが、実は特殊公安警察やってます(『僕らの目に見えている世界のこと』より改題)
岡智 みみか
SF
自分たちの信じていた世界が変わる。日常が、常識が変わる。世界が今までと全く違って見えるようになる。もしかしたらそれを、人は『革命』と呼ぶのかもしれない。警視庁サイバー攻撃特別捜査対応専門機動部隊、新入隊員磯部重人の新人教育が始まる。SFだってファンタジーだ!!
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる